活性酸素は必要です
月曜日の卒研発表会対応で、開始が早朝なので前日から大学に出てきた。ウチの４年の発表練習の最後の仕上げもしなければならない。
留守電にメッセージが入っていたので聴いてみたら、還元水についての質問。何だか困っておられるようなので、こちらから電話を入れてみた。
日本トリムの還元水について、「万病の元の活性酸素を消去するということだが本当か？」という質問だった。「活性酸素が悪さをすることは確かにあるが、それは病気が原因だったりするわけで、宣伝では原因と結果が逆に伝えられていることがある。また、活性酸素は感染症の原因となる菌を殺すために体内で必要に応じて作られ、必要が無くなれば消される。もし、活性酸素を（体内で）強力に消去する水が本当にあったら、副作用も同時に考えなければならない」といったことを説明し、さらに、「還元水が試験管の中で抗酸化作用を持つことは事実だが、作用は弱い。飲んで効果があるかというと、まず、ほとんど無いと思われる。数十万円の金を払ってまで飲むようなものではない」と説明した。
少し話をしてみて、やはり情報にたどり着くのが大変なのだということがわかった。広告や健康本に書いてあるからつい信じる、という話も出たので、「言論と表現は自由で出版も自由ですし……」と追加しておいた。
水商売ウォッチングの方を見て電話してこられたが、書いてある内容だけではよくわからず、しきりに「不勉強で……」と恐縮しておられた。学校の理科とほんの少しの常識を働かせて判断すればよいのですよ、などと言っていたのだが、一旦学校を出てしまうと内容は忘れ去られるのだろうなぁ……。理科の学習内容が、もう少し現実の変な話に抵抗する形で語られるとよいのだろうけれど、目先の暗記とテスト対策だけになってしまうと、関連性まで考えるというところにはなかなかいかないのかもしれない。
電話が終わって数分して、また電話があって「お支払いどうしましょう？」と言われたのでちょっと驚いた。国立大学法人ですし、この程度のことで料金はいただけません、と返事したのだが……。
最近、別件でパイウォーターを勧めている人とメールのやりとりがあった。なかなか興味深いし、少し考えることもあったので、学校の理科の範囲できちんと扱うとどうなるかをまとめているところだったりする。
ここからは旧ブログのコメントです。
by Toshi at 2007-02-01 20:11:01
Re:活性酸素は必要です
本当にたまたまなのですが、仕事で農作物の「抗酸化測定」についてのコメントを書いており、煮詰まってネットサーフィン中に今回のエントリーを拝見いたしました。
農業の世界でも、活性酸素を抑える能力としての「抗酸化能力」を農作物の評価に用いようとする動きが出てきているようです。何でもそうなのでしょうけれども、あくまで研究対象レベルの事柄であって、評価が定まっているわけではないことも、一般レベルで広告に使われるときには、「決定事項」になってしまっていることを、どう説明すれば良いのかで頭を悩ませておりました（あたまごなしに「それは嘘！」と言ってしまえば、それこそ嘘ですし）。
今回のエントリ、参考にさせていただきます。ありがとうございました。
by 柘植 at 2007-02-48 21:45:48
Re:活性酸素は必要です
こんにちは、apjさん、そして皆さん。
＞「活性酸素が悪さをすることは確かにあるが、それは病気が原因だったりするわけで、宣伝では原因と結果が逆に伝えられていることがある。
そこなんですよね。なんて言うか、警官が不祥事を起こすことがあるからといって、「警官＝悪」として一掃する政策に「あなたは、賛成しますか？」って聞いてみたい気がするわけです。
体内に病原菌などが侵入すると白血球が「殺しに行く」訳ですが、その時に武器として使うのが、酵素反応で活性化した酸素なんですよね。そういう常識さえ持っていれば、こんなヨタ話に騙される事は無いわけです。
幸いな事に、活性水素水なるものに「ほとんど効果が無い」ので、それを飲んでいても、白血球はきちんと活性酸素を作り出して、病原菌と対抗してくれる訳ですけどね。
by apj at 2007-02-22 22:05:22
Re:活性酸素は必要です
Toshiさん、
試験管の中での実験と、実際に食べた時に効果があるかどうかは、まずは分けて考えないといけないと思います。
また、現実の作物に含まれている物質の種類は多いですから、たまたまある作物を集中して食べたら何か効果があったとしても、期待している抗酸化作用によるものかどうかは、また別の問題です。
さらに、抗酸化作用があることがわかったとしても特定の作物ばかり食べていたら、今度は栄養が偏ってよろしくない結果になりそうですし、リスクの分散という点からも良くない。
最初から薬を取るために作っているような薬草はともかく、一般の食用の作物に対して抗酸化を期待するのは、ちょっと違うように思います。
by 柘植 at 2007-02-33 18:27:33
Re:活性酸素は必要です
こんにちは、皆さん。ジョークみたいになりますが、食物の抗酸化性とかいうと、食物を食べる目的に反してしまうことになるような気もします。
我々が炭水化物などを食べると、消化液で分解されてブドウ糖になり、血液で身体の隅々に運ばれます。血液は同時に肺から酸素を取り入れてやはり身体の隅々に運ぶわけですね。
では身体の隅々に運ばれたブドウ糖と酸素はそこで何をするのでしょう？ご存じのとおり反応して、水と二酸化炭素になり、細胞が働くためのエネルギーを出す訳です。さてさて、ブドウ糖が酸素と結合して水と二酸化炭素に変わる時にエネルギーを出す反応を普通はなんと呼ぶかというと「酸化反応」という訳ですね。抗酸化性というのは「酸化反応に抵抗する性質」の事を言います。ということは、酸化反応を起こさなければ良いわけですから、食べ物を食べずに餓死するなり、呼吸をせずに窒息死すると酸化反応が起こらなくて良いという事になります。
こういう事を書くと「意味が違う」と言われる訳ですが、今現在でも、私の身体の細胞の中では肺から運ばれた酸素がチトクローム系の酵素で「活性な状態」となり、ブドウ糖を酸化しては、エネルギーをアデノシン３リン酸の形で取り出しているから、私はこうやって考えたり、動いたりしているわけです。
by nomad at 2007-02-54 09:10:54
Re:活性酸素は必要です
↑
ソレダ！
昨日僕は「マイナスイオンの出るドライヤーはトンデモで時代遅れ！これからは納豆の臭いの出るドライヤーでみるみるフサフサに！」と素晴らしいアイデアを思いつきました。
本日は「窒息健康法」。
コレですよみなさん！
by 越後屋遼 at 2007-02-19 19:29:19
Re:活性酸素は必要です
活性酸素どうこうより、花粉をどうにかしてくれ＞健康業者 （笑）
by apj at 2007-02-35 22:22:35
Re:活性酸素は必要です
nomadさん、
確かに、「酸化＝悪」な健康関連の宣伝を見ると、「そんなに酸化が嫌なら、いっそのこと酸素吸うの止めたらどうです？」って言いたくなりますよね。
越後屋遼さん、
そういえば、「アトピーに効く」というふれこみの怪しい商品は多いですけど、「花粉症に効く」はあんまり見かけないような。宣伝が怪しくない普通のマスクやら点眼液やらは薬局にありますけど。
by よっす at 2007-02-53 08:57:53
Re:活性酸素は必要です
> そういえば、「アトピーに効く」というふれこみの怪しい商品は多いですけど、「花粉症に効く」はあんまり見かけないような。
でもないようです．
「花粉症に」 「効く」 でググったら，怪しげなものがいくらでも出てきます．
「特定の銘柄の泡盛が効く」という？？？な情報を意味ありげに報道したテレビとか．
http://www.j-cast.com/2007/02/10005411.html
花粉症に効く着メロを売り出し「鼻腔を振動させる周波数が云々」なんて説明をつけてたりとかするのは，
冗談なんだか本気なんだか（作り手も買い手も）．
http://allabout.co.jp/computer/cellphone/closeup/CU20040328A/
ほかにも，通販サイトをみてたら怪しげな花粉症対策健康食品なんぼでもでてくるみたい．商魂たくましい．
by よっす at 2007-02-53 08:57:53
Re:活性酸素は必要です
> そういえば、「アトピーに効く」というふれこみの怪しい商品は多いですけど、「花粉症に効く」はあんまり見かけないような。
でもないようです．
「花粉症に」 「効く」 でググったら，怪しげなものがいくらでも出てきます．
「特定の銘柄の泡盛が効く」という？？？な情報を意味ありげに報道したテレビとか．
http://www.j-cast.com/2007/02/10005411.html
花粉症に効く着メロを売り出し「鼻腔を振動させる周波数が云々」なんて説明をつけてたりとかするのは，
冗談なんだか本気なんだか（作り手も買い手も）．
http://allabout.co.jp/computer/cellphone/closeup/CU20040328A/
ほかにも，通販サイトをみてたら怪しげな花粉症対策健康食品なんぼでもでてくるみたい．商魂たくましい．
by 柘植 at 2007-02-19 22:13:19
Re:活性酸素は必要です
こんにちは、皆さん。
ついに、花粉症対策をうたう健康食品でアナフラキシーショックの事例がでましたね。少し「減感作療法」で調べてみると、かなりの数の健康食品が「薬事法違反」にひかかりそうです。
減感作療法で思い出すのが、２００５年にテレワーク制作で捏造された番組ですね。こういう減感作療法もどきをうたう健康食品に対する捏造番組の影響も気になるところです。