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準ひきこもり、ってのが居るのか……

Posted on 4月 28th, 2006 in 未分類 by apj

 掲示板経由、はてなダイアリーのエントリより。
 大学では、クラスで何かするといったことを強制されないので、他人と積極的に関わらなくても過ごしていけるから、一見適応してるように見えてその実ライフスタイルが引きこもりである、という話。
 元ネタは「大学生における準ひきこもり行動に関する考察 ―キャンパスの孤立者について―」「かぐや姫症候群に関する考察 ―準ひきこもり行動との関連から―」という、富山国際大学の大学紀要に掲載された論文である。
 まあ、こういう論文を書きたくなる気持ちもわからないでもない。定量的な調査をしたわけではなさそうなので、問題提起のためのものだろう。
 「準」ではなく本当に引きこもり状態になって学校に来なくなる学生への対応をする羽目になっているのが大学教員の現実で、だからといって大学教員はカウンセラーじゃないから何をどこまでアドバイスすればいいかもわからず、学内じゃ教員に対する説明会まで行われている。ところが、それだけじゃ済まなくて、一見問題なさそうな学生も実は……というのが大学紀要の内容だろうけど、問題提起されても教員の側から対応するのは難しいだろうなぁ。
 「地方私大教員が就職率の悪さを学生に転嫁するために考え出した新しいレッテル」などという見当外れを堂々と書いている自称院生も居るが、認識不足だろう。責任を学生に転嫁したって、就職率の数字は改善しないわけで、誰の得にもならない。
 ただ、この問題が事実であったとして、かつ広く認識されるならば、「準ひきこもり」の状態でも大学に出てきているのだから、仲間と一緒にやらないとできない課題を準備するといった対策は可能だろう。誰にでも有効ではないだろうが、人付き合いの練習のきっかけ程度にはなるかもしれない。あるいは、医学部のように、仲間の輪に入って試験対策をしない限り脱落するカリキュラムを用意して選別することで、見かけの就職率を上げるという手もある。この場合は、就職率が改善するかわりに、留年と退学の率が上がるかもしれないが。

 


ここからは旧ブログのコメントです。


by 酔うぞ at 2006-04-13 20:11:13
Re:準ひきこもり、ってのが居るのか……

高校生を相手にキャリアー教育の一部ということでしゃべっていますが、行った先の学校の進学状況に応じて内容を切り替える必要があります。

こと職についてだと、高卒で就職する生徒圧倒的に少数ですが、専門校に進む生徒にとっては学校選びは職業の選択そのものです。
これが、大学・短大など「学業」を選択した生徒は「職業選択には時間的余裕がある」となっちゃいます。

高校生にハッパを掛けるとしても「大学で十分に検討しろ」というのか「半年後には職業を決めることになる」ではまるで違う話をせざるを得ません。

その一方で、これは本当にロクでも無いと思うのですが、学校の成績が中低位の学校で先生に意気込みがある学校では「成績は無理しても生徒がやらないが、社会人として挨拶など出来るように鍛えよう」といった感じで社会人講師を受け入れたりして、学科以外の勉強をさせています。

これが、下手に学業成績が良い学校では「生徒は放っておいても勉強する」から先生が何もしない、という例があります。
生徒は確かに勉強はするのだけど、社会との関わりについてはかえってダメだったりする。

私立学校に人気があるのも、学業以外の成績について期待している父兄が多いようで、結果として高校では学校間の総合的な違いは大きいと思いますね。
そしてそのまま大学に進んで「大人だから」と突然放り出されるどっちに向かって何をして良いのか分からない、ということになるのも無理はないか?
なんて感じます。


by R/Bの残党A at 2006-04-49 20:34:49
Re:準ひきこもり、ってのが居るのか……

社会に出て働くという状況では一般に必要とされるのですが、特に、会社という組織で働く場合は、同僚や他の部門の人たちと協力するということが絶対的に求められます。稟議書という会社のシステムがそれを物語っています。他人と関わりたくないという人が居ると仕事の効率が落ちて迷惑ということになるので会社の採用面接では協調性・コミュニケーション能力が特に重視されたりします。

こういう社会性は中学・高校の友人の輪で養われているはずですが、クラスメートが固定され自由に友人を選べない中学・高校ではとっかかりとなる「相性の良い人」が見つからず孤立することもあるように思います。大学にはいろいろな人が居ますから、中学・高校で友人ができなかった人も、友人作りに成功する可能性も高いと思うのです。しかし、中学・高校で孤立していた人は自ら進んで友人作りをするということに不得手でしょう。つきあいが苦手な人はクラブに入ろうとしないでしょうし、瞬く間にできていく仲良し小グループとも交われないでしょう。ですから大学の方である程度、きっかけを提供しないといけないわけです。1年次、入学直後が重要で、オリエンテーション合宿や1年生ゼミはそこに意味があると言えそうです。最近はぽつんとひとりで(連れと連れ立ってでなく)大講義を受講する学生が増えているように感じますが講義をする側も受講生同士が触れ合うような機会を作る必要があるのかも知れません。(友人作りには、マージャンを覚えるのが手っ取り早かったのですが、最近はパチンコ・パチスロがありますし、マージャンもテレビゲームで1人で遊べますもんね。)

大学で友人を作ること、それは就職の成否を占ううえでも相当大きい条件なわけで、そのことは準ひきこもりと呼ばれる人にも認識してもらわねばなりません。人と付き合うことは生きる上で大事なことであると。そういう人は会社に就職することはあきらめておられて別の生き方を考えておられるのかもしれませんが、人と付き合わずに、生活の糧を手に入れるのは難しそうです。(原資があればPC相手に株取引とか、特許を取ってライセンスで飯を食うとか、手が無いわけはないでしょうけど。)


by A-WING at 2006-04-52 22:18:52
Re:準ひきこもり、ってのが居るのか……

オンラインRPGでは,すでに広く認識されている問題です。
GMとしては,人とのつながりを楽しんでもらいたくて,パーティーを組んで解決するタイプのイベントを仕掛けたいのですが,一人でドラゴンを倒したいというシングルプレイヤーもいて,結果シングル優先のルールになり,オンラインである意味が無くなる,という現象がおきています。
オンラインRPGを作っている会社の,コミュニティ担当の人などに話を聞いてみるのも,あるいみ産学連携かと。


by zorori at 2006-04-36 22:22:36
Re:準ひきこもり、ってのが居るのか……

立派な研究なのかも知れませんが、読みもしないで無責任な感想を申し上げます。

わざわざ「準引きこもり」なる言葉と概念を提唱しているということは、それが問題を起こしているからでしょう。つまり、大学時代は一見普通に見えても、社会人になって問題を起こす事例がふえているとか。しかし、それを言うためには、定量的な調査が必要なはずですが、それが無いという点にまず疑問を感じます。

次に、仮面うつ病などの例はありますが、外見上正常な人を病気などと、診断するのは慎重にすべきと感じます。これを安易に行うと恐ろしい結果を引き起こすことは言うまでもないでしょう。

それに、心理的な事柄については、医学的な根拠もなく、社会学的あるいは文化的判断であれこれ言ってほしくありません。特に、とりあえず正常に適応している人間を予防的にどうにかしようというのは注意しないと危険です。

また、完全な引きこもりではなくても、何らかの兆候があるわけでしょうから、それは引きこもり行動の前触れだと言えばすむと思います。わざわざ新しい言葉を発明する必要性がどこにあるのか疑問です。実態は無くても、ネーミングだけで世間の話題になっている事例は沢山あります。

最後に、正常と異常は白黒が付けられるものではなく、グレーゾーンが当然あります。この灰色部分にやたらと命名して黒に押し込める傾向を感じます。
灰色人間の私なぞは余計なお世話と言いたい。
社会的に影響のある研究の発表は新たな差別現象を引き起こさないよう十分慎重に願いたいです。

この研究は社会的に意義のある研究で、上に述べたことがすべて的外れであれば、大変結構なことです。


by apj at 2006-04-28 23:48:28
Re:準ひきこもり、ってのが居るのか……

>一人でドラゴンを倒したいというシングルプレイヤー
 攻殻機動隊みたいに、人と組むのではなくタチコマと組むならOKなのか、とふと思った^^;)。
  でもまあ、一人で勝負したいのなら、何もオンラインでやる必要はないですよね。PS2の非ネットワークなゲームでもやっていればいいわけで。
 そもそもゲームをするのって、人とつながりたくてするのかなぁ。作品世界を楽しみたくてというのが目的なら、他人の存在は不要だし……。


by apj at 2006-04-38 00:08:38
Re:準ひきこもり、ってのが居るのか……

zororiさん、

 私も、一人で居る方が快適に感じるので、最近の大学がやってることは大きなお世話だと思います。自分が学生をするとしたら、学生を放し飼いにしておいてくれない大学なんて魅力が全く無いです。というかそんな大学には絶対に行かないと思う。特に、ウチの大学じゃ親に成績表を送るなんてことまで始めてるわけで、成人までは仕方がないとしても、それ以降は親なんか関係ないだろうと……。教員やってて言うのもなんですが、私なら絶対に山形大学には進学しません。もっと学生を放っておいてくれる制度になっていて、成績も自己責任にしてくれる大学を選びますよ。

 社会性なんて無くたって生きていけると今でも思っています。まあ、この場合の「社会性」とは、無理矢理グループで作業することを押しつける小学校の頃の指導とか、ある年齢以上ではいつもグループでつるんでいるのが当たり前な女子生徒の文化などを意味するんですけどね。大学では何人かの先生と仲良くなって、研究の話をきいたり、いろいろでした。サークルにも入って、コンピュータ相手にあれこれやってたし。ただ、これも自分で勝手にやったことで、お仕着せじゃないんですよね。

 最近では、大学に来なくなる学生が増えると、指導に問題があるとか、大学のサービスが悪いとかケアがなってないとか言われることも事実なので、教員の立場としては対策せざるを得ないわけです。一般の大学教員は医者ではないので、診断や治療という話は問題外でしょう。問題が起きたらプロに相談することをそれとなく勧める、という程度のことしかできません。


by zorori at 2006-04-27 00:46:27
Re:準ひきこもり、ってのが居るのか……

apjさん、

以前にも同じような感想を書いたような気がしますが、今の大学の先生は昔は無かった仕事が増えて大変ですね。お疲れさまです。
ネット上でしか知らないのですが、それだけでも、apjさんのバイタリティーには敬服しております。


by (ぱ) at 2006-04-29 22:32:29
Re:準ひきこもり、ってのが居るのか……

 どこにだって人付き合いの苦手な人というのはいるもので、就職してたって飲み会とかには全然出ない奴もいますが、私は特に重大な問題だとは思いません。稀に「まったく電話に出ない人」とかもいるそうで、こうなってくると社会人としてはまずかるう、と思いますが。
 要は程度問題であるわけですが、「大学出たら就職しなければならない」という価値観の元では、就職活動ができない学生は問題だということになるのでしょう。が、元論文では、数年前のたったひとりの学生を例に挙げ、しかも

| 確かに、性格的に就職活動やその後に続く職場生活は
| 苦手だろうとは思っていたが、このように全く就職活動を
| しないという方法で対処するとは思ってもみないことで
| あった。

 「思ってもみないことであった」と。つまりかなり珍しいケースだと。
 なんでそれが「大学教員なら誰もがその存在を知ってい」て、「10 人に1人というほど高率ではないが20 人に1人というほど低率でもない」などと言えるのか。
 問題提起だとしても、あまりに杜撰すぎて読むに値しないと私は思うんですが。


by chem@u at 2006-05-02 07:07:02
Re:準ひきこもり、ってのが居るのか……

割合はともかくとして、教員としては私も思い当たる節はあります。
科学論文として見れば問題ありでも、分析法になるほどね、って思える部分があるので、仮説・問題提起としては有意義かな、と。
現状分析ができれば、対処法も考えられますし、ボスに話題を出してコミュニケーションの大切さを再認識しあったしだい。

自分の指導学生をマイナスのネタにしてしまうことについては、モラル的にどうかと思いますが。


by zorori at 2006-05-25 21:22:25
Re:準ひきこもり、ってのが居るのか……

件の「考察」を読んでみました。私の前のコメントは過剰反応気味でしたね。早めに引きこもりに気づきましょうという注意喚起と思えば、別に目クジラ立てるほどのことではありませんでした。

といいつつ、またけなします。問題の学生の性格は「引きこもり性格」といえばすむ話ですね。単に大学では社会性が無くても生活できるので、「引きこもり行動」が現れていないだけのこと。出社拒否は会社勤めしなければ顕在化しようが無い。でも学生時代から性格上の問題はあるはず。それを「準出社拒否」と名付けているようで、ネーミングも変。「引きこもり性格」で十分でしょう。別に新しい発見があったわけでもなんでもない。

「かぐや姫」の方はほとんどお遊び、論文の水増しという印象でした。

昔話といえば、精神的な問題ありの人間を、昔は神格化する考えがあったようですね。標準規格外れに対して、昔の方が優しくて度量が広かったのかもしれません。いや、神様扱いはひどい差別だったのかも知れませんが。生活に余裕が無ければ、早々に天上にお帰り頂いたかもしれませんし。でも余裕があれば、無理に矯正せずに面倒みていたとすれば、そういう社会の方が私の好みです。脱線しすぎました。


by みずいろ。 at 2006-05-14 01:52:14
Re:準ひきこもり、ってのが居るのか……

 10年ほど前、引きこもりやってました。学部卒後院進したのですが、実験成果(生物系)を出せない、どころか基礎技術習得の段階で躓いたうえ、理論を極めようにも頭がついてゆかず、結局学校に行かなくなり、そのままやめてしまいました。
 でも結果的にやめてよかったと思っています。あのまま続けていたら精神を病んでいたでしょうから。むしろ、退学を決めるまでに1年もかけてしまったことを後悔しているくらいです。

 今は引きこもり解消策を大学側でとるようになっているのですね。隔世の感があります。「研究者としての適性があるのに人付き合いができない人」が少しでも救済されればと思いますが、逆に、当時の私のような適性を欠く人間には早々と引導を渡すような考え方も必要でしょうね。


by Tama at 2006-05-50 00:02:50
Re:準ひきこもり、ってのが居るのか……

どうも、大学以外で憶えることというのが考慮されていない気がしますね。大学に限った話じゃないと思うのですが、教育関係の議論を見ると、全てを学校内でフォローしようとして無理が生じていると感じる事が多いです。

私も人付き合いは苦手な方だと自覚してますが、生きていくのに必要なレベルの社会性って、バイトとかでいつの間にか身に付いていた気が・・・一応「苦学生」のレベルだったからなぁ(留年してからの授業料分は自分で稼いでいた)。
定常バイトは授業料と食費で消えるので、遊びに行く時とかは臨時で日雇いに行ってました。どこでも親方以外に「ヌシ」がいて、挨拶の仕方とか待合室で教えてもらったり。

あー、でもこれってすでに人付き合いが出来ていることになるのか。この前段階はどこで身に付いたんだろう・・・
入学時からグループが出来るため、留年モノは孤立しやすかったですけど、それでもノートはどこからか手に入れていたな。やっぱりもっと前からある程度は身に付いていたのか。


by 林弘美 at 2006-10-27 00:15:27
Re:準ひきこもり、ってのが居るのか……

ちなみにこんな本が先日発売されました。
準ひきこ森―人はなぜ孤立するのか―,樋口康彦著,講談社プラスα新書


by apj at 2006-10-43 23:41:43
Re:準ひきこもり、ってのが居るのか……

林弘美さん、
 おっしゃる本、先日平積みになっているのを本屋で目撃しました。その時は他に買う物があったので買いませんでした。
 紀要よりは進んだ内容、あるいはかみくだいた内容になっているのでしょうかねぇ。


by 林弘美 at 2006-10-10 22:08:10
Re:準ひきこもり、ってのが居るのか……

・・・・・・と言うか,書いてあることはもっともなことで特に異論はないのですが,「なにもそこまで言うことはないのでは?」といった感想を持ちました。
教養新書でこんな内容の物は今まで読んだことがありません。まじめにふざけている,あるいはまじめを装った狂気,といった感じでしょうかね。
筆者が危ない人と言うより,読者の気を引くための計算だとは思いますが・・・・・・・。


by 天然 at 2007-05-14 18:51:14
Re:準ひきこもり、ってのが居るのか……

 準引きこもりは、おそらく「引きこもり」はヤバいと気づいているから引きこもりにはならない、けれどそれで大丈夫だと思い込んでしまっていて、実は社会で求められる社会性のレベルには達していない人達なのだと思います。だから、そういった人たちに「今のままじゃヤバいよ」と注意を喚起するために、あえて準引きこもりとネーミングをして社会的に認識することは意義があると思います。

 「正常な人」というのは、「異常でない人」として考えているのではないでしょうか?例えば自分が「健康」であるかどうかを皆さんはどうやって判断しますか?多くの人は「病気にかかっていない」ことを判断基準に挙げると思います。同様な論理で、社会的に見て「正常な人」というのは「オタク」でもなく「引きこもり」でもない、といった風にして判断すると思います。準引きこもりは自分が「異常」になるのを避けたいと思うから「引きこもり」にはならないのでしょうから、準引きこもりが「異常」だということになれば、社会性の向上のために行動する動機が生ずるため、一部の準引きこもり達の社会性のレベルは向上すると思います。こういった意味では、準引きこもりとネーミングすることは無意味ではない思います。

 異性愛者には「同性愛者」や「トランスジェンダー」の方を同一視したがるかもしれませんが、本人達は明らかに違うものとして認識しています。同様に「正常」な人には「引きこもり」も「準引きこもり」も似たようなものと感じるかもしれませんが、本人達は違うものと認識しています。「正常」な人には無意味な区別と感じるかもしれませんが、少数派の人たちを一括りにして捉えるのではなく、少数派の中でもいろんなタイプがあるんだ、と理解を示してもらえると嬉しいかなと思います。


by    at 2007-11-45 12:25:45
Re:準ひきこもり、ってのが居るのか……

この論文は稚拙でまったく信憑性が掛けている上に読者の気を引くために過激なことを言ってる!って言ってる人がいるようだけどこの論文ってすごく的を射てないか?自分がそうだからってこの論文攻撃して自分を正当化してるようにしか聞こえないよねそういうのって^^;そういうところがそうなっちゃった原因でもありそうだねwww


by apj at 2007-11-37 07:17:37
Re:準ひきこもり、ってのが居るのか……

投稿者の名前欄がひきこもってますよ^^