「自然のしくみ百科」
丸善から「自然のしくみ百科」が出ていたのでつい買ってしまったが、8000円は高い。紙の質も高密度2色刷だが、1色刷にするとか新書サイズにするといった方法で値段を下げて出して欲しかった。内容は自然科学全分野に及んでいるし、トピックの説明のところに歴史的経緯が簡単に出ているので、どういう流れの話なのかがよくわかる。広く普及してほしい本だと思うが、この値段だと手出しする人が限られて、数が出ないんじゃないか。なお、amazonではソフトカバーとなっているけど、ハードカバー製本で、値段の方もamazon定価8400円じゃなくて8000円である(訂正:amazonは税込み価格を表示、本は税無し価格+税、で、消費税率変更に対応している)。
ただ、この本は翻訳だが、元の本の著者の着眼点、特に著名な科学者についての記述が……。
ジョン・ティンダル(チンダル効果のチンダルさんね)について書いてある部分の最後に「彼は妻によって誤って調合された薬を飲んで亡くなった。妻はその後47年生きた。」って、そりゃほとんど毒殺だろーっ!!(汗)。ベンジャミン・トンプソン(後のラムフォード伯)については「1804年にはパリに移り、アントワーヌ・ラヴォアジェの未亡人と結婚した。その結婚は幸せなものではなかった。ラムフォードは、ラヴォアジェがギロチンで死んだのは幸運だった、と述懐したという。」一体どんな悪妻だよ!!ってか悪妻ってレベルじゃねーよw。
変なところで知識が増える記述もある。ヘルモントについては「傷というものはそれをもたらした武器を処理することによって治癒できるという当時支配的だった俗説に疑問を呈して教会と対立したという」そんな俗説があったのか……ホメオパシーの同類みたいな発想だな。
「雑学」に分類されているがマーフィーの法則「失敗する可能性のあるものは失敗する」まで入っている。他はボルツマン定数とかホール効果とか、星の進化とか、フィボナッチ数とか、まあ理科年表にも出てきそうなネタを含めていっぱい解説していて予想の範囲なのだが、マーフィーについては快挙と呼ぶべきなのか?
美的基準なんて項目もあるな。「科学理論は実用的基準と並んで美的基準によっても評価される」。
「相補性原理」のところには「科学哲学の連中は「波と粒子の二重性」から、そこに本来含まれていること以上の結論を引き出そうとしているように私には思われる」。トンデモサンモナー、と突っ込んでしまいましたよ私ゃ。
「バックミラー」(今となっては否定されたか置き換わったもの)に分類して「生命力」も登場する。「ニューエイジ科学には怪しげな生気論がほとんどそのままの形で浸透している」なんて書いてあったり。同じく、「自然のバランス」のしょっぱなには「自然のバランスという神話は一般大衆の中にしっかり根付いている。」と書いてある。何でも自然がいいという人への見事なツッコミになっている。
読んでいて思わず笑える記述があるので、お薦めはできる、できるんだけど……文庫版でもいいからもうちょっと安くならないのか。しつこいようだけども。
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