改正景品表示法と運用指針
「改正景品表示法と運用指針」公正取引委員会官房国際課長 南部利之編著 商事法務。
平成15年改正で導入された不実証広告規制についての解説著。出版は2004年7月。75ページまでは、公取のウェブにも出ている4条2項の運用指針とほぼ同じだが、改正に至るまでの報告や調査結果の資料が充実している。
目を通しておいた方がよいのは資料30で、排除命令になった表示(広告のコピー等)が多数掲載されている。ただ、ニセ科学の資料としては多少物足りないかもしれない。古いケースでは、商品説明として「電磁波」「超音波」くらいしか記載がなく、実際に電磁波や超音波を発振していたとしても効果が無ければ排除命令の対象になるわけで……。
痩せる方法と背を伸ばす方法がいくつも登場するのは、昔も今もありがちな欲望は変わらないということなのだろう。ノミ取り・ダニ取り・ネズミ取り装置が多いのが気になったが、これはその時代の衛生状態を反映しているということか。笑ったのが、金運が上昇する財布。広告の体験談のまずいところについて「これらの者が実際に金運が良くなった体験をしたかのように表示し」「使用したほとんどすべての者が実際に金運が上昇する効果を実感したという調査結果があるかのように表示し」などとある。ちゃんと読むと、実際に金運が上昇したという事実が無かったのにそのように表示したことが問題だと読めるわけで、じゃあ、「実際に金運が上昇した人だけ体験談に登場」し、かつ「ほぼ全員に対する効果ではないこと」が分かるように表示すればOKだったのかと……OKなんだろうな……。まあ、開運グッズってのはそういうものなんだろうけど。
【追記】
不実証広告規制についてのメモ。表示通りの効果が客観的に見て無い場合に排除命令の対象になる。つまり、ニセ科学宣伝をしたことが優良誤認にあてはまってしまったというのが、引っ掛かりかたのパターンの1つである。
では、ニセ科学に基づく表示がなされている商品だが、実際に使うとめざましい効果がある場合はどうなるのだろう。表示が科学的ではないだけで、表示から消費者が受ける印象と実際の効果に乖離が無い場合、理論の説明の部分で誤認は生じたとして、果たして優良と誤認したことになるのだろうか。うーん、すぐには結論が出ない(汗)。サイエンスの側の基準と、法的な基準が、歩み寄っているようで違っている部分について、このあたりを考えるとすこしはっきりしそうな気もするのだけど。
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