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健康本的作家養成本

Posted on 1月 15th, 2009 in 倉庫 by apj

 「すべてのオタクは小説家になれる!」大内明日香・若桜木虔著、(イーグルパブリッシング)を読んだ。
 一言でいって、健康本(しかもいわゆるバイブル本)的作家養成本である。しかも、健康本に例えるとするならば、最近の「壮快」という雑誌の路線に近い。なお、「壮快」は、怪しくても健康関連情報を載せるという範囲から既に逸脱し、魔方陣を付録につけるというぶっ飛び具合を見せている。本来テーマとなるべき情報そのものが怪しい上に、本筋と関係のないところが妙に詳しく書かれているあたりが、この本と「壮快」の共通点である。「健康本」を読んでも、健康について間違った知識を得るだけでちっとも健康にならないという意味で、この作家養成本は健康本的である。

 まず、「第一章 オタクは小説家に向いている」。

「オリジナリティ」は重要ではありません。

と断言している。その理由の一つ目は、

だって、オリジナリティがあると言いたいだけなのであれば、「見たこともないような奇妙キテレツな小説とも言えないような代物」を書けばいいんですから。

 それ、オリジナリティじゃなくて、単なる「読むに堪えない文」では。もう一つの理由は、オリジナリティは作家を幸せにはしないからだと書いてある。

例えば、ネットで新人賞の受賞作家を検索して、その中から「デビュー作一作しか本になっていない作家」の作品をピックアップして読むと、実は多少なりとも他の作品よりはオリジナリティがある確率が高いのです。

 デビュー作の後、次々と作品を生み出している作家の一作目が軒並み凡庸だということまで言わないと、こういう結論は出ないはずである。私にはとてもそうは思えない。サンプリングの仕方と結論の出し方が健康本的である。
 この筆者は、オリジナリティの代わりになるのは専門知識だと主張している。このことが、オタクが小説家にむいているという説とつながっている。その理由として列挙されているのが、

①「特定分野に対して専門知識がある」②「まじめでコツコツ型が多い」③「一人でなにかをすることができる」

 オタクに限った属性でも小説家に限った属性でもないと思うが……。 小説家になるために絶対に必要な才能としては、

「小説を書くことが好き」「小説を書くことが楽しい」

が必要だと……。そういう作家さんが居てもよいとは思うけど、職業ってそういうもんだっけ?むしろ、辛くても続けられるとか、苦にしないといったことの方が重要なのでは。
 と読み進んでいくと、49ページで驚愕のどんでん返しが!

 この本ではいわゆる「小説の書き方」は説明しません。
 なぜなら、そういう本は、私達が説明するまでもなく、世の中にたくさんあるからです。
 たくさんある小説作法署の中から、あなたが気に入った本を選んで、その記述に従って、まずは一本、小説を書いてみてください。

 この本の狙っているターゲットって、オタクであるという自覚があり、かつ、自分も作家になれるかも、と淡い期待を抱いている層じゃないのか?しかしこの本で小説の技術を教えるつもりは全く無いらしい。つまり、題名通り「すべてのオタクは小説家になれる」と読者をただ単に煽るだけの本だったのである。
 次に、読者を

「善意の読者」とは、「あなたの作品が良くても悪くても、最後まで読んでくれる読者」のことです。
(中略)
「悪意の読者」とは、「おもしろくなかったら途中で読むのをやめてしまう読者」のことです。

 と二分している。で、「悪意の読者」対策をするとプロ小説家になれる、というのが筆者の主張である。その対策の一つとして、「出し惜しみをするな」というのだが、

言い換えれば「竜頭蛇尾はOK!」ということになります。
(中略)
もっと極端な話をすれば、物語は完成しなくてもいいのです。
竜頭でありさえすればいい。

 最初の見かけが悪いと小説を手にとってもらえないが、最初が良ければとりあえず読んでもらえるというという話である。「竜頭で最後が不明な小説」を間違って買わされた読者は絶対に次からその作家の本は買わなくなると思う。1回だけカモをひっかけて金を巻き上げてドロンするつもりならこの方針でも良いかもしれないが……。というか、ぱっと見よく見せかけて実は品質が大変悪いものを売りつけるって、普通に悪徳商法の典型的な手口ではないかと。
 驚愕する主張はまだまだ出てくる。

読者は複雑なことは「絶対に」理解できません。(中略)さて、それを防ぐために、「わかりやすく書くためのコツ」をお教えします。それは、「対象読者を『虫』に設定する」
ということです。

 小説の書き方ではなくて、インチキ健康法を書くときの姿勢に見える。
 さらに、ゴシック体で強調されているのが、

「リアリティは計算して作り上げるもの」「取材は、必ずしも必要ではない」

 体験談が全部捏造だった健康本を思い出した。 小説を書くための技術を教えるつもりは全く無い本だが、「第四章 小説家になるための「弟子入り」大作戦!」が、妙に具体的である。
 たた漫然と読んでも面白くないので、私がオタクで(これは事実)作家志望(これは仮定)だとして、作家の誰かに弟子入りを試みるというシチュエーションを想像しながら読んでみる。作家は……具体的な誰かを想像する方がイメージが湧くのだが、面識があるのがと学会会長の山本弘氏なので、SF作家を志望する私が山本会長に弟子入りを試みる、という妄想でとりあえずはOKだな。

 師匠を持つからには、師匠の知識と人脈を根こそぎいただくくらいの気概で接しましょう。そして、師匠とのふれあいを、あなたの作品がより素晴らしくなるための栄養にしましょう。

 ……いきなり濃い目標だが、最後の文、「あなたの作品をより素晴らしくするための」が日本語として正しい気がする。

 見ず知らずの人に「弟子にしてください」と頼むのですから、生半可な気持ちでは、相手も迷惑なのです。

 本気で押しかけたらもっと迷惑をかけそうな気がするが……今回、相手は妻子持ちだ。

 けれど、あなたがもし、やる気と向上心と社会的常識をちゃんと持つ人なら、師匠の方でも大歓迎です。

 えーと、私が今の准教授の職を蹴飛ばして大阪の山本会長のところに転がり込んだ時点で、ほぼ全ての人が私の「社会的常識」を疑うに違いない。

 「特定の一人に気に入られるように工夫すること」は、「読者全員に気に入られるよう工夫すること」と、なんら変わりはないのです。

 山本会長の好みって、同人誌の「チャリス・イン・ハザード」の主人公みたいなのだよな……。私ゃ、歳取りすぎてるし、かわいくないし、一体どうすりゃいいんだか……。ダイエットとエステから始めたってごまかすには無理がありすぎる。  で、弟子にしてもらえなくても恨むなとか、相性があるとかごちゃごちゃ書いてあって、いよいよ具体的な方法が示される。

 まず、「この人の弟子になりたい」「この人に指導していただきたい」というターゲットを複数決めましょう。

 いきなり複数かよ!断られることも前提にするのだから予備を考えるのはわかるけど、芸の師匠を決めるってこんな安易な話だっけ? ターゲットに接近する方法は、難易度順に示されている。このご時世、いきなり押しかけると通報されかねないので、まずは、

「ターゲットのブログ」あるいは「掲示板」「ミクシィ日記」にコメントをつける「はじめまして。いつも先生の作品を拝見している者です。こちらもときどきのぞかせていただいております。(日記や作品の感想)。以後、よろしくお願いいたします」とでも書いておけば、ファースト・コンタクトはOKです。

(中略)

しかし、あんまり頻繁に書き込むと気持ち悪いと思われてしまうので、週に一、二回くらいがいいかと思います。

 これくらいなら、まあ目立たずできそうだ。
 次に、自分のブログのURLをコメントに書いたりしてターゲットを誘導する。このときの心構えは、ブログを面白くしておいてターゲットに好感を持ってもらうことが大事だそうで。
 次の方法は、ターゲットの知人に紹介してもらう、というものだが、

どうやったらターゲットの知人がゲットできるか。その方法は千差万別で、ひとくちに説明はできません。このやり方を試す人は、自分でいろいろ工夫して考えてみてください。

 と、アドバイスする気ナッシングな記述が。 で、知人が居なければターゲットに直接声をかけることになる。この方法は、

ターゲットに「直接声をかける」ためにはまず、ターゲットのスケジュールを調べます。(中略)
講演会やイベントのスケジュールの日程を調べればよいのです。

(中略)
「スーツ」を着ていくことをおすすめします。

(中略)
弟子入りもまずはお友達、知人から。
考え抜いて、なにか「用件」をでっち上げてください。

(中略)
ひとつめは、「大学で教えている人には、『あなたの講義を聴きにきました』と言う」方法。
もうひとつは、「あなたの所属するナントカに入れてください、と言う」方法。

(中略)
また、そもそも「ターゲットと接触するために、ターゲットの入っているグループに別ルートから入る」という手もあります。
(中略)
また、ターゲットの「よく行く店」が判明している際には、その店に通って、ターゲットが来るのを待つ、という手も非常に有効です。
(中略)
どんな有名なターゲットでも、「本業とは関係ないところ」から入ると、意外に簡単に接触できるものなのです。

 相手の行動パターンを読んで、好みを調べ、待ち伏せしろということか。つまり、東京のと学会例会の後、大阪に戻る山本会長の後をつけて新幹線に乗り、どこの店に立ち寄るかとかをしつこく調べてそこで待て、ってことだな。で、会長の好みを下調べした上で、バーかどっかでくつろいでいる会長に、楽しい話でアプローチせよ、と。
 直接接触が大変な場合は、ターゲットにメールを書くといことが薦められているが、

ここで、「ターゲットがどういうふうにこの手紙を読んで、どう感じるか」ということを徹底的に考え抜いてメールを書かなくてはなりません。(中略)
つまり、一通のメールには、あなたのすべてが投影されている」と言っても過言ではありません。
(中略)
いかに私があなたに好意を抱いていて、真剣な気持ちで、お遊びでなく、あなたの指導をうけたいと思っているか。その気持ちを考えに考えて、それこそ丸一日考えるぐらいの気持ちで書いてください。
(中略)
師匠捜し、ターゲットに接触するためには、「使える手は(犯罪以外なら)なんでも使う」「楽をしようとしない」。この二つは非常に大事です。

 用件が無いと書けないので難易度が最も高いとされている手紙については、

「手紙の場合のみ、『押しの一手」というのが、効く可能性がある」(中略)
「手紙は必ず、手書きにする」

(中略)
文字を見れば、真剣に書いたのかそうでないのか、その人の性格はどうなのか、また便せんや筆記具の選び方、宛名の書き方(もちろん手書きにしましょう)、果ては切手選びのセンスまで、ありとあらゆることが問われることになります。

 どう見てもラブレターの書き方である。つまり、山本会長が好みそうな絵柄の便せんと封筒のセットを買い、知る限りの文句を並べてアプローチせよ、と。
 無事に弟子入りできたとして、その後の注意は、

つまり、師匠と弟子の関係は「生きた関係」でなくてはならず、そのためには弟子の方から、何らかのアプローチをしつづけなくてはならないのです。

 読めば読むほど、SF作家になるため山本会長の元で修行している姿ではなく、ストーカーまがいのモーションをかけた挙げ句に不倫をしている姿しか思い浮かばないのは何故だろう……。 とにかくこの本、オタクが、コミケあたりに出しそうな二次創作を気軽に書こうとか、そこから一歩踏みだして作家になろうということを目指すための解説本だと思ったら大違いである。
 最初の3章は、健康バイブル本のフォーマットで書かれた、インチキ健康本を書くときに参考になる情報。第4章は、彼氏か彼女を見つけてアプローチし、無事ゴールインする(相手が未婚の場合)か不倫する(相手が既婚の場合)ための方法にしか見えない。
 その上、肝心の小説作法は別の本を見ろといってスルーされており、やたらこまかく具体的で情景が思い浮かぶのは「弟子入り大作戦」の部分だけである。
 真面目に作家を志望するとか、プロにならないまでも小説を書くことを楽しむために技術を身に付けたいという人は、別の本を読むべきである。


ここからは旧ブログのコメントです。


by もとエスペ at 2009-01-10 17:58:10
Re:健康本的作家養成本

でも、結局全部読んじゃったんだから、作者としては目論見通りなわけだな。


by apj at 2009-01-23 19:16:23
私はと学会員

 読んでてトンデモと気付いたら、むしろ最後まで読みますねぇ。
 単に安易な作家へのススメが書いてあるだけだろうから何かのネタにsるかと思って買ったら、4章が斜め上の方向にものすごいことになってて、トンデモ本ハンターとしては面白いものを見つけたと。


by 新井 at 2009-01-50 21:24:50
驚いた

 今回の文章を読んだ感想は 驚き の一語。

 apjさんが、昨年12月19日発売の、無名の本を直ちに購入して、自ら愚劣であると酷評しているものを読み通し、長文の感想文を書いたことに驚きました。

 この本はアマゾンの商品紹介によれば 出版評論家大内明日香とベテラン作家であり卓越した小説作法指導者である若桜木虔がタッグを組んだ、小説作法書第二弾!
小説家になりたいオタクの必読書!!

となっています。大内氏はともかく、若桜木虔という人はベテラン作家と書かれていますが、かなりの読書家(月に30冊以上読む)である私が全く聞いた事もない作家です。一体どういう作家なのでしょうか。最も作家というのは何も小説家に限りません。何かを作り出す人はみな作家ですから、作家と聞いて小説家と早合点する方が悪いのかもしれませんが。

 その本はどういう版型の本か知りませんが、仮に新書版として、また悪くとって、大きな字で、行間を広く取った手抜きの本であるとすると1ページの文字数はおよそ400字。192ページですから総字数7万6千字。

 apjさんの読む速さは分かりませんが、1分間に600時として、この文章ではかなり綿密にお読みになったようなので、メモを取りながらの読書であることを勘案して1分間300時とします。そうすると読書所要時間がおよそ250分=4時間。

 それにこの文章の総字数が、総行数が約180行、1行当たりの平均字数を30字として5400字。apjさんの入力速度は分かりませんが、相当早いとして1分間100字(因みに、ワープロ検定初段が120字/分だそうです)、それに文章構成/推敲/校正などを考えて文章作成時間は約2時間。

 合計約6時間。この数字が正しいかどうかは分かりませんが、かなりの時間を要したことは明らか。こう言う駄本の紹介には惜しい時間だと思います。

 なお、このコメントを書くのに要した時間は、apjさんの文章を読んで、文章の構成・推敲・校正を含めて書き終わるまでにおよそ1時間10分かかりました。その時間には、平均読書速度、平均文字入力速度、この本のデータ、などについての調べに要した時間が含まれて居ます。


by Seagul-X at 2009-01-39 21:35:39
著者の名前だけで

>若桜木虔

ここだけで、「これは笑うところ?それとも突っ込むところ?」とか思ってしまいました…


by 多分役立たず(HNです) at 2009-01-49 02:15:49
数だけは出しているような

>若桜木虔氏

Amazonで検索すると、194件とでてきます。

Amazon.co.jp: 若桜木 虔 – 和書: 本
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/search-handle-url?%5Fencoding=UTF8&search-type=ss&index=books-jp&field-author=%E8%8B%A5%E6%A1%9C%E6%9C%A8%20%E8%99%94

#この結果は突っ込みどころでしょうか?

このような記事がありました。

賞取り困難な「時代物」(若桜木虔:第1回)|NIKKEI NET 日経WagaMaga:働く-起業
http://waga.nikkei.co.jp/work/business.aspx?i=MMWAj3000022052008

ペンネームはいくつか使っているようです。

若桜木虔とは – はてなキーワード
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%E3%BA%F9%CC%DA%E9%CA

wikipediaには、項目がないようですね。検索すると、名前だけは、あちこちの項目にでてくるのですが。


by apj at 2009-01-47 04:04:47
ネタとして楽しめた

新井さん、
 実はこの本、活字はそんなに細かくないし、余白はやたら多いしで、最初に読むのに1時間もかかりませんでした。早い人なら30分で充分かも。何せ、スローガンもどきを書いてあるだけに限りなく近いので、ほとんど何も考えなくても読めるんですよ。
 2回目はblogを書くためにひっかかっていた部分を拾いながら、引用部分をキー入力して、作文には多少時間がかかりました。エントリーを書くための所要時間はまあ2時間程度。一旦アップして読み返してちょこちょこ直して終了、です。

 作家養成本だけじゃなくて文章作法の本を読むのは昔から好きなので、いろいろ買って読んでます。その割には上達しませんが^^;)

Seagul-Xさん

 若桜木さんは、「さらば宇宙戦艦ヤマト」ののヴェライズをやった人、というイメージですね。中学生くらいの時に読みました。他の作品は読んだことがなかったのですが、最近、この人の小説の書き方の本ばっかり目に付くなあ、と。

 問題の本は、年末にジュンク堂に立ち寄ったらコミックス新刊コーナーにあったので、集めていたマンガ本と一緒に衝動買い。読んでみて、4章で笑ってしまい、トンデモ本として紹介しようかと思って段ボールに突っ込んでおいた。
 そうしたら、山本会長がミクシィで、誰でも作家になれるとかえーかげんなことを書いてあってプロ作家としては見過ごせないひどい内容だという趣旨のコメントをしたので、作家じゃない私はむしろ4章がトンデモだと思った、などと書き込みに行った。で、会長が取り上げるつもりなら紹介せずにおこうかな、と思ったのだけど、間違って買う人が出るかも知れないからコメントすれば、って意見もあったので、じゃあ私の方でも批判を書くかな、と。


by apj at 2009-01-46 04:09:46
むしろ……

 いっそもっと突き抜けた第二版を出して、「弟子入り大作戦」の、ターゲットの身辺調査の方法について微に入り細にわたって書きまくれば、作家養成本としては使えないかわりに探偵養成本としての価値が出るかも知れませんね。


by ハッチ at 2009-01-19 06:26:19
Re:健康本的作家養成本

はじめまして

>若桜木虔氏

70-80年代のコバルト文庫、秋元文庫、ソノラマ文庫の常連でしたね。金のない中学生が本屋で文庫本棚のまえをうろちょろしているとイヤでも目に付いて、名前を覚えてしまう。


by かつゆき at 2009-01-59 08:47:59
まだ沈まぬや?霧島那智は。

>新井さん。

真っ当な本ばかり読まれている限りなら、月に30冊ペースでも引っかかることはない種類の人ではないかと思われます。

この人に関して私が思いつくのは。

・中学に上がる頃、アニメのノベライズ(殊に近頃、あれは私が考えたと吠えたり噛んだりしてる人が原作の)で名前を知った。ほかに何書いてたかはぜんぜん知らない。
テレビでアニメを見るのを禁じられ、絵よりも字の多い本を読めと怒られる身に貴重な隠れ蓑的存在だったが、それ以上の価値は見出せなかった。

・すっかり忘れた頃、霧島那智という人が折からの仮想戦記ブームに乗って酷いのを粗製濫造していた。実はグループで、それも若桜木虔氏とその教え子たち、と聞いて驚いた。ベテラン師匠とその弟子、プロ4人がかりでこの文章かよ?と。
史実の霧島と那智はよく知らないが、無理に名前を繋いだこの艦はきっと山に登って転覆するんだろうな、と思った。

・風評に近いんだろうが、血迷って教え子であるメンバーの一人に結婚を迫ったらしい。当然相手には蹴られ、師弟関係もぶち切られて逃げられた、とか。

まあ最後のこれは、どうだろう、とも思いますけど。


by apj at 2009-01-42 09:34:42
小説の書き方、で引っ掛かってくる

ハッチさん、

 はじめまして。中学の頃、本屋をうろつくのが趣味でしたが、コバルトだかソノラマだかのアニメノベライズ本で知りました。なぜか、学級文庫に若桜木虔氏の宇宙戦艦ヤマトの本を持ってきた人がいて、放課後に教室で読んだ覚えがあります。

 で、高校に入ったころ、2つ上の従姉妹が東大文Iに受かり、大学の話をしてくれたんですが……。
従姉妹「サークル入って知り合った人にゴーストライターしないかって誘われた」
私「誰のゴーストライターよ?」
従姉妹「若桜木虔」
私「え~ヤマトの本書いた人?で、引き受けるの?」
従姉妹「断った」
私「だよね~労力かけて書くんなら、やっぱり自分の名前でデビューするっていうんじゃなきゃね~」
という会話が……(汗)。かれこれ二十数年前のお話ですが。

かつゆきさん、

> 真っ当な本ばかり読まれている限りなら、月に30冊ペースでも引っかかることはない種類の人ではないかと思われます。

 最近、立て続けに数冊ばかり引っ掛かりまして、一応斜め読みして段ボールに突っ込んであります。小説の書き方とかシナリオの書き方でamazonを調べると、関連本として引っ掛かる引っ掛かる……。


by 新井 at 2009-01-01 22:23:01
Re:健康本的作家養成本

 まっとうな本ばかり読んでいるわけではなく、相当いかがわしい本も読んでいますが、若桜木氏の著作とは全く異なる種類の本ばかり読んでいたので、若桜木氏がそんなに有名な小説家だとは知りませんでした。apjさんの文章では同氏をおちょくっているように読めましたので、どうせ売れない三文文士だろうと思って、検索して氏素性を知ろうなどと考えもしなかったのですが、アマゾンだけで192冊も売られているとは大したものです。

 弁解するようですが、私は漫画は子供が読んでいたドラえもんとかガラスの仮面など、おとなしいものしか読んだ事がないし、コバルト文庫とか秋元文庫など見たこともありませんでしたので、そういう売れっ子小説家を知らなかったのは当たり前ですね。それにしても世の中知らない事だらけです。


by 新井 at 2009-01-41 23:56:41
若桜木虔さんのこと

 多分役立たず さんのお教えに従って若桜木さんについて調べましたが本当に驚きました。同氏は小説に限らず、多方面の著作もされており、しかも理科系の博士課程全科目修了で、理学博士号取得寸前で小説に専念するために退学、という経歴の方だそうです。

>昭和22年生。
 昭和40年現役で東京大学理科類に合格 数学の教師から「奇跡だ!」と言われる。

 大学院で植物遺伝学を専攻、博士課程に籍を置いたまま小説プロ・デビューを志し、1年後に劇画原作でデビュー。 ほぼ収入が安定するのは2年後で、無茶書きして更に1年後には杉並区成田西に庭付き一戸建ての家を求め(その当たりのそのころの土地価格はおよそ坪数十万円以上)。

 執筆が多忙になり、博士課程は全単位を取得して修了したものの、学位論文を出していないので、博士号は修得せずじまい。
 
NHK文化センター、読売文化センターがあることを知り、自ら売り込んで小説講座を開講。<

ということだそうです。

 同氏の07年までの著作一覧というのがありましたが、それで見ると、

小説(ノベライズ・漫画原作含む) 149冊。

 この中には、3年B組金八先生の元になったと思われる1年B組新八先生、2年B組○八(名前失念)先生、3年B組勘八先生などがある。

 速読関係の本 25冊

 小説作法の本 11冊

 英語関連本   7冊

 卓球関連の本  6冊

 ともかく何にでも興味のある方らしく、いろんな本をお書きになっています。速読には特に興味があるらしく、また、速読関連には速読を利用した受験の本も数冊含まれて居ます。 

 それにしても多彩な人がいるものです。そういう多作作家を全く知らなかった読書好きの自分にも驚きました。


by 通りすがり at 2009-01-16 05:25:16
金八先生

>>この中には、3年B組金八先生の元になったと思われる1年B組新八先生、2年B組○八(名前失念)先生、3年B組勘八先生などがある。

「1年B組新八先生」、「2年B組仙八先生」、「3年B組貫八先生」は金八先生の後番組です。


by Seagul-X at 2009-01-46 05:36:46
フォローアップが遅くなってしまいましたが

その間にかつゆきさんに書かれちゃいました。

架空戦記方面で知られる霧島那智の中の人(のひとり)だったりします。架空戦記の中でもトンデモ戦記とか呼ばれる類のものを書いてました。あまり一般的ではないけれど、「どっかん戦記」と形容してたひともいたと思います。(擬音を多用する、それも「どかーん、どかーん」とか、「ばばばばばばばば」とか、そんなんばっか)

と学会関連でも言及されたことがあったと思います(が、どこでだったかまでは記憶にありません)。トンデモ戦記を書いていたのは他にも何人かいたので、セットで取り上げられていたかもしれません。
ということで、カテゴリのトンデモつながりの話だったのでした。

まぁ、粗製濫造とはいえ、それなりに売れる作品を多く出せるのはそれはそれで才能といえるでしょうから、そのノウハウを本にするのは意味があることかもしれません。ちゃんと本にできていれば。
でも、apj さんのレビューや他のかたのコメントを読むかぎりハウツー本も粗製濫造で、この本もその例に漏れなかった、という感じですねぇ。


by ごんべえ at 2009-01-06 08:05:06
Re:健康本的作家養成本

新井さんの「理学博士号取得寸前で小説に専念するために退学」って言うのは誤読でしょう。「博士課程は全単位を取得して修了したものの、学位論文を出していないので、博士号は修得せずじまい」=博士課程は在籍していただけで何もしていませんと読むべきだし、そもそも理学とは書いていない。農学部で植物の、、、。
http://members.jcom.home.ne.jp/wakasaki/wakasakiken.htm
「いったん理学部人類学科に進学するも、気を変えて農学部に転じ、植物遺伝学を専攻する。」とあります。


by apj at 2009-01-01 09:14:01
他の本はそれなりに意味がある

Seagul-Xさん、

>でも、apj さんのレビューや他のかたのコメントを読むかぎりハウツー本も粗製濫造で、この本もその例に漏れなかった、という感じですねぇ。

 まあ、確かに小説作法の本も粗製濫造気味ではありますし、今回の本に通じる記述も見受けられますが、他の小説作法本については読む人と読み方によっては役立つと思います。
 というのは、まるきり素人が小説を書いた場合、一体誰の視点で書いてるかわからない描写とか、誰の台詞かわからない書き方とかのオンパレードになったりします(実例:コミケあたりで売ってる二次創作小説あたりを見ればたくさん見つかる)。そういうのはダメだということがちゃんと書いてあるので、読むに堪えないレベル・読者に無駄な努力を強いるレベルから、一応は読読みやすいレベルにしたいという、アマチュアの人の役に立つんじゃないかと。

#トンデモ本ハンターとしてはこれじゃ空振りなんですが。


by 鐚鰹竺鐚 at 2009-01-13 13:41:13
Re:健康本的作家養成本

>私が山本会長に弟子入りを試みる

大内明日香は、自身の師匠である唐沢俊一を思い浮かべて書いたのでは?
そういえば、最近、唐沢も小説を書いたらしいし。


by なざろふ at 2009-01-06 18:10:06
Re:健康本的作家養成本

大内氏のBlogには、「私は唐沢俊一さんの弟子ではありません。」と書いてありましたね。

http://blog.bestseller.jp/?month=200812
(12月14日)

また、「脳内師匠」は岡田斗司夫氏で、弟子入りはしていないとか。


by nomad at 2009-01-47 04:51:47
Re:健康本的作家養成本

> #トンデモ本ハンターとしてはこれじゃ空振りなんですが。

そこで「この本を手本に山本会長に弟子入りをせまってみた」でスレ立てですよ!
永遠の17歳の山本会長にトツゲキーッ


by apj at 2009-01-04 07:41:04
その前に……

>永遠の17歳の山本会長にトツゲキーッ

 私が永遠の12歳にならなきゃいけない罠(´・ω・`)


by tsgr7 at 2009-01-47 10:56:47
Re:健康本的作家養成本

若桜木虔先生という時点で中身がまともになるわけ無いです…
あの先生の凄いところは「およそどんな仕事であっても本一冊分の文字を高速に用意してくれる」ということであって、中身は常にたいしたことないです。
責められるべきは「ちょっとオタク向けに流行ってる創作指南本一冊だしとこうか、機を失わないうちに今すぐ」と企画した方にあるとおもいます。


by 新井 at 2009-01-41 22:33:41
頭が下がります

 ここでの論議内容とは少し異なりますが、天羽さんの水商売ウォッチングに関連する一連の文章を読んで、本当にたまげました。

 昨日あるブログで、主宰者のお子さんが化学物質過敏症であるが、水素水を飲んで良くなった、という記事を読み、子のブログでも取り上げられたばかりなので、水素水とはなんだろうと興味を持って検索すると天羽さんの水商売ウォッチングに行き着き、そこで水素水についての長期間にわたる一連のやり取りなどを読みました。

 膨大なのでほんの少し読んだだけですが、あれだけの文章を書き、投稿された文章を読むためにどれだけの時間が費やされたのかと考えてしまいました。ここでのブログのコメントで天羽さんが述べられているように、ほとんど頭を使わないで済む簡単明瞭な駄本批判でも、所要時間は2時間。

 そうすると、ウォッチングのほうの文章は、研究者としての天羽さんの立場もあるでしょうし、相手は金儲けに集中している人たちですから、うかつな事はかけないし、書いた文章の根拠はきちんと抑えておく必要はあり、また相手は、ここでの若桜木氏1名とは異なって数多く存在するのですから、しかも練りに練った詭弁を武器にして挑んでくるのですから、対応するだけでも大変ですね。送られてくる文章を読むだけでも大変でしょうから、ウォッチングのみならず、ここのブログ屋その他のサイトを運営したり、またあちこちのブログを読み漁って、たまにはコメントしたり、しかもそれらの事以上に大事で大変な本職をこなし、おまけに訴訟まで抱え込んでいるとは。

 閑な暮らしをしている私でもあちこちのブログを読むだけでも大変だと感じているのに、天羽さんの八面六臂の活躍ぶりには頭が下がります。

 こんなくだらないコメントでまた天羽さんの時間を盗んでしまいました。相すみません。


by 新井 at 2009-01-22 03:47:22
頭が下がります 2

 ↑のコメントで書き漏らしがありましたので追加します。

 「自身のためにはあまり役立たないでしょうに、世の為、人の為に活動なさっているapjさんを見ると本当に頭が下がります。」

というようなヨイショをするのがコメントを書く初めの目的でした。ほとんど何も考えずに書き出して、読み直しも斜め読みのやっつけ仕事で済ましていますので、肝腎の「」内の文章が抜けてしまいました。

 なお、こんなコメントにまさか返信はなさらないと推測しますが、あえて 返信コメント無用、と書いておきます。


by うさぎ林檎 at 2009-05-08 00:55:08
下らない話で申し訳ありません

こんな騒ぎはご存じないでしょうが、唐沢俊一の馬鹿っぷりを検証しているサイトで「日本トンデモ本大賞」が取り上げられています。

http://d.hatena.ne.jp/kensyouhan/20090526

この記事の本がトンデモ本としてノミネートされているようですが、この本の作者が唐沢氏と懇意のため、少々もめているようです。
「と学会」としてのスタンスが問われています。「と学会」にトンデモを愛でる精神が無くなってしまったのかな?とは私も心配しています。


by apj at 2009-05-04 06:24:04
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今日のエントリーで書きました。
何か、誤解の上に誤解が重なってるようにしか見えない。
例年だってノミネート本は売ってませんし。