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魂の力学

Posted on 6月 2nd, 2006 in 倉庫 by apj

 元ネタはロゲルギスト・エッセイ「物理の散歩道」。
 科学リテラシーの講義で出た学生からの質問に「死ぬと体重が軽くなるって本当ですか」という質問があった。一応、「水分が抜ければ軽くなるかも」とまじめな方の答えを出したが、多分これは学生の期待には反するだろう。
 ということで、「死んだら魂が抜けて軽くなる」というオカルトネタを物理でモデル化するとどうなるかということを簡単に説明してみた。
1)天国モデル
 見えない糸で見えないヘリウムを入れた風船のようなものつながっているモデルで、死ぬと糸が切れて風船は空へ上がっていく。この場合は、生きている間は浮力で常に上向きに引っ張られているから、死んだ瞬間に体重は増えることになる。
2)地獄モデル
 見えない糸で見えないおもりがぶら下がっているモデル。この場合は、死んで糸が切れたらおもりが地面に転がり落ちて、体重は軽くなる。
 十分広い器で受けると、転がり落ちた衝撃が観測できるかもしれない。
ただし、地面に落ちるというのは、その後泥にまみれるとか苔むすとか、落ちた衝撃で割れるとか誰かに踏まれたり蹴飛ばされたりするという光景が容易に想像できるので、これが魂の行く末だとするとかなり情けなく、オカルト的に考えてもまったくありがたくもうれしくもない。
 ここまでしか話さなかったが、
3)消滅モデル
 本当に魂の質量が消滅するモデル。巷のオカルトネタに登場する消滅量って、確か数十グラム程度だったはずだが、問題は欠損分の質量はE=mc^2でエネルギーに化けることにあり、これでは人一人死ぬ度にエラいことになる。
 なんてのもありそうだ。
 まあともかく、まともな検証測定が出てこなくて、減るらしいという話だけが一人歩きしてるなら、それはただの都市伝説かオカルト話だよ、ということで。