Diploma Mills(卒業証明書製造所):自己満足だけならいいんだが
例のNHKスペシャルの学位製造工場の話、知人に録画したビデオを貸してもらえるかもしれない。が、まだ内容を見たわけではない。
CATさんのところからトラックバックがあったので、こちらからもトラックバックして、私なりの意見を書いておく。
CATさんは、「個人個人の価値判断というのもあると思う。フリーページにも書いたが、自己満足のためであれば自分の金をどう使おうとその人の自由だし、他人がとやかく言うことではないと思う。それが公に通用するかどうかとか、倫理的な問題はあるけどね。」と書いておられるが、これは、単なる自己満足に止まった場合の話だろう。実のところ、学位製造工場の問題は、個人が単なる消費者として金で称号を買って学位記を家のどこかに飾っておくだけなら、さほど大きな問題ではない。それだけであれば、名称がちょいと紛らわしいというだけで、世の中にあまたあるお稽古事教室の修了証書とか級・段認定証書と大差ないからだ。
一方、研究者の業界(但し理系)では、学位は持っていて当然という扱いで、しかもそれほどウェイトは高くない。就職の時も研究費を獲得するときも、単に学位を取得しているだけでは不十分で、必ず研究業績を評価されることになる。普通の大学で取得しようが、Diploma Millsで得たものであろうが、業績を伴わなければ実質効力無しということになる。
問題となるのは、その「学位」が研究者業界以外に対して「権威付け」のために悪用された場合である。典型的なものとしては、健康食品や健康器具を売るのに、「**博士」の肩書きのある人の推薦文や調査結果と称するものをくっつけて行うというものがある。これも、普通に学位を得た研究者が、専門ではない分野に名前を貸して宣伝に登場していることがあったり、専門の筈なのに何故か怪しい業者に名前を貸したりしていることがある。だから、国内の大学で普通に学位を取得すればそれだけで悪用が行われないということではないのだけれど、今のところは、怪しい商売に名前を貸すケースは非常に少ないと思う。
しかし、Diploma Millsから出された学位は、簡単に権威付けのために利用される可能性が高い。まともな研究者業界では全く使えないので、手っ取り早く投じた費用を回収するには商売に利用するしかないからだ。たとえば、怪しい商品を売ってる会社の社長が学位を買ったら、まず100%の割合で宣伝の中で自慢するだろう。売りつけられる側も、ついうっかり、専門の研究者がお墨付きを与えていると勘違いするかもしれない。Diploma Millsを放置しておくということは、詐欺の道具を売っているのを放置しておくのと同じことじゃないかと思う。