墓石の伝説もあるわけだが
<世界遺産>島根大生が石見銀山遺跡の岩を採取、持ち帰る
10月11日10時4分配信 毎日新聞島根大は10日、総合理工学部4年の男子学生(22)が世界遺産の石見銀山遺跡(島根県大田市)で、岩盤遺構や坑道跡の「間歩(まぶ)」付近の岩石をハンマーでたたいて採取し、持ち帰っていたと発表した。卒業論文の研究のためだったが、文化庁の許可を得ていなかった。市は「文化財保護法違反の可能性がある」として学生と大学側から事情を聴いている。
島根大によると、学生は9月9日と16日、間歩から掘り出された岩石や、間歩付近の岩盤遺構など約10カ所をハンマーで割り、拳大の石5、6個を持ち帰った。岩石の年代測定や、含まれている鉱物の構成などを調べる卒業論文研究の試料にしていたといい、「遺跡の重要な所と思わず、転がった石なら大丈夫だろうと思った」などと話しているという。
島根大の山本広基副学長は「重大な問題として受け止めている。再発防止に努めたい」と謝罪した。【御園生枝里】
その昔、酸性雨の影響を調べるために、墓地に忍び込んで夜な夜な墓石をハンマーで叩いてカケラを持ち帰った、という伝説ならきいたことがある。墓石に使われる材料が比較的一定で、建てられた時期も書かれているから、石の表面の経年変化から酸性雨の影響を調べるのに最適なのだそうで。
ここからは旧ブログのコメントです。
by ながぴい at 2008-10-08 00:36:08
Re:墓石の伝説もあるわけだが
こういう研究って、
試料の入手法について、論文にどう書くつもりだったんでしょ?
正直に書いたら問題になるっしょ?
クジラのミオグロビンの研究してたグループは、
動物愛護団体からクレームが来ないよう、
「このミオグロビンは、捕鯨禁止以前から冷凍保存されていた肉から採取した」
とかわざわざ書いているという話だった。
by 杉山真大 at 2008-10-11 06:57:11
その点、昔は凄かった(汗
『科学朝日』に連載されてた「科学史の事件簿」には、仏像や文化財を盗んでた博物学者が登場してましたよね。しかも帝国大学の、だから相当の地位の方だったんですよね。
もっとも↓の単行本には収録されなかったみたいですけど。
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最近ではアイヌ人の墓を盗掘した人類学者や医者の話が取り上げられていますし、こういう学者の行状が厳しい目で見られている中では拙いことをやったみたいですね>島根大生
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4861101522?ie=UTF8&tag=mtcedarcom-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4861101522
by TKOP at 2008-10-40 08:12:40
文化庁
科学って、いかがわしい宗教に対抗するために
生まれたようなものかもしれない。
でも、その範囲を過大適用してはいけないと思う。
科学の歴史が、中世キリスト教のいろいろないきさつを経て
「宗教批判」として、起こって来たのは事実だが、
それでも、宗教を否定しさることは出来なかった。
第一、文字字体が、アルファベットや漢字が、数字が、
その根源を辿れば、宗教と密接に関係して来たのだから。
科学自体が宗教のようなものだ、と思います。
だから、絶対に科学が正しいとすれば、
一種の宗教を信じていることになるのだと思います。
反証可能な理論が科学であって、科学はどこまで行っても
絶対真実にたどり着けないのだと思う。
もしも、真実なるものが、存在するとすれば、ですが。
by apj at 2008-10-32 08:17:32
昔は武勇伝で済んでたんでしょうねぇ
ながぴいさん、杉山真大さん、
昔は、変な資料入手方法をやっても、武勇伝で済んでたんでしょうねぇ。今はそういうわけにはいきませんが。
TKOPさん、
科学は自然を理解するための方法論なので、適用範囲は最初から決まってます。拡大適用しようとして失敗しているのは、科学者ではなくて、科学を理解せず印象で語るような人達と、他人を欺すために故意にそういうことをする人達ですね。
別のエントリーで言及していますが、「水からの伝言」は、科学が道徳の根拠になるという拡大適用をしたことも問題の1つなわけでして。
by がんのすけ at 2008-10-59 08:42:59
Re:墓石の伝説もあるわけだが
あの、すみませんが杉山さん、
アイヌとはそもそも「人」という意味です。アイヌは自らのことをアイヌ、またはアイヌ民族とは呼びますが、アイヌ人とはいいません。もしやと思って、山本多助著「アイヌ語小辞典(昭和51年刊)」にも当たりましたが、アイヌ人という表現は見つけられませんでした。
いまのところ(アイヌ民族の独立国はありませんから)、日本で生まれ育ったアイヌ民族は日本人であって、アイヌ人ではありません。
つまらないことのようにお思いになるかもしれませんが、私には、アイヌ人という語は、ずいぶん違和感がありましたので…。
アイヌが置かれてきた社会的立場を少しでもご存知なら、このような誤用はなされないはず、と思いたいです。
本題とは関係のないことで、失礼しました。
by 温泉カワセミ at 2008-10-52 10:05:52
Re:墓石の伝説もあるわけだが
このネタで思い出したのが、何年か前にNHKの番組(Project Xやったかな?)で、前にノーベル賞を取らはった小柴さんのことを取り上げたのが在りまして、その中でお弟子さんが紹介しはったエピソードがねぇ・・・
なんでも実験で使うアルミが必要な量、入手出来なかったんですって。
それで小柴先生に相談すると、1円玉に両替してきてソレを(鋳つぶして?)使えと言われたとのこと。
番組の中では『合理思考』みたいな誉め方してたけど、ソレって『貨幣の損傷』になって罪になるよなぁ?と、TVにつっこんでしまいました。
by apj at 2008-10-31 10:41:31
何罪?
温泉カワセミさん、
刑法の16章は「行使の目的」がないと成立しませんね。
取り締まりの根拠条文はこれですかね。
===============================================
貨幣損傷等取締法
(昭和二十二年十二月四日法律第百四十八号)
最終改正年月日:昭和六二年六月一日法律第四二号
○1 貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶしてはならない。
○2 貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶす目的で集めてはならない。
○3 第一項又は前項の規定に違反した者は、これを一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
附則
○1 この法律は、公布の日から、これを施行する。
○2 昭和十五年大蔵省令第四十号(補助貨幣のしゆう集、鋳つぶし又は損傷の取締に関する省令)は、これを廃止する。
附則 (昭和六二年六月一日法律第四二号) 抄
(施行期日)
第一条
この法律は、昭和六十三年四月一日から施行する。
===============================================
昔、あんまり汚い十円玉があったので、塩酸に浸してぴかぴかにしたことがあったのだけど、表面の層だけ薄く損傷したことに……なるんでしょうかね。
by apj at 2008-10-50 10:45:50
しかし、ハンドブックが欲しいな……
条文調べてて思ったのだけど、刑法以外にも罰則のある規定はあるから、刑法だけ読んでても駄目なわけで。「これをやると処罰される 日本人のためのハンドブック」みたいなタイトルで、罰則のある条文全部網羅した本でも出して欲しいなぁ。
条文を見落としてて引っ掛かるのはいやだなあ、と。
by まりん at 2008-10-52 11:42:52
全然違う事を考えてしまい…
温泉カワセミさまが「このネタで思い出したのが」…とおっしゃるのとは、全く違うネタを思い出してしまいました(汗)。
墓石で酸性雨の影響と言ったら…真っ先に、タージ・マハールの大理石の建物の酸性雨と環境汚染物質の影響が、思い浮かんでしまいました。…度々コケてて失礼いたします。
ちなみに、日本で夜な夜な墓石削って研究と言うと…何やらオゾマシイ感じがしますが、流石にインドのマハラジャみたいなネタだと、あっけらかんとやり過ごせますね。
(正確には、マハラジャじゃ無いんだけど…便宜上。)
by 温泉カワセミ at 2008-10-13 19:31:13
Re:墓石の伝説もあるわけだが
apjさん、
>取り締まりの根拠条文はこれですかね。
そぉそぉ、コレです。
でも、補助貨幣は鋳つぶしても怒られないことになってたのは、この条文見るまで知りませんでした。
>表面の層だけ薄く損傷したことに……なるんでしょうかね。
あははは、錆の部分までは貨幣じゃないと言ってみれば大丈夫じゃないですかねぇ。
確か、貨幣の金属の組成も法律で決まってたはずですから、錆の成分とは違うはずですし。
by apj at 2008-10-48 21:16:48
で、錆落としてびっくりのパターンも
温泉カワセミさん、
とある日、自動販売機で切符を買ったら、全面黒ずんだ10円玉がおつりで出てきました。よくよく見たら、何かヘン。偽造じゃないだろうな、と研究室に行って、早速塩酸に浸してみたら、錆がとれて、出てきたのがクウェートの硬貨でした。
大きさがそっくりで、表面が錆びたり汚れたりで、同じく錆びたり汚れたりした10円玉とちょっと見ただけでは区別がつかなかったのではないかと。
珍しいし小額なので飾って楽しんでましたが、あのまま気付かなかったら流通したんじゃないかと。
by apj at 2008-10-26 21:21:26
あっちはもっと文化財っぽい
まりんさん、
確かに、墓石は、肝試しをやってる風情がありますね。
元記事の島根の方は、自然に出ている岩なので、砕いて良いか駄目なのか見た目で判別がつきません。それだけに、端っこをかいて持ってくる心理的抵抗は少なかったのかも。
タージ・マハル廟までいけば、あきらかに人工の建造物&文化財なので、表面を調べるにも何か許可がいるんだろうな、と思うのが普通かと。
by TKOP at 2008-10-33 06:54:33
返:
apjさま>
問題は「石ころなら大丈夫」という感覚ですね。
島根大学の学生には、石見銀山が「文化財」だという意識が
あったのかもしれないが、それよりも「研究で成果をあげること」という意識が勝ったのです。
科学者は「モラル」というか社会規範に対する意識は、どうなのでしょう。
科学者はたいてい宗教が大嫌いだから、もしかしたら宗教の派生みたいな「モラル」を嫌うのかな、と思ってしまいました。
>科学は自然を理解するための方法論なので、適用範囲は最初から決まってます。
しかし、その自然に対する「畏敬」とか、そういう思いは、
今の科学者にはあるのでしょうか?
科学は、何だって明らかにできるのでしょうか?
科学は、真理なのでしょうか?ほんとうに自然を征服したのでしょうか?
もちろん、「疑似科学」のようなものは論外ですが、
当の「科学」が、原理主義のようになって、それが唯一の真実だ、と主張し出すとすれば、また話は別です。
それはれっきとした宗教であり、疑似科学にこのような立場のものが多いのは確かです。
しかしながら、正当な科学であっても、原理主義的になってくると、
モラルを破っても、研究成果をあげようとするものなのかな、と思いました。
そこでは一種の思考停止が起こっていると思います。
by apj at 2008-10-08 09:16:08
想像力がたくましすぎるのでは。
TKOPさん、
>島根大学の学生には、石見銀山が「文化財」だという意識が
>あったのかもしれないが、それよりも「研究で成果をあげること」という意識が勝ったのです。
「遺跡の重要なところだと思わなかった」と答えているわけで、遺跡がどの範囲を指すかをあまり考えていなかったのがうかつだったというふうに見えます。おっしゃるようなことは推測に過ぎません。
>しかし、その自然に対する「畏敬」とか、そういう思いは、
>今の科学者にはあるのでしょうか?
知りません。科学者と呼べる人は大勢居ますから。科学者に対して一律に「自然に畏敬の思いを持つべき」と考えることの方が、宗教の押しつけであり、一種の思考停止だと思います。
>科学は、何だって明らかにできるのでしょうか?
>科学は、真理なのでしょうか?ほんとうに自然を征服したのでしょうか?
少なくとも、科学がなんだって明らかにできると思っているプロの科学者を私は知りません。なお、私の見解では、科学は自然を記述するものであり、自然の近似です。真理であるかどうかは、科学それ自体で判断することはできませんし、自然を征服にいたっては全くの勘違いです。
>しかしながら、正当な科学であっても、原理主義的になってくると、
>モラルを破っても、研究成果をあげようとするものなのかな、と思いました。
遺跡を壊しちゃった例は、ただの間抜けに過ぎません。そこから原理主義云々に話を発展させるのは、妄想ではないかと。
by エディ at 2008-10-20 21:01:20
Re:墓石の伝説もあるわけだが
貨幣をキレイにするために磨くのは、貨幣損傷等取締法に引っ掛からないと思いますが、小柴先生のはアウトでしょうね。
by かとう at 2008-10-15 00:04:15
re:しかし、ハンドブックが欲しいな……
検察庁は、内部資料として持ってるかも。
by ごんべえ at 2008-10-27 07:45:27
Re:墓石の伝説もあるわけだが
塩酸なんかで洗ったら、廃液処理が面倒:(
とかですよね、いまだと。重金属入り無機廃液としてためておいて、、、
「これをやると処罰される 日本人のためのハンドブック」….
日本人はすべての法律を知っていることになっているから、、、、、