郷里の珍味、養殖成功
初の養殖ニゴロブナ水揚げ 琵琶湖、フナズシ向け
2008.3.5 12:10琵琶湖独特の食文化、フナズシを安価に提供しようと、滋賀県安土町の女性が天然ものの激減で高騰している原料のニゴロブナの本格的な養殖に成功、町内の養殖池で初の水揚げが始まった。池は、かつて湖だった場所で水田を掘削。昔の琵琶湖に近い環境で薬品などを使わず育てるため、天然のニゴロブナと同等の品質が確保できたという。水揚げしたフナはコメと混ぜ合わせて塩漬けし、11月にフナズシとして完成。「天然もの」の約半値で出荷する予定だ。
これまで成功例がなかったニゴロブナの養殖に挑戦したのは大島正子さん(45)。農家を継いだ大島さんが平成9年、試行錯誤の末、養殖法のめどが立ち、地元企業の支援を受けて18年に養殖・加工・販売会社「飯魚(いお)」を立ち上げた。今年、ようやく本格的な出荷の態勢が整った。
養殖池の面積は2.7ヘクタール。今年は約1ヘクタール分で育てたニゴロブナを水揚げする。激減の主な原因とされる外来魚やカワウがいない環境に加え、エサだけでなく池に自生するエビやアカムシで育った養殖魚はかつての天然ものに近いという。
水揚げ作業は、普段は1.6メートルある水深を50センチほどまで下げ、底に集まったニゴロブナを網で捕獲。スシ用の20センチ以上のフナを選別し、いけすに移した。「初の水揚げ」を聞きつけて見物に訪れた滋賀県モロコ・フナ養殖研究会のメンバーは「ものすごい数だが、どれも生きがいい。土がええんやろな」などと感心しきりだった。
水揚げは今週いっぱい続けられ、来週から地元の漁師が伝統的な手法でフナを漬ける。2トンの出荷を見込んでおり、販売価格は20センチ前後のフナズシで2000~3000円程度を予定している。
フナ寿司は、いわゆる寿司を想像すると間違いで、ぬかみそ付けのぬかの代わりに米を使い、キュウリやナスビの代わりにフナが入っているという、つまりは「フナの米漬け」で、滋賀県の珍味である(なれ鮨という)。発酵させて作るので、独特の香りのする酸っぱい魚になる。食べる時は、米を全部取り除いて、フナを切って、醤油や薬味をつけて食べる。好き嫌いが分かれるが、好きな人はトコトンはまるらしく、郷里では、フナを買ってきて普通の漬け物同様に、家に樽を用意して漬けている人もいる。最近では、フナが品薄になってしまったため、中サイズのフナ寿司でも買うと一匹3000円ちょっと、大型のものだと5000円ほどしていた。料亭で出してもらうともっと高いだろう。養殖が難しいので値段が下がらないということだったが、今回、養殖に成功したのであれば、もう少し手頃な値段で手に入るようになるかもしれない。
外来種が原因でフナが減ったというのは事実で、琵琶湖もブラックバスに悩まされている。外来種だっておいしくいただければみんなが採るから減るだろうということで、ブラックバス鮨は既に試験製造が行われた。しかし、サイズが大きいので、きちんと発酵するまでにフナの倍の時間がかかる上、味の方は淡泊すぎて物足りないそうである。従って普及はしていない。
こんなことを書いていたら、小学生の時、5年生になると理科の授業でフナの解剖実習があるときいて、心待ちにしていたのを思い出した。結構楽しかったのを覚えている。それをきっかけに、理科教材の解剖器具セットを買い、夏休みのイベントの鮎つかみ取り大会に持っていって、食べる前にしっかり内部を見てからおいしくいただいた。
ここからは旧ブログのコメントです。
by 杉山真大 at 2008-03-44 04:39:44
Re:郷里の珍味、養殖成功
NHKの食彩浪漫でフナ寿司のこと取り上げられてましたけど、漬けていた米を胃薬代わりにするとかフナ寿司の頭を焼いて茶漬けにするとか色んな楽しみ方があるみたいなんですね。正直なところ酸っぱいモノ系は苦手な自分でも、一度食べてみたいって気がします。
閑話休題、現在ポピュラーな江戸前ってのは馴れ寿司の醗酵過程を省くために予め酢〆したものなんですよね。いわゆるウドンの”玉買い”ってのと同じもので、日本的ファストフードの元祖なんですよね。食育に携わっている方に聞かせてやりたいものですなぁ・・・・・
by apj at 2008-03-48 07:20:48
Re:郷里の珍味、養殖成功
杉山真大さん、
まあ、フナズシを作った後の米は、相当不味いので、「胃薬」とでも思わないと食べる気にはならないと思います。
ウチの師匠(冨永教授)が、フナズシを最初に誰かからもらったとき、普通の寿司のつもりで米も食べて、「二度と食べたくないが、もう一回くらいなら挑戦てみても……」などと言ったので、郷里に帰った折に買って持って行った。そうしたら、おみやげ用だったので「米は捨てろ」と説明書が付いていて、魚だけを食べたところ、酸っぱいモノ好きな師匠の好物であったことが判明したり^^;)。「ぬかみそ付けのぬかを食べて味を判断するなっ!」とツッコミを入れたものでした。
by ひご丸 at 2008-03-43 11:34:43
Re:郷里の珍味、養殖成功
へぇと感心したのは、外来魚の入ってこれない聖域みたいなエリアを作って、天然の餌も供給できるようにして、限りなく天然モノに近い養殖モノを生産できるようにしたあたりです。
養殖場と言えば、環境破壊とワンセットだったものですが、この方式は環境修復にも近いかもしれないですね。
これからの時代に、こういう脱20世紀型の養殖が流行るきっかけになれば素晴らしいなぁ・・・と思いました。
ところで、鮎の解剖には思わず笑ってしまいました。
私の子供時代、家で夕食のおかずに魚を丸ごと焼いたときは、理科教師だった父親の解説を聞きながら、丁寧に食べたものです(笑)そんなことまで思い出して。
by y_ikeda at 2008-03-43 17:32:43
Re:郷里の珍味、養殖成功
>理科教材の解剖器具セットを買い、夏休みのイベントの鮎つかみ取り大会に持っていって、食べる前にしっかり内部を見てからおいしくいただいた。
解剖中に寄生虫が一杯でてきて、トラウマになって食べられなくなるという展開がなくてよかったと思います:-)
そういえば、脊椎動物の解剖はやったことがないなぁ。
ウニは解剖後、おいしくいただきましたが。
by とらこ at 2008-03-44 19:55:44
Re:郷里の珍味、養殖成功
異議ありです。
地元民ですが米も食べます。激しく発酵した強烈なチーズのような味で非常に美味しいです。
というのが一般的な見解でないことは承知していますがぬかみそのぬか(誰も食べないと思う)とは全然違うと思います。
by gallery at 2008-03-55 22:56:55
Re:郷里の珍味、養殖成功
とりあえず、「ありがとう」と書かれた紙を貼って、味が良くなるかどうか様子を見ましょう。
by apj at 2008-03-03 00:25:03
Re:郷里の珍味、養殖成功
とらこさん、
>激しく発酵した強烈なチーズのような味で非常に美味しいです。
……失礼しました^^;)。
by com at 2008-03-33 01:07:33
Re:郷里の珍味、養殖成功
〉galleryさん
誰が上手いことを言えと(゜∀゜)
by 杉山真大 at 2008-03-22 06:31:22
Re:郷里の珍味、養殖成功
ついさっき食彩浪漫読み返してみたら、頭を焼いて具にするのは茶漬けじゃなくて吸い物でした。
#一応、茶漬けもありますが(爆
>ひご丸さん
その昔は、水系が更にオープンで湖から用水路・田んぼにまでフナが泳いでいたって、食彩浪漫に載っていました。外来魚が我が物顔に泳いでいて、ブラックバスのハンバーグなんて代物が新しい”郷土料理”になってしまった現状からすれば隔世の感がありますなぁ・・・・・
by 杉山真大 at 2008-03-54 06:41:54
Re:郷里の珍味、養殖成功
>とらこさん
小倉のじんだ煮とか石川のこんか味噌汁とか、糠味噌も全く食べられていないとは言い切れませんよ。念のため。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B0%AF%E3%81%AE%E3%81%AC%E3%81%8B%E7%82%8A%E3%81%8D
by オキナタケ at 2008-03-50 07:20:50
Re:郷里の珍味、養殖成功
同郷人です。
ふなずしは好きですが、値段が高いので地元の人間も気軽に食べるというわけにはいきません。でもこれで少し手に入りやすくなる上に、環境にもいいとなれば大変嬉しいです。
ふなずしは切り身をお茶漬けにしてもおいしいですし、切り身にお湯をかけてお吸い物にしてもいけますよ。万人向けではありませんが、滋賀県へおいでの際には一度チャレンジしてください、皆さん。
by がんのすけ at 2008-03-14 09:04:14
Re:郷里の珍味、養殖成功
和歌山生まれです。
紀州名物・鯖のなれ鮨になじんだ小生は、ふな鮨のご飯もいただきます。ちびちびと酒の肴にすると、絶品です。小生の気持ちとしては、ご飯はお茶漬けにしたほうが食べやすいかもしれません。オキナタケさんのように、ふな鮨の切り身(食卓ではすぐに消失します!)をお茶漬けに、というのは、贅沢な気がして、まだやったことがありません。今度、機会があれば試したいです。そのためにも、養殖がうまくいって高嶺の花でなくなることを祈っています。
ところでブラックバスですが、この魚は皮が臭いため、皮を取り去った上で加熱調理(寄生虫対策)すると、まあまあ食べられます。フライとか天ぷらなら、関西で手に入るタラよりも美味しいです。とはいえ、そのために消え去ろうとしているイサザとかモロコの滋味には到底及びません。
早く昔の琵琶湖に戻ってほしいものです。
やはり、galleryさんではないですが、琵琶湖に向かって「ありがとう」という大看板を道路沿いに設置すべきなのでしょう。