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【判決】平成19年(ワ)第140号 損害賠償請求事件

Posted on 7月 3rd, 2007 in 倉庫 by apj

 飛騨の中の人を訴えていた件で、判決が来た。

主文 
1 被告は、原告に対し、20万円及びこれに対する平成19年4月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する
3 訴訟費用は、これを15分し、その1を被告の負担とし、その余は原告の負担とする。

 理由を読んだところ、きわめて妥当な判断がなされたと考えられる。名誉毀損を認めた上で、私が、被告とのやりとりのページを公開したことも考慮した上で、その公開がきっかけであったことを差し引いての認定という形になっている。つまり、やりとりを公開したことが、ある程度対抗言論となっているとみなされたのではないかと思う。ウェブでの表現や議論は、極端な中傷や個人攻撃としてエスカレートしない限り、対抗言論でもってお互いに名誉の回復を図るのが健全だろう。何でもかんでも訴訟で解決するという考え方になってしまうと、司法は機能しているが、コミュニケーションは最初から不能あるいは壊れている、ということになるので、社会としてはまずいだろう。また、今回の提訴で私が一番裁判所に認めてもらいたかった、大学に対する名誉毀損については、理由中に、

なお、これらのうち、被告がお茶の水大学ホームページ運営委員会に対して電子メールを送信したものについては、特定かつ少人数に対してされたものとして公然性の観点から名誉毀損の成否が一応問題となり得るが、特に読者を限定しない形で私立大学内の委員会組織あてに送られた電子メールの内容は、他者に伝播する可能性は十分に存すると認められることから、名誉毀損が成立するものと認められる。

 という判断がなされた(お茶の水大は国立大学法人だが、まあこの部分は常識的に考えて、国立私立を問わず成立すると考えられるだろう。)。実は、飛騨の中の人を訴えた理由のかなりの部分が、これを裁判所に認めさせたいという点にあった。告発系のウェブサイトを大学内に作ると、大学宛のクレームというのが当然やってくる。そのクレームに、好き勝手なことを書いて発信者の名誉を毀損してはいけない、ということで、「大学に何でもいいからとりあえず文句を言えば何とかなるんじゃないか」という安易な考え方に対して、一定の歯止めをかけることができるのではないかと理解している。

【追記】判決全文をアップした。なお、賠償金額20万円というのは、飛騨の人が示談金と称して要求してきた金額そのものでもある。何だかシャレのわかる裁判官というかブーメラン判決というか……。