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ナノバブルとか水道局とか

Posted on 7月 25th, 2006 in 倉庫 by apj

 水科学と環境問題ワークショップで話をしてきたのだが、今回は、いろいろ収穫があった。

 松本教授(東大工)の気泡を含む水の流体工学の話は、マイクロバブルの話だったが、界面活性剤を微量添加するとバブルの寿命が変わったり気泡が合体しなくなったりするということだった。さらに、ナノサイズの微小バブルを扱うのに、界面活性剤分子が混じった水のMD計算をしながら密度を減らしてバブル(というかむしろ真空か?)を発生させて界面の運動を見るということも行われていた。界面の部分に界面活性剤分子が集まる結果になっていた。
 流体力学というのは方程式を見てもわかる通り、連続体モデルでしかない。fluidというと連続体、liquidというと分子描像が入ってくるんだけど、流体をやってる人がMDを押さえ始めたということが新鮮だった。まあ、MDのあとはメッシュを考えて粗視化して連続体に戻すのだけど。

 産総研の高橋さんは、マイクロバブルとナノバブルの話。守秘義務が絡むらしく、発生技術の細かいことは出していなかった。
 純水でマイクロバブルを発生させると、だんだん小さくなってやがて消えてしまうのだが、塩の入った水溶液でマイクロバブルを作ると、だんだん小さくなって消えたように見える……がどうも長期間残っているらしい、ということ。マイクロバブルについては、コロイド粒子と同様にゼータ電位を測定することができ、バブル表面に電荷が集まったり電気二重層ができているらしいが、これが、塩濃度やpHで変わってくる。塩を入れた溶液中で作ったマイクロバブルを圧壊させるとナノバブルが残るということで、動的光散乱で一応検出できるが、装置が気泡対象ではないし、見ているものが本当に気泡かがまだ怪しい。バブルの径が小さくなるとゼータ電位が急激に上がるということで、バブルの周りに塩の電荷が集まっているとすると、気体の溶解を妨げるために長期間残存するのではないか、という話だった。
 以前、ナノバブル水中で淡水魚と海水魚を飼う話があり、魚の生理食塩水濃度の塩水ならナノバブルと無関係に飼えるのでそっちの効果じゃないかという話だったのだが、どうも、直ぐ死にやすい魚の生存期間が長くなるといった効果があるらしい。
 ナノバブルが存在すると溶存酸素濃度は上がるし、フリーラジカルの発生もあるが、測定法はまだ確立していないということだ。
 ということで、ナノバブル自体は、不均一な界面を持った系として扱わないといけないらしい。溶解速度が遅いだけで気泡は水に溶けているっぽいし、フリーラジカルが出るなら魚の出した老廃物の分解に効いているから水槽の環境が向上したという可能性もある。今後、普通の化学反応として何が起きているかを調べていく必要がありそうだ。ナノバブルの入った水は透明だということで、分光測定は可能だろう。導電率があるから誘電測定には不向きだと思うが……。本当に空間不均一があるなら、(感度の問題だけで)均一な水溶液との違いがどこかに出そうにも思うが……。やってみるかなぁ……。試料を分けてもらえるようお願いしてきたし。
 超音波吸収なんかどうだろう?うまくサイズと共鳴して圧壊が起きると、応答として観測できたりしないのかなあ。

#例の、ランの鉢植えは、花が水の外、茎と葉っぱと根がナノバブル水(食塩水)というものだった。デモとしてはアレだが、次のステップは、ラジカルがどこで効いてるかとか、葉の表面での圧壊の効果がどうなるか、といったものになるんじゃないか。

 東京都水道局の北澤さんは、高度処理水の紹介。通常の処理の間に、オゾン処理+生物活性炭処理をしているという説明だった。オゾンは1万ボルトの高圧で発生させ、酸素濃度が上昇する。(ということは、水の分解が起きて、水素ガスと酸素ガスが発生しているのだろう)。あとは、いかにして臭素酸の発生を抑えるかとか、生物活性炭に微小動物が繁殖しないように洗うかといったノウハウが紹介された。結論としては、水道局はきちんと仕事をし、次に使えそうな処理方法の開発も継続して行っている、ということである。当然のことながら、消費者を脅して浄水器を売りつけるインチキ業者など足許にも及ばない。まあ、安全な水を確保するためのインフラの維持には、ホンモノの技術が必要だという当たり前の話である。

 私は……前の人達の講演を聴いて、こりゃ多成分系の話をした方がいいのかと思って、水の一般的な話+レイリーブリルアン散乱の話をしてみたら「怪しい話はいつするのん?」と言われてしまった。水うぉちネタ希望なら最初に言ってくれ……orz。会場のみなさんの質疑応答が、いろんな分野のプロの人達のものだったので、誰でもわかるような間違いを言うよりは、不均一系の研究のヒントになるかもしれないネタをと思ってわざわざ後半を差し替えたのに……。結局質疑応答の時に、「ナゼmissunderstandingになるのかまとめて」と言われて、勘違いの原因や情報の流通経路について簡単に話をした。