高校の履修漏れ発覚の件。
公立学校が調査書にウソを書いて出したら、虚偽公文書作成・同行使(刑156、158)に引っ掛かる。有印で1年以上10年以下の懲役、そうでない場合は3年以下の懲役または20万円以下の罰金。有印だと罰金刑が無いので、起訴されたら最後、執行猶予がついたとしても、公務員の欠格事項に該当する。と、まあここまでは、(現実に起訴されるかどうかはともかく)条文との対応はOKだろう。私学の場合も、「事実証明に関する文書」の偽造(刑159)には引っ掛かる。
虚偽公文書であるという事情を知って受け取った*だけ*なら、故意犯成立となるかどうかがすぐには私にも判断できない(このへんはプロの意見を知りたいところ)。しかし、それを使って合否判定した場合は、事実を証明する文書に故意に虚偽の内容を入れたことになるので、(国立大学法人の作る文書が仮に私文書と判定されたとしても)「事実証明に関する文書」の偽造で、今度は合否判定に関わった大学の教員が軒並み刑159に引っ掛かるのではないか。なお、私立大学の入学試験の答案が刑159のいうところの「事実証明に関する文書」認定された判例は既にある。この部分訂正。私文書偽造の場合は名義を偽った場合に成立するから、そのまま虚偽公文書を使って合否判定資料を作っても該当はしない。該当はしないが、虚偽公文書の効力を発揮させることを手助けすることになるわけで、社会規範には明白に反してしまう。(答案用紙が私文書とされたケースは、替え玉受験の時つまり違う人が名前を騙って作った文書であった。)(こういう超基本的なところでコケるとはテラナサケナスorz。精進します。Lさんご指摘ありがとうございました。)
いずれにしても、文科省あたりの対策が示されない限り、大学としても動けなさそうである。ほんでもって、推薦入試の願書締め切りは多分年内、早いところでは推薦入試そのものがあと一ヶ月程度で始まったりするわけで、一体どうするのかと……。募集要項に「調査書考慮します」って文言が入ってたら、逃げようがないし。【以下訂正のため削除】
【以下追加】
http://www.yts.co.jp/news/news_20061030162011.htmlより。医学部は判断を決めた模様。以下引用する。
未履修問題は大学入試に影響
2006 / 10 / 30
山大医学部ではあさってから推薦入試の願書受付が始まるが、きょうの記者会見で履修不足があった場合高校の調査書には科目の評価や修得単位を何も書かないこと、偽りの記述が明らかになれば入学決定後でも合格を取り消すことなどを強調した。また医学科では数学と理科の指定された科目を必ず履修する、あるいは履修見込みであることとしていて履修しなかったら調査書が大きな比重を占める推薦入試の合否への影響は避けられないとの見方を示した。山大では他の5つの学部でも推薦入学の願書を受け付けるが、「改めて注意事項を確認する考えはない」としている。
こちらは別ソース。
虚偽発覚なら合格取り消し
2006/10/30 21:19
高校必修科目の未履修問題で、山形大医学部(山形市)は30日、入試出願に必要な調査書について未履修の科目を履修したと虚偽記載しないよう各高校に求めると発表した。虚偽記載が発覚した場合は合格後でも入学を取り消すとしている。
高校側が提出する調査書には履修科目の成績を記入する欄があるが、同大医学部は未履修科目があっても、卒業する見込みであれば出願を受け付けるとしている。
医学部は11月1日から推薦入試の受け付けを始めるが、例年生徒を推薦している高校に対して書面で正確な記載を求める。
山形大の入試担当者は「他学部の出願についても医学部と同様の対応をする方向で検討している」と話した。
報道だけじゃよくわからない。
最初の方は未履修があれば調査書には何も記載せず空白にせよと読めるが、後の方は未履修分についてのみ記載しなければよく、履修した分は記載してもかまわないと読める。いくら未履修が発覚したからって、世界史とか芸術とかなら、空欄になるのは調査書に書かれる科目のせいぜい1割程度では。すると、後の方だった場合、調査書に重きを置いて採点したとして、未履修があっても履修した人とさほどの大差は付かなさそうだし、さらに面接点が加わるわけだから、この基準でペナルティになるのか?
そうすると、むしろ、きちんと卒業要件を満たしてくれるかどうかが問題となりそうだ。大学としては、高校の授業の実態を実地調査する権限も力もないわけで、高校側が「追加授業しました」って言ったらそれを受け容れるしかないのでは。しかし、既に受験対策を理由に違反の前科のある高校が、受験の妨げになるから今さら追加授業なんかやめてくれという声多数の状況で、「追加授業しました」と言ったとして、どこまでそんなものを信じたらいいのだ?
本当に間に合わせるように履修させてくれるなら、卒業までに帳尻が合えば無問題なのだけど、この場合それをきちんとやってくれるかどうかが一番信用出来ない気が……。
【追記】使い方の具体例としては、ここ(2000年)だと、調査書は評定平均を使い、学業以外の活動を項目別に加算、さらに各種資格取得状況を加算して100点にスケーリングしている。こちらは推薦で、評定平均をそのまま出願資格にしているケース。評定平均のところがネットでいくつかひっかかるが、分母が未履修を含んだとしても、大差にはならなさそう。