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サイエンスセミナー終了

Posted on 7月 14th, 2006 in 未分類 by apj

 理学部向けのオムニバス講義サイエンスセミナー「ニセ科学と科学リテラシー」終了。全学科で希望する受講生+近くの高校生+一般の方で、120人程度来てくれた。
 内容は、物理学会のときの話に近い。水伝とマイナスイオンネタを中心にしたので、きくちさんの講演とだいぶかぶる内容になった。途中で、科学の作られ方として、学会発表→論文→追試→歴史の審判、なんてスライドを見せてから、「じゃあ実際にこれを日常見かけるニセ科学に適用してみましょう」ということで、「壮快」の記事を判定するというのをやってもらった。これは、坪野吉孝氏の「健康情報を評価するフローチャート」と適用例を資料として配り、それに倣って、いかにもな肩書きと内容の健康雑誌の記事の信憑性を判定するというものである。雑誌の表現があいまいで判定に困った学生もいたようだが、まあ全員高得点でヨカッタ。
 理学部の人がきいたら笑っちゃうような偽モノでも一般の人にはわからないのだから、社会に出たらちゃんと正しい情報を伝えて欲しい、といったことも入れた。

 で、オムニバスだから、来週までに出席表(試験結果の成績表兼用)や、学生の受講カードを次の担当者に回さなければならない、ということは即日採点終了でないと間に合わない……。おかげで、日が変わる頃までやるはめに。まあ終わったからいいか。

 最近の「ねつ造」もニセ科学の仲間に入れたらどうか、というコメントをもらった。それもそうなんだが、ねつ造事件の方は、科学者倫理の話で既に本が出てたりするし(談合だの入札妨害だのはそもそも違法だから科学者がやったということを特別扱いする必要はないし)、さてどういう位置づけにしたものか……。


ここからは旧ブログのコメントです。


by 酔うぞ at 2006-07-09 15:49:09
Re:サイエンスセミナー終了

チェックリスト(というのか?)を見たいですね。


by apj at 2006-07-50 06:41:50
Re:サイエンスセミナー終了

「食べ物とがん予防―健康情報をどう読むか」坪野 吉孝著
http://www.amazon.co.jp/gp/product/416660242X/

この本の前半に表と使用例が出ています。
講義では、出典を明示して、表と使用例をまず読んでもらい、その後、壮快の解説記事を判定してもらいました。


by tygrysojciec at 2006-07-22 16:41:22
Re:サイエンスセミナー終了

健康情報を評価するフローチャートhttp://www.metamedica.com/news2001/howto07.html

表現はともかく、概念的にはEBM-疫学領域では共通認識があります。


by apj at 2006-07-41 23:33:41
Re:サイエンスセミナー終了

 「科学の成果は、学会発表だけではだめで、論文が審査のある専門誌に掲載され、追試を重ねて、真実度が高まっていくと最終的に正しいとされる」という一般的なルールを教えるようにしています。フローチャートは、疫学領域にこのことを特化させたものと考えたので教えています。
 ステップ1は、そもそもそれは研究なのか?ということを問題にしています。
 健康情報の場合は、最終的にヒトに適用するわけだです。動物実験や細胞培養での実験結果をヒトに適用するのは、実験結果と結論の間にギャップが存在することになります。このようなギャップが、もし投稿論文にあれば、審査を通らないでしょう。これをチェックするのがステップ2です。
 ステップ3は、科学の全分野に共通です。
ステップ4は、疫学分野の特徴でしょう。ただし、「観測において、人間の主観によるバイアスをさける」という、科学でやらなければならないことが含まれています。
 ステップ5は追試ですから、これも科学の全分野に共通です。

 フローチャートには、科学の発展の一般的なルールが含まれていて、かつよく見かける情報に実際に適用できるので、科学情報を判断する練習のための良い教材ではないかと考えています。


by すっぱいぶどう at 2006-07-14 03:36:14
Re:サイエンスセミナー終了

春学期最後の授業で「ニセ科学」をやりました。ほぼ全員がマイナスイオンを思いっきり信じてて、何人かの学生がニセ科学と言われたことにショックを受けていました。そして、また一部学生に「すごくいいもんだとわかった」と誤解され、別の学生数名に「どの成分がどう身体にいいのか」と質問を受けてしまいました。

今回はフローチャートは使いませんでしたが、昨年の秋学期の授業での学生の反応からは、ステップ1から自分で判断できなさそうでした。「どうやって調べるのか?」という質問がたくさん出ました。(なんでそこまで知らないものを安易に信じとるんじゃ?!)

どうもうちの学生は根拠が示されているから信じているのではなさそうです。「○○さん(有名人)が言ってた」という大衆心理みたいなものかしらん…?フローチャートではたちうちできないかも知れません。


by nomad at 2006-07-41 04:04:41
Re:サイエンスセミナー終了

「とりあえず、テレビで言ったことは全部疑え」でもいいんじゃないですかね。
僕は家族でバラエティーを見ていると「ああ、こういう演出なんだろうね」とか「このシロウトって触れ込みの人たち、芸能事務所所属なんだって」とか「この実験ってホントかなあ」とか「ここで出てる医者も出演料たっぷり貰ってんだよね」とか「この画像って全部撮り終わった後で挟んだんじゃないの?」とか、口を挟んでいます。
別にそうやって口を挟んでもバラエティが面白くなくなるかと言えば、別にそうでもなく。「芸人さんもテレビの中の人もいろいろやってんだね」的に楽しめますよ。


by apj at 2006-07-29 10:52:29
Re:サイエンスセミナー終了

 今度
「テレビが真実を伝えているとなぜ思うようになったのか、人生を振り返って考えてみろ」ってやる予定。
 「何を信じるか」は、それこそ、個々人が自分の胸に手を当てて考えるしかないわけで。


by すっぱいぶどう at 2006-07-19 04:21:19
Re:サイエンスセミナー終了

> 「何を信じるか」は、それこそ、個々人が自分の胸に手を当てて考えるしかないわけで。

うむむ…。どうしてテレビの言うことは信じるのに、私の言うことは疑うのか?という点も、悲しい現実なのです。

あと、うちの学生は「詐欺」という言葉には敏感なようです。「ニセ科学に騙される」ことは仕方ないと思っても、「詐欺にひっかかる」のはイヤみたいです。


by apj at 2006-07-33 05:30:33
Re:サイエンスセミナー終了

>どうしてテレビの言うことは信じるのに、私の言うことは疑うのか?

 しかし「教師の言うことなら何でも信じる」というルールを持っていたとしたら、それはそれで危険な気がする……。すっぱいぶどうさんの指導を云々するという意味ではなく、あくまでも一般論としてですが。

 じゃあ、
ニセ科学を信じる→それにもとづいてモノを買う→カモさん一名ご案内
と教えてみては。