酷い訴状で提訴された
【訴訟資料公開はこちら】令和2年(ワ)第2509号(さいたま地裁)
次亜塩素酸水噴霧装置の販売業者であるウルフアンドカンパニーとの訴訟の件、さいたま地裁で私が被告になっている分について、2021年1月27日に第1回口頭弁論が終わり、双方陳述があったので、内容を公開した。これで、原告のウルフアンドカンパニーの提出書面も、被告の私が提出した書面も、誰でも読んで内容を確認できるようになったので、改めてコメントしておく。
今回は、前日に浦和に移動し、翌日1コマ目の大学院講義は(仕事場のお達しによりリモート講義になったので)ホテルからZoomをつないで行い、終了後に裁判所に移動するという慌ただしいスケジュールになってしまった。
まず誤解のないように断っておくが、私は訴訟にはある程度ポジティブなイメージを持っている。提訴されたこと自体は特に気にしていない。粛々と手続きを進めていくだけである。提訴されたことを酷いことだとは全く思っていない。
被告になってることは別として、今回出された訴状はとにかく酷い。どう酷いかというと、訴状としての出来が悪いという意味で酷い。相手方の代表取締役である大竹誠一氏は、これまでに本人訴訟が得意とか、弁護士無しで訴訟ができるとか、法廷で弁護士を涙目にするとか、さんざん私に書き送ってきた。だから、私は、法的にきちんと整った訴状が来ることを期待していた。ところが、届いたのは、形式もおかしい上に、内容もぐだぐだなシロモノだったのである。
訴状で要求されていることは、「ウルフアンドカンパニーから訴訟を予告するメールが来ました(2020/06/14-」の中で大竹氏のメールを全文引用している部分が著作権侵害だから削除しろ、というのと、賠償金として100万円支払え、の2つである。
ところが、訴状には重要な情報がほとんど書かれていなかったし、書証もまともについていなかった。
原告は、大竹氏個人(自然人)ではなく、大竹氏が代表取締役をしている株式会社ウルフアンドカンパニー(法人)である。著作権というのは、著作権法上の著作を行えば自然人に発生する(登録が必要な特許権とは異なる)。法人が著作権を持つには契約で譲渡するとか、法人の指示のもとで作業した、などといったことが必要である。ところが、私が引用したメールの著作権が法人のものであるという記述が、訴状のどこにも書いてなかった。その上、提訴に先だって、メール引用部分の削除を求めるメールが届いていたのだが、大竹氏個人と私のやりとりだから削除せよと読める内容だった。削除要求で主張した通りであれば、大竹氏個人に著作権があっても、ウルフアンドカンパニーには無いので、著作権侵害を主張する原告になれないはずである。私が引用したメールの著作者は法人なのか個人なのか、そもそも原告は法人でいいのか、訴状をいくら読んでも(書いてないから)分からないのである。
ネット検索すると私の作った上記ウェブページが2番目に出て、内容がウルフアンドカンパニーに対して批判的であるので、商売の邪魔になるから削除させたいという気持ちは読み取れた。訴状には、「誤解」が原因で「何億円規模の損害」と書いてあったが、誰にどういう誤解をされた結果どんな被害が生じたのかについては何も書いていない。賠償金が100万円なので、「何億円」の単位の損害とは金額がかけ離れて過ぎているため、生じた損害について賠償請求するつもりがあるように見えない。また、私がメールを恣意的に編集して都合の良いところだけ出したのであれば誤解が発生したと言われても仕方がないが、全文引用している状態で大竹氏が書いた内容が第三者に誤解されたのだとしたら、そりゃそもそも大竹氏のメールの作文が下手だったというだけの話である。で,この一番金額のでかい話について、何の因果関係も証拠も出されていないのである。一体何のためにこの損害について訴状に書いたのかさっぱりわからない。
メール引用部分に大竹氏のメールアドレスを含ませたことについて、無断で個人情報を流布している、と書いてある。原告が法人なので、私が引用したメールは法人著作物だと原告は脳内設定していたはずである(訴状提出時には)。すると、法人著作物を個人情報になるようなメールアドレスを使って法人代表者が他人に送信したということになる。個人情報の管理や取り扱いに問題があるとしたら、私ではなく、原告(法人)の方だろう。
主に争いたい著作権については、財産権と人格権を区別しないで書いてある。しかしこれらは別の訴訟物なので、分けて請求する必要がある。本人訴訟が得意と言いつつ、ろくに下調べもしないで訴状を書いたのだろうか。仕方がないので、訴訟物が別である旨答弁書で指摘した。何で本人訴訟自慢してるような相手に、法律素人の私が、よりによって答弁書で著作権法の教育をしなきゃならないのか、全く釈然としない。当然裁判所からも指摘があって、賠償金の振り分けを財産権と人格権に分けて主張することを求められていた。
上記ウェブサイトに私は「裁判所で大竹氏の名前を見た人がいたら情報をお知らせ下さい。」と書いた。これについて、大竹氏は「誰かが私を裁判所で見かけたら被告に何を知らせて欲しいのか?盗撮でもさせるつもりだろう。」と訴状に書いた。これも、請求には何の関係もないことである。あまりにも何の関係もないため、対応するだけ無駄なので、答弁書ではスルーしたのだが、このブログには回答を書いておく。大竹氏は本人訴訟をたくさんやっていることを他でも書いているので、本当かどうかを確認したかった。ウルフアンドカンパニーの設立は昨年2月で、この会社になってから訴訟の数をこなすというのは時間的にみて考えにくい。大竹氏の名前が裁判所の開廷表に出ているのを過去に見た人がたくさんいれば、実際に本人訴訟をたくさんやっているということの裏付けになると考えたので情報募集しただけである。残念ながら目撃情報は得られていない。知らせて欲しかったことは、開廷表に大竹氏の名前があることと相手方の名称である。なお、大竹氏は、頼みもしないのに裁判所の門のところで自撮りした写真をメールで送信してきたので、そんなことをしておいて盗撮を気にしても仕方がないだろうとしか言いようがない。
訴状の最後にある「小波氏に右翼を呼ぶぞ」云々の事情はこんな具合である。大竹氏が小波氏の代理人弁護士の事務所に電話で話したことを、弁護士がメモをとって小波氏に伝え、それを小波氏が私に伝えた内容をウェブサイトに書いたのが発端であった。私が伝え聞いた電話の内容は、大竹氏自身が右翼であるという主張と、右翼の知り合いに相談するといった内容で、それを私がウェブサイトに書いたことを、なぜか大竹氏が気にして、警察に相談したりクレームをつけたりしているのである。伝聞情報だったので、短期間だけ掲載して今は削除している。大竹氏は裁判所でも、私が書いた内容は越谷警察署だったかの「なみきが知ってる」と、担当の警察官を呼び捨てにしつつ証拠があることを強調していた。大竹氏は、警察では名誉毀損だと主張したらしいが、訴状には名誉毀損の話は何も書いてないし書証も無いので、名誉毀損を争う展開にもなりそうにない。この話は本筋の著作権侵害の審理に役立つとは到底思えない。まあ、右翼に相談したいといった発言を取り上げたのがけしからんと裁判官の前で主張するのは自由だが、そう言う大竹氏が着用していたマスクに日の丸のマークをつけていたことに関しては、別途説明が欲しいところである。見た目がばっちり右なのだが……。
と、まあこんな具合に、本筋と関係ないことはいくつも書いてあるのに、本筋の権利義務関係の説明が足りなかったりぐだぐだだったりという訴状で提訴されたのだが、酷いのは訴状だけではなかったのである。書証も同程度に酷かった。まず、私が書いた上記ウェブページの内容を提出するのは良いとしよう。ところが、大竹氏は、本文の部分だけを背景色などを一切抜いて裁判所に出した。引用してかまわないとなった場合であっても引用の形式を満たしていないとまずいところ、どこからどこまでが引用か全くわからない書証を出して、裁判所に指摘され、引用部分を後から手書きで囲って修正した。なお、私のウェブサイトは、メール引用部分は背景色を変えており、ブラウザで普通に閲覧すると、どこからどこまでが引用かはっきりわかるようになっている。こんなので裁判所に誤解されても困るので、閲覧イメージを証拠としてこちらからも提出した。
メール引用部分を書いたのが自分だ、という主張をするなら、送信したメールの内容(ヘッダ付き)でも書証として提出すればいいのに、閲覧イメージとは異なる、引用部分がどこかもはっきりしない私のウェブページの印刷物を書証としてつけただけというのは、はっきり言って立証を手抜きしているとしか思えない。訴状をどう読んでも、なぜ賠償金100万円を請求しているのかが全くわからないというのは、手抜きにも程がある。
最大の疑問は、もしこの訴訟で原告が勝訴してもまったく利益を得られないどころか逆に不利になりそうなのに、なぜこんな訴訟を始めたのか、ということである。私が大竹氏のメールを引用しているところを消して、大竹氏から○○のような内容のメールが来た、とか、訴訟恫喝された、という記述に書き換えたらどうなるか。大竹氏が熱心に次亜塩素酸水を宣伝している内容が消えて、批判的な内容が増えることになるので、大竹氏のビジネスにとっては不利な結果にしかならない。わざわざ金と手間をかけて、商売に不利な結果をめざすというのは理解しがたい。