J-CASTニュースで取り上げられたので、以下に引用しておく。言及したい部分を赤字にさせていただいた。
(【追記】J-CASTの方でもリンクを追加していただいたようです。ご指摘ありがとうございました>検査員様。)
月100万PVの人気個人ブログ 教授同士の名誉棄損論争が勃発
2008/2/ 5
上武大大学院教授の池田信夫さんがブログで、コメント投稿者の実名を割り出し「間抜け」「(ネット)イナゴ」と罵倒したことを巡って、名誉棄損論争が勃発している。論争には、関係者がほとんど実名で登場しており、ネットでは、実名であっても認識の差を克服することの難しさを浮き彫りにした。
「イナゴ」「間抜け」などと罵倒
名誉毀損論争が勃発した池田信夫さんのブログ
名誉棄損論争の発端は、池田信夫さんが自らのブログの2007年11月13日付日記のコメント欄で、投稿者を罵ったことだった。池田さんは日記で、文部科学省の次世代スーパーコンピューターを批判的に取り上げたが、「はてな」ID名でコメントを寄せた西日本の大学の助教授の実名を割り出して「(ネット)イナゴ」と書いた。そして、「自分のコメントを否定するサイトにリンクを張った」と指摘して、このことについて「間抜け」とも発言した。
この助教授は、池田さんにコメントや自らのブログで反論したが、さらに助教授のブログを閲覧していた山形大准教授の天羽優子さんが、この問題を同大サイトにあるブログ「事象の地平線」で取り上げた。その11月18日付日記で、池田さんのコメントを「証拠保全」のためにと取り上げ、「『間抜け』『イナゴ』は、人に対するものなので、名誉毀損は成立しうるんじゃないかな」と言及したのだ。
この日記は、その後、池田さんの目に留まり、08年1月29日、「根拠もなく、このような記事を掲載すること自体が名誉毀損」とし、記事を削除しなければ山形大に通報すると書いたメールを天羽さんに送った。ところが、天羽さんは、池田さんのメールに回答せず、「事象の地平線」の同日付日記上にこのメールをそのまま公開。その理由として、池田さんが大学通報までほのめかしたことなどから私信性がないことを日記の中で挙げた。山形大との関係については、「当事者は大学ではなく私」と主張した。
池田さんは、同じ日、日記の中でメール公開行為を批判した。そして、山形大の結城章夫学長あてに、山形大のサイトで根拠なく「名誉毀損」の中傷をし、私信を無断で公開したことにどう考えるか、という公開質問状をアップ。学長あてに同じ内容のメールも送った。
池田さんと天羽さんの論争は、大学も巻き込む騒動になって、池田さんのブログなどにはコメントが殺到する事態になっている。
話し合いの必要については否定的
一連の論争では、ほぼ実名に近い形でネットのやり取りが公開されている。しかし、互いに相手が名誉毀損に当たる誹謗・中傷をしたと主張して収まらないのだ。
山形大の天羽優子さんは、J-CASTニュースの取材に対し、
「実名が出て、感情的になっていますね。ほとんど論争らしい論争がなく、ブログでの個人攻撃に終わっています。誹謗・中傷はなくならないですね」
と答えた。一方、上武大の池田信夫さんも、こう漏らした。
「コメント欄にgooIDのログインを導入したら、すごい効果があって、ノイズがなくなりました。でも、実名でも、誹謗・中傷はなくなりません。確信犯は、自分が正しいと思ってやっていますから」
ブログやメールでのやり取りは、実名だと、冷静に一歩引いてコミュニケーションしにくいのかもしれない。2人の論争も、収束の気配がなく、平行線をたどったままになっている。
そもそも、今回の論争でお互いに面識がないことが、憶測や疑念を生んでいる可能性がある。「最初は、(池田さんが)アクセスの多いブロガーか、評論家だと思い、大学の先生とは知りませんでした」と天羽さん。とすると、ネット上で解決が難しい以上、お互いに話し合いなどはできないのか。
しかし、2人とも、話し合いに否定的だ。天羽さんは、「会わなくてはならない理由があるのですか。その予定は今のところありません。ネットの文章で尽きている気がします。こういうパターンで文章を書く人は、何を言ってもダメだと思います」と答えた。池田さんも、「山形大のドメインで他人の悪口を言ったり、メールをブログで公開したり、常識ではありえませんよね。常識がない人と話しても意味がないと思います。だから、今のところ会う気はありません」と素っ気ない。
この論争について、ITジャーナリストの佐々木俊尚さんは、
「背景には、『実名』をどのようなものとして捉えるのか、という部分に認識の差があることがあります。2人の場合は、池田さんが天羽さんを山形大とひと括りにしているのに対し、天羽さんは個人の立場を強調しています。大学という属性が責任を追うかどうかの認識が論争を極端にしたのではないかと思います」
と分析する。実名でも、肩書きなどの属性が入ってくると、議論をこじらすということのようだ。また、佐々木さんによると、「失う属性なんかない」と考えている人たちは、実名でも誹謗・中傷をためらわないという。
話し合いによる解決については、佐々木さんは否定的だ。「面談する必要は、まったくないと思っています。そもそも池田さんと天羽さんが議論を決着させる必要があるのでしょうか?大切なのは、2人が論争していることが多くの人の目に触れて、そこから議論が多くの人の間で展開していくことだと思っています」
ちなみに、池田さんのブログは、率直な議論が関心を呼んでか、ブログとしては異例の月間100万ページビューも閲覧されるほどになっている。
佐々木さんのコメントについて、私の方から状況を説明しておきたい。
これまでに私が受け取ったクレームの種類は、大体次の通りである。
[a]脅迫タイプ:威圧的あるいは脅迫的なメールを送って、しょっぱなから訴えるぞと言ったり、大学あるいは周囲を巻き込んだり、これから巻き込むぞという姿勢を見せる。クレームが受け入れられないと「暴れる」のがこのタイプ。
[b]ビリーバータイプ:客観的には間違っている内容を主張。認められるまで延々主張し続けることがある。
[c]愉快犯タイプ:荒らすこと自体が目的。
[d]通常タイプ:事実確認がとれる形で、私の所に直接送られてくる。普通に対応し、私の方から簡単にお礼を述べて終わる。
実のところ、タイプ[a]に分類されるクレームは少ない。ウェブに書いたものについての、質問やクレームを合わせると、これまでに延べ1800通程度のメールを受け取っている。複数回のやりとりを考えると、この半分としても900通程度。そのうち、タイプ[a]のクレームを思い出せる限り列挙すると、池田氏によるものも含め、全部で11件ある。
【クレームのリスト】
・[a]日本システム企画株式会社:クレーム第一号。NMRを利用したと称する活水器を製造販売。クレームの内容は、訴えてやるという代表者じきじきのお手紙。今でも「当社の電磁波は金属を通過します」と言い張っている。
・[a]スター管理サービス:2001年頃だったか。直接電話でクレーム。弁護士に相談してるとか何とか。遠赤外線の不思議な効果を信じてるっぽかった。
・[a]株式会社プロホームアドバンス:お茶大の方のコンテンツが阪大に移転する原因になったクレーム。返品があったと主張。冨永教授ともども覚悟を決めて、本当に因果関係のある損害なら賠償するつもりで損害の立証を求めたところ、何も証拠が出てこなかった。取締役に内容証明を送るまで、担当者としかやりとりできなかったのが不思議。
・[a][b](個人):氷のIce Ihの結晶構造が違うと延々メールで書き送ってきた。たまりかねて「勉強しろ」と言ったら「勉強は嫌いです」orz。お茶の水大にもメールが来たので、「授業料ももらってないのに教えなきゃいけないっておかしいでしょ」と冨永教授が事務に行って説明、事務官爆笑。
・[a]飛騨の中の人(個人):マイナスイオン関連。ブラウザで普通に見れないサイトを連絡してきて、見れないことを指摘したら逆ギレ。変態助教授とか書きまくった上に嫌がらせのメールが20通以上に掲示板荒らしの3連コンボ。私に書面で現金20万円を要求したので、本名と住所が判明した。さすがに呆れて告訴と提訴を両方やった。名誉毀損で罰金刑確定。ウェブだけではなく大学にクレームを送った分についても名誉毀損が認められ、敗訴したのに損害賠償を払おうとしない。どうやら、払わなくて良いと素で信じてるっぽい。
・[a]元祖・闇サイト管理人「奥平明男」:クレーム当時は前科10犯、多分今は11犯。自称探偵。公開された殺人予告に言及したらしつこいクレームをつけてきた。現在、beyondさんに提訴されている。
・[a]セルミ医療器の関係者?:マイナスイオン装置に対する行政処分を紹介した記事にクレーム。不法行為であると主張したがその後は応答無し。
・[a][c]ふま(通称):説明の要らない粘着荒らし。一見理由があるようなことを書くが、一貫性は全くなく、混乱させることのみが目的のかまって君。当blogでは原則削除で対応(他所でも似たような対応がなされている)。apj_yamagataというメールアドレスを作ってクレームを送り、そこでは「山形」と名乗った。
・[a][b]吉岡英介氏:最初がメール、2年ほどおいて「水は変わる」という自費出版本を出し、丸々一冊を費やして私に対する中傷をしまくり、その後2年近くにわたってウェブでも同様のことをやった。関係していたビジネスが公取の排除命令を喰らったことの逆恨みらしい。お茶の水大だけ訴えたので、現在訴訟参加して係争中。私も名誉毀損で吉岡氏を別途提訴。【←進行中】
・[a][b]マグローブ株式会社(上森三郎、吉岡英介):掲示板投稿の内容を業務妨害であるとして削除要求。技術的議論であると判断し、かつ、大学だけを訴えてきた前歴を考慮し、私の方から先に債務不存在確認の訴えを提起。【←進行中】
・[a]池田信夫氏:あらきけいすけ氏に対する名誉毀損ぽい表現に言及したら脅しめいたクレーム。公開したら、今度は私に対する人格攻撃を展開中。【←最新】
少ないサンプル数を以て何かを語るのは危険であることは承知の上で議論を続ける。
まず、池田氏以前に、タイプ[a]で私の所にクレームを付けた人の主張がまともだったためしがないというのが、私がこれまでに経験したことである。まともでない、の意味は、内容自体が客観的に誤りであることを立証できるとか、そもそも違法なことをしたのを指摘したら逆ギレしたというものである。事実関係をきちんと調べたら、まず間違いなくクレームの方が間違い、とされるだろうというものである。
なお、池田氏以前に、タイプ[a]クレーム10件のうち3件が法的処理に移行している。これも、割合としては高いのではないか。
どうやら、「内容を検討されたら決して受け入れられることが無いから、内容の検討を面倒がるであろう組織の方に出すことで、うやむやのうちに受け入れさせよう」とか、「組織にクレームを出せば、組織が事なかれ主義な対応をしてくれて、内容を検討しないままに受け入れられるに違いない」などという期待が、タイプ[a]のクレームを出す側にあるとしか思えないのである。
次に、肩書について考える。
大学教授だからまともか、というと必ずしもそうは言えない。怪しい商品にお墨付きを与えている「教授」だっているわけで、私は学生に向かって「教授が推薦していても信用するな。むしろまともな産学連携では、守秘義務が絡むので宣伝に研究者は出てこないもの」などと教えている。いやまあ「それを言うオマエだって准教授だろ」というツッコミは覚悟の上だし、大学生くらいになるとこの程度の矛盾は適切に消化してくれるだろうと期待している(私の言うことは信用せずに裏をとる、という学生さんが居るならば大変歓迎すべきことだが、これは今回の話題とは別の話である)。
知っている範囲で実例を挙げると、次のようなものになる。
赤外線で水の水素結合が変わると主張しているが、データを見ると測定が間違ったんだろ、な論文を出していたり、去年まで「溶液に声をかけると核反応が起きる」などと主張していたのは、両方とも旧帝大の先生である。健康食品のインチキ宣伝に名前を貸してクビになった京都大の教授も居た。環境ホルモン濫訴事件の原告も京都大教授で、シンポジウム当日の発言を曲解した批判を公表したと言って名誉毀損で提訴したのに、当日の録音テープが出てきて、「言ったつもりだったが言ってない(だから違う受け取られ方をしてもむしろ当たり前)」などということになり、結局原告が敗訴した。私はこの裁判の被告側応援団をやっていたから、状況はよく分かっている。業者に宣伝で使われている、トルマリンについての間違った報文を出すことに尽力したのは、中村輝太郎元東大教授だった(師匠の冨永教授の元上司)。量子力学無しで物理学は構築できると頑固に「新体系物理学」を唱えているのは飯田元東大教授である(師匠の冨永教授の元指導教官)。人工心臓の権威で、私にとっては雲の上で光り輝いている先生だった渥美和彦元東大教授は、定年後は名誉教授のまま代替医療の方に行き、再び御名前を拝見したのは、「気」の研究が出ている雑誌の中であった。
これでは、肩書きよりも当人の行動や主張の内容の方を見ないと何とも言えない。ある時期まで、きわめてまっとうな科学の成果を上げていた人が、途中で違う世界に旅立っていくことは、そんなに珍しくなかったりする。
以前、あらきけいすけの雑記帳を見に行った理由は、あらきさんが以前にお茶大裁判のことを取り上げていたからである。少しコメントさせていたき、その後もたまに見に行っていた。とある日見たら、わけのわからない理由で他所で中傷されていて、あらきさんは中傷した相手と争うつもりらしいということがわかった。じゃあ証拠保全しておくか、と「間抜け」発言に言及した。つまり手製の魚拓というわけである。その時に初めて池田氏の名前を知った。だから、私にとって池田氏とは「他人を平気で”間抜け”呼ばわりする人物」以上でも以下でもなかった。この認識でいたところにタイプ[a]のメールが来たから、まずは、理由のないクレームつまり「威迫」として扱うことになった。一般論として大学の名前や教授の肩書きがあっても、ちっとも信頼できないことがあるというのは経験済みであった。
勿論、n件のまともでないタイプ[a]のクレームがあったからといって、n+1件目がまともでないとは言えない。そこで、上に書いたことをふまえて、池田氏のクレームがどうであったかを検討する。
まず、
1. 大学を巻き込むという予告が最初にあった事実(このエントリ参照)。
2. 当事者が私である旨明記したにも関わらず、学長を巻き込もうとした事実(J-CASTの取材、池田氏のblogより)
3. 削除要求のメールの内容に虚偽が含まれていた事実。(1.で示したエントリー中に具体的記載)
4. 池田氏はもっぱら私に対する個人攻撃を行っている事実(個人的に魚拓を作り、どの部分か指摘した人→clausemitzさん、beyondさん、石田剛さん(この前後にも関連エントリが前後にある。))
1. と2. から、大学を巻き込もうとする池田氏の故意は明白である。さらに、そもそも削除理由に虚偽が含まれている以上、要求に従う必要が無いことは3. から明らかである。削除が受け入れられなければ、4. のような形で個人攻撃を行ったことは、これもまた証拠より明らかである。
以上の事実より、池田氏による今回のクレームは、歴代のタイプ[a]型クレームに分類しても差し支えないと考える。