不安定な身分だからこそ自分の身は自分で守れ
「大学教員の日常・非日常」の最近のエントリーで、「楓の教員日記‐大学で働くということ」を知った。
任期付きの仕事は私もやってきたのだが、そのことを踏まえると、楓さんの大学も無茶をしているというか使い捨てる気マンマンに見える。楓さんももうちょっと先を読んだ方が幸せになれるんじゃないかというのが正直な感想である。楓さんはいろいろトラブルに巻き込まれて大変そうなのだが、それでも外部から見るとどう見えているかということを書いてみる。
まず、仕事の内容が「国際交流・協定に関わる業務全般」で任期付きだということが危険信号である。研究者は論文が出てナンボであり、次の仕事を探すにしてもまず業績がモノを言う。業務的な仕事は論文にならないから、それを任期付き、つまり次の仕事を探すために業績が必要な人にさせてはいけない。任期なしの職員がやるか、研究者としてのキャリアパスを歩まないアルバイトを雇ってやらせる仕事である。どうしても業務をしなければならないなら、採用のときに交渉して、どこまでなら業務をやれるか、あらかじめ線を引くのが身を守る唯一の方法である。このためには、専任になるより非常勤を選ぶ方がよい。専任だと線を引くことが難しくなる。まあ、タフ・ネゴシエーターであれば何とかなるかもしれないが……。楓さんは既に専任になってしまっているので、身分の違いを前面に押し出して可能な限り業務と研究の線を引くしかないだろう。「自動的にクビにならないオマエらとは立場が違う」と徹底的に言いまくってみたらどうだろう。
最初の方のエントリで、楓さんは
このポストはウチの大学では新しい試みなので、ある意味私がローモデルになる可能性が大なのだ。つまり、私が業務もバリバリこなし、そして次々に論文を世に生み出していけば、ひょっとすると「その先」があるポストになるかもしれない。
と書いているが、これがまさにそういうポストを作った側の狙いではないか。もし、任期を終えた時点で楓さんの業績が足りなかった場合、楓さんの次の就職先は無く、このポストは「業務内容はそのままで若手研究者を使い捨てるのに最適なポスト」として残りそうである。楓さんのやったことが前例となるのなら、研究と業務の線引きをして、研究に専念できる環境を確保する方向で動いた方がよい。偉い人達がそのことを気に入らなければ、業務をするポストと研究や教育をするポストを分けるようになるだろう。
次に、楓さんは、採用時にプッシュしてくれた先生の恩義を感じているようだが、そういう感情はこの際全て捨てることだ。プッシュする側はそれなりの利害と見識でやっただけのことであり、仮に楓さんが思惑通りに働かなかったとしても、それは単にプッシュした側に見る目が無かったというだけの話である。責任は全面的にプッシュした先生にある。もちろん、恩を仇で返せとは言ってないし、意図的に足を引っ張るようなことをしてもいけない。ただ、自分の行動を決定するときの判断のファクターにプッシュしてくれた先生の事を入れてはいけないという意味である。そうでなければ、意志決定を間違える可能性が上がる。人間関係が錯綜している場合はなおさらである。
あとは、「周りが責任転嫁をするようであれば自分がババを引く必要はさらさらない」と割り切ること位か。プロジェクトが失敗しようが、誰がドジを踏もうが、やった奴が誰の目からも明白であるように、証拠を残しておくとよい。若手に言いがかりをつけたり責任転嫁したりすれば、やった奴の命取りだと知らせるのが一番よい。任期付き=スケープゴートの最有力候補、の側面があるということを肝に銘じておくべきだ。任期付きの人間が任期なしの身分安泰な奴のフォローなんかしようと思うのが間違いである。自分の将来を守るのが最優先事項である。
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