弁護士なら当事者とそれ以外の区別くらいしてくれ
皆さんがタクシーに乗って,運転手に不快な思いをさせられたらどうします?銀行の受付窓口で不快な思いをさせられたら?こりゃひでーなーという広告を見たら?食品を買って何か異物が入っていたら?
まずは,そのタクシー会社や銀行,広告主,販売業者にクレームを入れるでしょ?
そしてそのタクシー会社,銀行,広告主,販売業者の対応もふざけてるなって思ったら?
そしたら,タクシー業界,銀行業界,広告主や販売業者が属する業界を監督する監督官庁(国・行政)に苦情を入れるでしょ?
まあ、クレームをつけるかもしれないけど、それは私が当事者である場合、つまり、タクシーに乗ろうとした・乗った場合、その銀行を使った場合か、その食品を食べようとした場合に限られる。だから、どこぞのバラエティ番組で、「この間さあ、タクシーに乗ったら運転手の態度がとんでもなく横柄だった上に遠回りして普段の1.5倍も金をとられた、これはみんなでクレームつけなきゃね」などという発言を聞いたからといって、私がわざわざクレームをつけることはしない。blogで番組もろともネタにすることはあるかもしれないが。
いずれにしてもクレームは問題の影響を直接受けた当事者がつけるのが基本であって、伝聞や風評に基づいてつけるものではない。
橋下弁護士は、きちんと対処するつもりがあればクレームはつけられた側にとって役立つと考えているらしい。確かにこれは一般論としては正しい。まっとうな企業なら、ユーザーの(←ここ重要)クレームをサービス改善に役立てるだろう。しかし、ユーザー以外の無関係な人々による伝聞と風評に基づくクレームが殺到したとしても、サービス改善につながる情報などまず引き出せない。そういうクレームは、本来の業務の妨げにしかならない。
さらに、具体的なサービスと広告をごっちゃにして議論しているのも乱暴すぎる。広告については、それを見て情報を受け取った人全てが当事者になるから、見た人は誰でも「広告の内容についてのクレーム」ならつけてもかまわない(広告に出ているサービスそのものに対するクレームではないことに注意)。しかし、個別のサービスへのクレームを正しくつけられるのは、そのサービスを利用した人だけだろう。
さて、橋下弁護士は、直接の当事者でもない視聴者に、クレームどころか弁護士に対する懲戒請求をするように煽った結果、提訴されている。
誰でもクレームをつけるはずだとか、クレームの受付場所がないといったことをいくら並べ立てても、当事者でない人に対して風評に基づく懲戒請求を出させるように誘導した事実は消えない。橋下弁護士のエントリは、当事者かそうでないかを敢えて無視し、一般論を持ち出して読者を煙に巻こうとしているだけのように見える。
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