ズレてる気がする
またまた元村さんの記事より。
発信箱:されど博士=元村有希子
恒例の「大人になったらなりたいもの」調査(第一生命)は、今回も「学者・博士」が男子の3位に入った。1位は野球選手、2位はサッカー選手。日本の科学技術も捨てたもんじゃないと思う一方、意外でもある。
男の子にとって「学者・博士」はあこがれの職業なのだろうか。
彼らの多くはおそらく、実物よりもアニメやゲームの中の博士を思い描いていると私は想像する。「ポケットモンスター」のオーキド博士や「ムシキング」のネブ博士は多彩なキャラクターを鮮やかに解説し、「名探偵コナン」の阿笠博士は探偵グッズを発明して主人公の活躍を支える。かつて少年たちがお茶の水博士にあこがれたように、21世紀の少年たちにも、博士の知恵と技はまぶしく映っているのだろう。
ところが博士の現実は甘くない。一つは90年代後半から深刻化した「余剰博士」の問題だ。毎年1万人以上の博士が誕生するが、約3割が職にありつけない。日本経団連が2月に公表した調査では、回答企業71社が採用した新卒技術系社員のうち、博士の割合はわずか3%だった。
もう一つは「低品質博士」。報われないイメージから、博士課程への進学率は既に下がり始めている。「優秀な学生は博士にならずに就職し、残りが博士課程に進む。その結果、世界と戦える博士が減り、優れた博士を活用している海外に追い抜かれる」。経団連が描く悲観的シナリオだ。
博士の問題はつまり質の確保と雇用の問題であり、大学と産業界が鍵を握る。少年たちの夢に応える意味でも、長く重い課題と肝に銘じるべきだろう。(科学環境部)
毎日新聞 2007年5月16日 東京朝刊
えーと、思いっきり実感に合わない件。今時の子供がアニメやゲームの中の博士を見て職業に選ぶのか?と思うわけで。と言うかむしろコレはkikulogで出ていた
よく僕らが冗談で言うんだけど
(1)研究者に向かって「博士」と呼びかける
(2)教授向かって「教授」と呼びかける
(3)研究者は分野にかかわらず白衣を着ている
(4)教授は部下に「やっておいてくれたまえ」などの「たまえ語」(今考えた)を使う
などなど、科学者自身には(おそらく)なんの罪もないステロタイプが横行しているわけです。
(by きくちさん)を助長する方の話ではないかと。
#いやでもこの間「マジンカイザー」のDVDを見たら弓教授が、指揮官卓に座ってるだけで汚れ仕事とは無縁っぽいのに白衣姿で登場していて(こいつは初出のマジンガーZでもどこぞの政府関係の委員会か審議会に行くのに白衣着用だったし←実験着なら他所を汚すから脱いでいけよ)、21世紀にもなってステロタイプのリストが相変わらずなのはひょっとして「お前が元凶かっ!やっぱりお前のせいなのかーっ!w」と突っ込んだのはまあどうでもいいんだが。
ところで、文系白書ブログで書かれた、この記事に対するコメントの方もピントがずれているので、こちらに書いておく。まず、
何度も書いているけど、「博士(学者)≒芸人ないしはアスリート」ですから、制度的に過保護にしちゃいかんのよ。
というのは主張としてはアンバランスだろう。博士をそういう扱いにするのであれば、養成の方法や制度だって芸人やアスリートと同じにしないとおかしいのではないか。現実には、大学に対して「博士課程の学生の定員を満たせ」「一定数は学位を取れるようにしろ」「できなきゃ交付金を減らずぞ」という圧力がかかりまくっている。その上、大学院改革の方向は徒弟制度や囲い込みを無くせというもので、ますます芸人やアスリートを養成するのとは違う方向に向かっている。この状況で養成された博士に対して、芸人やアスリートと同じだというのは無理がありすぎる。一体どこの世界に芸人を養成するのに「一定以上新弟子をとれ」「定員満たさなきゃ金を出さないぞ」などと圧力を掛ける勢力が居るのかと……・。
なお、経団連に関しては、嘆くなら博士の一部でもいいからよい待遇で雇って、そのことをアピールしてから言ってもらいたい。企業で報われるイメージが定着すれば、人材が集まるに違いない。博士を雇う気もないのに審議会にしゃしゃり出て制度だけ弄くり回そうとするのは、無責任でしょう。
それから、当時の文部省が「企業が博士を積極的に採用するつもりがある」と読んでいた節もある。1995年頃だったか、既に大手電機メーカー勤めの先輩から、メーカーは博士の採用に積極的ではないと聞いたので、文部官僚やってた知り合いに会った時にその話をしたら、「そんなはずはない、企業の要望が重点化を後押しした」と言われて信じてもらえなかった。文部省の読みは大学院の運営に影響するはずだから、大学側としては職業人養成のつもりで博士過程に学生を入れたのではないか。まあ、これもすぐに全員の意識は変わらないだろうから、大学の上の方がそのつもりでも研究室単位だと研究者養成というか徒弟制度を思い描いていた人が居たのだろうとは思うけど。
ところで、野球選手、サッカー選手ときて博士なら、むしろ「目指してなれるとそれなりに楽しいが、実際にやろうとするとコケる可能性の方がずっと高く、コケると後が悲惨な職業」で括る方が適切ではないかという気がしてくる(うまくいく率に応じて、うまくいったときの収入の方もしっかり差が付いているが……)。それがどうして「日本の科学技術も捨てたもんじゃない」となるのかが謎である。ところで「大臣」の方はどうなったのだろう?「末は博士か大臣か」って言葉がある時期まではあった筈なんだけど。
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