環境ホルモン濫訴事件:第二回口頭弁論の様子
中西氏 vs. 松井氏の名誉毀損訴訟の傍聴に行ってきた。事件番号は、「平成17年(ワ)第914号」で、横浜地裁の民事9部に係属している。
本日は、905法廷(ラウンドテーブル)で審理が行われた。傍聴席は19名で満席(固定席+折りたたみ椅子席が追加されて、全部で19席)。原告側は中下弁護士のみ出席、被告側は中西氏と弘中惇一郎弁護士・弘中絵里弁護士が出席した。相変わらず原告本人は登場せず(中西氏の話によると、筑波で研究会に参加してるらしい……やる気があるのか?)
傍聴人が多かったので、裁判長が、原告代理人に、原告側準備書面の要点を口頭で説明するように促した。中下弁護士の主張をまとめると『学問的見地からの批判の自由は認めているが、本件の批判は前提とした事実に誤りがあり学問的批判にあたらない。被告は、専門家である原告が批判を加えず新聞記事を提示したことについて批判を行ったが、原告は新聞記事をそのまま掲げて問題なしとしたわけではない。新聞記事は公平性に留意して作られ内容の信頼性もあり、時にはオーバーランすることもあるが、それが全てであるということを前提にしてはいけない』といったもの。録音できず、かなり早口だったので一言一句正確には再現できないが、大体こんな内容だった。
原告は甲1~甲9号証を提出し、被告は乙1~乙4号証を提出、共に証拠として採用され、取調べられることになった。また、原告が提出した弁論に対し、被告代理人の弘中弁護士は再反論すると述べた。さらに、弘中弁護士は、『本件で摘示された事実は何か?松井氏が「次はナノです」と主張してスライドを見せたことは事実であるが、あとは意見ではないのか。本件訴訟の事実は何かを明らかにするため、シンポジウム当日の録音テープを次回提出する』と述べた。
次回は、9月29日(木)11:30-、法廷は未定だが、ラウンドテーブルで行う予定。
#これでも全部で10分から15分程度だが、民事にしては丁寧で長かった方である(書面を前もって交換して、双方が裁判官の前で「書面の通り陳述します」とやって、次回期日を決めて終わりのことが多い)。
閉廷後、横浜弁護士会館にて簡単なミーティングが行われ、傍聴に来た人の簡単な自己紹介が行われた。弘中弁護士からは、今後の進め方についていくつか説明が行われた(審理の迅速化について、など)。
昼食後、横浜市内で、中西氏を囲んで、支援活動についてどうするかという話し合いを行った。今後どういう支援をするにせよ、中西氏の考えを尊重することが最も重要であるから、私が聞いた中西氏の意見を以下にまとめる。
1)支援してくれることはありがたい。
2)その一方で、自分の訴訟であるから、自分でどうするかというフリーハンドがほしい(つまり、支援活動が過激になりすぎて、何が何でも訴訟続行……といったふうなプレッシャーになってしまっても困る)
3)全ての収入は研究所を通しているので、資金カンパを中西氏自身が直接受け入れる手段がない。
4)多数の研究費申請を審査する立場なので、たとえ金額が少なくても、審査を受ける側の人からカンパされて、それを中西氏が受け取ってしまうと非常にまずい。
以上4点が、ざっくばらんに中西氏に語っていただいた内容である。支援を表明したが、私自身も直接カンパを受け入れられない(誰のモノでもない口座を作れない)立場である。ただし、カンパという手段で、本件訴訟のようなやり方にNoという意思表示をすることは重要ではないかという点で意見が一致した。
また、「中西氏を応援します」というバナーを作ってウェブサイトに貼ってもらったり、本件訴訟のようなやり方を問題とする意見表明をいろんな人が個別にブログなどで行うことも支援になるのではないかという意見が出た。
現在は、中西氏を含めて数人の関係者の間の連絡手段を確保し、話し合いを始めた状態である。支援組織に弁護士(弘中弁護士以外の)に加わってもらって組織としてカンパの受け入れを可能な状態にしてはどうかという意見も出ている。
—————(以上報告。以下私の感想と意見)
傍聴してみたが、原告の主張が何だか良くわからない。「シンポジウムのプレゼンテーションで新聞記事をそのまま提示したことを批判された」ことのどこが名誉毀損になるのかさっぱりわからない。ひょっとして「プレゼンがヘタ」と言われたと思いこんだ松井教授のプライドが大いに傷ついたってことか?なら、中下弁護士は、毎回法廷に出てきて「教授のプレゼンの技術」についてせっせと弁護活動をしていることになるわけだが……。何人かの人に訊いてみたら、伝聞では松井氏は意気軒昂ヤル気マンマンだそうだが、ちっとも法廷に出てこないし。
あと、支援に際しての中西氏の懸念の2)は、今後支援サイトを作る時に、民事訴訟の基本が処分権主義であることを解説しておけば避けられるのではないかと思った。また、こういう支援活動は、正義や使命感でやると大抵は暴走してろくなことにならないので、私が何かやるにしても「本件で被告を応援することについての私の利害」は常に説明出来る状態にしておこうと思っている。また、集団としての意見統一を重用視すると「市民団体」と変わらないことになりかねない。支援組織を作ったとしても、組織に対する個人の自立を常に確保することは意識していたい。
帰りに、ふと、物理学会にも「科学者の社会的責任」なんてのがあったなあと思い出した。本気で社会と関わって情報発信すると、誰かの利益になる一方誰かの不利益になる。結果として、訴訟のリスクを背負うことになる。科学者の社会貢献をお題目のように唱える人たちは、このことを一体どこまで認識しているのだろうか。
- » Continue reading or コメント (0)