不法行為法(1)
「不法行為法 民法を学ぶ」窪田充見著(有斐閣) 978-4-641-13489-8
関係しそうなところをまずは整理。
○709条の改正(2004年)
「他人の権利又は法律上保護される利益」 厳格な権利要件を採用しない。
○損害の認定
・差額説:不法行為が無かったらあったであろう財産状態との差を考える。
・損害事実説:被害者に生じた不利益それ自体を意味する。
使用者責任(715条)
○代位責任である。補充的責任ではない。被用者の代わりに使用者が責任を負うのではなく、被用者が責任を負うことを前提に、その履行を確保するために使用者も責任を負う。
○中間責任である。
○危険責任・報償責任の両方が混在。
○「被用者の不法行為」が使用者責任の要件。客観的に不法行為と評価できるのであれば足り、被用者について709条の責任が成立するか否かは要件ではない。
○使用関係は実質的な意味。広い意味での支配可能性が必要。
○共同不法行為との違い:共同不法行為を問題とするなら、各共同不法行為者について709条が充足されることが前提となる。これを被害者側で立証。過失を積極的に立証できなかった場合、715条であれば責任を肯定する可能性があるのに対して、719条では責任が否定される。
○「事業の執行について」
・判例は外形標準説(外形理論)
→責任を負担する者の帰責事由、相手方の保護に値する信頼を要求。
悪意または重過失の場合に使用者責任の成立が否定される。
→事実的不法行為に適用するのが難しい。
○履行補助者の過失(債権総論)
債務者の過失とみなされる。
○使用者責任の効果
(1)被用者と被害者の関係←709条
(2)使用者と被害者の関係
(3)使用者と被用者の関係←求償できる(求償権があることを意味しない)
使用者→被用者の求償は制限されている。
○被用者が直接709条の責任を負わないのは、自由な本人の意思に基づく行為として不法行為を行ったのではないから。
国賠法1条
「職務を行うについて」「公権力の行使に当る公務員」
・私経済作用(715条)と国賠法2条以外のすべて。
・公務員に故意又は重過失がある場合のみ。
・国賠法1条が適用される場合、公務員個人に対する賠償責任は認められない(判例)。
○不真正連帯債務
・賠償義務者が複数存在することによって、損害賠償債務が分割債務となることを否定。
・連帯債務における絶対的効力事由のうち、債務者相互の結びつきを前提とする規定は準用されない。
被害者の損害が現実に補填される性格のものに限定される。
・自己の負担部分を越える弁済をなした場合に、その越える範囲でのみ求償が認められる
(一部弁済してその都度清算は認められない)
共同不法行為
共同の行為をなす意思が存在しない場合でも、関連共同性を認める。
名誉毀損の場合
(1)請求原因
被告の表現行為(事実の摘示)による原告の名誉の毀損(=原告の社会的評価の低下)
(2)抗弁
当該表現行為における事実が公共性を有するものであり、且つ、公益目的からなされ、且つ、真実であること(真実性の抗弁)、または、真実と信ずるにつき相当な理由があること(相当性の抗弁)。
※プライドや名誉感情といったものは、名誉毀損における名誉には該当しない。