何が必要になるかわからないよ
先週、共通教育の内容へのコメントとして、学生さんから「学部でやる専門と違う内容なので、勉強して将来役立つことがあるでしょうか?」というのをもらった。多分、全国各地でそう思っている学生さんはたくさんいるんじゃないか。それで、年長者としてちょっとだけ説得を試みた。
けちなことを言わずに、何でも勉強した方が良いよ。
私の経験からすると、「勉強してなかったことが必要になる」ことの連続だった(でも、きっと、勉強して知っている知識を使う時は、それと意識しないで使うから印象に残らないのだろうね)。
紆余曲折を言うと……物理出身なのに就職先は化学になった。趣味で触ったコンピュータは、卒業研究や修士の研究で実験装置の制御プログラムを組むのに役だった後、博士課程の間のバイトに役立ち、その後数年、職が無かった期間、食べていくための手段になった。航空機の制御やら航空管制のしくみが内容の、「航空電子工学」なんてものを高専で教えたこともある。これは電磁気学や、物理の実験で出会った簡単な制御理論の知識を動員してこなした。
その後、水のニセ科学批判をやったら、いろいろ揉めることになって、これまでに裁判をやったし、今でも係争中である。自分で訴状を書いて本人訴訟をやったりもしたし、弁護士とも楽しくやっている。実は、数年前から法律を独学することにした。しかし、最初に法律を学んだのは、みんなと同じくらいの年齢の時に、大学の教養教育で法学をとったことがきっかけだった。その後10年ほどしてからまた自分で勉強することになったけど、その際の敷居を、教養教育の時の勉強がだいぶ下げてくれた。全くゼロというのと、多少やったことがあるというのは、だいぶ違う。
大学4年間は専門をやるとしても、社会に出たって勉強は継続しないといけないし、きっと、どんどん、これまでやってなかったことが必要になる。人生、この先何が必要になるかはまだわからない。そんなことは誰にも予測できない。だから、いろいろ経験しておくと、その時は浅く知っているだけでも、次に必要になって勉強するときの、心理的な敷居はかなり低くなる。何でも貪欲に吸収するように心がけておくと、後で役立つこともあるよ。
こんな話をざっくばらんにしてみた。
どこかの分野の知識を完全に捨ててしまうのはもったいないし、将来そのことが足を引っ張るかもしれない。せっかくいろいろ勉強できるチャンスなのだから、ぜひ活かしてほしい。
まあ、私だって、知らないことの方が多いのだけど、専門外の分野だからといって、頭から拒否したりしないように心がけるつもり。
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