postheadericon 弁論終結後の覚え書き(その1)原告と権利者は結局誰?

本件の弁論が2021年9月15日に終結した。今後は,特段の必要が生じて再開の申立をしない限り弁論が開かれることはない。つまり,双方主張が出尽くしたので判決を待っている状態である。一区切りついたので,進行中は書けなかったことも含めて書いておきたい。訴訟資料はこちら

原告の特定まで

酷い訴状で提訴された」に書いたように,本件訴訟はそもそも訴状の出来が法律文書としてぐだぐだで酷いものだった。このため、まず、答弁書で、原告は会社(法人)と大竹氏(自然人)のどちらであるか明らかにせよ、と書くことになった。

法人は、代表者の名前で訴え、訴えられることができる。だから、代表者代表取締役の表示があって名前が書いてあれば、普通は原告は法人ということになる。ところが、提訴されるまでのメールのやりとりの内容が、大竹氏個人とのやりとりに見えるものだったり、自然人しか主張できない権利が混じっていたりしたため、会社と社長個人のどちらを原告にしたいのかがはっきりしないという状態になってしまったのである。

ところが、原告は誰でメールの著作者は誰、という問いに対し、大竹氏は、原告準備書面2で、

著作権者は株式会社ウルフアンドカンパニー 代表取締役社長 大竹誠一です。

と、

原告は株式会社ウルフアンドカンパニー 代表取締役社長 大竹誠一です。

という見事なボケをかましてくれた。

私がこのとき期待していた答えは、「株式会社ウルフアンドカンパニーです」(法人の場合)か「大竹誠一です」(自然人の場合)のいずれかだったのに、またもや、書面を読んでも一体どちらかわからないように書かれていたのである。

本人訴訟が得意だと吹聴していた大竹氏は、代表者の名前で訴訟できるということの意味すら全くわかっていなかったとしか思えない。代表者の名前を使った場合、法人も、代表者個人のいずれもが訴訟はできるわけで、代表者であるという肩書きと名前が書いてあるだけでは一体どちらかわからず曖昧だから訊いていたのに、そのことが全く伝わっていなかった。

結局、法廷で口頭で「原告は会社で間違いないか」と改めて問いただし、「会社である」という回答をもらって、やっと確定したのだった。

後に書いたように、民事訴訟法では法人代表者が法人を代理できるが、著作権法では表示された名前の人が著作者と推定されるので、この書き方だと著作者は大竹氏個人になってしまう。法人の著作物であることの立証は改めて再度求める必要も生じた。条文の内容が違うんだから、こんなところでコピペすんな>大竹氏。

他人の権利は主張できない

民事訴訟で主張できるのは本人(法人、自然人とも)の権利のみであって、他人の権利を主張することはできない。法人は代表者の名前で訴訟できるし、代表者自ら法廷にきて本人訴訟の形で法人が訴訟することもできるのだけど、法人と代表者自身は別人格である。だから、法人が原告の時に代表者個人の権利を混ぜて主張することはできないし、代表者個人が原告の時に法人の権利を主張して争うこともできない。民事訴訟が得意なら、このことは常識以前の前提なのだが、大竹氏はこれすら理解していなかったことが訴状からわかった。

弁論している間は、相手に答えを教える結果になりそうだったので黙っていたのだが、私が、具体的に訴状の請求原因をどう振り分けていたか書いておく。訴状の2ページと照らし合わせて見て欲しい。

  1. 法人、自然人どちらでも可。ただし法人が原告となって権利主張するには、法人著作物の要件を満たすことの立証を行う必要がある。
  2. 会社に発生した損害なので法人しか主張できない。
  3. 「当社の個人情報」が意味不明。個人情報の保護に反するという主張ができるのは大竹氏(自然人)のみ。
  4. そもそも法的主張でないので請求原因たり得ない。
  5. 1と重複。この項目の方が詳しいので、法人著作物なら法人のみが、自然人の著作物なら大竹氏個人のみが主張可。
  6. 権利義務と無関係な記述なので請求原因たり得ない。
  7. サイト内の文書全ての削除というのは明らかに過大な請求なので、法人、自然人どちらが主張しても不適切。

著作権については、法人著作物と認められるかどうかに依存するので、この段階では何とも言えなかったが、2と3は原告を法人と自然人のどちらにするかによって、一方しか選べない。

答弁書を書いていた時は、法人著作物であるという要件を示した上で1,2,5のみ主張するか、著作者が大竹氏(自然人)であるとして1,3,5を主張するかのどちらかになるだろうと予想していた。

最後まで法人と自然人を混同

まあともかく、最後は裁判官の前で口頭で答えてもらうという流れで、原告は法人ということになった。すると、著作物性やら何やらを争う前に、そもそも著作者は誰、ということが問題になる。

法人が訴訟する時に代表者の名前で行うというのは、民事訴訟法37条が根拠で、代表者を法定代理人と同じに扱うことにするという建て付けになっている。一方、著作権法は、14条で「著作者名として通常の方法により表示されている者は、その著作物の著作者と推定する。」と定めている。一連のメールは、所属する会社と肩書きが付されているものの、大竹氏個人の名前が表示されているので、14条から、著作者は法人ではなく自然人である大竹氏と推定されることになる。さらに15条では、法人が著作者になる要件として、法人の発意(代表者個人の発意と常に一致するわけではない)、職務上作成、公表名義が法人(つまり代表者の名前ではないという意味)、と定めている。

どちらの場合も法人と代表者は別人格として扱われていて(当たり前だ)、民事訴訟で代表者が出て来て法人が当事者の訴訟ができるのは代理人扱いだから、という理由である。しかし、大竹氏はこのことを全く理解していなかったようである。著作権法から、著作者は法人ではなく自然人となるので法人が原告として権利主張できないぞ、と指摘したら、準備書面4に次のように書いてきた。

原告が書いた文章は株式会社ウルフアンドカンパニー 代表者 代表取締役 大竹誠一であるから、会社名が入って居てもでも法人・個人の両方に認められてる。

著作権法の14条、15条をまるごと無視することに決めたらしい。というか、著作権法を根拠として訴えてきたのに、大竹氏、そもそも著作権法の条文を全く読んで無いだろ。本人訴訟が得意かどうか以前の問題じゃないのか。なお、大竹氏から提出された書面で、著作権法の条文を具体的に示した箇所が1つも無かった。

一連のメールについて、法人と自然人が共同して作った著作物なので権利も両方が持ってる、となったとしても、本件訴訟の原告は法人なので、法人の持っている権利についてしか主張できない。つまり、自然人である大竹氏にも権利があるという主張をここでしたって全く意味が無い。

こんなふうに、最後まで、法人と自然人である代表者は別人格、ということがあやふやなままとなった。なお、大竹氏の会社は、法人と代表者の区別がぐだぐだになっている可能性があるので関わる時には用心してほしい。今回、私は、送達場所を就業先にしていたのだが、何と大竹氏は書面の提出を職場にfaxしてきた。本件訴訟は職務としてやっているわけではないので、職場のリソースを使って書面をやりとりする筋のものではない。郵便であれば、ダイレクトメールなどと同じ扱いなので、事実上職場のリソースは使わないに等しい。にもかかわらず大竹氏は私の職場に電話してfax番号を聞き出して総務にfaxを送るということをやらかしてくれた。おそらく、大竹氏の会社が普段からこの手の混同を平気でやっているから、外に対しても同じことをしたのではないだろうか。残念ながら国立大学法人というところは、所属している個人と法人は別、というのが徹底していて、こちらからこの手の公私混同をすることはない。なお、今回、就業先に送達してもらったのは、郵便物受け取りが便利(自宅だと勤務が終わってから再配達や、深夜に郵便局まで行く必要があり、コロナで営業時間が短縮されているので受け取りが大変不便になる可能性があった)ことと、大竹氏が裁判所での暴力を暗示したので自宅住所を知られることに身の危険を感じたからである。

Comments are closed.