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出遅れたが回答してみる

Posted on 7月 12th, 2008 in 未分類 by apj

 ASIOS公式blog「科学の理解度判定問題」に回答してみる。かなり出遅れた感があるが。

 以下の問いについて、科学的思考としてより妥当だと思われる答えをa, bから選択せよ。また、それを選択した理由を自由に記述せよ(答え 各2点、理由 各18点 合計100点)。

【問1】新しい理論は科学を発展させるから、新たな主張にはあまり厳しい批判をせず、大事に扱うべきである。
a. その通り
b. そうではない

答え:b
理由:新たな主張には、それを支える証拠が必要だし、その主張で何がどこまで説明でき、何が説明できないかを見極めないと、それが本当に科学を発展させるものかどうかがわからない。

【問2】これからも絶対に間違いが見つからないように注意して作られた理論は、当然正しい理論である。
a. その通り
b. そうではない

答え:b
理由:間違いが見つからないように作られた、ということは、間違いを見つける手続きが適用できないように作られたということを意味していたりする。それは、正しい理論ではなく、何の役にも立たない理論である。

【問3】新しく立てた理論について、その理論で説明できるという例を沢山見つければ、その理論の正しさはどんどん確実になっていく。
a. その通り
b. そうではない

答え:b
理由:適用例が多いというのは、理論の有用性を示すことになる場合もあるが、正しさとは無関係である。たとえば、オームの法則は、適用できる例がとても多いが、限られた条件でしか使えない便法である。とても有用だが、正しい理論というものとは違う。理論の有用性を示さない場合は、何でも説明できる理論=何も説明していない理論、となってしまう。

【問4】”「白いカラスが存在する」という主張と「白いカラスは存在しない」という主張は対等なのだから、双方が証拠を持ち寄って議論すべきだ。”という考えは科学的である。
a. その通り
b. そうではない

答え:b
理由:「存在する」方は、白いカラスを見つけて持ってくれば「証拠を持ち寄る」ことができる。「存在しない」を示すには、世界中の全てのカラスを持ってこなければ証拠を持ち寄ったことにはならず、そのようなことは不可能である。「ある」を示すには、証拠を1つ探してくれば良いが、「無い」を示すのはほとんど無理である。

【問5】科学の歴史において現代では間違いとされる理論が主流になっていた事が多々ある。これは科学が失敗した例である。
a. その通り
b. そうではない

答え:b
理由:自然を記述する近似の精度が上がった結果、よりよい理論の方が採用され、古い精度の低い理論が間違いとされたのであるから、科学が成功した例と考えるべき。

 このテスト自体が有効かどうかを考えてみた。

 まず、科学は結構保守的なのだが、ニセ科学商品を売りつけたがる人は、問1のチェックが非常に甘いことが多い。というか意図的に非常に甘くしている。
 問3でaになるのは、「波動」な人々かなぁ。何でも「波動」で説明できる世界を夢見ておられるようだし。
 問4は、あまり関係ないかもしれないが、唐突に「原則と例外」の話を思い出した。科学ではなく文系方面の議論でも、原則を言うときには説明が要らないが例外を述べるときには説明が要る、という話である。立てられる論が対称ではない場合は、分野を問わずあるということか。まあ、無いというなら証拠を出せ、と無茶を言う人はどこにでも居る。
 問5は、問1とセットで登場する事が多い。問1で、怪しい理論へのチェックを甘くしろと主張し、問5で、科学だって過去に間違っていたんだから、今の科学が正しい保証はない、とくるわけで。

 結構特徴を捉えているので、問いの立て方としては良さそう。


ここからは旧ブログのコメントです。


by TAKESAN at 2008-07-57 12:07:57
見事に

今晩は。

見事に、問3の答えをaにしました。余裕で誤読しましたよ。


by ながぴい at 2008-07-41 07:32:41
Re:出遅れたが回答してみる

あ、俺こういう2分法の問題は苦手だな~。
ひねくれ者だから。

問4なんて、
「いないのなら、俺が作ってみせる!」
と言い出すのが、マッドサイエンティストの真髄というものだwww


by apj at 2008-07-34 10:07:34
日本の古い風習を思い出した

TAKESANさん、
 やはり、日本語で内容を正確に伝えるには、もう少し詳しく状況説明をしないといけないのかもしれませんね。コンテクストを掴みそこねたら簡単に誤読しそうだと、私も思いました。

ながぴいさん、
 その問4のカラスの例ですが、私は全く関係ない別の話を思い出したりして。封建的家制度のもとで、嫁が姑に絶対服従であるべしという例として、姑が黒いカラスを見て「あのカラスは白い」と言ったら嫁は逆らうな、なんてのがありまして……。


by y_ikeda at 2008-07-23 23:55:23
Re:出遅れたが回答してみる

白いからすはアルピノならありえるような気がします。;-)

でも、嫁と姑の話のときは、「特定のからす」の話なので、またちょっと別かな。
「黒」「白」とは何か、から議論をはじめないとダメなのかも。


by hir at 2008-07-09 13:33:09
Re:出遅れたが回答してみる

> 白いからすはアルピノならありえるような気がします。;-)

「ありえる」というか、実際にいます 🙂

http://mirabeau.quu.cc/photo/ueno_zoo2/ueno_zoo_2895.html

鳥好きな方々のブログを見ていると見かけることがありますが、カラスは人の近くに住んでいて大きく数が多いこともあって、話題になり易い感じを抱いています。


by newKamer at 2008-07-29 18:15:29
Re:出遅れたが回答してみる

 問題文に問題が残っているという結果でもありましたが、さすがapjさんの答えは簡潔かつ出題者の意図を掴みきっている感じですね。


by apj at 2008-07-56 20:35:56
確かに、アルビノが居ますからねぇ……

 確かに、カラスの例は誤解されやすいかと。
 「悪魔の証明」になりそうな、分かりやすい例に差し替えた方がベターだと思いますが、なかなかいいのを思いつかない。


by 杉山真大 at 2008-07-59 05:24:59
こいつ↓に「理解度判定」をやらせてみたい

そう言えばNATROM氏が以前に取り上げた「理系保守」氏が、書き飛ばしてますなぁ・・・・・
http://empire.cocolog-nifty.com/sun/2008/07/or_4f6b.html

> 「πは3.14である」と書くと 「いや!3.141592653589・・・だ!」と屁理屈を並べる。

円周率が超越数で無理数なんだから、「πは3.14である」は明らかにNG。せめて「πは『ほぼ』3.14である」と書かないと。

>そもそも”blogでの論争”とはお互いにblogのサイトを立ち上げ・お互いの立場と理論を明らかにし”相互主義”で行うものである。

不実告知の様なマネをして、都合が悪くなると出入り禁止にした奴が何を況や・・・・・


by ながぴい at 2008-07-39 23:01:39
Re:出遅れたが回答してみる

第4問は、
「宇宙人はいるかいないか」
という問いのほうがいいかもしれません。

「いる」と「いない」という主張は対等でない、
ということはギャンブルに例えるとわかりやすいかも。

「いる」に賭けるほうが圧倒的に有利。
なぜなら、勝つことはめったにないのだろうけど、「いない」ということを証明するには、全宇宙のすべての星について調べなければならず、
それは事実上無理なので、最悪いつまでも決着はつかず、負けることはない。


by あらきけいすけ at 2008-07-51 03:16:51
さらに出遅れてエントリにコメントしてみる

問3の例として「ママレモンは猛毒である、なぜならママレモンをゴキブリにかけると、ゴキブリが確実に死ぬからである」ってのを考えてました。これだと事例の方は100%の確率で積み上がって行きますね。

中学くらいの頃から信じてましたね。これが間違ってるという知識を得たのは随分と後でした。