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ムペンバ効果調査中(4):J-CASTニュースの記事

Posted on 8月 2nd, 2008 in 倉庫 by apj

 Yahoo経由J-CASTニュースの記事より。

「水よりお湯早く凍る」論争沸騰 日本雪氷学会で本格議論へ
8月1日20時55分配信 J-CASTニュース

 NHKの番組が紹介した「水よりもお湯の方が早く氷になる」実験を巡り、ネット上の議論が盛り上がっている。早大の大槻義彦名誉教授はブログで、水の方が早く凍る実験結果を示し、NHKを再び批判。物理学者らの間でも関心が高まり、日本雪氷学会で研究者らが本格的に議論することになった。

■実験した大槻名誉教授が再びNHK批判

 J-CASTニュースが2008年7月26日付記事で取り上げたNHK「ためしてガッテン」の実験は、その後も真偽を巡ってネット上の議論が沸騰。記事も、同ニュースサイトのアクセス・コメント両ランキングで、現在もベスト10の上位に入る人気になっている。

 コメントを読むと、自ら実験したとの報告がいくつかある。いずれもNHKの実験結果とは異なるものだ。例えば、

  「僕は試してみました。ポットの湯と水をそれぞれ50ccずつ、計4個の同じコップに入れて30分。先に凍り始めたのは水が入った2個のコップでした」(高草山さん)

  「盛り上がっているので実際に自分ちでやってみた!容器を一緒に並べて置いたらやっぱり水のほうが早く凍ったよ!! 2回やったけど同じ」(ぱくさん)

 ちなみに、J-CASTニュース編集部が社内の冷蔵庫で一度試してみたところ、同様な結果だった。

 NHKを批判した早大の大槻名誉教授は、ブログの7月31日付日記で、「実験やったか?」と多くの批判を受けたと告白。お湯の方が早く凍るムペンバ効果について、「熱力学の基本法則からありえません」としながらも、重い腰を上げて実験に取り組んだことを明らかにした。

 大槻名誉教授は、6区画の製氷皿、ペットボトル、プラスチック製まな板で実験した。冷蔵庫の冷凍室に入れた結果、1区画を除く製氷皿とペットボトルで、お湯より水が先に氷になった。これはコメントと同じ結果だ。お湯と同時だった1区画については、蒸発熱、過冷却など「偶然上の要因」と論じている。

 一方、まな板では、お湯の方が早く氷になったという。しかし、「板の上に広く広がり、極端に蒸発熱が奪われ、また薄いお湯の層は、すぐ下地の板の温度になるため」としている。

 結論として、大槻名誉教授は、「NHKの主張は正しくありませんでした」と断言している。

■複数の条件下ではありうると北大名誉教授

 では、10回以上も予備実験に成功したとするNHKの論拠は何なのか。

 NHK広報部では、「複数の条件で実験を繰り返した上で、高温水の方が早く氷ができ上がることを確認し、番組を制作しました」とだけ説明する。とすると、「複数の条件」以外では、ムペンバ効果が現れないということなのか。

 「ためしてガッテン」の実験を監修した北大低温科学研究所の前野紀一名誉教授は、こう解説する。

  「普通は、お湯が先に凍るということはありません。番組では、そういうことがあると言っているのです。それは、お湯と水などの温度の組み合わせ、容器の形や大きさ、冷凍室の温度、空気の対流といった条件によってです」

 前野名誉教授はそのうえで、まな板ではお湯が早く凍ったとする大槻名誉教授の報告について、それはムペンバ効果が起こることを証明したと指摘した。

  「効果的になるような条件を作って実験をやれば、ムペンバ効果が起こるということです。まな板と同じメカニズムが働くような工夫をすれば、ほかの容器でも起こりえます」

 製氷皿の1区画でお湯と水が同時に凍ったことについても、同様だとする。「冷凍室の真ん中と左右では、空気の温度が違うはずです。また、食品があるかでも条件が違い、空気の動きを調べないと効果を否定できません」。ペットボトルについては、蒸発熱が発生しないので効果はありえないという。

 一方で、前野名誉教授は、家庭で手軽に実験できるのがいい点としながらも、ムペンバ効果そのものの解明はできないという。「コンピューターシミュレーションでも解明できないような難しい現象が、単純な形で現れているからです。物理の専門家はいかに難しい問題であるかをよく知っていて、プロジェクトを組まないと分からないものなのです」。

 そして、東大で9月24~27日に開かれる日本雪氷学会の研究大会で、関心ある研究者を集めて科学的に議論したい考えを明らかにした。

 冷却開始温度のみが異なる場合には、偶然お湯の方が先に凍ることもあるけど、それが50%を超えることはない(論文では47%)要するに、丁半バクチでしかないような話である。
 【この部分訂正】過冷却になった割合を私がうっかり勘違いしたので。確率については、調査中(1)のエントリーで紹介した文献中の引用文献[4]に出ている。が、いずれにしても、確率的な現象である。
 「前野名誉教授はそのうえで、まな板ではお湯が早く凍ったとする大槻名誉教授の報告について、それはムペンバ効果が起こることを証明したと指摘した。」はちょっとおかしい。元のムペンバ君の報告では、薄く拡げた水ではなくて、容器に入ったアイスクリームや水の話だった。表面の影響が無視できなくなるような場合とそうでない場合を一緒くたにするのは乱暴すぎる。また、NHKの実験はあくまでも製氷皿で、板の上にうすく水を拡げるという話ではない。