Feed

血液サラサラのその後

Posted on 9月 2nd, 2006 in 倉庫 by apj

 掲示板の方で教えてもらったのだが、「徹底検証・血液サラサラの真実」by NHK。講義のネタになりそうなので関連部分を引用して貼っておく。

今回の番組について

9年前、ガッテンが火付け役となって以来ブームとなった「血液サラサラ」。しかし今やその言葉が一人歩きしています。血液サラサラ検査を利用して高額の品物を売りつける商法まで現れているのです。

番組では、その気になればサラサラ検査の結果を操作できること、さらに、気になる食べ物の効果や、最新研究で分かったサラサラ特効薬の入手法などについても徹底特集します。

 後から梯子を外す姿勢に見えなくもないが、誤解を訂正しようということは評価していいだろう。

「ある血液サラサラ検査の実態」

視聴者からの問い合わせメールをきっかけに、とあるバーゲン会場で行われている血液サラサラ検査の実態を取材しました。

そこでは採取した血液を顕微鏡で観察する検査を行っていましたが、スタッフが受けた1回目の検査では、赤血球が数珠状にくっついた状態でした。しかし、3分後に再検査すると、赤血球が一つ一つに離れた状態になっていました。

 ウチでも講義でこの手の写真を使っているわけだが……。

「赤血球!ミクロの血視圏」

2回の検査で結果が異なった理由を知るために、まずは赤血球の性質について詳しく見ていきます。

赤血球を顕微鏡で徹底観察しました。最大の特徴はその柔らかさ。極細のスポイトで吸い込む実験をしたところ、赤血球の大きさは8ミクロンなのに、太さ3ミクロンのスポイトまで通ることができました。赤血球が柔らかいのは、細い毛細血管を自在に流れるために重要な性質です。

しかし実験中に不思議な現象を発見。バラバラだった赤血球が放っておくだけで勝手に集まり、数珠状に固まってしまったのです。これは、赤血球が弱い磁石のような性質をもっているからです。

ガッテンの実験では、赤血球がくっつくまでに3分かかりました。しかしバーゲン会場の検査では、採取した血液を3分待たずにすぐに見せていました。つまり「採った血液を見せるまでの時間によって、数珠状に見せたりバラバラに見せたりしている」わけではありません。しかし実は、大きな手がかりをカメラが捉えていました。

 血圧のもとになっているのが、毛細血管の内側をこすりながら赤血球が流れていくことによる、と習った記憶がある。しかし、血球が集る理由は磁力なのか?そんなに強かったっけ?というあたりは要確認かと。

「血液の量で見え方は変わる」

バーゲン会場で血液サラサラ検査を受けた際、1回目の検査と2回目の検査で見せられた、スタッフの血液サンプルをカメラが捉えていました。1回目数珠状の時のサンプルは血液が多く、2回目バラバラの時のサンプルは、血液が少ないことが一目瞭然です。

ガッテンが再現実験をしたところ、血液の量によって、赤血球が数珠状にくっついた状態に見せたり、逆にバラバラの状態に見せることができることを確認しました。

サンプルの血液量が多いと、赤血球が何層にも重なるため、3分待たずに、即座に数珠状になります。しかし、これは赤血球が「見かけ上」互いに接している状態にすぎません。これだけで「血液がドロドロだ」と判定することはできないのです。

本当の血液ドロドロとは、血糖などが多い状態の時、赤血球が柔らかさ失い、接着剤のようにくっつきやすくなることで起こるのです。

いずれにしても、サンプルの血液量だけで結果が大きく変わってしまうことからも、サラサラドロドロを判別するには、詳しい血液成分検査などが必要で、1回の顕微鏡検査だけでは断定できないのです。

 うん、まあ当然の結論だな。あとは、見やすくするために生理食塩水を入れたりすることもあって、測定のタイミングや食塩水の微妙な濃度の違いでも見え方を変えることができる。しかし、「血液サラサラ」を一人歩きさせた責任についてはどう考えているんでしょうかねぇ……。


ここからは旧ブログのコメントです。


by 地野邪鬼 at 2006-09-59 19:48:59
Re:血液サラサラのその後

この番組、ちょうど見ていました。
自分も日記に書こうと思っていましたが、時間がなく放置してしまいました。

>、「血液サラサラ」を一人歩きさせた責任についてはどう考えているんでしょうかねぇ……。

責任なんて、感じていないと思いますよ。環境ホルモンの回では相変わらず井口先生しか呼んでいませんし。
ただ、周りの非難の声が大きくなってきたので、番組の方針をそれに合わせただけでしょう。
とは言え、多少の進歩ではありますかね。

>血球が集る理由は磁力なのか?
番組内で「磁力」という言葉が出てきたようには記憶していませんが、これは恐らく誤りでしょう。もしくは例えの悪い比喩かと。
赤血球が互いにくっつくのは、それこそ後で触れている血小板の影響が最大の理由だと私は思います。
微小な出血なら数分掛からずに血液が固まりだしますよね?

またしても素人が勉強せずにHPを書いていると思います。
NHKの当該ページの中でも言葉の矛盾がありますし。

>汗をかきすぎると血液はドロドロになるので、ウォーキングなどの軽めの運動や、室内での運動がおすすめです。

これは単に水分が汗として排出される分、血液中の水分が不足する可能性があると言う事ですから、NHKの「ドロドロ」の説明と矛盾していますね。
>本当の血液ドロドロとは、血糖などが多い状態の時、(後略)

ま、実際の放送ではその辺りを口頭で説明していたので、HPは下請け会社が勉強しないでシナリオを読んで書いたのでしょう。

それから、HPには記載がありませんでしたが、番組の最後にどこかの大学の先生が出てきて、「一品のみ多量に食べる事」「食事に薬と同様の効果を期待する事」の誤りを指摘し、健康のためにはまず基本的な食生活の改善が必要であると、フードファディズムに対する注意をしていました。

これも余りにも批判が沸いてきたが故の策であろうと思いますが、以前よりはましかなと感じました。
この傾向が続くと良いのですけどね。

ついでにみのもんたの「思いっきり~」は、これまでの無責任な報道の責任を文書発表して、打ち切って欲しいものです。この手の番組の中ではあれが一番酷い。www

長文失礼。


by YO at 2006-09-36 21:01:36
Re:血液サラサラのその後

>血球が集る理由は磁力なのか?
「赤血球集合」というキーワードで検索すれば情報がでてくると思いますが
まだはっきりとした機序は解明されていない様です。
高分子架橋説や高分子排除説とか有りますが
基本的に血漿などの高分子タンパクが関与しているという所までのようです。

少なくとも磁力では無いでしょうね。
もし赤血球が磁力を持つのなら一般の血球カウンタの電気抵抗によって血球の個数と大きさを測る理論(電気抵抗法)が破綻してしまいますから。

まぁ血液を体外に出してほったらかしにすれば赤血球は集まると言う現象は有るということと
それを振ったり薄めたり、pH変えてみたりする事によりそれをばらばらにする事も
簡単という事です。


by apj at 2006-09-46 09:03:46
Re:血液サラサラのその後

YOさん、ご指摘ありがとうございます。

 磁力はさすがに違うだろう(もしそんなに磁石としての性質が強かったら、MRIの検査で血流が変わってえらいことになるはず。実際にはFMRIなんかで血流を測定している、つまり超伝導コイルが作るような磁場に入れてもほどんど血流は影響されない、その程度の力しかかからないことになる)が、ひょっとするとコロイド粒子の凝集なんかと同じ考え方でいいのか?でも血小板なんかもあって複雑だよなあ……と、悩んでおりました。
 いずれにしても簡単な操作で血球写真はいろんな見せ方ができるということですから、何とか水やら何とか装置の効果だというのは、インチキとみなすしかないでしょうね。


by Tama at 2006-09-34 20:36:34
Re:血液サラサラのその後

「血液サラサラ」は、ガッテンは血栓防止等のわりとまともな観点から番組を作っているのに対し、それをパクった某特命Xと某あるあるが一人歩きさせたものだと認識していたのですが。
でも、ガッテンホームページ(という呼び名は好きじゃないけど、そう書いてあるから仕方が無い)を調べてみると、結構「血液サラサラ」で何度もやってるんですね。

インチキまで昇華させたのはあるあるだとしても、産み出してよちよち歩きまで育てるくらいはガッテンの責任なんでしょうかね。

血球の凝集については、流動時と静止時の違いも考えなければならんのではないでしょうか。磁力による凝集力があっても、流動による分散力がはるかに上回っていて影響が無いということかもしれません。
個数を測る電気抵抗法というのはいわゆるコールター法だと思いますが、磁性粒子でも測定可能です。良導電体だと破綻しますが、磁力は凝集について実験法改善なり考察なりが必要なだけで、そこをクリアすれば大丈夫です。
#一応、私コールター法の社内第一人者と言われております。:)
・・・とはいえ、磁力が赤血球凝集の主要因とは考えにくいですけれどね。


by Tama at 2006-09-49 20:48:49
Re:血液サラサラのその後

追記。
磁力であろうとなかろうと、赤血球が生食中(コールターだとIsotonという専用液だと思う)静置で凝集する傾向があるのは事実で、それを防ぐための実験方法を考えるのは必須です。一般的には軽く攪拌すれば大丈夫です。


by YO at 2006-09-12 01:28:12
Re:血液サラサラのその後

Tama さん コメント有難うございます。
「磁力」という言葉に導電体をイメージしてしまった勇み足だったようです(反省)

これだけではなんですので
赤血球、白血球、血小板それぞれの粒子に付いては個数割合と
大きさによって振り分けていて、粒子そのものの性質に付い
てはほぼ同等と考えられていて、赤血球だけ特別扱いされ
いることは無いということを付け加えます。

希釈液中で赤血球が集合するというのは意識した事は無いですね
まぁ装置内に入れば水流の圧力で攪拌しまくりますから赤血球の集合に付いては考慮していないというのが実情です。

どちらかといえば血液検体の偏りの方が問題で
気の利いた血球カウンタではサンプル吸入前に自動的に検体を振って攪拌しますが、
そう言う機構が無い装置では計る前に検体を振って振りまくります(ちょっと大げさ(笑))