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どうせランキングするなら……

Posted on 6月 16th, 2006 in 倉庫 by apj

 chem@uさんのところで出ていた、大学の偏差値ランキングの話題について。
 入試を受ける側にとっては、偏差値ランキングが有効でしょうが、入ってからのことを考えるなら、もっと別のランキングをどんどんやって公表してほしい。特にやってほしいのが
・教員一人当たりの研究費(校費)の額
・学生・院生一人当たりの教育予算
 大学が、教育と研究を重視してるかどうかの判断は、これらの金額のランキングで判断するのが有効である。毎年、3%の効率化ということで予算が減らされているが、下に降りてくる校費の減額割合はこんなものではない。この10倍である。5年前までは年間90万円程度の予算が教員一人当たりについていたらしいが、今年の理学部の教員一人当たりの校費は34万円となった。この中から、たとえば、担当している教養教育で配布するプリントのコピー代なども全部支払うことになる。
 学生一人当たりは、もっとあり得ない金額となっている。4年生の場合は一人引き受けても数千円程度で、実験で使う試薬代にもならない。せいぜい卒業論文のコピー代といった程度か。博士前期課程一人でも、一万数千円程度、さすがに博士後期課程だと年間10-15万円ほどだが、国内学会発表の旅費を出したら、あとは安い試薬が返る程度である。
 ぜひこの金額の大学別ランキングを作って欲しい。代ゼミより日経新聞あたりがやってくれるとなおいい。大学が、どれだけの費用を学生の養成にかけているかで、学生にとっての環境の善し悪しが決まる。偏差値よりずっと役立つランキングだと思うが、どうだろう?

もっとGoogle八分について教えよう

Posted on 6月 15th, 2006 in 倉庫 by apj

 最近、私の知り合いのサイトのいくつかが、Google八分にされている。Google八分とは、Googleで検索したときにリストに出ないように削除されることである。つい最近も、平和新軍観察会のサイトがGoogle 八分された。
 Google八分をしかけてきたのは、民事で係争中の 「ラーメン花月・平和神軍事件」の一方当事者、グロービートジャパンという会社と考えられる(他に利害関係者はいない)。

 Googleという会社の基本姿勢は、「個人の主張と企業の主張では、企業の言いなりになる」というものである。私が知る限り、Google八分にされているのは、「特定企業を批判している個人のサイト」であった。サーチエンジンの順位をアルゴリズムで決めているというのは実は正しくなく、恣意的に見えなくするいうことが陰で行われている。問題は、誰かの権利の侵害をしているといえないサイトでも、Googleの独断と偏見で一方的に見えなくされてしまうということである。つまり、訴訟で係争中ということは、判決が出るまでどちらの言い分が正しいかわからないわけで、結果次第では、権利侵害など無かったということもあり得る。だが、それを待たずにGoogleは検索結果を操作した。

 Googleだって私企業だから、何をどうしようがGoogleの勝手ではある。そのかわり、「Googleの検索結果からはある特定企業にとって都合の悪い情報があらかじめ削除されている可能性がある」ことを意識して使わないと、検索結果に騙されることになる。

 教養教育では「科学リテラシー」というタイトルで講義しており、学生にはレポート課題として、「科学的にみて怪しい宣伝を選んで、何が怪しいか、どうすれば検証できるか議論せよ」といったものを与えている。毎回、ネットから情報を拾ってくる学生が多数いる。レポートは、学生が自分で考えて書くことになっているから、検索したとき批判サイトが出てこなくてもかまわない。その場合でも、Google八分の存在については教えておく必要がある。
 私は、高等教育の目的の一つは「王様は裸だ」と言える人材を養成することだと考えている。調べ学習なんかで教えられる「ネットは便利だからどんどん使いましょう」だけではだめである。大学まで来たのならはやっぱり、「一見中立に見える情報が実はゆがめられている可能性を意識しながら使う」ことが出来ないとまずい。情報リテラシーに関連する講義をしている先生方には、ぜひ、Google八分についてもきちんと教えていただきたい。

 ユーザーがとれる消極的な方法としては、複数のサーチエンジンを使うこと、もっと言うなら、複数のサーチエンジンが存続できるような使い方をしていくことが大事だろう。何でもかんでもGoogleに頼っていてはいけない。一極集中が弊害をもたらすのは、サーチエンジンの場合にもあてはまる。
 もう一つの方法は、Google八分されたサイトだけを登録する検索サイトを有志で立ち上げるというものになる。「Googleに引っかかるサイトの数>>(越えられない壁)>>八分されたサイトの数」は今後も成り立つだろうから、Googleの向こうを張って設備を増やす必要はない。ただし、Google八分を仕組むような企業はろくでもない悪徳企業であることが予想されるので、そういうサイトを作れば当然圧力はかけられるだろうから、脅しに屈しないだけの理論武装と対抗手段を持たなければならない。従来のマスコミによる情報伝達ルートを併用して、サイトの存在や活動を宣伝するといったことも必要になるだろう。

さて、ポテンシャルをどう教えるか……

Posted on 6月 14th, 2006 in 倉庫 by apj

 学生実験が18時頃に終わって、そのあと明日の講義の用意をしていたら日が変わって1時回ってしまった。高校物理をやってないウチの学科の1年生に物理を教えるわけだが……。指導要領の制約がない&高校物理の公式暗記型は見通しが悪くてやってられない、ということで、駿台文庫の物理入門など見ながら、最初から微積分使いまくりで導入することにした。
 位置、速度、加速度が時間微分で導けるというのと、運動方程式と作用・反作用の法則をやって、力積と運動量の変化、運動エネルギーと仕事まで、可能な限り3次元(ベクトル表記)でまとめた。前半で微積分も微分方程式もやってあるので、復習することにもなる。
 何とか明日の分はまとめたが、次回やるはずのポテンシャルの話をどう持っていくとすっきりするか思案中。仕事を先に定義したから、保存力を説明してポテンシャルの話につなげばいいのか……。「理工系物理学」など引っ張り出して眺めてみたり(でもこの本、アマゾンでも表紙や著者の氏名が登録されていない。著者は鐸木康孝氏だと思うんだけど、手元の本にはISBNが振ってないorz。見通しよく書かれているけど、最初に独学で読んで味わえるかというとちょっと疑問だ)。

また名探偵原理w?

Posted on 6月 13th, 2006 in 倉庫 by apj

 午後から学生実験を見ていたら、実験で使う寒剤の塩化ナトリウムが足りなくなりそうだったので、出入りの業者に急遽電話して、学生実験中であることも伝えて配達してもらった。実験室前で品物を受け取ったら、ちょっとこれを見てください、と印刷物を手渡された。
 一体何かと思って見てみたら、内容は怪しげな磁気活水器の宣伝。錆を取るというふれこみだが、説明の方では水を変えるとなっている。水が反磁性体で磁場の影響はほとんど受けず、磁場の影響が後に残ることもないことを、まずは説明した。よく宣伝の中身を見ると、鉄管の外に永久磁石を置くタイプ。ここで、磁気回路について説明し、磁束の殆どは鉄の部分を通るから、内部の水には届かないということも説明し、全体として業者の説明が怪しいことをわかってもらった。何でも、知り合いのおばあさんの家に「取り付けられてしまった」らしい。またドッカのインチキ企業が、年寄りの無知につけ込んで強引な営業をしたらしい。

 その上、シンクロニシティかっていうタイミングで、伊藤園のエンジニアの方が、日本流通産業新聞に掲載された水関係製品の特集記事のコピーを送ってくださったのが届いていたりする。こちらも、まともな企業とおかしな宣伝をしている企業がごっちゃになっていて、正直頭が痛い。っていうか、こんなところに同列に並べられたら困るのは、まともな商売をしている会社の方じゃないのか。まあ、業界紙だから読む側もプロを想定しているので、情報の評価は自己責任でやれということなのか。この新聞記事を読んで、どれがニセ科学でどれが本物の科学か、見分けられる企業とそうでない企業が出てくるのだろうなぁ。怪しい方に乗っかる企業も出てくるだろうなあ。業界の自己責任に任せている限り、インチキが無くなることは無さそうである。公取あたりに頑張ってもらうしかないのか。

e-holster

Posted on 6月 12th, 2006 in 倉庫 by apj

 ホルスター型の携帯&PDAケースを愛用しているのだが、買い換え候補が出ているサイトを見つけた。e-HOLSTERというそのまんまな名前のサイト。ケースとベルトを別々に頼んで好きなように組み合わせられるらしい。iPodも一緒に持ち歩きたかったりするので、そろそろ両側に収納できるものを……と探していたのだが、なかなか良さそう。ナイロン製のものもあるので、洗濯もできそうだ(皮製は、夏は臭ったりしがちなので……)。
 まあ、こんなのを手に入れたら、また空港のボディチェックが大変になりそうな気もするが。

ハニーフラッシュ

Posted on 6月 10th, 2006 in 倉庫 by apj

 2006/06/10付けでとりあげた「言葉で核反応」な、高木氏と江本氏のコラボ発表について。
 私は当日会場には行けないので、私のかわりに、
「『ハニーフラッシュ!』と叫んだときに水の中の元素はどうなりますか?」
という質問を物理学会の会場でぶつけてくれる勇者を募集
したい。
#コメントの方では、takuさんが提案してくれたが、やはりこういうことは当人達に会場で言うべきだろう。

 まあそこはそれ、そういうネタなんだろうということで……。誰かやってみて、彼らがどう答えるか、レポートしてくれませんか?多分、この発表に限り、この手の質問をしても、した人の質的な評価には影響は無いことが予想されますし。

また九大か……

Posted on 6月 9th, 2006 in 倉庫 by apj

 阪大のながぴいさんからの情報。
 日本物理学会2006年秋季大会(9月20日(水)―23日(土)、奈良女子大学)で以下のような発表があるらしい。

言葉が水の氷結状態と水中元素濃度に及ぼす影響
(九大院工)高尾征治・○川添淳一・(アイエイチエム)江本勝・
(ホワイトマックス)増本勝久・(IHMテック)里中耕也・(サロンドジャン)石田静子
<申し込み要旨>江本は独自の水の氷結技術を開発し、水の氷結状態が言葉の影響を受けて多様に変化することを示した。ここでは、それに対応して水中に微量含まれる元素濃度がどのように変わるかを調べてみた。その結果、「ありがとう」、「ばかやろう」の日本語だけでなく「Thank you」,「You fool」の英語でもカルシウム元素が同じパターンで変化することがわかった。

 秋は分科会で、物性関係の会場は千葉大のはずだが、彼らは実験核物理で登録したらしい。まあ、日本物理学会といえば、その昔、清家新一氏がUFOの飛行原理について発表したこともある由緒正しいwトコロなので、今更何が発表されたって驚かないが……。しかし、水の結晶成長なのに何故物性ではなく核物理?と思ったのだけど、「水中に微量含まれる元素濃度」が変わるという主張なら、元素変換だから核反応か……orz。彼らはどうやら『ありがとう』の声かけ実験で、核反応を引き起こす境地に到達したらしい。常温核融合の斜め上を行ってるな^^;)。

 水関連で九州大学というと、日本トリムと組んでる活性水素説の白畑教授が有名だが、今度は言葉で核反応という、もっとアレなネタが出てきたということか。
 9月末は直前までプラハのNCMに参加しているので、日程的に核物理を覗きに行くのは無理だし、自分の物性の発表だって自分でできるかどうか危ぶまれて居るんだよなあ……、残念。

講義ネタなど

Posted on 6月 8th, 2006 in 倉庫 by apj

 科学リテラシー。電気化学(水の電気分解)の話の後、去年の酸素水素暖房器具(怪しいマルチ商法付き?)の爆発事故のネタと、阪大菊地さんの「

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  • 量子ファイナンス工学入門

    Posted on 6月 7th, 2006 in 倉庫 by apj

     トンデモ本大賞を受賞した「量子ファイナンス工学入門」を、注文していたのだが、本日届いた。いやもう素晴らしいw。大まじめに冷静にトンデモないことが書いてある。

    株価を花粉粒子よりもさらに小さい量子に例えるならば、株価は複素数空間にある量子の従う運動原理に支配されていることになる。

     収束の概念の例としてζ関数を持ち出し、ζ(12)の分子に691という数が出てくるもんだから、

    西暦691年に持統天皇が織女星と牽牛星を祭る七夕の宴が開催しているから、691という数字は宇宙に関する数字かもしれない。

    波動関数に従う金融資産が一定の座標(株価チャートと同じである)という部分空間に存在する時、確率測度は確率振幅になり、この座標内のどこかに金融資産の価値が見出される確率振幅は0から1の値をとる。

    古典的な運動をする金融資産の経路は、過去から未来へ進む光円錐の中の一本の矢印として表すことができた。

     何て言うか、書かれている物理学の部分だけを抜き書きするとまともなのに(というか、まともな本から引っ張って来たのだろう)、この著者独自の解釈が加わった部分がことごとくこの調子である。読み進むうちに、「物理学って何?」という疑問が出てくることはなさそうだが、「金融資産って一体?」という気分には浸れる。

     おすすめの一冊だが、著者のトンデモさを堪能するには物理学の素養があった方がより望ましい。ともかく私はこの本を見て、物理学を専門に選んだことが自分の人生において「笑い」を増幅する方向に効いた、という生まれて初めての経験をした。

    終了時刻の記録更新ならず

    Posted on 6月 6th, 2006 in 倉庫 by apj

     学生実験の物理化学セクションが始まった。初回は「ラマン散乱」。GF行列法を用いて、四塩化炭素のラマン散乱スペクトルから力の定数などを見積もったり、振動数の計算をしたりする。SI単位系への変換や関数電卓の使用に慣れていれば1時間もあれば終わるはずである。が、計算の量が多く、指数部分が大きくなる計算がたくさんあるので、一番の落とし穴は「電卓の打ち間違い」。途中計算をノートに細かく書いて、後から検算しやすい状態を保っておかない限り、何回やってもやる度に答えが違ったりして延々時間を費やす羽目になる。簡単だからまあいいだろう、とずぼらをやると、後で数十分のロスになって戻ってくる。
     一昨年は、最後の一人ができたのが22時40分頃。昨年はそれが30分更新されて終わったら23時を過ぎていた。今年は……と思っていたのだが、最後の一人が終わったのが22時前で、今年は記録更新にならなかった。