雪の結晶、但し水の中
読売新聞の記事より。
無重力下で雪の結晶…宇宙ステーションの「きぼう」で成功
「きぼう」での氷結晶成長実験。ガラス管の先に、さしわたし数ミリの美しい氷の結晶が成長している(宇宙機構、北海道大提供)
国際宇宙ステーション(ISS)に設置された日本実験棟「きぼう」で2日、氷の結晶の成長過程を調べる初めての科学実験が始まった。茨城県つくば市の宇宙航空研究開発機構筑波宇宙センターからの指令で行われたが、見事な「氷の花」を咲かせることに成功した。「きぼう」での実験は、8月に続き2度目。地上での実験は重力の影響で水が対流してしまうため、形のよい結晶ができなかった。
無重力下で観察しようと北海道大低温科学研究所の古川義純教授が提案。
水で満たされた装置内に、ガラス細管の先端部から小さな氷の種を出すと、その周囲に、きれいな結晶が成長した。鮮明な氷の結晶成長の画像撮影は世界初。
古川教授は「想像以上に対称性の良い結晶ができた」と喜んだ。
結晶成長の分析は、半導体製造に欠かせないシリコン結晶の製造など、工業にも応用可能な基礎となる。実験は来年3月ごろまで100回前後行われる。
(2008年12月2日12時49分 読売新聞)
どんな形かというと、
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のような形になっている。これは、液体の水の中に置いた氷の表面から起きた結晶成長で、枝の先端が丸くなっているのが特徴。むしろ、チンダル像に近い。通常の雪結晶は、水蒸気から結晶成長するので、樹枝状に成長した場合は先端部分が尖った形になる。
ただ、なぜ液体中で成長させると丸い感じになり気相中で成長させると尖った感じになるのか、このことを既に誰かが説明しているのかも含めて、不勉強故に私は知らないのだけど……。もし、シミュレーションで特徴を出そうと考えた場合、分子がやってきて固体表面にくっつく部分は気相でも液相でも同じ扱いだろうけど、固体表面への分子の供給速度とか、相転移した後の熱伝導の方向や速度が、周囲が気体の時と液体の時で大きく違うし、どうなるのかなぁ……。
#とりあえず、「ありがとう」が関係ない事は確かだ:-P。
ここからは旧ブログのコメントです。
by 酔うぞ at 2008-12-22 05:36:22
ありがとうじゃないけど
ぎぼうだったりする。
by apj at 2008-12-47 06:07:47
^^;)
誰がうまいこと言えと
by omni at 2008-12-53 21:24:53
Re:雪の結晶、但し水の中
水の中で雪と似た氷の樹枝状結晶になるのが面白いです。0℃近くの水に、それより温度の低い種結晶の氷を入れたのでしょう。過冷却水ですともっと大きな領域が凍ってしまいます。樹枝状結晶になっていますから、非定常的な成長で、かなりの速度で結晶が成長していると思います。ゆっくりとした成長速度だと単結晶の氷になりますから。
重力の有無は水の対流の有無なのですが、地上で同じ実験をしてみるとどうなるのでしょうね。地上では対流の影響は避けられませんから、比較実験そのものが難しいかも知れません。
雪は気相成長で、氷は液相成長です。気相成長は水蒸気分圧差、液相成長は温度差が結晶成長の駆動力です。実際には水蒸気分圧差も温度差から生じますから、結局温度差ということになります。
結晶の成長速度は、気相成長よりも液相成長の方が圧倒的に大きいです。ざっくり言うと、気相成長の場合は、成長界面近傍の水分子の密度が小さいため単分子成長的で、液相成長の場合は成長界面に水分子が直接に接しているので、多分子的な結晶成長ということだと思います。
シリコンなどの工業的な結晶成長は、熱移動、物質移動、対流などを扱う化学工学の世界です。江本某の及びもつかない世界です。あんな人に結晶成長の世界を汚して欲しくないですよ。本当に腹が立ちます。
結晶成長屋にとって美しい結晶とは、転位密度の小さい単結晶のことなのです。雪の結晶を美しいと思うのは、見た目に対称性が良いからですが、単結晶は目には見えないけれど、対称性も規則性も格段に優れています。雪みたいな多結晶を作ってしまったら、「オマエ、腕が悪いな」と言われてしまうかも。