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補習2回目

Posted on 5月 23rd, 2006 in 未分類 by apj

 高校で数学IIIをやってない人向けの補習を5コマ目にやっている。今日が2回目で、終わった後学生さんと少し話をした。
 通っていた高校が進学校ではなかったので、理科は化学のみで物理も生物もやってない、数学III, Cもやってない。高2から理系文系の振り分けがあって、理系に行くと古文・漢文が全く履修できない。仕方がないからセンター試験対策で予備校に通って短期間でフォローして受験した、という話だった。
 そのくせ、高校の先生は「大学に受かれば後のことは知らない」「受験に出ないからやらなくていい」と履修内容を削りまくっている模様。

 ゆとりが最初におおっぴらに始まったのは丙午の私の代からなんだが(それまでになかった「ゆとりの時間」が導入されたりした)、それでも、高校でのコース分けは3年になってからで、古文だって文系より時間が少ないだけで3年でもやっていた。社会科は、政治経済、地理、世界史、日本史と全内容をやったし、理科は、物理化学は全部、生物地学も高校の内容の半分程度は終えた。数学も、全内容を終えた。公立の進学校だったので、数学については大学入試の問題をやる演習の時間まであった。
 まあ、使わない知識は忘れるから、今では、古文漢文は現役高校生より情けないことになってるし、生物や地学もダメダメだが、もう一回手を出そうと思ったときの敷居が相当低くなっていることは確かである。
 今は高校でやる内容が様変わりして、減らされまくっているので、自分が高校生の時のことを考えてカリキュラムを作ってもどうもにならない。人材しかいない資源のない日本でカリキュラムをがたがたにするなんて、文部科学省は一体何を考えているのか。

 受験だけ考えて履修内容を減らしたら、せっかく大学に入っても進級できずに留年、最悪では進路変更を余儀なくされたりして、学生が悲惨なことになるだけである。大学も大学で、教養部を解体したのなら、大学受験の方を全科目受験にして、全分野にわたるそこそこの知識の水準を確保しないとまずいのだが……。実際には、少子化で受験生を集めるために負担を減らす方向、つまり受験科目を減らす方向に向かっている。

 なお、この2週間は数IIIをやっていて、今週から行列とベクトルの話で数Cの範囲から始める。自分がやっていた受験勉強が今頃になって教えるのに役立つとは思わなかった。というか大学の教員になってから役立つとは思っていなかったよ……。


ここからは旧ブログのコメントです。


by 酔うぞ at 2006-05-53 18:54:53
Re:補習2回目

社会人講師で高校生に講習していると、社会人になるということは「世の中には答えが事前に分かっている問題は無い」とか「社会での課題には出題範囲は無い」といった「ワケの分からない大人の世界にようこそ」という面をどこかで教えないといけないのだと思うのです。

それが、昔に比べるとずいぶんと単純化してしまって、その分が全体として妙に細かいことを気にしている、といった印象を受けますね。

学校も生徒(学生)が全体として減ってきているから、特に卯高校は事実上の全入なのだけど、断固として「我が校は全入です」とは言わない。

どうにもこうにも、タテマエ主義で本音無しといった感じで、生徒もそれを感じているから学校や高校生活そのものをバカにしているというかサメた目で見ている。

試験の公平を強調しすぎているのではないかねぇ?


by がじら at 2006-05-41 08:06:41
Re:補習2回目

私は専門学校時代にバイトで電気部品の組み立てをしていたのですけど、そこの親父さんと十年位前に話したときに某大手通信会社の社長か会長と話をした時の事を話してくれたんです。
「理系で電気関係の学科から入社した新人がオームの法則もフレミングの法則も分かってないんだ。会社で教育しなきゃいけないんじゃ即戦力にならない。」
と言っていたそうです。
私だって分かってる事を専門に勉強した大学生が分かって無いなんてちょっと信じられなかったのですが、その頃もう影響がでいたんでしょうね。
本当に人的資源しかない国でその価値を落とすようなことしてどうなるんでしょかね。

ちなみにバイト先の親父さん。戦争中にレーダー技師をしていて、高周波アナログでは結構すごい方でして、まだ現役。
あんなふうに年とれたら最高だなと思っています。


by apj at 2006-05-57 11:05:57
Re:補習2回目

ヘタな大学卒を雇うよりは、高専卒を雇った方がよっぽど即戦力になるんじゃないですかね。何年か前、高専で非常勤していた時は、地方大学の工学部の先生が、高専にやってきて、就職状況の良さを見て心底うらやみ、余ってる人材募集情報があったらウチに回してほしいと言っていた、なんて話をきいたり。
 にもかかわらず、変な劣等感を植え付けられている高専生がいたりするんですね。世間から高専生はレベルが低いと思われてる、ってしょげてたりする。「ゆとり骨抜き教育改革のとばっちりを免れて、得意技を活かす方向で訓練しているんだから、引け目を感じることなんかない。普通化の高校よりはずっと進んだことをやってるし、大学よりも現場で使えることをやっている」って励ましましたけどね。
 ただ、中学卒で進路を固めてしまうことになるので、文系の人や、普通科でモラトリアム期間が必要な人にとっては、何をしにきたかわからんということになり、高専は合わないです。が、そうでない人にとっては、バイトも自由にできるし、周りに結構働いてる人がいたりするんで、普通に高校生するよりはずっと社会に近いところで生活できるし、専門的な技術も身に付きますからね。


by がじら at 2006-05-47 08:56:47
Re:補習2回目

高専については私もそう思いますね。
本当に技術屋になりたい人にとってはすぐに現場で役立つ技術を身に付ける良いところだと思います。
劣等感も、NHKのロボコンなんかですごいイメージアップになって高専の見方が変わってきていると思うので、近いうちに無くなるのではないでしょうか。
まあ、ロボコンで赤い人型ロボットを出せば一発で変わるでしょう。(違っ)

ちょっと真面目に思っているのは、バイト先の親父さんと知り合ったりして、技術の基礎というか根っこの部分を本当に分かっていて、なおかつ十分な経験を積めるような本当の技術者が今後どのくらいいるのだろうかという点です。
新しい技術も基礎があったからこそであり、そこからの積み重ねで出来たものと思っていますし、昔からの技術屋さんの経験から導き出したノウハウを失わないうちに次に伝えるようにしなければ、本当に技術立国でなくなってしまうのではないでしょうか。
う~ん、言いたい事が上手くまとまらない。(汗)


by nomad at 2006-05-18 07:39:18
Re:補習2回目

高専って、今じゃイメージ悪いんですか。
昭和30年代生まれの浜松出身の俺は、高専っていうとステキな所というイメージがあるですが。
関東では工業系の学校の偏差値が低く、尊敬もされないことに驚いたことがあります。浜工(「帯をギュッとね」河合克敏)なんかは良い学校なんですけどねえ。


by apj at 2006-05-35 11:18:35
Re:補習2回目

 多分、東京という土地柄のせいじゃないか、と、航空高専の常勤の先生と話していました。実学を重んじる関西ではとてもステイタスが高いんだけど、官僚養成学校の東大を尊ぶ風潮のある東京では、実学が低く見られがちなのでは、ということです。


by 271828 at 2006-05-29 18:48:29
Re:補習2回目

私は某高専の後援会長(PTA会長のようなもの)です。倅は目出度く国立大工学部の3年次に編入しましたが、来月の総会までちょっと任期が残っています。
さて倅の通った高専はやや異常かも知れませんが、産業界の即戦力であることを否定して進学校に変身しました。倅のクラスで就職したのは3名、去年はたった一名です。学年全体の進学率は90%に迫ります。
実質的に進学校とはいえ、一年から実習(旋盤・製図など)で鍛えられていて、普通高校に比較して進級が厳しいので学部ではまさに「即戦力」といえましょう。学生数が減少傾向にありますので大学関係者の方々は高専からの編入生を多数受け入れて欲しいと願っています。
また学校の追跡調査によると卒業生のほぼ半数は大学院に進学しています。


by apj at 2006-05-54 10:11:54
Re:補習2回目

 多分、高専で行われる適性による選別の方が、普通の高校や大学の試験による選別よりも厳しいし確かなんじゃないかと思います。大量のレポートや実習に追われるわけですから、分野に合ってない人は脱落して進路変更しますので……。
 即戦力目的の訓練をしてから、理論面をもうちょっと、ということで大学に行くのだとしたら、普通科→大学と進んだ人たちよりも強いでしょうね。
 私が高専で教えていたのはもう何年も前ですが、そのとき、高専が大学を作ったりしてさらに専門性を上げる方に進んでいるという話をきいていました。力のある高専は、大学や大学院を作って、さらに専門性の高い人材を養成するようになったのでしょう。
 私の母校のお茶の水大は、物理学科に高専からの三年次編入を受け入れていました。ただ、工学部ではなく理学部の物理だと、予備知識の面でやはり準備時間が足りなくなるようで、1年留年していい成績で出る、というパターンになったりするようです。山形はやってたかな。工学部はやってそうですが、ウチの学科では話題になっていません。
#私のところの初代卒業生が一人、鶴岡高専に技官で就職しましたケド……。