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「ニセ科学訴訟」は、実は実現が難しい

Posted on 12月 13th, 2007 in 未分類 by apj

 つむらさんのblogを読み直したりして思ったこと。これまで、ニセ科学批判が企業の利害と結びつくと、批判活動そのものが訴訟のリスクに晒されるということを認識していたが、訴訟でニセ科学批判の内容について争うというシチュエーションは、実はなかなか実現が難しいのかもしれない。
 お茶の水大が訴えられた件は、ニセ科学とは関係のない「マルチ商法」をからかった内容についてだから、訴訟の結果がどうなろうが、結果が出てしまえばニセ科学批判そのものに対する影響は皆無である。結果が出てしまえば、と書いたのは、「マグローブ株式会社から圧力をかけられています」のエントリで書いたように、本当は訴訟に関係がないのに過剰反応して削除を決める、などということが現実に起きたからである。しかし、結審してしまえば、もはや訴訟の攻撃防御など考える必要が無くなる。
 私がこれからやる予定の名誉毀損訴訟は、責任を問える文言はむしろ科学ともニセ科学とも関係が無かったりする。ある言説がニセ科学かどうかという話と、人の社会的評価の変動をもたらす表現は、大抵の場合重ならない。つまり、言説に対する論評では名誉毀損は問えない。業務妨害にしたって、虚偽でも風説の流布でも無い、普通に思いつく範囲のことであれば、商売に影響したところで不法行為とはいえない。
 まあ、最初の提訴自体がほとんど言いがかりのような内容だから、「ニセ科学批判をやっていると嫌がらせの提訴を受けるリスクが高まる」ことはあるのだろうが、「ニセ科学か否か」「ニセ科学批判をすることの是非」を裁判所で争うことには、ちょっとなりそうにない。


ここからは旧ブログのコメントです。


by 技術開発者 at 2007-12-49 21:40:49
Re:「ニセ科学訴訟」は、実は実現が難しい

こんにちは、apjさん。

まあ、この種の訴訟における「科学的な正しさ」あるいは「科学的な誤り」というのは、副次的な間接証拠の様なものではあるんです。あくまで中心は法的な違反である「名誉毀損」であったり「詐欺」であったりする訳ですからね。

ただね、副次的な部分であってもきちんと出していくということは大事なんですね。私の知り合いに科捜研で「麻薬の産地推定」なんて研究をやっているのがいましてね。なんていうか結構迂遠な証拠補強なんですね。暴力団等から応酬された麻薬を分析してその不純物分析結果をニューラルネットワーク解析して、「これは中国ルート」「これは南米ルート」なんてやるわけですが、もともと持っていて逮捕されている訳ですからそれがどこのルートから来たってそうそう罪に違いがでるものでも無いんですね。でもね、その被告人が「中国の組織から買いました」なんて自白していて、その麻薬が確かに中国ルートのものなら、その自白の価値は格段に高まる訳ですね。そうやって一つ一つの不法所持の麻薬を産地推定することで、国内での販売ルートも推定出来たりもするみたいです。

法廷におけるニセ科学論争というのは、こういう仕事と似ている面があります。決して正面切って「ニセ科学かどうか」を争うものにはならないけど、副次的な部分で「ニセ科学である」みたいな事をきちんと出していく事で、ニセ科学の蔓延という社会状況があぶり出される事につながると思うのですよ。


by 酔うぞ at 2007-12-01 22:37:01
Re:「ニセ科学訴訟」は、実は実現が難しい

ニセ科学とは全く違うのですが法廷や行政レベルでは同至要なことなのかな?と感じさせるのが、昨日(2007/12/13)有罪判決が出た三菱ふそうバブ破損・死亡事故の原因問題です。

この問題は機械屋さんの常識としては「問答無用の設計ミス」扱いなのですが、三菱は全く認めていません。

それで運輸省が徹底的にリコールのやり直し命令のようなことをやったのだけど、当時も今も「設計ではなく品質の問題」として設計変更→部品変更→リコールをやりません。

モデルチェンジで新型にしてしまう(してしまった)のでしょう。

これのどこがニセ科学と類似か?というと、世間の常識でも言い張ると製品はそのまま社会に野放しになる、というところです。

あげくの果てに、昨日は弁護団は控訴してこんなことを言ってます。

    判決がハブの強度不足が推認できる、とした点にも
    「今もハブのリコールが繰り返され、
    原因が解明されていないのに予見ができるわけがない」

ニセ科学というか、水商売というか、悪魔の証明というか、言葉がありませんが、こういうのは「社会常識に反する」としか言いようがないんでしょうね。


by apj at 2007-12-34 07:28:34
Re:「ニセ科学訴訟」は、実は実現が難しい

酔うぞさん、

 弁護士の言い分はほとんど詭弁ですよね。リコールを繰り返さなければならないようなハブを使って製品を作って事故になったのなら、それがまさに問われるべき責任でしょうに……。


by とりばち at 2007-12-13 05:44:13
Re:「ニセ科学訴訟」は、実は実現が難しい

失礼します。関係ないですけど
運輸省が命令してそれを無視することは
現状可能なのですか?
設計変更をなぜそこまでするつもりがないのか
その理由が気になります。
メーカーにしかわからないいけども。