年休をとって裁判傍聴:白河高校PTAの労働争議
本日は年休を取得し、福島地方裁判所白河支部へ裁判傍聴のために出向いた。酔うぞさんのところで既に紹介されている、福島県白河高校PTA雇いの事務職員の雇い止め問題の労働争議の第二回口頭弁論が13:30から行われるのを見るためである。まあ、大学だって法人化したので大学の職員もこの先労働争議とは無縁ではいられない、それならいっそ予習がてらに見ておいても損はないと考えた。
事件番号は平成19年(ワ)第36号 雇用契約確認等。原告は一労働者なのでネットではとりあえず名前を伏せておく。被告は、福島県立白河高等学校父母と教師の会(以後白河高校PTA、あるいは単にPTAと略)。
一号法廷(ラウンドテーブル)で行われた。裁判所には12:30頃到着。既に福島テレビの車が来ていて、しばらくすると門のところにカメラマンが集まっていた。13:00頃、法廷のある3階に行くと、裁判所の腕章をつけた職員が二人いて、受付ができていた。傍聴席は記者12、一般12で、4人がけの椅子を6つ並べてある(増設して6つになった)。記者席が余ると一般を入れる、一般が12人を越えると抽選、ということで、13:10から整理券が配られた。抽選になって外れたら何しにきたかわからんな、と思いながら整理券を持って一列に並ぶ。13:20になって一般の列に12人だったので全員傍聴席に移動。続いて記者さんと遅れてきた傍聴人が入った。
原告は、原告本人と代理人2人。被告は欠席。横浜地裁のような、傍聴席と法廷の間の仕切りはなかった。傍聴人は最終的に25人、うち記者8人。
被告欠席の理由は、白河高校PTAを解散したから対応できないということで、結審、次回7/10、2号法廷にて13:10より判決を言い渡すということになった。
弁論そのものは一瞬で終わった。高校関係者らしい人数人はそのまま立ち去り、原告代理人による会見が1階であったので、記者さんや支援の人に交じって一緒に部屋へ。
以下は、代理人からの状況説明。
まず、訴状は前回も今回も被告に送達した。白河高校宛に送達したら受け取り拒否にあい、白河高校PTAの現会長の職場と自宅を調べてそちらに送達したら、またもや受け取り拒否。郵便局員がとにかく置いてくるという、差置送達という方法で、送達できたと見なして訴訟手続きを進めた。教育現場や県立高校といった公の組織で起きることではないのではないか。
今回は、もう一回だけ被告に弁論のチャンスを与えようという意図で弁論を行ったが、またも無視されたため、結審となった。
労働運動としては、元の職場に原告を戻すところまで戦いを続けたい。
PTAの対応は極めて異常である。事務職員が不要というわけではないが、雇い止めを強行し、組合が入ったからという理由で解散した(団体の目的を果たしての解散ならわかるが、学校が存続する限り必要な団体を訴訟を理由に解散している)。
被告からは、解散したという上申書が1通出てきたのみである。訴訟手続きに必要な書類を送っても、全て受け取り拒否をしている。
解散するとしても、清算手続きが残されている。雇い止め問題には口を閉ざしたまま清算しようとしており、提訴しても出てこない。しかし、裁判所は、清算中の団体にも当事者適格を認めている。
被告欠席のため、このままだと請求が認められる可能性が高いが、雇用が継続しているという判決になった場合、賃金の支払い義務が発生し、最終的には会長が清算人になる(つまり会長が弁済するということ)。また、債権者に弁済してからでないと、清算手続きが無効となる。
裁判所からの呼び出しを無視するという対応をしている学校側当事者の校長は、社会科の教師である。
福島県ではPTA雇用の職員が県内に100人ほど居る。学校の事務費をPTAから出させている。白河高校の場合だと、PTA会費の収入は12万円減ったが、人件費を削った分100万円の余裕が出たはずである。その差額が、モップリース代や新聞購読費に使われている。
現在、清算手続きを強行しているPTAであるが、保護者への会費の返還が白河校長名義で行われている。
以下は私の見てきたことと感想。
任意団体であるPTAに裁判所が当事者適格を認めたというのが、ちょっと意外だった。法人格を持つのかどうかがそもそも疑問だと思っていたので……。
既に、原告を支援する会ができていた。福島県労連の議長の小川さんが中心、県の教職員組合の書記長も来ていた。せっかくなので名刺交換してきた。小川さんから、どこかで見た記憶が……と言われたが身に覚えがない(汗)。私の方は、特に支援ということではないが、ネットの方から来た野次馬です、と正直に自己紹介した。
新聞報道に出ていた、PTAに代わる連絡会のようなものを作ったという話について。役員や学校サイドのメンバーが共通なら、法人格否認の法理を適用し、債務を負わせるという展開だと思ったのだが……ときいてみたら、支援する会でも新しい連絡会の実態を十分知らない様子だった。
また、清算法人(?)の代表者である会長が返金するのではなく、校長名義で返金が行われているという時点で、清算手続きとして違法というか無効ではないかということ。この点については小川さんも同意してくれた。逆に、これが無効でないとしたら、連帯して校長と会長が清算業務を行っている実態があるということになるから、ひょっとするとPTAの解散無効になった後の諸々の処理についても連帯責任ということになったりはしないのだろうか。
一番信じられないのは、裁判手続きにシカトを決め込んでいるのが県立高校の校長(社会科)やらPTAやらだということだったりする。これまで一体何といって、公民やら政治経済の授業をしてきたのだろう。三権分立について生徒に教えても、説得力を持つとはとても思えない。生徒の目の前で「司法手続きはシカトします」というのを現在進行形で実践中なわけで。大体、取り込み詐欺でもやってばっくれようかって企業なら訴状受取拒否もありうるが、県が運営している公の組織の長とそこにくっついている団体の長が、そろって国の裁判手続きをまるきり無視するというのは、一体ここは法治国家なのかと目眩がしてくる。
いずれにしても、解散したところで裁判逃れはできないし、最終的には校長あるいはPTA会長の個人財産を差し押さえることになっても責任を問われることになるのではないか。
また、清算手続に瑕疵があって無効とされた場合、解散して逃れたつもりが解散すらできていないことになる。PTAの他のメンバーは本当にこのことを認識しているのだろうか。
PTAといっても、それぞれ保護者の皆さんは職業人のはずである。ということは、職場で法務に関わってるとか労組の仕事をしているとか、そもそも行政書士や司法書士をしている、社会保険労務士をしている、という人だって混じっているのではないか。それが、裁判逃れの解散つまり偽装倒産のようなことをして通用すると思っているとは、とても信じられない。本当に正しい情報が伝えられているのだろうか。
とにかく不思議なことの多い事件である。
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