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シャーベット

Posted on 7月 30th, 2006 in 倉庫 by apj

 しばらく前に買ったシャーベットを食べようと思って蓋を開けてみたら、シャーベット表面にきれいな六角柱の水の結晶が成長していた。某波動な人達なら、きっとこれを見て何か言うんだろうけど、現実はもっと身も蓋もなくて「食べ頃をだいぶ過ぎている」というだけの話。冷凍庫の温度の変動でシャーベットの中の水分が表面に凝結すると同時に、多分内部でも氷の粒の成長が進んでいるはず。

バーベキュー

Posted on 7月 29th, 2006 in 倉庫 by apj

 恒例の、師匠の家のバーベキュー大会に参加。山形の月山ワインと、この間買ったアルフォンソマンゴーの缶詰を持参した。家族全員の知り合いを同じ日に呼ぶというイベントだから、毎年この日にしか会えない人達というのが何人もいるわけで、世間話をしながら、健康で再開できたことを祝う気分になったりする。

 折角東京に出てきたので、池袋のジュンク堂で語学の本やら辞書やらを買い込む。ところで今年から司法試験用六法が、旧試験用と新試験用の2種類になった上、旧試験用の文庫本サイズのが2分冊になった。新試験用のは1冊だが辞書サイズ。線を引いて勉強するのに、余計な情報が無いし持ち運びに便利だから重宝していたのだが、どっちも使いにくくなってしまった。何だか司法制度改革の余波がこんなところにも、って感じ。三省堂のコンサイスの辞書を見習えと小一時間(以下略)。

学生の答案がSFしとります……

Posted on 7月 27th, 2006 in 倉庫 by apj

 化学科のための数学と物理ってことで、基礎化学演習Iという科目名で半期の講義を終えた。本日期末試験で、物理部分を出題した。気体分子運動論で、室温での空気中の酸素分子の平均速度を求めよ、という問題を出した。酸素の分子量をアボガドロ数で割って酸素分子1個の質量を求めるときに、kgに直さずgのまま計算すると、途中から3桁違う値になる。さらに、ボルツマン定数を求めるときと、分子1個の質量を求めるときの両方でアボガドロ数で割り算することになるが、これを片方忘れたりすると、アボガドロ数のオーダーで答えが違ってくる。この失敗をやってくれちゃってる学生さんが何人か居て、酸素分子の平均速度が
・10^20 m/s のオーダーになる
・10^-22 m/s のオーダーになる
の二通りが出てきた。最初の方は、酸素分子の分際で光速を遙かに突破してるし(タキオン粒子かよ……)、後の方は、分子のスケールが10^-10 mであることを考えると、分子1つ分の距離を飛ぶのに三万年ほどかかる(地質学の試験じゃないんだから……)。
 計算を間違えるのは仕方がないとしても、こんなあり得ねぇ値が出た時点でおかしいと気付けよorz。
 とんでもない超光速とか、分子運動がほぼ静止して見えるとか、SFにありそうなガジェットで採点しながら思わずウケたぞ。ひかかった学生は皆さん追試決定なわけだが。

ナノバブルとか水道局とか

Posted on 7月 25th, 2006 in 倉庫 by apj

 水科学と環境問題ワークショップで話をしてきたのだが、今回は、いろいろ収穫があった。

 松本教授(東大工)の気泡を含む水の流体工学の話は、マイクロバブルの話だったが、界面活性剤を微量添加するとバブルの寿命が変わったり気泡が合体しなくなったりするということだった。さらに、ナノサイズの微小バブルを扱うのに、界面活性剤分子が混じった水のMD計算をしながら密度を減らしてバブル(というかむしろ真空か?)を発生させて界面の運動を見るということも行われていた。界面の部分に界面活性剤分子が集まる結果になっていた。
 流体力学というのは方程式を見てもわかる通り、連続体モデルでしかない。fluidというと連続体、liquidというと分子描像が入ってくるんだけど、流体をやってる人がMDを押さえ始めたということが新鮮だった。まあ、MDのあとはメッシュを考えて粗視化して連続体に戻すのだけど。

 産総研の高橋さんは、マイクロバブルとナノバブルの話。守秘義務が絡むらしく、発生技術の細かいことは出していなかった。
 純水でマイクロバブルを発生させると、だんだん小さくなってやがて消えてしまうのだが、塩の入った水溶液でマイクロバブルを作ると、だんだん小さくなって消えたように見える……がどうも長期間残っているらしい、ということ。マイクロバブルについては、コロイド粒子と同様にゼータ電位を測定することができ、バブル表面に電荷が集まったり電気二重層ができているらしいが、これが、塩濃度やpHで変わってくる。塩を入れた溶液中で作ったマイクロバブルを圧壊させるとナノバブルが残るということで、動的光散乱で一応検出できるが、装置が気泡対象ではないし、見ているものが本当に気泡かがまだ怪しい。バブルの径が小さくなるとゼータ電位が急激に上がるということで、バブルの周りに塩の電荷が集まっているとすると、気体の溶解を妨げるために長期間残存するのではないか、という話だった。
 以前、ナノバブル水中で淡水魚と海水魚を飼う話があり、魚の生理食塩水濃度の塩水ならナノバブルと無関係に飼えるのでそっちの効果じゃないかという話だったのだが、どうも、直ぐ死にやすい魚の生存期間が長くなるといった効果があるらしい。
 ナノバブルが存在すると溶存酸素濃度は上がるし、フリーラジカルの発生もあるが、測定法はまだ確立していないということだ。
 ということで、ナノバブル自体は、不均一な界面を持った系として扱わないといけないらしい。溶解速度が遅いだけで気泡は水に溶けているっぽいし、フリーラジカルが出るなら魚の出した老廃物の分解に効いているから水槽の環境が向上したという可能性もある。今後、普通の化学反応として何が起きているかを調べていく必要がありそうだ。ナノバブルの入った水は透明だということで、分光測定は可能だろう。導電率があるから誘電測定には不向きだと思うが……。本当に空間不均一があるなら、(感度の問題だけで)均一な水溶液との違いがどこかに出そうにも思うが……。やってみるかなぁ……。試料を分けてもらえるようお願いしてきたし。
 超音波吸収なんかどうだろう?うまくサイズと共鳴して圧壊が起きると、応答として観測できたりしないのかなあ。

#例の、ランの鉢植えは、花が水の外、茎と葉っぱと根がナノバブル水(食塩水)というものだった。デモとしてはアレだが、次のステップは、ラジカルがどこで効いてるかとか、葉の表面での圧壊の効果がどうなるか、といったものになるんじゃないか。

 東京都水道局の北澤さんは、高度処理水の紹介。通常の処理の間に、オゾン処理+生物活性炭処理をしているという説明だった。オゾンは1万ボルトの高圧で発生させ、酸素濃度が上昇する。(ということは、水の分解が起きて、水素ガスと酸素ガスが発生しているのだろう)。あとは、いかにして臭素酸の発生を抑えるかとか、生物活性炭に微小動物が繁殖しないように洗うかといったノウハウが紹介された。結論としては、水道局はきちんと仕事をし、次に使えそうな処理方法の開発も継続して行っている、ということである。当然のことながら、消費者を脅して浄水器を売りつけるインチキ業者など足許にも及ばない。まあ、安全な水を確保するためのインフラの維持には、ホンモノの技術が必要だという当たり前の話である。

 私は……前の人達の講演を聴いて、こりゃ多成分系の話をした方がいいのかと思って、水の一般的な話+レイリーブリルアン散乱の話をしてみたら「怪しい話はいつするのん?」と言われてしまった。水うぉちネタ希望なら最初に言ってくれ……orz。会場のみなさんの質疑応答が、いろんな分野のプロの人達のものだったので、誰でもわかるような間違いを言うよりは、不均一系の研究のヒントになるかもしれないネタをと思ってわざわざ後半を差し替えたのに……。結局質疑応答の時に、「ナゼmissunderstandingになるのかまとめて」と言われて、勘違いの原因や情報の流通経路について簡単に話をした。

明日はつくばで話をするので……

Posted on 7月 24th, 2006 in 倉庫 by apj

 明日は午後から、第8回水科学と環境問題ワークショップで話をするので、午後、東京に移動した。水の物理化学の基礎的な話ということで、何回か似たような話をしているので、スライドを引っ張り出して並べ替えたり細かい修正をしたりといった準備をしている。
 ナノバブルの話が前半にあるので、ちょっと楽しみである。

 環境ホルモン濫訴事件の方で、「訴えてやる!大賞」ラディン・カッシンガム著 早川文庫 \780という本が紹介された。今日は本屋に行くどころではなかったので、明日筑波への移動の途中で本屋に立ち寄れたらと思う。司法試験用六法の今年の版も出ているはずだし、一緒に買うのが良さそうだ。

BookEndsに移行中

Posted on 7月 21st, 2006 in 倉庫 by apj

 休日出勤の代休をとらなければいけなかったので、本日は休み。こういう時こそ研究のための環境整備、ということで、文献データベースの移行作業をやっている。
 文献管理データベースにEndNoteを使っていたのだが、ver.7以降でテキストファイルのscanができなくなったため、別のソフトに以移行することにした。暫くは、FileMakerProにして、自分でスクリプトを書こうかと思っていたのだが、やっぱり面倒である。いろいろ探していたら、BookEndsが良さそうだったので思い切って買うことにした。EndNoteの半分以下の価格だが、テキストファイルのフォーマットができる。
 しかし、スタイルにBibTeXを選んでいるとき、日本語の文献は文字化けして?????と表示されてしまう。formatして作った文献リストに日本語が入っているとだめらしい。データベース本体はUTF-16で内部コード処理をしているので、日本語も問題なく扱える。まあ、論文では英語の文献しか使わないから、ちょっと面倒なだけなのだが。しかし、全ファイルをBibTexファイルにしておいてJBibTeXで処理しようとすると、日本語文字化けは困る。まあ、EndNote形式やxml形式では、UTF-8できちんと日本語もexportされているので、日本語が扱えない設計ではなさそうだ。メールを送って対応を求めてみよう。
 あと、個別の文献入力で、Drawerを何回か表示すると、入力フィールドの背景が乱れる。画面の一部が壊れたような模様が出る。どうも、メモリリークでも起きているか、メモリを確保したときの初期化を忘れたかって感じである。まあ、次のバージョンでは治っていることを期待したい。

本日のお説教

Posted on 7月 19th, 2006 in 倉庫 by apj

 今日で前期の学生実験終了。あとはレポートを回収して成績を出せば良い。で、レポート提出先などの掲示に書いた学生向けお説教は以下の通り。

※今回は、レポートを受け取った直後の、再提出してもらうかどうかのチェックはしないことにしました。「多分再提出だと思う」とわざわざ前置きして提出した人が居たからです。
 レポートの提出にあたっては、各自が最大限努力して書いたものを提出することを求めます。

 最初から品質が悪いと自覚しながら提出し、チェックが甘くて通ればラッキーだという姿勢は社会では通用しません。そういう態度でモノを納品した会社は、信用を無くして以後は取引停止になるだけです。

 提出されたらすぐチェックして、どうしようもないのは即座に書き直しをさせるという方法も、教育方法としては有りだが、それを学生が逆に利用しはじめたんじゃないかと思ったので、「出されたものしか見ません。ヘンな物出したらホントに落ちますよサイン」を出すことにした。

 真面目にやったつもりが足りなくてチェックに引っかかるというのであれば、それは勉強中の学生なんだから仕方がないが、最初から著しく不完全だと確信しながら提出するなんて横着を、学生のうちからやるんじゃないっての。

休日出勤

Posted on 7月 17th, 2006 in 倉庫 by apj

 今年から新規に始めた博士前期課程の特別選抜のため、本日は休日出勤。面接試験だったので昼には全部終わり、めずらしくまとまった時間がとれたので、そのあと、実験のため冷却水のホースをコネクタに差し込んで……めちゃきつい(泣)。腕力足りない指の力足りないで、ちくしょー女になんか生まれるんじゃなかったと小一時間ぶつぶつ言いながら取り付けてた。前に同じことを思ったのは、SUNのワークステーションの20インチディスプレイを腕で上げなきゃならなくなった時だった。マジでバーベルとか鉄アレイ買って毎日持ち上げるかな……。でも運動については飽きっぽいから必ず三日坊主で終わるんだよなあ情けない。ちなみに、私の師匠の代から「フィジシストの実態はフィジカリストだ」と言われていたわけで……orz。
 ホースの方ドライヤーで暖めて柔らかくして作業したので何とかなった(と思う、まだ水流してないから何とも言えないけど)んだけど、力入れすぎて手が震えてノートに字が書けない。まあ、キーボードは打てるから、木曜日の教材のためのTeXソース入力に影響しないのでヨカッタ。

サイエンスセミナー終了

Posted on 7月 14th, 2006 in 倉庫 by apj

 理学部向けのオムニバス講義サイエンスセミナー「ニセ科学と科学リテラシー」終了。全学科で希望する受講生+近くの高校生+一般の方で、120人程度来てくれた。
 内容は、物理学会のときの話に近い。水伝とマイナスイオンネタを中心にしたので、きくちさんの講演とだいぶかぶる内容になった。途中で、科学の作られ方として、学会発表→論文→追試→歴史の審判、なんてスライドを見せてから、「じゃあ実際にこれを日常見かけるニセ科学に適用してみましょう」ということで、「壮快」の記事を判定するというのをやってもらった。これは、坪野吉孝氏の「健康情報を評価するフローチャート」と適用例を資料として配り、それに倣って、いかにもな肩書きと内容の健康雑誌の記事の信憑性を判定するというものである。雑誌の表現があいまいで判定に困った学生もいたようだが、まあ全員高得点でヨカッタ。
 理学部の人がきいたら笑っちゃうような偽モノでも一般の人にはわからないのだから、社会に出たらちゃんと正しい情報を伝えて欲しい、といったことも入れた。

 で、オムニバスだから、来週までに出席表(試験結果の成績表兼用)や、学生の受講カードを次の担当者に回さなければならない、ということは即日採点終了でないと間に合わない……。おかげで、日が変わる頃までやるはめに。まあ終わったからいいか。

 最近の「ねつ造」もニセ科学の仲間に入れたらどうか、というコメントをもらった。それもそうなんだが、ねつ造事件の方は、科学者倫理の話で既に本が出てたりするし(談合だの入札妨害だのはそもそも違法だから科学者がやったということを特別扱いする必要はないし)、さてどういう位置づけにしたものか……。

予想の斜め上行く内容だった>「壮快」

Posted on 7月 12th, 2006 in 倉庫 by apj

 学生実験監督が長引いたので、最後の方は、サイエンスセミナーの準備のため、買ってきた「壮快」の内容チェックをしていたのだが、予想の斜め上をいく展開に唖然とした。いくら怪しくても「**で減量」「**で病気が治った」の羅列だろうと思っていたのだが……しょっぱなの特集が、

3つの言葉で幸せになる
お金がたまる、痛みが消える
人生ガラリ一変!ツキを呼ぶ
魔法の言葉

 健康本を読んでるのか、おまじないの本を読んでるのかわからなくなってくる。まだ、怪しげな健康食品が効いたという話ならわかるが、この特集のコンセプトは「プラスの言葉を使うと病気が治る」……orz。完全にオカルトの世界にイッてしまっている。じゃあ、魔法の言葉の効果は、というと、

魔法の言葉を唱えたら、主人は一万円を拾い、私は引き出しの奧から四六〇〇円が出てきました。(愛知県・三十九歳・主婦)
魔法の言葉を実行したら、なんと、その三〇分後に懸賞に当選しました!(大阪府・六十六祭・主婦)
「ありがとう」と書かれたシールを植木鉢に貼っていたら、花が長く咲いています(大阪府・三十九歳・会社員)

 それ何て「水からの伝言」?医者が寄稿している体験談では、

私が潰瘍性大腸炎だったときに「大腸さん、ありがとう」といって克服した経験から、肝炎の人なら「肝臓さん、ありがとう」、リウマチの人なら「関節さん、ありがとう」といってもらうこともあります。

 患者に言わせるのかよ!つか、医者が病気が治った理由を「プラスの言葉」に求めちゃいかんだろ!
 踏み台昇降ダイエットの特集で、最初に紹介記事を書いてる医学ジャーナリストは次のように書いている。

踏み台昇降が話題になったきっかけは、インターネットの巨大掲示板「2ちゃんねる」の踏み台昇降のダイエット効果がすごいという書き込みでした。

 ソースが2ちゃんかよプギャー。
 ということで、使い物になるのは、巻頭グラビアで紹介されている料理の作り方と、エッセイや新刊紹介の数頁だけで、残りは全部「釣り」にしか見えません。新たなトンデモの地平を切り開いている気がします>壮快。