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水素による治療

Posted on 5月 9th, 2007 in 倉庫 by apj

nature medicineのarticleより。
 水素ガスを使った治療の話。この件について、「活性水素」と関係あるのかとか、怪しい宣伝に使われないかといった話題が、メールでもやってきたし向こうの掲示板にも出ている。
 実験と講義で多忙のため、じっくり読む時間が無いので今後以下の内容は訂正書き換えがあるかもしれないが、早めに考えた方がいいので一応のサマリーを書いておく。この話に詳しい方は、トラックバックでもコメントでもしていただいて、変なネタに使われないように正しい情報を流すことに協力していただけるとありがたい。

・いわゆる「活性水素」とは無関係で、単なる「水素ガス(分子)」についてのものである。
・水素分子が活性酸素に対して抗酸化作用を示すことは、既に試験管での実験で知られた事実である。
・当該論文中で、水素を溶かした培養液を使った細胞培養実験の結果も示されているが、細胞培養実験では、物質のやりとりは膜を介して細胞外と直接行われる。このため、細胞外の物質の影響を敏感に受けることになる。
・細胞培養の結果から、「飲んだら効果がある」という結論を導き出すことはできない(味噌汁はおいしく飲めても味噌汁中では細胞培養ができないように、飲む場合と細胞培養の実験系では条件が大きく違う)。この論文と「水素水を飲めば云々」という話は今のところまったく結びつかない。
・in vivoでの効果について、注目するところは、血中水素ガス濃度である。水素2%の時で動脈血で20ng/ml、静脈血で10ng/mlという値が出ている。肺でのガス交換の結果こういう値になったのだろう。水素の効果を「便乗して」謳う宣伝が出てきた場合は、血中水素ガス濃度の値がどうなっているかまず確認し、値が大きく離れていたりそもそも測定値自体が無い場合には、当該論文とは全く別の話であると判断するべきである。

 例の松岡農水相の件で、水素水(しかもマルチ)を宣伝しちゃったサンデー毎日なんてのもあるわけで、ちょっと用心した方が良さそうである。