これはひどい
「でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相」福田ますみ著 新潮社。
2003年6月に、福岡の小学校で担任の教師が生徒に向かって「早く死ね、自分で死ね」などと暴言を吐いて体罰を繰り返したという事件があったと報道された。マスコミはこの教師を大バッシングし、医師はその子供がPTSDになったと診断し、550人もの弁護士が弁護団に名を連ねて教師と福岡市を提訴した。
ところが、この騒動がすべて、子供の親の虚言癖によるでっちあげだったというもの。
体罰は事実無根、PTSDを診断した医者は実はまともな診断をしていない、校長も教育委員会もまともな調査をしていない、マスコミの取材も不足していた。
事態が悪化した原因は、
・モンスターペアレンツに比べて教師の立場が弱かった。
・マスコミのネタにされることを避けるため、事なかれ主義に走った校長が、ろくな調査もなしに言葉尻だけとらえて教師が悪いことにして無理矢理謝罪させた。
・親の行動が異常で、言ってもいないことを言ったといい、反対の意見を言う別の保護者に怒鳴り込んだりしていたので、みんなが避けていた。
この事件から得られる教訓は次のようなものだろう。
・謝罪は事態を悪化させ、嫌がらせ訴訟の賠償金上乗せに利用されるだけ。
(謝罪が親の妄想を暴走させて巨額の賠償金を請求する訴訟に発展した)
・同僚や上司の誘導尋問には引っ掛かるな。特に、その個人の判断や意見を認めないといった態度を取ったヤツは明白に敵。
(最初から親の前で謝罪させるというシナリオが校長によって作られていたが、まともな根拠が無かった。校長はそのシナリオ通りに行動することを教師に求めた。)
・クレーマーを親と思うな。敵と思え。
(実際この事件では悪意満々だった)
・事なかれ主義の管理職は敵よりタチが悪い。
(最初から教員を悪者にして親を納得させようとする意図が見えていた。)
・教員が身を守るには、最初から出るところに出るという姿勢が大事。組織は守ってくれない。
(教育のことを考えて、謝罪で済むなら……と譲歩したことが後まで響いた)
・マスコミ対策で組織に箝口令が敷かれた場合は、それに従ってはならない。組織に都合の良い情報だけが発信されて、個人に責任が押しつけられる。
(取材に対して、学校発の情報ではいじめがあったことにされた。)
・個人で勝手なことをして、などと言う連中は、同僚だろうが上司だろうが足を引っ張るだけである。
(取材に対して教員個人が発言したら、学校の作ったストーリーと違うことを責められた)
・処分があったら即座に提訴。
(処分が先にあったためか、一審判決で請求棄却を勝ち取れなかった。現在控訴中。もし、処分の方も争っていたら結果は違ったかもしれない、というのが感想。)
極端なモンスターペアレンツを踏んでしまった場合は、この程度のことを考えていないと、多分身を守ることはできない。
もう一つ別の教訓としては、正義(を信じるヤツ)ほどタチの悪いものはない、といったところか。
【追記】
「万国の労働者よ,団結せよ」って有名なスローガンがあるが、これからは「全国の教師よ、法廷闘争せよ」をスローガンにした方が良くないか?
amazonの書評には、現職教員で、同じような目にあったらしい人の書き込みもあった。教員志望の学生には必ず読んでもらいたい本である。
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