と学会例会
と学会例会に参加。発表ネタは3つ。
東大名誉教授の飯田氏が出した文書が凄いという発表(新体系物理学=量子力学無しで物理学を構築できると主張する内容、飯田バイオンとか出てるやつ)の発表があった。それで、急遽お茶大冨永教授が物理学会誌の巻頭言に載せる予定のフレーズを紹介。冨永教授は飯田研出身で、時々飯田元教授から電話で新体系物理学について延々話を訊かされて、「先生のおっしゃることはわかりますが同意できません」ときっぱり返事をしている。紹介したのは
確信犯は論外として、うっかり本人が思い違いをしたり、理解不足だったりすると、知らない間に世間を騙してしまうというリスクはすべての研究者に潜在しています。
というあたり。師匠が新体系物理学の彼岸へ行ってしまい、弟子はこういうことを書いているということで、まあなかなか味わいぶかい。
次は明示図書の道徳の本について。「学校「道徳シート」とエンカウンターで進める道徳 高学年」。はじめに、で
この本は、道徳の授業を少しでも楽しく充実したものにしたいと願っているあなたへのプレゼント。新たなヒントと、具体的な工夫を教えてくれる本です。
と書いてあり、実践例の一発目が「水からの伝言」である。トンデモは著者と出版社にくっついていることがあるので、別の本も調べたらしっかりネタがあった。「エンカウンターで道徳」諸富 祥彦・土田 雄一著、明治図書。126ページに「言葉の影響を実感させる道徳の時間」という項があって、
1 この実践のよさ
★導入に理科の授業を生かしている。
★子どもたちの生活と密接につながる学習活動である。
★言葉のもつ「こわさ」と「よさ」を実感できる。
★心をセルフコントロールするきっかけづくりができる。
道徳の根拠を自然科学に求めるのはヤメロ、というツッコミとともに、これってやっぱり水伝か?と思ったのだが、紹介されている例は予想の斜め上だった。132ページから始まる「5 授業記録」には、瓶の中でろうそくを燃やしている絵が描いてあって、こんな文章が添えられていた。
〔導入〕
○理科の実験を思い出させる
T ビンの中のろうそくの炎はどうなりますか。
C だんだん小さくなって消える。
C 酸素が使われて、二酸化炭素が増えるから。
T どうしたら、この炎を消さずにまた、大きくできるでしょう。
C 空気を入れ換える。
C 酸素を送り込めばいい。
T 酸素を送り込むと、もっと炎が輝いて、大きくなりましたね。二酸化炭素のときは、どうでしたか。
C すぐに炎が小さくなって消えた。
〔展開〕
T ろうそくの炎を「心の炎」と考えてみましょう。酸素と二酸化炭素と同じような働きをしているのはなんでしょう。心の炎が明るく輝くときは?
(以下略)
これはどう見てもあれだ、ろうそくが燃え尽きると寿命が尽きるとか、太くて勢い良く燃えるろうそくの持ち主は殺しても死なないとか、死神が火を吹き消すとその人が死ぬとかいう……。こんな例え方をされると別の光景が思い浮かんで、道徳どころではなくなる罠。一体どういうオカルトネタなのかと……。
3つ目のネタはがらっと変わってマジンカイザーイタリア語版の紹介。日本版に比べて本がやたらと充実してるとか、アニメDVDは本の付録の扱いだということを説明。無駄に多い各国語字幕とか、日伊対訳字幕収録とか……、まあ、アニメばっかり見て語学を勉強しましょう、という結論である。
本日の戴きモノは「絵心経付きの般若心経」。100円ショップで売ってるらしい。日本史の資料集なんかでもたまに紹介される、字が読めない人のために絵で発音を示したもの。お釜の絵を逆に描いて摩訶と読ませるというアレである。ところが、絵から正しい発音を導くためにはやたらと高度な知識と連想力が要求されるため、すなおに平仮名の読み書きを覚えてルビを振った方が易しかったんじゃないかというオチに……。
ここからは旧ブログのコメントです。
by 山本弘 at 2007-03-57 20:14:57
Re:と学会例会
Amazonで調べてみたら、諸富先生って心理学や教育関係の本をずいぶん出してるんですね。でも自然科学には弱いのか(^^;)。
この先生に、この歌を聞かせてあげたいです。
http://www.sham.jp/studio/product/06falsie/cd.shtml
by Enzo Romeo at 2007-03-37 20:35:37
Re:と学会例会
「明治図書」が「明示図書」になってますよ。2日のもですが。
by apj at 2007-03-45 21:57:45
Re:と学会例会
Enzo Romeoさん、
ご指摘ありがとうございます。修正しました。
by hrgy at 2007-03-37 01:40:37
Re:と学会例会
大学院時代は,飯田氏の居室と壁をはさんで隣にあった
院生の部屋にいたものだけど,ときどき院生室に入って
来ては,「新しい論文を書いた」「5分でいいから話を
聞いてくれ」と院生を捕まえ回っておられた.「理論の
主旨が理解できません」と,ズバリと答えていたような
記憶があります.そのころ配っていた,飯田理論の論文
コピーくらいはストックのどこかに紛れているかもしれ
ません.
by apj at 2007-03-38 02:49:38
Re:と学会例会
山本弘さん、
CD買いに行く余裕が無かったので、iTunes Storeで買ってしまいました。
CDジャケ絵と歌詞を印刷して、既にオフィス入り口に貼ってあるあるある捏造のNature記事の真下に貼り付けました。
by ながぴい at 2007-03-59 19:21:59
Re:と学会例会
>ギリギリ科学少女ふぉるしぃ
わぁ、なんてマニアックな歌詞なんだ!
いるんだね、こ~ゆ~の作る人…
by apj at 2007-03-13 23:58:13
Re:と学会例会
何かボケていてほとんど同じコメントを書いてしまったので削除して修正。
曲の方は、作業してるときは流しっぱなしにしています。おあつらえ向き(?)に、女子中高生理系進路選択支援事業の企画書を書けという仕事がお上から降って来てまして。企画が通ったらちゃんと許諾取って会場で流してやろうかなこの曲。
まあ、とにかく、音楽熟成協会推薦のモーツァルトよりよっぽど(・∀・)イイ!
by 田部勝也 at 2007-03-02 02:40:02
Re:と学会例会
>apj氏。
2番以降の歌詞も秀逸(「水伝」ネタあり」)、かつ、パッケージ版のおまけ『小池雅也 REMIX Version』内のモノローグ部分(?)も笑えるので、CD購入をお勧めします。
余談ですけど、「♪よく出来た科学が魔法と区別がつかないせいで、よく出来てない科学も、魔法と区別がつかない」という歌詞は、深いかも……。
by 氷村 at 2007-03-24 03:02:24
Re:と学会例会
あるある捏造とふぉるしぃの組み合わせネタならこんなのもありますよ。
http://iiaccess.net/upload/view.php/000915.swf
で、ジャケ絵を貼ったのなら、ついでにジャケ裏(と言うか歌詞カード裏表紙)を
http://ascii24.com/news/inside/2002/09/03/images/images695827.jpg
こいつと並べて貼っておくともっと楽しいかも知れません:-)
by 氷村 at 2007-03-17 03:17:17
Re:と学会例会
あ、iTunes Storeってダウンロード販売だったのですね。失礼致しました。
ジャケ裏のイラストは山本弘さんの貼られたペ-ジの歌詞の横に載っています。
by apj at 2007-03-54 09:01:54
Re:と学会例会
ろうそくの元ネタは、落語の「死神」
http://www.niji.or.jp/home/dingo/rakugo2/shinigami.html
ですかね。こんな薄っぺらな道徳のネタにするくらいなら、「死神」を鑑賞した方が、よっぽど考えさせられると思うのだけど。
wikipediaの参考項目に「魔太郎がくる!!」があったけど、蝋燭=人間の命ってネタがあるのかしら。あんまり記憶にない。エコエコアザラクとかつのだじろうの漫画あたりならありそうな気が。あっても不思議はないと思って読み返した「悪魔の花嫁」には出ていなかった。