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Igor Proは最新版にするべき(Mac OS X)

Posted on 11月 15th, 2005 in 倉庫 by apj

 発売されてからもマイナーバージョンアップが続いているIgor Proだが、Mac OS X版については、最新の5.04Bにすることをお薦めしたい。OS X版になってからの最大の不満は、グラフを描くためにwaveを選ぶ操作で、X軸のwaveとY軸のwaveの組を1つ選び、重ねてプロットするため次の組を選ぼうとすると、X軸で選んだwaveが毎回calculatedに戻ってしまうということだった。選ぶべきX軸のwaveが並んでいる場合など、毎回選び治さないといけないので非常に面倒だった。最新版ではやっとそこが改善されて、XYの組を1つ選んだら、選んだモノがそのままselectedな状態に保たれるので、次々と組を選ぶ操作が楽になって、ストレスを感じなくなった。

ご飯にかけ声

Posted on 11月 14th, 2005 in 倉庫 by apj

 ミクでも書いたし、電話取材があったのでそっちでもしゃべったのだが。
 ごはんに「ありがとう」「ばかやろう」と声をかけると、早く傷んだりカビが生えたりするのが「ばかやろう」と声をかけた方で、「ありがとう」と声をかけた方が長持ちするという話(っつーかネタ)。夏休みの自由研究でこれをやる人も出てきていて、水の結晶ネタともども拡がりつつある。
 まあ、カビの生え具合など、初期条件に左右されやすいので、偶然そういう結果が出ることがあっても不思議ではない。
 疑問は、そういう結果を前にして信じてしまった(と称する)人々のその後の行動にある。「ありがとうと言いましょう」という結論にはなっても、「ありがとうと言うことにしたのでこれまでは2日しか保たなかったごはんを3日目も食べるようにした」「コンビニバイト君にありがとうを言わせているのでおにぎりの賞味期限を1日延ばすことにした」という結論にならないのはどうしてか、ということだ。結果を信じるというのなら、さっさと実用化すればいいわけで、その方が経済的効果ははるかに大きい。信じておいて、他人にもその話を広めておいて、おにぎりの賞味期限はそのままだという行動をとるのは矛盾しているのではないか。本当に信じているなら自分の腹具合を賭けてやってみろと言いたい。

 山形大生協には一般販売用の日系ビジネスが入ってなかった。大学発ベンチャーの批判記事に興味があったので、11/14日号を注文した。今日は寒くて雨だったので、街中の書店まで出向く気分にならなかった。

別の観点から考えると

Posted on 11月 13th, 2005 in 倉庫 by apj

 水結晶と道徳の話。これもミクに書いたネタだが。
 科学としては、水蒸気から結晶になるときの形は、気温と湿度で決まるということで決着が付いている。問題は、これで道徳を教えた場合、まかり間違うととんでもない方向に行くんじゃないかということ。
 今提示されているロジックは、水に「ありがとう」→きれいな結晶、「ばかやろう」→きたない結晶、という写真をつくって、だから「ありがとう」と(人に)言いましょう、ということになっている。これについては、善=美という判断のしかたをを道徳に持ち込むのは致命的だという話を既に書いたが、それだけでは済まないかもしれない。
 江本氏の結晶の作り方は、成長時の温度と湿度を完全にコントロールできない(シャーレの中の氷の表面の小さな領域の条件に左右される)から、どんな水からどんな結晶でもできる。結果は偶然に左右される。江本氏本人が書いているように、数十個凍らせて順番に観察して、見えた結晶のうちその水に一番合いそうなものを選んでいるので、科学ではない。
 ものの善悪の判断を水結晶に任せるということにした場合、「**を殺してやる」と書いた紙を水に見せて、キレイな結晶ができちゃったら、お水様公認殺人OKという結論になりかねない。結晶の形自体が偶然の産物だから、水の素性を言わずに江本氏に結晶写真の撮影を頼んだとすると、きれいな写真ができてくる可能性は十分にある。
 「殺人を行ったのは水の結晶がきれいだったからだ」というのと「太陽がまぶしかったから人を殺した」の間には、さほどの隔たりがないように思える。殺人の動機としては面白いが、こんなのは不条理文学の世界だけにしておいた方が良い。していいことと悪いことの区別は、水なんかに頼らず教育すべきだろう。

PostgreSQLのデータ型

Posted on 11月 10th, 2005 in 倉庫 by apj

 掲示板のコメントを間違って消してしまい、バックアップから復旧させることになった。pg_dumpallで丸ごと吸い上げているので、そこからデータを取り出すには、一旦別の場所にデータベースを作ってからやればいい。それで、このマシンで動いているPostgreSQLに突っ込もうとしたらエラーで動かない。古いバージョンで使えたdatetime型が新しいバージョンではサポートされなくなり、timestamp型を使わなければならない。で、castしろというメッセージが出るので、素直にcreate castしたら、datetimeなどというデータ型は知らんがな、というエラーが出てうまくいかない。結局、
psql -e -f dump.file template1 > textout
とやると、データベースの復元はできないが、textoutに、データベースの中身を読み出した記録がテキストで書かれるので、そちらから必用な部分を引っ張り出すことになった。
 本当にクラッシュしたときは、一旦古いバージョンで復旧させてから、データのみを新しいバージョンに移行するといった作業になるのだろうか。もっとスマートな方法もありそうに思うが、ネットを探してもなかなか見あたらなかった。

さっさと本題に入れやゴルァ!

Posted on 11月 7th, 2005 in 倉庫 by apj

 勧誘電話が相変わらずうざいって話。今日は別のがかかってきた。しかも、熱力学の本読んで佳境に入ってる時にだ。今日のはこんな感じ。

営業「**と申します。昨年から山形大学の先生方のところで云々……」
私「それで何?」
営業「実は先生方の共済に**を……それでマンションを……」
私「共済これ以上いじる気ありません(ガチャ)」

 で、何でこうも勧誘電話が鬱陶しいのか考えてみた。

 あのな、本題に入る前が長すぎるんだよお前ら!こっちとしては、おまいらが大学にいつから出入りしてようが、教員の誰を有力顧客に捕まえてようが、知ったこっちゃないわな。話聞くか止めるかの判断材料を迅速に提供しろと。「**会社の**と申します。いつもお世話になっております。(ここから即本題)」なら、まあ許せる。この間からマンションだの不動産だの電話が来るけど、何でみんな「教職員の方に……」「山形大学で営業……」とかどうでもいいことばかり長々と言って、なかなか本題に入らないんだよ。こっちは関西出身でイラチなもんで、「用件は何?早く言え」って毎回電話口で叫ぶ羽目になってるんだぞ。お互い時間の無駄だからさ、さっさと用件切り出せや。

Igor ProのXOPのコピー

Posted on 11月 7th, 2005 in 倉庫 by apj

 IgorProをデータ解析に使っている。分光実験屋にとっては必須のソフトだが、XOPという機能拡張を読み込ませると、さらにいろんなことができる。で、装置からのデータを読み込むためのXOPを作って(別売りのXOP Toolkitを使ってCやC++で書いてコンパイルする)、別のパソコンに入れようとしたら、CodeFragmentの読み込みがこけたとか何とかで動かない。これまでこんなトラブルは無かったのであれこれ試していたのだが、コピーの方法に問題があることがわかった。
 開発したマシンからXOPファイルをUSBメモリに入れて、別のマシンに移動させていたのだが、これが、一見正常にコピーされてるようで実はされていないということらしい。StuffItで圧縮したものをUSBメモリに入れて、別マシンに持って行ってから展開したものは正常動作した。これまでこんなことが無かったので、何が問題なのかわかるまでにしばらくかかってしまった。いやだって、システムのライブラリのどっかで起きてるエラーにしか見えないから、OXをアップデートしたりIgor自体のバージョン変えたり、他にコンフリクトしそうなものがないか探しまくったり……しちゃうよね、普通。
 環境は、Mac OS X10.3.9や10.4.3、Igor Pro 5でやっている時の話。

ハコモノ行政失敗見本

Posted on 11月 6th, 2005 in 倉庫 by apj

大阪民国ダメポツアー」。赤字財政の大阪に作られた、高価で利用されないハコモノの数々。伝統的な商人の街のはずが実はトンデモ放漫経営だったという話と証拠物件が示されている。
 ただ、ウェブサイトの作者は、大阪だけ特殊だというのではなく、全国的に起きていることだという認識をもってほしいと主張している。
 なんでここまでハコモノ行政が失敗しているのかということの方が不思議。無駄なものを作ると決めた人にきちんと責任を負わせないといけないのではないか。現場で泥かぶって働いてる人の給料だけなら、多少高めでもまあ許容できるが、ハコモノとダブルではそりゃ大批判もされるわな。

ネット新聞の「水からの伝言」批判

Posted on 11月 4th, 2005 in 倉庫 by apj

 インターネット新聞より。「「水からの伝言」にみるにせ科学」というのが出ている。ここについているコメントに、「水からの伝言」を広めている江本氏の学位が、ディプロマ・ミルによるものだという指摘があった。
 今週の教養の講義で、水からの伝言批判をやったのだが、学位販売業についても注意を喚起する必要があるかもしれない。
 日本の大学は、国立大学法人については元々文部科学省の実行部隊だったし、私立大学についてはやはり文部科学省が許認可行政でがっちり縛った。このため、「大学」を名乗るディプロマ・ミルが発展しなかったのではないか。博士号販売会社(**博士という商標を販売する)、あるいはそれに近い「大学」には日本からもアクセスできる(例:ニューポート大学、イオンド大学など)が、これらの大学は、通常の意味で大学入試の時に考慮の対象になることはまずない。受験産業がそもそも相手にしていない。許認可行政の是非がとやかく言われることもあるし、規制緩和が求められることもあるが、こと大学についていえば、文部科学省の許認可行政はディプロマ・ミルによる被害を防いだという効果があったのではないか。しかし、アメリカでは、国ではない組織が大学認定をすることがあるので、認定団体自体が怪しいと、その下に「あやしい大学」がぶら下がることになる。

 国立大学法人については、大学評価・学位授与機構による外部評価を受けることになっている。評価項目の中に「大学が教員の評価システムを持っているか」という項目があるので、本学でも教員の評価をどうするかについて、委員会や会議などで議論が行われている。
 この評価、導入の仕方やその後の運営方法かならずしもはっきりしないこともあり、教員の差別化につながるのではないかと危惧する向きもある。しかし、外部評価を怠った場合、その隙にディプロマ・ミルの跳梁を許す可能性だってある。こちらの方がより問題ではないかと思う。インチキ大学に荒らされるよりは、厳しいことを言われたとしても、評価を受け入れる方がずっとマシだという考え方もあるのではないか。

ブログが謎挙動

Posted on 11月 3rd, 2005 in 倉庫 by apj

 PHPのセキュリティ・ホールのせいで、帰る間際に入れ換え作業になってしまった。とりあえず、ユーザー会の大垣氏が作ったパッチをダウンロードして、4.3.11に当てて入れ換えた。最新版に入れかえると、多分掲示板スクリプトを動かすのに書き換えが必用になるだろうということで、現行のものに近いバージョンで手当することにした。入れ換えが終わって試してみたら、私が作った掲示板関係のスクリプトは問題なく動いている。ところが、このブログのテンプレートがうまく動かなくなってしまった。トップページを表示させると、最新の記事の左上に「昇順/降順」と出るはずで、テンプレートもそうなっているのに、「/~/a>」という訳の分からない記号が出て、しかも、リンクでもなんでもない本文が、どこもかしこもトップページのリンクになってしまっている。つまり、タグを閉じ損ねているといった具合である。
 じゃあ、これを機会にblogのスクリプトを更新するか、と思って最新版をダウンロードし、テストディレクトリで動かしてみたのだが、データのインポート/エクスポートがうまくいかず、データの移行で失敗する。
 結局、設置サポート掲示板の過去ログを探し、「昇順/降順」が漢字で書かれているとなぜかダメだという話を見つけた。で、ひらがなで「しょうじゅん/こうじゅん」と置き換えてみたら、トップページに何も表示されなくなってしまった。結局、上向きと下向きの矢印に置き換えて、怪しいリンクが出なくなるようになった。
 何でこんなことになるのかさっぱりわからない。

何マッチポンプしてるんだか

Posted on 11月 2nd, 2005 in 倉庫 by apj

 毎日新聞の記事より。

博士研究員:就職支援に5億円 文科、経産省が来年度から

 研究現場を支える若手研究者「ポストドクター(ポスドク)」の就職支援に、文部科学省と経済産業省が来年度から乗り出す。大学や研究所の常勤職ポストが少なく、30~40代になっても定職に就けない博士号取得者が目立っているため。

 両省は来年度、ポスドクと民間企業など新たな進路とを橋渡しする新規事業に計約5億6000万円を支出し、「博士の就職氷河期」の解消を目指す。

 ポスドクは博士号を取得した後に任期付きで働く研究員。政府は、研究開発能力の強化のため、ポスドクに一定の年収を保証する「ポスドク等1万人支援計画」を科学技術基本計画に盛り込み、量産化を進めた。昨年度のポスドクは約1万2500人と推計される。

 しかし、定職を探す30~40歳代のポスドクの就職難が深刻になっている。常勤研究職の数は増えず、企業への就職も限られているためだ。

 そこで両省は、博士たちと研究機関以外の就職先との出合いの場を作ることにした。

 文科省は、大学や企業を対象にモデル事業を募集し、支援する。人材派遣会社などが、ポスドクに研究機関以外の就職情報を提供し、企業に出す研究企画書の作成方法を指導するといった事業が考えられる。

 経産省は、ポスドク向けにベンチャー企業などの求人情報をデータベース化したり就職セミナーを開く。

 澤昭裕・東京大先端科学技術研究センター教授(経営戦略)は「企業も即戦力の優秀な研究者を求めているが、求人情報が研究現場に届きにくい。世渡り下手の博士に、研究機関以外の活躍の場を気付かせられれば、新たな人材マーケットが生まれる」と話す

 文部科学省の都合で大学院定員を増やしてポスドクも増やしまくっておいて、いざ問題が発生したら企業に押しつけるってことですか?こうなるのは大学院重点化に走った時からわかりきっていたことのはず。少子化で受験生が減ることだって、減り方の速度はともかく予測はできていたはずだ。文部省内でも、若手の官僚は「重点化をやったら近い将来社会問題化する、特に文系は大変だ」って指摘してたし、そういう報告を出した人がいたはずだぞ(ってかその本人に'95年頃にきいた話だが)。ポスドクの支援に金使う前に、政策の誤りを認めて大学院の定員減らす方が先なんじゃないのか。ここまでくれば、国家予算で失業者を養成することになったことがはほぼ明らかなのでは。まあ、問題が生じれば予算がつくのが役所の常だから、それを狙ってポスドク問題を発生させたという見方もできなくはないが……。
 ついでに言うと、大学院重点化が始まった頃に、日立基礎研に就職した先輩と話をしたら、基礎研でさえ「これ以上博士イラネ」って話だった。理系の学位持ちが集まるところでさえも「増やせ」というニーズは無かったらしい。ところが、もっと博士号持ちを増やすのが社会のニーズに応えることだって方向で重点化の話が出てきていたから、一体どういう調査をしてそういう結論になったのか、当時から激しく疑問だったわけで。これも、1995年前後のことだ。そりゃ、もし、「高度に訓練された博士が増えると役立つと思いますか?yes/no」なんて訊き方をしたら、誰だってyesと答えるだろう。でも、本当に企業に訊かなければならなかったことは「御社で博士をこの先何人雇うつもりがありますか?」という採用計画についてじゃないの。で、この問いに答えた企業が何人の採用実績を示したかで、供給計画を決めれば良かったんじゃないのか。
 正直言って、私も就職では散々苦労したから、こういうのを見ると、他人事とは思えない。私の周りも私よりちょっと下の世代も、就職については屍累々なわけだが。しかし、この期に及んで斡旋事業だけやって、ポスドクを雇うつもりは文部科学省にも経済産業省にも全くないというのは記事を見る限りはっきりしている。まさに偽善の見本。こういうことは、役人の半分にでも博士号持ちの奴を雇ってから言えと。
 博士課程進学の時にはリスクを背負い込む覚悟をしたことは確かだし、好きで選んだんだろうと言われればそれもその通り。だから、一般の会社の人からどんなきついことを言われようが、それは仕方がないと思うが、原因を作った当の文部科学省が他人任せの対応をすることを堂々と表明するのを見ると本当に腹が立つ。
 まあ、人材が偏在していることは確かだと思う。最近、事情があって、企業が出した製品試験の報告を見る機会があったが、それがとんでもなかった。予算が使えるから測定器は投入してるんだが、対照実験してないとか実験条件抜けまくりでレポートの体をなしていないとか、実験結果の表と数値だけしかないとか、夏休みの自由研究ですかこれは?という代物だった。正直、そのレポートじゃウチの学科はまず卒業できない(つか実験の単位が取れない)。そこに1人でもいいから院卒の人がいて、仕切ってればずいぶん違うだろうなぁと思ったわけで(もっとも、ありがちなパターンとしてDQN社長にウソでもインチキでもいいから売ってこいと命令されたりしたら、嫌気がさして辞めるだろうけど)。

【個人でリスクヘッジする方法】
0)大学や独立行政法人の研究職は最初から考えないことが最大のリスクヘッジになる。
1)フレッシュマンで就職する
 学位取得(大抵は3月)後の4月から企業に行けるように、最終学年の春から就職活動する。学位取得後、ポスドクでうろうろしていると、後から面接を受けに行こうとしたときには既に中途採用扱いになって、さらにマッチングが厳しくなる。フレッシュマンで動くのが多分一番楽。
2)不幸にしてポスドクするハメになったら
 技術が活かせそうなアルバイトでも何でも最低1つは入れて、社会とつながりを持つこと。仕事ぶりが実直であれば、見ている人は見ていて、チャンスがやってくることがある。知り合いでも、バイト先の会社に就職した人がいるし、私も、紹介されたプロジェクトで企業の人と一緒になってやっていたら、数年後、その人が独立して会社を作るので来ないかと声をかけていただいたことがあった(たまたま別のところで仕事をしていたので行かなかったのだけど)。最悪なのは、出身研究室だけに閉じこもり外に出るのは学会だけなんて状況で、アカポスを狙うこと。

 あ、この文章についても、大学の話題なんで一応予防線貼っておく。もし、大幅な変更があったら、それは職場から取り下げろという圧力があったということだから、見た人はとりあえずコピペでもしておいてください。どの程度までなら表現を許すかという、大学に対するリトマス試験紙にはなるだろうし。