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spamフィルターw

Posted on 10月 24th, 2006 in 倉庫 by apj

 スパムフが増えたので、理学部のメールサーバにスパムフィルタを設置することになり、試験運用するという連絡があった。

・スパムと判定されたメールの件名には、
  [Spam?]
  [spam?]
  [SPAM?]
 等のタグが付くことがあります。

 とあり、フムなるほどと思っていたら、その直後に届いたメールのヘッダが

Subject: [SPAM?] [SPAM?] 共同利用公募(No16~17)

事務から理学部教員宛の定型事務連絡が見事にspam判定を喰らっていたorz。

今日買った本

Posted on 10月 23rd, 2006 in 倉庫 by apj

 ウチの学科では、今年から1年生に、基礎化学I.II/基礎化学演習I, II、という授業をすることになった。ゆとり教育対策と、早めに専門化学の内容に触れてもらうことを目的としている。基礎化学演習IIは後期で、実験の仕方の基礎(ポピュラーな器具の取り扱い、1コマで終わる実験、データ処理の基礎)などをやることになっている。
 で、本日生協で見つけて衝動買いしたのが「教科書にない実験マニュアルよくある失敗・役だつNG集」。初歩的な操作ミスによる事故とか実験失敗とか器具の破損について書いてある。1,2年生あたりが寝転がって読むにはいい本だと思う。学科の図書室に入れたいよなぁ……。

 もう一冊は「搾取される若者たち」。バイク便ライダーの世界からみて、どうやって不安定雇用の労働者が自分で自分の首を絞めていくかについて書いている。趣味を仕事にすることの危険性が指摘されているところは面白いと思った。
「苦になる仕事」→向いてないから止めとけ
「趣味、やりたいことが仕事」→不安定雇用な職だったら逆に未来が無くなる(本より)
「苦にならない仕事」→これがちょうどよいのでは?(これは私の以前からの意見)
などと考えたりしている。

打ち合わせで宇都宮へ

Posted on 10月 20th, 2006 in 倉庫 by apj

 急遽受託研究関連の打ち合わせが入ったので宇都宮へ。事実上ウチの研究室の最大のスポンサー(校費<受託研究費)なのでそりゃもう優先順位が一番高かったりする^^;)。午後後半から打ち合わせは順調に進み、帰りに宇都宮駅のギョウザの店でしっかり食べた。「宇都宮の餃子」と書いた店が数年前に、私が時々通る板橋区大山にできていて、どうして餃子なのかがよくわからなかった。今回、宇都宮の特産品はニラで、ニラを使った製品開発ということで餃子に力をを入れたということが店の説明に出ていて納得した。味は良かった。
 週末なので、東京に泊まって買い物などしてから山形に戻る予定。

ますます物理が嫌われそうな……

Posted on 10月 18th, 2006 in 倉庫 by apj

 教室会議で出た話題。
 一般教育科目で、物理がいくつか開講されているのだが、講義の敷居が高いのか、学生には不人気で受講者数は化学の約半分という状態である。不人気なら、開講コマ数を減らすか、もっと初心者向けの敷居の低い内容にして客寄せするのが普通の対応だろう。ところが、出てきた案は少人数しか希望者の居ない講義の「セミナー化」orz。
 実は教養セミナーはウチの一般教育の目玉で、少人数で丁寧かつ細やかに指導するということになっている。学生アンケートでセミナーを受講しない理由のトップ2が、プレゼンテーションするのが苦手だとか、興味の持てそうなセミナーが開講されていない、というものだったりする。まあ、これは受講しなかった人の理由だから、受講してハッピーだったという人がもっとたくさん居ればそれでいい。
 さて、物理不人気の理由が、「今の指導が丁寧ではないから」「マスプロ教育だから」というのならセミナー化が解決策だろうが、前者であるという根拠はどこにも示されず(つか、前者なら今のままでまずは丁寧に教えろという話になる罠)、マスプロ云々は受講者が少なすぎるという問題とはまさに正反対だから当てはまらない。誰がこんな無理矢理な解決策を考えたんだか。
 ところで、私は高校の時、物理が苦手だった。公式を覚えて当てはめて解くというのができなくて、3年の半ばまでさんざんんな点数しかとれなかった。まあ、「自然科学はもっときっちりした体系があるはずだ」と思ったので、駿台文庫の物理入門(山本義隆)やら、小出昭一郎の物理概論やらを自力で読んで、そっちにはまって物理学科に行ったわけだが、こういうことをするのはごく小数で、大抵の人は高校の物理の点がさんざんだった時点で物理の習得はあきらめて、後に苦手意識だけが残ることになるに違いない。多分、ウチの大学で教養の物理に難色を示しているのは、今後物理を専門にするわけでもない、高校で点数が取れずに悩んだ人達、あるいは中学校理科の力の釣り合いあたりでワケがわからなくなって、その後理科苦手意識を引きずった文系学生等ではないかと思う。物理を敬遠したがる気持ちはとてもよく分かる。だって、自分ができるともわかるとも思えず、何が楽しいのかもわからなかった高校の時の物理の前半は、授業に出るのが本当にうんざりだったもんなぁ……。
 それでだ、只でさえ苦手意識のある物理で、非専門家向けに敷居を低くするという話も無く、「今現在敬遠したくなる内容をセミナー形式でしつこく丁寧に指導する」なんてことをされたら、それに付き合わされる学生にとってはむしろ悪夢じゃないか。大学に合格し「苦手科目の克服」などというプレッシャーからやっと解放されたわけでしょ。第一、もし私が学生で、高校前半の物理苦手意識を持ったままだったら受講したくないぞそんなの。苦手なもののプレゼンをやれと言われるのがほぼ確実だと、そりゃ逃げたくもなる。何だかますます物理嫌いが増えそうな予感がして、物理出身者としては鬱なわけだが。セミナー化するなら、初心者安全で敷居が低い内容を増やさないと、物理=苦行になりかねないよなぁ。

昼過ぎに電話があって

Posted on 10月 17th, 2006 in 倉庫 by apj

 昼食から戻ってきたら電話がかかってきた。初対面……じゃなくて初会話(?電話だからなぁ)の方から。何でも、ご家族が五百万円ほどする浄水器を売りつけられかかっているとのこと。最初に二十万円ほどの浄水器をすでに買わされたというから、典型的な次々商法に見える。宣伝文句は「水の分子の大きさを変える」「水分子の結合角を変える」といったもので、企業の研究所で調べたとか大学の先生に調べてもらったとか主張してるらしい。
 研究者にもいろいろ居るから、中には本気で夢のような水の存在を信じる人も居るかもしれないが、ありきたりな実験で「分子の大きさの違う水を作りました」「結合角の違う水を作りました」などという結論を出したって、まず論文は通らないし、従って業績にもならない。調べたのが農学部らしいので、植物の育ち具合の違いが云々、ってなことを調べて、そこに業者が勝手にトンデモ水理論をくっつけたのだろうが、とにかくご愁傷様と申し上げる他はない。
 とにかく、一つ一つ裏をとって業者のウソを暴きたいと言っておられたので、科学の世界では新規なことを主張する側が立証責任を負うのが原則だから、業者をつついて論文のコピーを出させて、それから内容の検討をするのが手間がかからなくて良いのではないか、とアドバイスした。こちらで業者がやってる「研究」とやらの結果を網羅するのは、そもそも宣伝が斜め上を行ってる状態では、普通の研究業績を調べる方法では引っ掛かってこないと思われる。

NGワード登録

Posted on 10月 14th, 2006 in 倉庫 by apj

何か、トラックバックスパムがうるさいので、NGワードを登録してみた。
あと、海外のサイトが工夫し始めたなぁ。英語のみのトラックバックを弾く設定にしてたら、一行だけ日本語を入れるという……。弾いてる人、多いんだろうなぁ。

膜による水処理

Posted on 10月 11th, 2006 in 倉庫 by apj

 生協で「図解 よくわかる水処理膜」を買ってきた。海水淡水化プラントの話題を中心に、飲料水や超純水を作るために膜がどう使われているかが良くまとまっている。書いた人は、この分野の大手メーカーの栗田工業(株)の人である。
 実験室では、蒸留水製造装置ではなく、ROと電気透析を組み合わせた純水製造装置を使っているので、興味深く読んだ。飲める水の確保が大変で、海水淡水化で日本企業がずいぶん頑張っていることがわかった。

 ただ、海洋深層水に応用しているという部分の記述(131ページ)が、

(略)
逆浸透膜装置や電気透析装置で海水から塩分やミネラル成分を抜く脱塩処理が行われている。
 海洋深層水の特徴は、マグネシウム、カルシウムなどのミネラル成分がバランス良く含まれるため、ミネラル不足が指摘される現代人の食生活の改善に役立ち、同時に高血圧症、糖尿病などの生活習慣病の予防にもなるといわれている。

と微妙な表現になっている。直前でミネラル成分を抜くと明記してあるのになぁ。
 実際には成分を再調整している(とボトルに書いて売ってたりする)からミネラルは入っているけど、量は少ない。安全でおいしい水にはなってるかもしれないが、効率の面では、ミネラル補給は食物からの方がいいだろう。

アクセス停止にしてみたが……

Posted on 10月 10th, 2006 in 倉庫 by apj

 向こうの掲示板に荒らしな書き込みをした人が居たので、暫く書き込み停止にしてみたのだが……。今回のは、議論はめちゃくちゃで全然かみ合ってないし、状況を見ずに俺様ルールな内容を書くし、という人であった。とどめに、どこへ行っても荒らしと言われるが理由がわからん、と書いている始末である。
 ただ、文章の壊れっぷりのことを言うならば、昨日のエントリで書いた中日新聞の社説が既にすさまじいわけで、プロがこのざまなら素人の文章がまずくても仕方がない気がしてくる。
 状況の見え無さ具合については、TOSSヲチ板の投稿を見ればわかるように、いじめについて教育するのにヘビの脳だの、ノルアドレナリンだの、「水でさえ言葉わかる」だのを教師が引き合いに出しているのが現状である。これでは相手を見て思いやるといった判断力や技術が身につくわけがない。
 周りの状況がまるで見えず論理展開もあったもんじゃない投稿をしてくる人は今後も出てくるだろうけど、本人に悪気が無い場合、荒らしと言えるのか……、とちょっと自分でも判断基準がぐらつきかけた。

 大学では、教職員組合が教育基本法改悪反対のビラを配っていたりする。一体どうなってるんだ。教育基本法以前に、脳内革命レベルの脳科学を使って道徳を教えるような、バカげたことをとっとと止めさせろ。このままだと、仮に教育基本法を変えて愛国心とやらを教えることにした場合、愛国心を持たないとノルアドレナリンが(以下略)な内容のオンパレードになって、賛成派と反対派双方の思惑の斜め上を行く指導がなされそうな気がしてくるんだが。

こんなこと書くから信用されなくなるのでは

Posted on 10月 9th, 2006 in 倉庫 by apj

 酔うぞの万華鏡のエントリに関連して。中日新聞社説より。あまりにもあきれ果てる内容だったので。

神在月にかこまれて

週のはじめに考える

 「神無月にかこまれて」。井上陽水さんの名曲です。十月は神無月。でもこんな時代だからこそ、あえて“替え歌”にしてみます。「神在月にかこまれて…」

 出雲では旧暦十月を「神在月」と呼んでいます。

 「国の尻、道の果てにまで住みたもう」三千余の神々が出雲大社に参集し、各地の課題や縁結びについて話し合うサミットを前にして、人々は稲佐の浜にかがり火をたき、「神迎え」にわきたちます。

 巨大な甲虫のような千木をいただく本殿は、八雲山の太古の森に抱かれて、立ち上る朝もやが「八雲立つ出雲八重垣」(古事記)そのままに、神々の実在を五感に伝えてくるようです。

つづられる新たな神話

 大社造りの建築様式そのものが、山、川、海のつながりを表すという人もいます。

 神々への恐れはつまり、悠久なるものへの恐れ、八百万の自然に宿るいのちへの恐れに違いありません。

 出雲から西へ下れば、お隣は明治以来八人目の宰相を生んだばかりの山口県、維新の神話もどうやら健在です。“純ちゃん”から“アベちゃん”へ、やはり古事記をほうふつさせる予定調和の「国譲り」とでもいいますか。

 いつの世も歴史を編むのは勝者とばかり、神無月の東京では、「美しい国」づくりの空虚な神話がつづられ始めたところです。

 アベちゃんだけではありません。マツケンからヨンさま、そしてイナバウアー経由でユーちゃんと、ブラウン管や液晶画面が自在に切り取り、際限なく増幅させるイメージそのままに、現代の“神々”はめまぐるしくうつろいます。うつろい過ぎてその「不在」が際だちます。

 美しさとかかわいさとか強さとか、対象の具体的な属性よりも、つくられたイメージや「露出」の回数が、「人気」という現代の神話を創造し、使い捨てにしていきます。

 「感動をありがとう」という言葉をこのごろよく耳にしますが、感動さえも商品化、しかも使い捨てではないですか

 タレントやプロスポーツの世界ならそれも仕方ないでしょう。しかし、政治家、しかも宰相の座がとりあえず人気で決まるとすれば、これは少々、いいえ、かなり危険です。

 官邸主導の内閣は広報のプロを担当補佐官に任命し、タウンミーティングやメルマガ、インターネットなどを通じて国民に直接語りかけるのだそうです。この「直接」がくせ者です。おとぎ話やイメージを手間暇掛けて仕込むのは、発信者の特権だからです。

「大量消費」の神々が

 商品を内容よりもイメージで売りまくるのが現代の広報戦略だとすれば、「美しい国」の独走にはやはり注意が必要です。

 出雲を愛し、日本の美をこよなく愛した小泉八雲の旧宅が、松江城の堀端でひっそり公開されています。

 すみずみまで手入れが行き届いた小庭では、サルスベリやキキョウが色を添え、ムラサキシキブの小枝が揺れるのよりもゆっくりと、冬支度が進んでいます。

 「この民族の色彩や色合いに対する洗練された趣味には、けばけばしいものがなにもない。それは、この国の穏やかな自然が、落ちついた繊細な美しい色彩を帯びているところに、大きく由来しているからではなかろうか」(日本の面影)

 出雲の風情がはぐくんだ、八雲の美意識の一端です。

 外来語をやたらと持ち出すまでもなく、「大量消費」を神々の列に加える以前のこの国は、もともと美しい国でした。

 先月末、愛知県岡崎市で市内にある光ケ丘女子高校ダンス部作品発表会が開かれました。

 受験、反発、部活、悩み、ミニスカ、化粧、友達…。ヒップホップやロックのリズムを背景に、高校生活を取り巻く現実や自らの心の内とも素直に向き合い、緩急自在、群舞の中にも個性が光るエネルギッシュなステージでした。

 三年生にとっては、仲間と踊る最後の演目が近づきました。全員参加の「火の鳥」です。

 その日進行役を務めたマネジャーのカホさんの頭の中を、「火の鳥」で挑んだコンクールの思い出が駆け抜けます。

 「神戸での全国大会決戦本番。信じられないことが起こりました。今までに感じたことのない仲間との感覚。お互いのすべてがまるで自分自身のような感じを受けました。熱くこみ上げてくる喜びが涙となり、あふれてきたのです-」

時代に踊らされないで

 「火の鳥」は無事終わり、三年生は「ありがとう」の言葉を残して舞台を去りました。

 「感動してくれて、ありがとう」。満場の拍手の中、彼女たちに涙はありませんでした。

 時代に踊らず流されず、今を見据え未来を夢見るココロとカラダは美しい。そしてそんなココロとカラダに、神々はいつでも舞い降ります。

 現代の神々とやらを作り出して、流行を加速してるのは、テレビだけの責任ではない。新聞だって便乗している。
 「感動さえも商品化」も同じ。広告をとって、そのシーンを取材して商品にしているのは新聞だってやっていることである。
  「商品を内容よりもイメージで売りまくるのが現代の広報戦略」って、まさに新聞がやってることだろうが。企業のプレスリリースを編集無しで流し、インチキマイナスイオンを蔓延させた責任を棚に上げてこれを言うか?白畑教授の活性水素説を掲載したのはここじゃなくて毎日新聞だったが、「大学と大学教授」のイメージで売りまくるのに見事に荷担していたな。偉そうな批判を書いているが、新聞が一貫して、ニセ科学製品の宣伝を掲載しない・流行に先だって警告してきたことがこれまでに一度だってあったか?こんなことを堂々と書けるのは、マイナスイオン製品の宣伝に一切荷担しなかった新聞だけだと思うぞ。
 「おとぎ話やイメージを手間暇掛けて仕込むのは、発信者の特権」って、まさに新聞を始めとするマスコミが今まで持ってた特権のことじゃないのか?新聞がこれまでしてきたことについての自白にしか見えないのだけど。
 最後の一文に至っては、それ一体どこのカルトの教えか?と言いたくなる。とりあえず国民の大多数は巫女(シャーマン)じゃないぞ。神がかればいいってもんじゃないだろうに……。
 まあでも、ここまであからさまに「新聞は新聞にとって都合のいい情報しか出しません」という姿勢を打ち出してくれると、それはそれでためにはなるなぁ……。

プラチナコロイドに要注意

Posted on 10月 8th, 2006 in 倉庫 by apj

 ちょっと調査しないといけないネタになってきつつあるのでメモ代わりに書いておく。
 JUN-Kさんのblogのエントリ「時代はプラチナ微粒子らしい」に関連して。
 今度は、東大の宮本教授がやってる産学連携発の水商売が出てきた。「活性酸素を消去する」というふれこみの水は、九州大の白畑教授が「活性水素水」の宣伝に登場し、それが、実際の実験と宣伝内容にギャップがある状態が続いている。宮本教授の説は、抗酸化作用の原因物質は活性水素ではなく、白金ナノ粒子だろうというもので、白畑教授の説とは異なる。研究の展開が、白金ナノ粒子の薬理作用を動物実験で調べるというまっとうなものだったので、今後薬剤としての展開があるかと思ったら、手っ取り早く健康飲料に参入してきた。
 以前、宮本教授が立ち上げたのは、株式会社シーテックというベンチャー企業で、私も企業を立ち上げた人と懇親会で同席したことがある。それが、今度はアプト株式会社に営業譲渡されたらしい。まあ、ベンチャー企業をそのまま中堅から大企業に発展させるよりは、早々と売り払って創業者利益を手にするというビジネスのやり方もあるから、今回はそっちなのかな、と思ったり。

 例によって大事なことは、実際の実験と宣伝内容のギャップを確認してから判断すべきということである。私が話を聞いた時点では、宮本教授の実験は、脳梗塞や筋萎縮性側索硬化症のマウスかラットだかに白金ナノ粒子を投与して、症状の改善あるいは病気の進行を遅らせることができたというものであった。それが活性酸素除去機能によるだろうというのが、実験結果の説明であった。ここまでは通常の科学である。
 しかし、治療薬に使えるものを薄めて健康飲料に使っていいか、というとそれは全くの別問題である。抗ガン剤をうんと薄めて癌予防に使おう、などと主張したら、「それ何てホメオパシー?」と突っ込まれるだけだろう。最近、あっちの掲示板で話題になっているのだが、プラチナの量は4μg/lは4ppb程度ということだ。宣伝では、東大教授の研究成果を使っているということが前面に出されているようだが、教授の肩書きも大学の名前も、宣伝の内容の科学的正しさを担保しないことは、これまでに経験してきたことである。この話題のチェックポイントは以下の通りである。
○宮本教授の実験(一部の疾患に効果あり)の実験条件と、一般向けの水で主張していることのギャップの確認
・単位体重あたりの投与量と投与期間を、実験動物と水を飲むヒトで比較。どの程度近いか、あるいはかけ離れた話なのか?これが、宣伝内容とどうつながるのか、どの程度離れているのか。
・活性酸素を消去するのが本当にいいことであるのか?感染症の時は、体内で活性酸素を作ることで殺菌しているのだから、むやみに活性酸素の効果を減らしていいものではない。このことはきちんと検討されているか?もし本当に目立った消去効果があるなら、風邪ひいたら飲むなとか、おなかを壊したら飲むな、といった注意書きがなされるはずだが……?
・半減期が書いてあるが、ナノ粒子は体内でどう移動するのか?移動しないところで効果は発揮されないわけで……。
○ナノ粒子の安全性の確認
・金属イオンと、目に見えるようなサイズの金属箔と金属ナノ粒子とでは作用が異なる。この区別は正しくなされているか?
・炭素系のナノ粒子(カーボンナノチューブなど)は安全性の確認をする研究プロジェクトが産総研できようとしているところだが、金属ナノ粒子は手つかずのはず。どこまでやったのか?ナノサイズであることそのものが原因の副作用というのもあり得るし、安全性の基準はナノについては別扱いでこれからの研究待ちのはずだが?
・体内での蓄積の有無の確認と測定方法。物質の量に対して測定法は妥当か?
・蓄積の有無や動態は、ヒトで確認されているか?
・医薬部外品の申請基準で、ナノ粒子はどう扱われているか?ナノ粒子というのはいわば新物質と考えるべきであり、規制が追いついていない可能性もあるのだが……。産総研の状況を見ると、厚生労働省が手を打っているかどうかがちょっと不安である。

 いずれにしても、論文と宣伝内容を付き合わせてみる必要がある。「宮本教授の研究自体は普通の科学で、そこから思いついた製品であることも本当だが、ふれこみの内容と研究内容が直接結びつかない」なんてことになってないか、チェックしないといけない。学生向けの演習問題としては使えそうなネタだが。