グロービートジャパン(ラーメン花月)・平和神軍事件名誉毀損事件で無罪
ネットでラーメン店を中傷、名誉棄損問えず…東京地裁
インターネットのホームページ(HP)で、外食店の経営会社を「カルト集団」などと中傷したとして、名誉棄損罪に問われた東京都大田区の会社員、橋爪研吾被告(36)の判決が29日、東京地裁であった。波床昌則裁判長は「ネット上の個人の表現行為については、従来の名誉棄損の基準を適用すべきではない」との判断を示した上で、「内容は事実ではないが、ネットの個人利用者として要求される程度の調査は行っている」と述べ、無罪(求刑・罰金30万円)を言い渡した。ネット上の名誉棄損について寛容な姿勢を示す新判断で、議論を呼びそうだ。
判例では、事実に反し名誉を棄損しても、内容に公共性・公益性があり、加害者が真実と信じるだけの「確実な根拠」があれば罪にはならないとされてきた。
判決はまず、HPの記載内容について「確実な根拠はなく、従来の基準では有罪になるとも考えられる」とした。一方で、「ネットでは被害者が容易に反論できるほか、個人が掲載した情報の信頼性は低いと受け止められている」と、ネットの特殊性を指摘。従来ほど厳格な基準を当てはめるべきではないとし、〈1〉わざとウソの情報を発信した〈2〉個人でも出来る調査も行わずにウソの情報を発信した――場合に名誉棄損罪を適用すべきだ、と述べた。
橋爪被告については、経営会社の登記や雑誌の資料を集めるなど「ネットの個人利用者に求められる程度の調査を行った」とし、無罪とした。弁護人の紀藤正樹弁護士は「ネット上の個人の書き込みについて新基準を示した画期的判決」と評価した。橋爪被告に対しては名誉棄損訴訟も起こされ、橋爪被告に77万円の支払いを命じる判決が確定している。
渡辺恵一・東京地検次席検事の話「判決内容を詳細に検討し、適切に対応したい」
(2008年2月29日21時39分 読売新聞)
画期的な判決、おめでとうございます&お疲れ様でした>橋爪さんと弁護人の皆様。
この裁判については、酔うぞさんが傍聴に行っておられたし、判決の日は傍聴席が埋まってしまって中に入れなかったらしい。出てきたマスコミの人が電話で無罪だと言っていたのを横できいて、電話で私に第一報をいれてくださった。酔うぞさんの方にもエントリーが上がっている。
年末のリンク忘年会でお会いした時に、橋爪さんから、「刑事被告人」という肩書きの名刺をもらったのだけどw、これで「元・刑事被告人」になるのだろうか。
いずれ、判決全文はネットで読めるようになると思うが、ネット上の名誉毀損事件の裁判で、課される注意義務の範囲が、従来のマスコミと個人とでは違うという基準が示されたのが画期的である。
もともと、名誉毀損の基準が出来たのは100年も前で、その頃は「公然と」表現するには、ビラや新聞や雑誌を配る、ラジオで放送するといった、マスコミしか使えないインフラを使わないと不可能だった。表現する側に調査能力もその他の(個人では持てない)力もあるという前提で判断されることになっていたわけで、それを、ネット時代の個人に適用すると、個人にとって過酷すぎる結果をもたらしてしまう。基準の方も見直しが必要なのではないか、ということは、紀藤さんをはじめ、ネットに詳しい人達の間では繰り返し問題点として指摘されてきていた。
ところで、報道で、「外食チェーンの会社」が「グロービートジャパン(ラーメン花月)」で、「カルト」と呼ばれたのが「平和神軍」だと報じている記事がどれだけあるのだろうか。少なくとも読売の記事は、個人である橋爪氏の名前は出すのに、会社の方は特定していない。報道の姿勢として著しくバランスを欠くように思う。
今のところ、もう少し詳しい話や議論は次のblogで読める。
○弁護士紀藤正樹のLINC TOP NEWS-BLOG版。写真入りで、左から紀藤弁護士、橋詰爪氏、山口弁護士。
○弁護士山口貴士大いに語る
○弁護士 落合洋司 (東京弁護士会) の 「日々是好日」
【注意】このエントリーでは固有名詞を書いたが、グロービートジャパン、ラーメン花月、平和神軍といったキーワードは、ネット上で書くだけで、削除要求がどこからかやってくる(笑)ということが起きていた。判決で状況が変わったかも知れないが、とりあえず、このエントリーの削除要求については、どういうルートできたものでも公開して対応することにする。
#過去に、前科十犯の脅しの言いなりになってエントリーを削除させた山形大学を信用しろという方がもはや無理なので 😛 。
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