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「健康情報 本当の話」草野直樹著

Posted on 6月 30th, 2008 in 倉庫 by apj

 「健康情報 本当の話」草野直樹著 楽工社 の紹介。目次を引用しておく。

はじめに 3

■第1章 危ない健康食品 13

●八木田旭邦「新免疫療法」 13

進行がんには成果なし 14
手術すれば助かったかもしれないために裁判に 19
独自の判定で居直る現在 26

●師岡孝次監修『末期ガンに一番効くアガリクスは何か』 28

「食品」と「医薬品」の違い 28
ついに逮捕者が出た「がんに効く」書籍 31
担当医の話がない不思議さ 33
使えるネタを無原則に採り入れる論理矛盾 36

●新谷弘実『病気にならない生き方』 40

120万部突破のベストセラーというが…… 40
新造語や独自のPR 42
総花的な「健康」情報と科学的根拠の曖昧さ 46
「抗がん剤」で治療できる患者に対する責任 49
誰でもいえる「正しいこと」が説得力を持たせる? 53
医学的に使ってはならない単語の横行 56

●清水妙正『医者が体験した末期ガンからの生還』 60

「マイタケで生還した」現役医師の体験談 60
医師としては批判せざるを得ないが…… 64

●他の健康食品事件の数々 68

プロポリスの薬事法違反で実刑 68
CPLのバイブル商法 70
イチョウ葉エキスと大豆エキスで催眠療法 72

●バイブル商法に騙されてはならない 76

食品にもいろいろある 76
それ以外の「自称健康食品」 81
バイブル商法がいまだのさばっているのは…… 83
健康「食品」であるかぎり、「抗がん」のEBMはない 85

■第2章 健康観と治療法の疑似科学 89

●川竹文夫 NPO法人ガンの患者研究所 90

1124人のがん患者が交流した集会 90
がんはライフスタイルを改めれば治るのか? 94
「5年生存率向上」はまやかしなのか? 99
「4週間小さくなる」抗がん剤は無意味か? 102
医師の治療を受けることも自覚的である 105
カルト団体傘下の保険適用外治療を紹介 109

●福田稔・安保徹「自律神経免疫療法」 114

交感神経と副交感神経のバランスが大事と提唱 114
量・質ともに不足したデータ 116
科学的見識を疑うコラム 119
「リンパ球の数だけ」で見る現実にそぐわない珍論 121
誰とでも組むことで医学を否定することになりはしないか 128

●野島尚武「超ミネラル水」 130

薬事法的にはアウト、ヒトのデータなし 130
気をつけておかなければならない点 134
「超ミネラル水」にこだわる人たちの体験 136

●朝倉一善『医者もおどろく奇跡の温泉』ほか 140

体験談と飲泉商品紹介の「温泉バイブル本」 140
疑似科学用語の数々 144
温泉に過度の期待を抱かないこと 146

●その他の“ちょっとおかしい”療法 150

石原結實『ドクター石原結實の若返り健康法』ほか 150
甲田光雄『少食の実行で世界は救われる』ほか 154
山田豊文『細胞から元気になる食事』ほか 155

■第3章 テレビの健康情報 157

●関西テレビ「発掘!あるある大事典」 158

主要な部分はすべて捏造 158
企業と科学者の癒着も「反科学」の根源に 161
公権力の揺さぶりだけで根本的な解決にはつながらず 164
痩せ信仰を大きく変える文化が必要 165

●日本テレビ「おもいッきりテレビ」 168

「おもいッきりテレビ」とは何だったのか 168
ありふれたことで煽り、ありふれたもので落とす 171
番組隆盛の背景には「ビジネス」と「国策」 175

●NHK「ためしてガッテン」 179

アディポネクチン値に疑問 179
くずされた言い分 181
健康は特定の数値と全体とのバランスを見るべき 185
「ガッテン」の批判は的はずれか? 190
なぜ「ガッテン」に甘いのか 194

●他のテレビ放送のトラブル 197

白インゲン豆ダイエット法 197
「クローズアップ現代」の番組改編疑惑 198

■第4章 危機煽り本の危うさ 203

●三好基晴『ウソが9割 健康TV』 204

「商売科学」こそ「健康トリック」の真犯人 204
健康情報番組のトリックを暴く 206
「健康」を煽るのも「不健康」を煽るのも同じではないのか 208
科学的誠実さを欠いた危機意識の煽り 211
脱力するしかない結論 215
リスクとベネフィットの両面を示せ 218

●中村三郎『水道水も危ない!』 221

アスベストのリスクは不明 221
20年前のデータを現在は明らかに違う 227
引用と吸入のリスクははっきり区別されている 232
残留塩素はそんなに危険なのか 236
殺菌塩素と抗がん剤の共通点は? 243
安全を求めたはずの結論が「地下水」「ミネラルウォーター」だって? 248

■第5章 芸能人の健康情報 251

●水道橋博士『博士の異常な健康』 252

『博士の異常な健康』読んでみました 252
硬水を勧める無責任さ 253
旧式の体験談で今を語ってもいいのか 255
そんなに若返ることが大切なのか 258
デトックスと分子栄養学の問題点に触れない 263
ヒトを対象にした検証が必要 267
「右肩上がり」の健康感をどう見るか 271

●倖田來未「35歳を過ぎると羊水が腐る」発言 274

「羊水腐る」に「一理」なんかあるものか! 274
彼女は疑似科学の信者であり喧伝者だった 280
彼女だけを責めて済む問題ではないが…… 283

■第6章 “怪しい健康情報”からわかったこと 285

健康情報・こんな点に気をつけよう 286
疑似科学は社会の仕組みを知った上でとらえるべき 292
「理科教育だけ」論は他分野の研究者からも批判 297
疑似科学は一般社会人が自発的に発送するものではありえない 299
「カマキリ叩き」だけで問題は解決しない 301
取り締まれば済む問題なのか 304
代替医療=非科学という紋切り型批判の問題点 307
代替医療に向かう社会的要因 311
今の時点でいえること 314

■健康情報についての参考書籍・サイト 318

 これまでにメディアに登場した健康法や健康食品について、どういう問題があるのかを具体的に指摘し、議論した本。立派な装丁で本が出ていても、博士の肩書きがあっても、広く視聴されているテレビであっても、そういうことには関係なく、まんべんなくインチキ情報が紛れ込んでいることがよくわかる。健康食品や健康法の変なものにはまると、必要な治療が遅れたり、健康被害が発生したりすることになる。「うまい話にご用心」というのは、対悪徳商法だけではなく、健康法や健康食品についてもあてはまる。
 今後もインチキ健康食品や健康法は増えることはあっても減ることはないだろう。以前もどこかで指摘したが、大学教員の評価基準に社会連携が入っているので、バカ健食の宣伝に荷担する大学人も後を絶たないだろうというのがその理由である。自衛のためにも、ぜひ一冊買って読むと良いだろう。
 著者の草野氏は、メールマガジンでは大槻教授を強く批判しており、多少感情的かなと思う面もあるが、この本では冷静な議論をしているので、大変に読みやすい。

ポスドクに限った話じゃなかった

Posted on 6月 30th, 2008 in 倉庫 by apj

 asahi.comの記事より。今度は弁護士の就職難の話。

「弁護士の就職難」鮮明に、未内定者が倍増 日弁連調査

2008年6月30日11時8分

 年内に修習を終える司法修習生を対象に日本弁護士連合会がおこなったアンケートで、「就職が決まっていない」と答えた修習生が前年同期の2倍になっていることが分かった。法曹人口の増加に伴って問題になりつつある「弁護士の就職難」。今年はさらに厳しくなっているようだ。

 日弁連が4~5月、新司法試験と旧司法試験に合格して年内に司法修習を終える見込みの2383人にメールし、1041人が答えた。その結果、新司法試験合格者の232人(29%)と、旧司法試験合格者の31人(12%)の計263人が「弁護士を志望しているが、就職先は未定」と回答。全体の25%にあたり、前年の13%からほぼ倍増していた。回答していない修習生も含めると、推計で500人以上の就職が決まっていないことになる。

 司法試験の合格者数は、法曹人口を2010年ごろまでに年間3千人に増やす政府の方針に基づき、年々増えている。昨年も大勢の就職難が予想されたが、日弁連が弁護士事務所に強く採用を働きかけるなどしたため、弁護士登録できなかった人数は低く抑えられたという。だが、日弁連は「今年は難しい」とみている。(市川美亜子)

 普通にやって弁護士として就職できるのは1500人/年、といったところなのだろう。これならば、ロースクールなど作らずに、旧司法試験の合格者をちょっとずつ増やしながら様子を見る、という方法で対応した方が良かったのではないか。
 どちらかというと世間知らずに分類できそうな博士課程進学者と違って、弁護士志願者は社会の状況に敏感だから、入学者が激減するという形でローの定員には調整がかかりそうだが、それでも合格者の集団がえらいことになるというのでは、やっぱり当分混乱するし、あまりいい結果にはなりそうにない。
 もともとOJT必須の職種で、経済的余裕が情報収集能力に直結するので、いきなり独立開業して育っていける人というのは多分ごく稀だろうし。

日経サイエンス8月号の喫煙の記事

Posted on 6月 30th, 2008 in 倉庫 by apj

 今月発売の日経サイエンスの「1本で脳が変わる ニコチン依存の新仮説」はなかなか興味深い。ニコチン依存になるまでの時間が極めて短く、吸い始めてから1ヶ月以内に依存が始まる可能性が最も高い、という報告。長年続けたから止められなくなった、ということではないのだそうな。しかも、後から禁煙に成功しても完全に元には戻らないということだから、後々厄介な事になりたくなければ最初の1本に手出しをしない、というのが正解なのだろう。

 私が喫煙しなかったのは、いつも煙草を買うことを意識しなければならなくなったらとても面倒くさいに違いない、ということに尽きるのだけど。大体、食事をするのも面倒(何を食べるか考えなければならないのが既に面倒)で、何で人間は光合成でやっていけないのかと植物を見て恨めしく思うのに、この上「煙草を買いにいかなきゃ」などという要素が1つ増えるなんて、想像するだけでも悪夢である。