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発信者情報開示

Posted on 6月 20th, 2008 in 倉庫 by apj

 酔うぞさんのところ経由小倉弁護士のエントリーより。

18/06/2008
発信者情報開示の運用の見直しの必要性

 発信者情報開示の手続に関しては,そろそろ,開示請求者側の代理人として,主たるアクセスプロバイダやレンタルサーバ業者(商用ブログ事業者やレンタルサーバ事業者を含む。),巨大電子掲示板管理者等に,運用の改善を求めた方が良いかなという気にはなっています。壇先生や久保先生などもお誘いした方が良いかもしれません。

 とりあえず,弁護士が代理人についているのに本人の写真付き身分証明書の写しの交付を要求するのはやめてもらいたいし(本人から委任を受けていないのに委任状を偽造してまで発信者情報の開示請求をするなんてリスク犯しませんよ),投稿者のメールアドレスとして捨てアドが登録されていて意見照会ができない場合や,意見照会の結果真実性の抗弁の存在を基礎づける資料の提出がなかった場合には,速やかに発信者情報の開示に応じていただきたいものです。意見照会の結果のコメントが「申し訳ありません。発信者情報だけは開示しないで下さい」なのに,「当該犯罪を犯していないとの公的な証明書が提出されない限り,権利侵害が明白とは言えないので,開示には応じられません」という回答はもう止めてもらいたいものです。

 また,IPアドレスと投稿時間しか把握できていないレンタルサーバ業者等について言えば,発信者情報の開示請求を受けたら,当該投稿に用いられたIPアドレスからアクセスプロバイダを探し出して,当該投稿にかかるアクセスログを消去せずに保管しておくようにアクセスプロバイダに連絡し,そのような連絡を受けたアクセスプロバイダは当該投稿のなされた時間帯に当該IPアドレスの割り当てを受けていた人物を特定するのに必要な限度でアクセスログを切り分けて保管するようにしてもらいたいものです。

 ブログ事業者等には,匿名プロキシサーバを経由してのコメント投稿を禁止するようなシステムを採用してもらいたいものです。ブログのコメント欄で名誉又は名誉感情を毀損されるのはブログ主だけとは限らず,むしろ第三者の名誉又は名誉感情がコメント欄で毀損される例も少なからずあるので,匿名プロキシサーバ経由のコメントの投稿を認めるか否かをブログ主の選択に委ねるのも如何なものかという気がしつつあります。

 ここのblogはレンタルサーバに置いているが、匿名proxyからのアクセスは拒否することになっている。もっと正確にいうと、有力な匿名proxyリストをいくつか調べて、該当するものがあれば拒否するようにしている。コメント書き込み元のIPアドレスも全て記録している。
 今のところは、コメントを承認制にしているので、名誉毀損投稿が行われる可能性は低いと思うが、承認制を止めた場合には、第三者に対する名誉毀損投稿が行われる可能性は十分にある。私のところで押さえているのはIPアドレスだけなので、開示せよという要求があればとっとと開示して、あとはそのIPアドレスを持っているプロバイダ(こちらは、IPアドレスと顧客情報の両方を持っている)経由で本人にたどり着いて、当事者間で問題を解決すればよいというのが私の立場である。

割と「分からなくする」「データを持たない方が良い」になっているのですね。実際に、発信者情報開示請求が起きた頃には、データの整合性が分からなくなっている。

こういった傾向は、個人情報保護法などとの関係で、今後もどういう方向に向かうのかなんとも言いがたいですね。

少なくともプロバイダが「分かりました。データを保存します」と言っても実効性はないでしょう。

  これがあるので、以前、発信者情報開示請求をやった時は、まず、ログを保存せよという仮処分申立を先にやった。「保存します」だけでは実効性がないことは確かなので、一応、実効性がある方法をとってみることにした。6月頃にやって「その年の12月末まで保存する」という和解をすることでまずログを押さえた。この時は、発信者の方が「住所氏名を書いた書面で私に金を要求」したため、開示請求の提訴の前に発信者の特定ができてしまった。
 私の場合は、掲示板スクリプトを書いた本人であったので、データベースに保存しておいたアクセス元のIPアドレスから即プロバイダが判明したし、同時に嫌がらせのメールももらっていたので書き込み元から、相手が使用しているプロバイダもわかった。
 掲示板がレンタルサーバで、掲示板管理者のアドレスが捨てアドで連絡もつかない、といった場合にはどうするか。掲示板管理者の責任を問うならば、レンタルサーバ屋に対して「管理者(=サーバ屋の顧客)の情報を開示せよ」とやることになる(1)。書き込んだ人の責任を問うならば、「掲示板管理者はどうでもいいから、当該掲示板に対する書き込み元のIPアドレスを開示せよ」という話になる(2)。(1)の手続きで管理者の特定に時間をかけていると、管理者がわかってIPを出してもらったところで、既にプロバイダのログはない、ということが起きそうである。それならば、できるだけ迅速に(2)をやった方が良いのではないか。サーバ屋がIPしか持っていないでのあれば、開示したところで顧客情報でも何でもないから、契約上の問題は発生しないのではないか。掲示板と書いたが、blogのコメント欄も同様である。
 もう一つ、追跡で困るのが、嫌がらせのメールを延々送ってくるというパターンである。プロバイダ経由なら、投稿元のマシンのIPアドレスがヘッダからわかるが、webmailだと情報がないので、本人特定をするのにもう一手間かかる。webmailについて、ヘッダ情報にアクセス元のマシンのIPの情報を入れるとか、プロキシ経由での送信を拒否するといった運用をしてもらいたい。


ここからは旧ブログのコメントです。


by 酔うぞ at 2008-06-42 00:15:42
プロバイダ責任制限法は極めて厳しい

プロバイダにとって、プロバイダ責任制限法の正しい対応なんていつまで経っても確立しないで、ウロウロとさまようことになるのだろうと思います。

こんな記事もあります。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080619-00000173-mailo-l09

もちろんどういう申立があって、プロバイダがどう判断したのかが分からないのだから、なんとも言いがたいのですが、大手であれば開示の判断基準は「開示以外に対応できない」という場合限定だろうと思います。

しかし、そこまではっきりしていれば開示請求をするまでもなく、発信者が分かっているとかでしょうから、あまり適用例が出てこないかもしれません。

「よく分からないから開示請求するのだ」という請求者と「万一にも違っていたら困るからはっきりしてくれ」というプロバイダの間の交渉なのだから、結局は裁判所に判断を求める、となってしまうのでしょう。

判断に技術が必要なことであって、それを一本の法律で全国的になんとかできるというのが無理があります。