裁判サイトを作る
環境ホルモン濫訴事件の口頭弁論が昨日行われたので、休暇をとって傍聴してきた。傍聴レポートは既に掲示板の方に簡単にまとめた。書証の公開は現在作業中である。
応援団のページを作り始めた時は、どう見てもおかしな訴訟であるから、裁判を丸ごと見せてしまえば被告の応援になるだろうという考えの方が大きかった。ネット上で裁判についての議論をしているのを時々見かけたが、訴状が読めなかったり、弁論の内容がはっきりしなかったり、一方当事者の応援フィルターがかかった形で編集されたりしている場合がほとんどであった。すると、議論は、どちらかを応援するという感情的なものになったり、拠って立つものがはっきりしないため水掛け論になったりしてしまう。それは避けたいし、そのためには見に来た人が十分に裁判の内容を検討できなければならないから、一次資料つまり書証の全公開ということを考えた。
もうちょっと邪な目的を正直に言うと、私個人としては名誉毀損訴訟の参考教材がほしかったということである。訴状や書証を載せた法律の参考書もあるが、教材として編集されたもので、手が加えられているし、名誉毀損をあつかったものは知る限りない。
ネット上で表現をする限り、名誉毀損で訴えられるというのは、いつでも起こりうることである。そうであるなら、本職の弁護士がどういう議論の仕方で訴訟を進めるのか、あらかじめ詳しく知っておくと対処がしやすいだろう。このためには、現実の訴訟でやりとりされている証拠書類一式が読めると一番良い。法学者からみて訴訟の内容が興味をひかないものであったとしても、現実の社会で起きている紛争である以上、そこから得るものはあるはずである。書証を全部蒐集すれば、名誉毀損訴訟を学ぶための教材が1セット手に入ることになる。もっと言うと、カミソリ弘中謹製の書面が読めるというのが実においしいわけで……。
今回、傍聴が終わった後、サイトそのものについて少し話をした。被告代理人の弁護士からは、「公開されるとなると緊張感がある」という感想をもらった。酔うぞさんの意見は、「ネット上に傍聴席を作った」というものだった。さらに、裁判の証拠書類を全公開してバーチャル傍聴席にしてしまうようなサイトはこれまでに無かったということである。それなら、応援団サイトの活動は、裁判サイトをどう作るかということに対する一つの回答という意味も出てくるのかもしれない。
酔うぞさんが既に指摘しているが、原告代理人は、ネット上で裁判について批判されることを嫌がっているようである。
憲法では対審は公開することになっているのだから、裁判すればみんなに知れ渡るのは仕方がない(特に今回は原告がプレスリリースを出しているので、普通より広まる状態である)。これまでは、書証は裁判所に行かないと見れないし、書証を読んだ人が突っ込んだ議論をする場所もそんなに無かった。ネットのおかげで、書証を見やすくすることができて、意見交換もやりやすくなった。もともと、対審を公開するのは、司法が国民の期待と乖離しないようにみんなの目でチェックしようという趣旨である。だから、ネットを使って裁判の正確な情報を見やすくするのは、対審の公開の趣旨に添っていると考えている。みんなが訴訟の状況を知れば、いろんな意見が出てくるのは当たり前だし、意見交換があるのも当たり前である。これまでは、単に技術的理由で、一部の行政訴訟や集団訴訟的な紛争以外で意見交換ができなかっただけではないだろうか。原告がネットで議論されることを嫌がるのであれば、対審の公開の趣旨をどう考えているのか、一度伺ってみたい。
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