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ゼミとかファイルとか

Posted on 4月 29th, 2008 in 倉庫 by apj

 前にも書いたが、昨年末、法曹関係者用の2穴ファイルをまとめて購入した。フラットファイルと似たようなとじ具がついていて、Lサイズのものは、5cmくらいの厚さの紙束を綴じることができ、表紙が透明ポケットになっていて、紙を入れたりできる(厚紙を入れて表紙をつけることもできる)。
 昨日、たまたま、卒業生の一人が遊びに来てくれて、ちょうどゼミの時間だったので、一緒に部屋に来て何となく参加してくれた。4年で就職したので、まだ仲間が博士前期課程にいるから、会いにきたらしい。お菓子を差し入れてくれたので、食べながらのゼミとなった。
 ゼミで使う資料を追加したら、普通のフラットファイルでは綴じるのが難しくなったので、ストックがあったMサイズのファイルを学生さんに配ることにした。裁判所と弁護士事務所御用達のグッズだとは気付いていないようだったので、説明したら面白がられてしまい、卒業生も笑っていた。
 配ったファイルを見て学生さん曰く「表紙に予習した紙とかを入れておけば(持ってくるのを)忘れない」。……散らかさずに一旦ファイルポケットに入れておいて、まとまったら一緒に綴じておけば整理は万全だと思うぞ。

 委員会やら教授会やらの資料は、すぐに何cmかになるわけで、これをハードカバーのパイプファイルで管理していたら、値段がかかる上にデッドスペースも増える(=とじ具と表紙の厚みの分だけかさばる)。だから仕事の資料整理に、たくさん綴じられるフラットファイルを重宝している。学生さんだって、今回のように、1冊100円程度の、生協でよく売っているファイルでは不便な場合がある。こんなわけで、大学にも法曹用ファイルの需要はあるはずと思うのだが……。
 ファイルには製造元のマークはない。文具で名の通ったメーカーが作っているというのでもなさそうである。生協が入れてくれると楽なんだけどなぁ^^;)。

 私の今回の購入先は、霞ヶ関の弁護士会館地下1階の文具売り場、大内商店。頼めば通販もしてくれるが、faxでのやりとりになる。ネット通販しているのは、大阪弁護士協同組合で、A判事件記録ファイルという商品名で売っている。名前の通り、弁護士の団体だけれども、本やグッズは一般にも販売している。

記事引用しておく

Posted on 4月 28th, 2008 in 倉庫 by apj

 引用記事をストックする場所がないので、一応エントリーとして。
J-CASTニュースの記事より。

「光市事件の死者は1.5人」 問題発言准教授を青学が処分へ
4月28日17時35分配信 J-CASTニュース

青山学院大は准教授の問題発言を受け特別委員会を設置した
 「光市事件の死者は1.5人」「元少年が殺されれば遺族は幸せ」などと青山学院大学国際政治経済学部の瀬尾佳美准教授がブログで発言していた問題で、同大が特別委員会を急きょ設置し、瀬尾准教授を処分する方針であることがわかった。瀬尾准教授の発言をめぐっては、インターネット上で大きな批判を浴びており、同大に抗議が殺到。学長や准教授が謝罪する事態にまで発展していた。

■「特別委員会」を設置、連休明けにも何らかの措置

 瀬尾准教授のブログでの発言に抗議が殺到している問題を受けて、青山学院大学が2008年4月28日に「特別委員会」を設置したことが分かった。同大によれば、瀬尾准教授への処分も含め、この問題についての協議を行う。

 同大広報課はJ-CASTニュースに対し、同委員会の設置理由について「あらゆる場面を想定して話を進めている」と話しており、「(准教授への)処分についても話し合われると受け取っていただいて結構です」としている。瀬尾准教授には、連休中ということもあり自宅待機命令などは出されていないが、連休明けにも何らかの措置が取られる可能性が高い。

 騒動の発端は、瀬尾准教授のブログでの発言。瀬尾准教授は、2008年4月22日に被告の元少年を死刑とする差し戻し控訴審判決が出た光市事件について、

  「差し戻した最高裁の判事の妻は、おそらく専業主婦で、TVばっかり見ていたため洗脳され、夫の仕事にも影響したのだろう」
  「元少年が殺されれば、報復が果せた遺族はさっぱり幸せな思いに浸るに違いない。自分の血を吸った蚊をパチンとたたき殺したときみたいにね」

と述べた。さらに、光市事件で殺された母子のうち幼児を1人と数えず、「永山事件の死者は4人。対してこの事件は1.5人だ」と書き込んでいたため、ネット上で「被害者に対して失礼だ」といった批判が相次いだ。また、過去に書いたブログ大阪府知事や拉致被害者家族についても、

  「大阪府知事なんかエロノックだって務まったくらいですから誰でもかまいません。ま、人間の廃物利用ってところでちょうどいいじゃないですか」
  「(拉致被害者は)私の目から見ると信じられないくらい幸福です。なのにその幸福に感謝もしないで、いつまでもいつまでも『めぐみっちゃん』とか不幸面してられるアンタが心底うらやましいよ、とTVを見るたびに思います」

と綴っていたことから、インターネット上で騒動にまで発展。ブログでの発言などをまとめた「まとめサイト」も登場した。

■「釈明」も逆効果、騒動がさらに拡大

 青山学院大によれば、同大学長の意向を受けて、同大の副学長、学部長が2008年4月25日に瀬尾准教授を口頭で注意。同大ホームページに、伊藤定良学長名で、ブログでの発言が同大の理念や教育方針に照らして適切ではないとして、謝罪するコメントを同日に掲載した。

 一方、瀬尾准教授は翌4月26日に「確かに多くの方たちの心を傷つけるような記述があり、深く反省しております」とする「お詫び」をブログに掲載したが、その後、学長に口頭で注意されたとする報道に対し、「注意をうけた事実もない」と反論。

  「書き方は悪かったと反省しておりますが、私は幼児を0.5と数えたわけではありません」

とも釈明した。「証拠」としてブログの「コピー」を示したが、その部分が書き換えられていたため、「反省してない」としてネットユーザーのあいだで騒動がさらに拡大した。

 こうしたこともあってか、青山学院大学広報課によれば2008年4月28日現在でも「電話がひっきりなしで、かなりの数の抗議が来ている」という。

 当該blogのこういった引用部分を読めば読むほど、反感しか持てないのだが、それでも、学外blogの表現を理由に処分するというのなら、反対意見を表明せざるを得ない。本音を言えば、守るべき価値ある言論や表現とはとても思えないのだけど。それでも、教員個人のblogの表現内容は大学とは無関係で教員個人が負う、と主張して、勤務先とマグローブ株式会社を訴えている私の立ち位置としては……orz。
 とりあえず、電凸を繰り返している輩がまだいるということのようで。
#もうね、こんな時期に変な前例作るなバカヤロー!!(海に向かって)

 まあ、後は瀬尾氏本人の矜持の問題。仮に何らかの処分があったとして、不服として提訴してでも自らの論(なのか?)を守る気力を示すかどうかという……。

【ご案内】明日のジャパンスケプティクスの講演会

Posted on 4月 28th, 2008 in 倉庫 by apj

 rika2やらお茶大の掲示板には書きましたが、こちらを主に見ておられる方もいらっしゃると思いますので。

 明日、ジャパンスケプティクスの総会&講演会が開催されます。総会は会員のみですが、講演会と懇談会は会員でなくても、どなたでも参加できます
 小内先生のお話は、怪しい健康情報に振り回されないためにも、ぜひ多くの方に聞いていただきたいです。都内ですので、地理的に参加可能な方はそれなりにいらっしゃるかと……。

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2008年4月29日13時~ 科学技術館6階第3会議室
プログラム
13時~13時半 ジャパンスケプティクス総会
13時半~15時 講演「メディアの作り出す健康神話--ダイエットそしてアンチ
エイジング」
講師 小内亨(おない内科クリニック院長)
15時~17時 パネルディスカッション「インチキ健康情報」
パネリスト 小内亨(おない内科クリニック院長)
平岡厚(杏林大学准教授)
松田卓也(神戸大学名誉教授)
司会 高橋昌一郎(國學院大学教授)
17時~19時懇親会 (会費3000円、当日受付)
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 私はちょっと風邪気味なので不参加、明日は静養していますorz。

一部ではもはや本質とは関係なくなった「水伝」

Posted on 4月 26th, 2008 in 倉庫 by apj

 以前に、「水からの伝言」関連のエントリーについて。トラックバックをくださった、「たんぽぽのなみだ~運営日誌」のたんぽぽさんのところで、まだ水伝の話題が続いているようだが、どうも、ニセ科学とももとの水伝とも様子が違っている。一連のまとめは玄倉川さんのところにある
 事の発端は、水伝を信じてる人にツッコミを入れたら受け入れられず、ちょこっとだけ揉めたというだけの話なんだけど、それが今に至るまで、初期の頃を除いては、水伝の中身にまったく踏み込まない形で続いている模様。

 で、ちょこちょこ議論を見ているのだけど、どうも普段とは様子が違う。言葉の使い方からして違う。何が変かというと、言葉を書いている人の意図と書かれた言葉がいろんな所でずれまくってるように見える。ついているコメントを読んでもやっぱりそう思う。
 この様子を見ていたら、What scientists really meanというジョークを思い出した。このキーワードで調べると主に海外のサイトが引っ掛かるが、例えばtypical results are shownとあったら、それは、the best results are shownの意味だといった類の読替リストである。
 ということで、ざっと玄倉川さんのリストなどを見ながら、言葉の読み替え表を作ってみた。これはあくまでも私の主観であり、この読み替え表に従って読めば、人々が議論している真の問題や理由がはっきりすることがあるかもしれないというリストである。特に右寄りとか左寄りといった政治的立場は前提にしていない。政治的立場によって意味が異なるものについてはその都度注意書きを入れた。読替表の内容は、いわゆる政治系blogで見かけることが多く、ここまで内容と字面が乖離していたら一体どうやって意思疎通するのかと心配になってくるが、元々の政治が「善処します」=「何もしません」、「記憶にございません」=「都合が悪いので言いたくありません」のような読替を多用する世界であることを考えると、大した問題ではないのかもしれない。
 なお、このような読替表が存在する場合に水の結晶がどうなるかについての報告は存在しない。

免責条項:この読替表を使って、余計に理解が困難になったり、コーヒーを吹いたりしても、私は一切責任を負いません。

(書いてある言葉)多用な価値観を尊重すべき
  (本当の意味)価値観が客観的に間違っている場合でも指摘したりせず尊重すべき
(書いてある言葉)おもいやり
  (本当の意味)主観的に気に入ったものだけにおもいやり
(書いてある言葉)共感性を重んじる
  (本当の意味)感じることが大事なので頭は使いません
(書いてある言葉)賛否両論ある
  (本当の意味)私の意見と異なるお前の意見には大した意味はない
(書いてある言葉)感性を養う
  (本当の意味)大間違いでも気にしない大雑把な態度を養う
(書いてある言葉)心が大切です
  (本当の意味)自分の心が大切です
(書いてある言葉)人と人のつながり
  (本当の意味)主義主張を異にする人は除外されているので安心です
(書いてある言葉)裏切らない人
  (本当の意味)客観的な正しさよりも仲間を優先する人
(書いてある言葉)ゆるい共闘
  (本当の意味)相互の批判を遠回しかつ遠慮がちにする共闘
(書いてある言葉)共闘する
  (本当の意味)自分の判断は一切放棄して誰かの言うことに同調する。馴れ合い。連帯。
(書いてある言葉)左翼
  (本当の意味)(自称右や自称リベラルから語られる場合)主観的に気に入らない人全て。類義語:極左、左派系
(書いてある言葉)解同
  (本当の意味)(ある立場から見て)主観的に気に入らない人全て。類義語:日共、連合赤軍
(書いてある言葉)分裂
  (本当の意味)実は元々ちっとも同じじゃなかったことが見えた
(書いてある言葉)論争を止める
  (本当の意味)客観的な正しさに到達するのを途中であきらめる
(書いてある言葉)思考の共通性を求める
  (本当の意味)思考無しに共通性だけを求める
(書いてある言葉)盲目的
  (本当の意味)(誰かに向かって言う場合)隙を見つけて反論するだけの知恵が自分にはないので、相手が何かすごいものを鵜呑みにしていることにしたい
(書いてある言葉)態度の問題
  (本当の意味)気分を害した!謝れ!
(書いてある言葉)正義のため
  (本当の意味)主観的に気に入った何かのため
(書いてある言葉)寛容であれ
  (本当の意味)有害なものでも感性に合えば目をつぶれ
(書いてある言葉)論争
  (本当の意味)仲間内の馴れ合い会話
(書いてある言葉)科学的に証明されていない
  (本当の意味)インチキっぽいものを信じたい
(書いてある言葉)科学が全てではない
  (本当の意味)私は科学をよく知らないしこの先勉強する気もないし、無知なままでわかることだけ信じたい
(書いてある言葉)どうでもいい
  (本当の意味)実はすごくこだわっている。類義語:手の届かないところにあるブドウは酸っぱい
(書いてある言葉)水掛け論
  (本当の意味)証明の放棄
(書いてある言葉)共鳴する
  (本当の意味)言葉も論理も要りません
(書いてある言葉)水に流す
  (本当の意味)教訓を学ばない、経験から学ばない
(書いてある言葉)陰口
  (本当の意味)メールやトラックバックで連絡せず、全世界のどこからでも誰でも見られるblogや2ちゃんねる等に書く
(書いてある言葉)信者
  (本当の意味)主観的に気に入らない人と同意見の人、あるいは気に入らない主義主張を支持する人全て
(書いてある言葉)論理(理屈)と感情は別
  (本当の意味)私は理屈は無視し、感情を優先する
(書いてある言葉)物は言いよう
  (本当の意味)私が気に入るような言い方をしろ
(書いてある言葉)謝罪する
  (本当の意味)負ける
(書いてある言葉)仲間、味方
  (本当の意味)気に障ることを言わない人全て
(書いてある言葉)伏せ字にする
  (本当の意味)検索を避けることで隠れ、万が一見つかった時は「あなたのことではありません」と言い訳する準備をする。
(書いてある言葉)本質
  (本当の意味)おれがいいたい
(書いてある言葉)世間
  (本当の意味)おれ、おれの周り
(書いてある言葉)常識
  (本当の意味)おれの意見
(書いてある言葉)不適切
  (本当の意味)おれが気に入らない

【追記】トラックバックのコメントを見てちょっとだけ追加。
【追記】コメントをいただいて追加。

呪術は人には効く

Posted on 4月 26th, 2008 in 倉庫 by apj

 このへんに関係しそうな話。最初に見かけたのは黒猫亭さんのところだったと思うのだけど、今探したら上手く見つけられない。
 確か、呪術は物には効かないが人には効く、といった話だったかと。次のような内容だと思ったんだけど……。

 「水からの伝言」を使った道徳の授業で、いい言葉=きれいな結晶:悪い言葉=汚い結晶、と結びつけて、人間の身体の多くは水だから、きれいなことばを使いましょう、とやったとする。すると、悪い言葉をぶつけて相手の体の水を悪くする、といういじめが成立する。「水からの伝言」を共有していない人にとっては、単に悪口を言われただけなんだけど、「水からの伝言」を信じている人同士では、体に効果を及ぼすいじめになる。
 言葉と結晶が結びつく部分は、呪術が物に影響するかどうかという話で、呪術は物には影響を及ぼさないし、勿論科学的にも間違い。
 ただ、「水からの伝言」という物語を共有している人の間では、呪術が効果を発揮する。体の水が悪くなったと思うと、おそらくは暗示の効果で本当に体調がわるくなったりすることがある。

【追記】
場所がわかったので追記。黒猫亭さんのエントリーはこちら

麹町あたりで過ごした

Posted on 4月 25th, 2008 in 倉庫 by apj

 年休をいただいて上京した。法律相談が主な目的である。
 絵里タンとの相談は、山形でやっている訴訟の弁論について。ちょっと詰将棋めいてきたので相談することにした。うかつな弁論をしてマグローブに逃げられたら、大学まで提訴して表現内容の違法性を争おうとした意味が無くなってしまう。教員が表現した内容の責任は教員個人がきっちり負うために(で、大学に、対学外への弁論をさせたりしないために)、自己の権利に基づいての提訴なので、ここで逃げられては元も子もない。ということで事前に書類を送って見てもらい、1時間くらい打ち合わせ。
 途中、あまりにも絵里タンが面白そうな顔をするので、「楽しんでるだろーっ!」とツッコミを入れるハメに。でもって、本人訴訟の最中の私への励ましの言葉が
絵里タン「難しいし前例ないから、上手く勝って判例タイムズ掲載を目指せ」
ってのはどうなんだと^^;)。まあ、弁護士に深刻な顔をされるよりは、楽しまれてる方が良いっちゃー良いのだけど。書類を一通り見てもらって、致命的なミスはしていなさそうだということで、ちょっとほっとした。

学天則

Posted on 4月 24th, 2008 in 倉庫 by apj

 asahi.comより

東洋初のロボット、80年の時越え再現
2008年04月24日22時43分

 80年前に大阪で作られた東洋初のロボット「学天則(がくてんそく)」が復元され、24日、報道陣に公開された。高さ3.2メートルの巨大なロボットは、圧縮空気によって目や口やまぶたで表情をつくるほか、手を動かしたり、ほおや胸を膨らませたりと、伝えられている通りの動きをする。7月18日にリニューアルオープンする大阪市立科学館(大阪市北区)の目玉展示になる。

 学天則は1928(昭和3)年、生物学者の故西村真琴博士が製作し、京都で開かれた大礼記念京都大博覧会に出品された。机に向かって座り、右手にかぶら矢のペン、左手に霊感灯と呼ばれるライトを持つ。当時は、空気の通るゴムチューブを押しつぶしたり、開放したりする装置で制御した。各地の博覧会を回り、ドイツに売却された以降は行方不明となった。

 復元されたロボットは、マイコン制御で、エアシリンダーに送る空気の量を調節して動く。制作費は2千万円。

瞳が横に動く学天則=24日、大阪市西区
ウインクする学天則=24日、大阪市西区
笑みを浮かべる学天則=24日、大阪市西区

 写真を引用しておかないと、学天則がどんなものか伝わらないので、記事引用の最後の部分にリンクして引用した。昭和3年にこの表情を出したのは凄いと思う。
 動いているところをぜひ見たい。

硫化水素

Posted on 4月 24th, 2008 in 倉庫 by apj

 「2訂版 実践NBC災害消防活動 災害事例に見る活動の実際」編集/全国消防協会、編集協力/東京消防庁(財団法人全国消防協会)978-4-8090-2233-3を最近買った。硫化水素自殺が相次いでいるし、巻き添えにならない安全確保の方法が何かあるか知りたくて読んでみたのだが、確実な対策は無さそうである。
 事例20が硫化水素による自殺例。家族からの通報があり、その内容から硫化水素発生が把握できたケース。

 発生したガスの種別を早期に特定できたため、進入隊員数の限定が可能となった。また、医師同乗での活動となったため、現場での観察をより正確に行うことができた。反面、家族が居室内で活動していたとはいえ、ガス濃度の検知及び空気呼吸器等をつけずに居室内での活動を行ったのは不用意な行為であった。ガス検知器を用いてガス濃度を検知する作業を行い、しっかりとした現場の安全性を確認することが必要であり、安全が確認されなければ、空気呼吸器などを着装して進入することが必要である。また、本事案で使用された薬品は量販店などで簡単に手に入れることができ、今回は自損を目的として使用されたが、テロを目的として密室内(映画館、電車、バス等)で使用されれば、そこにいる人々へ甚大な被害が及ぶ可能性がある。

 さらに解説を読むと、

(1)硫化水素ガスの人体毒性の特徴
 硫化水素ガスは、硫黄温泉で感じるような特徴的な臭気を持っており測定器に反応しない極めて低濃度のガスでも人の臭覚で確認できる。
 硫化水素の肺への吸入による影響は非常に早く、高濃度ガスを吸い込むと瞬間的に意識を消失するため、「ノックダウン」と呼ばれる。
(2)消防隊員の装備
 所見にもあるように空気呼吸器は必須。皮膚からの吸収もあるので化学防護服の着装も要するが、緊急に救助する必要がある場合は、着装しなくとも影響は少ない。

 至近で巻き添えをくったら助からないということか……。空気呼吸器を使う以外、近づく方法は無いということらしい。消防庁の情報で、特別な装備無しに安全を確保する方法が無いのであれば、とにかく安全な場所(ガスが充分拡散して薄くなる場所)まで逃げるしかなさそうである(何かうまい方法があれば掲載されているであろう本なので……)。
 この本は、他の薬品の流出事故や火災の例が沢山出ていて、読むと参考になる。事故例というのは、薬品を扱う人が気を付けなければならない具体的な例でもあるので。

 本の30ページにはバイオセーフティーレベルの表があるが、私は最近まで分類が変わったことを知らなかった(バイオを離れてかなり経つ)から、変更後を知ることができた。

 酸よりもアルカリの方が厄介という話は、具体的には、

 アルカリを使って除染技術の訓練を行うと、薬品を塗った部分を1時間以上洗っても、汚染検査を行うとpH試験紙が青変する。酸は皮膚表面を凝固させるが、アルカリは皮膚組織のタンパク質を誘拐し損傷が深部に達する。(146ページ)

ということ。冷やす必要はない(むしろ低体温になる方が問題)から、温水で洗いまくるしかない。
 事故発生が、化学工場や大学の実験室だったり、薬品を運んでいた車が交通事故を起こした(運送関係)、タンクなど密閉した設備での作業等の時、といったものは、まあありそうな話である。身近なところでは、一般の飲食店などでCO中毒発生とか、冷蔵庫やクーラーの冷却剤が漏れて気化したとか、普段の生活でも遭遇しそうな事例である。意外だったのは、工事していたら地面の中から黄リンが出てきて激しく燃えたとか、なぜか水酸化セシウムが埋まっていたという事例。変なものが埋まってることがあるんだなぁ……ってか誰だ埋めたのは。

講演とか

Posted on 4月 23rd, 2008 in 倉庫 by apj

 午前中は、都内で、日本トリムの取締役副社長の須長氏と話をした。以前、九州大白畑教授の活性水素説を宣伝で広めまくった日本トリムだが、須長氏が着任してから、全社的にコンプライアンスの徹底を目指す方向で指導し、もう活性水素の話は宣伝では使っていないということだった。これからは怪しい活水器とは一線を画して売っていきたいということだった。まあ、これまでがアレだったといえばアレなんだが^^;)、この先ニセ科学に走らずに商売してくれるなら良いので、当分見守りたい。
 午後は、毛髪科学技術者協会で講演。水関連の話。この団体は、美容室で使う器具やパーマ液、化粧水等の製造販売をしている業者さんの団体で、科学技術に基づいた商品開発や宣伝をすることを目指している。水関係はいろいろ持ち込まれるらしいので、「水ではなく水溶液であると考え、水以外の物質の組成と存在量の分だけは効果を期待しても良いが、それ以上のことは期待できない」といった基本的な話をした。とにかく、物質に立ち戻ることが基本だと強調し、今やっておられる活動を応援する方向で話をしてきた。
 大学では講義が始まっているので、抜けるのもどうかと思い、講演依頼があったときにかなり悩んだのだけど、仲間の先生に無理を言って抜けさせてもらった。美容業界は、美容師さんが怪しい水にはまったりすることが多いので、まっとうな業者さんを応援しておいた方が良いと考えた。
 まともな商品開発や宣伝をしている業者さんがマーケットシェアをとれるようでないと、消費者だって困ってしまう。懇親会で乾杯の音頭まで頼まれたので、インチキ業者がうまいことを言って商売しているのに遭遇して悔しい思いをすることもあるでしょうが、どうか負けないで、ということを言ってみた。

わけのわからない判決

Posted on 4月 23rd, 2008 in 倉庫 by apj

 YOMIURI ONLINEより

雑誌にコメント「掲載同意なら個人に責任」東京地裁が賠償命令

 音楽市場調査会社「オリコン」(東京)が記事中のコメントで名誉を傷つけられたとして、ジャーナリストの烏賀陽(うがや)弘道さん(45)に損害賠償などを求めた訴訟の判決が22日、東京地裁であり、綿引穣裁判長は烏賀陽さんに100万円の賠償を命じた。

 問題となったのは、月刊誌「サイゾー」の2006年4月号に掲載された記事中のコメント。記事は、オリコンの音楽ヒットチャート集計の信用性に疑問を投げかけるもので、烏賀陽さんは「オリコンは予約枚数もカウントに入れている。予約だけ入れておいて後で解約する『カラ予約』が入っている可能性が高い」などとコメントしていた。

 雑誌の発行元ではなく、コメントした個人だけを名誉棄損に問うのが妥当かが争点となった。判決は「一般に、出版社はコメントの裏付け取材や編集を行って掲載するため、コメントした者が名誉棄損に問われることはない」とする一方、「そのまま掲載されることに同意していた場合は、例外的に責任が問われる」と述べた。その上で、烏賀陽さんが掲載に同意しており、内容も真実とは言えないとして、賠償を命じた。

 烏賀陽さんは「言論を封じ込める判決で納得できない。控訴する」と話した。

 服部孝章・立教大教授(メディア法)の話「記事に最終的な責任を持つ出版元ではなく、コメントを寄せた個人の発言をとらえて名誉棄損を認めた判決には強い違和感を感じる。このような司法判断が出ると、取材を受ける側はコメントしにくくなり、マスコミは疑惑を報じる記事を書けなくなる恐れも出てくる」

(2008年4月22日23時14分 読売新聞)

 サイゾーの取材は、以前に私も受けたことがある。怪しい水商売批判ネタだったし、当然、批判するコメントをした。また、コメント掲載がそのまま行われる事も予想していた。だから、この判決は他人事ではない。
 そのまま掲載されることに同意せずにコメントせよ、というのでは、ほとんど何もコメントができなくなってしまう。コメントは改変してから掲載してください、じゃ、そもそも取材に応じる意味が無くなりそうである。
 そもそも、記者の取材に応じることに「公然性」があるのかも疑問である。普通は、責任を問われるのは出版社や編集部や記者までではないのか。