サンデー毎日4月15日号に「松岡農水相の”ナントカ還元水”で話題の機能水「水素水」は体にいいか?」と題する記事が出た。水素水の効果を肯定的に書いているが、今の段階でこの書き方だと、インチキ宣伝を助長するだけの結果に終わるだろう。
一方で以前から飲用としての可能性も示唆されてきた。それを裏付ける科学的根拠として、電解還元水には有害活性酸素を消去する作用と活性酸素による遺伝子(DNA)損傷への防御作用があることを証明する論文も発表されている。
白畑グループの細胞培養の実験のことだと思われるが、培養系で結果が出たからといって、飲んで何らかの効果があるかどうかはわからない。最近の平岡グループの動物実験の結果では、飲用しても目立った抗酸化作用は見られなかったという結果となっている。
水素水については昨年3月に行われた「日本薬学会」で、県立広島大生命環境学部の三羽信比古教授らのグループが、新規の高濃度溶存水素水に抗がん効果と活性酸素抑制効果が認められるという研究成果を発表している。
ヒトの舌がん細胞に通常の水と溶存水素の多い水を加えて培養したところ、通常の水ではがん細胞は増殖を続けたが、溶存水素の多い水では増殖が3分の1に抑制されたという。発がんの元凶と考えられる活性酸素が、溶存水素によって消去されたとの解釈である。
これもまだ細胞培養の段階である。細胞培養の場合は、細胞外の環境が細胞膜を隔てただけで直接細胞に影響を及ぼすので、外の環境の違いに敏感である。一方、飲料水として摂取する場合は、水をそんなには飲めないし、単位細胞あたりの水素水の量を考えると、細胞培養で効果があったのと同じ条件が人間の体内で実現するとは到底考えられない。また、体内に入ってから目当ての細胞に到達するかどうかもはっきりしない。細胞培養の結果を根拠にして、飲用したときの効果を期待するのは間違っている。健康食品・グッズ関連の宣伝の多くが、量の違いを全く無視して行われているという現実があり、サンデー毎日の記事はこういったやり方を助長するものである。
単純に分子状の水素が多く含まれた水が、試験管内で一定の抗酸化作用を示すことは事実だが、飲料水につかって意味があるかどうかとは別問題である。また、この記事では、水素の濃度や細胞に暴露した量など、定量的なことが何一つ出ていない。この記述をもって、直ちに、「がんに効くから水素水を飲もう」ということは、言ってはいけないことである。
一般にはあまり知られていないが、プロ野球や大相撲、トライアスロンなどで活躍するトップアスリートが水素水を愛飲してり、「疲労回復が早くなった」と、好評だというのである。
インチキゲルマニウムブレスレットを流行させる片棒をかついだのが、この手のスポーツ選手達だったことをもう忘れたのだろうか。
医療の世界にも、水素水の抗酸化作用に期待を寄せる医師がいる。兵庫県姫路市の入江病院の入江善一院長もその一人だ。
「水道水を入れたコップにクリップを入れたままにしておくと、2日でさびてしまいますが、水素水ならさびません。これは活性酸素を中和する働きがあるからで、水素は体のさび、すなわち老化や病気を抑える方向に働くと考えることができます。」
高校の化学を勉強しなおしてもらいたい。ってか医者のくせに何でバカ健食業者もどきの発言をしてるんだよ。単に溶存酸素量の少ない水にクリップを入れただけでもクリップは錆びない。錆の話をするのなら、水素以外の気体がどれだけ溶けているかを言わないと何の意味もない。また、クリップが錆びないことと、水素水が人間に効くかどうかは全く別の話である。
サンデー毎日のこの記事を鵜呑みにしてはいけない。
【追記】
マルチのナチュラリープラスが扱っている水も、この毎日新聞の記事の写真に登場している。肯定的な記事とセットになっているので、マルチの販促にこの記事が使われそうである。サンデー毎日の記事がマルチの販促に使われてもかまわないというのが、編集部の考えなのだろうか。