この先どこに最適化されるか
中退率など大学公表を…文科省が義務化狙う
文部科学省は5日、国公私立大学に公表を義務づける教育情報の項目を盛り込んだリスト案を中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)大学分科会の部会に示した。
5分野、計17項目からなり、大学側が積極公表してこなかった「中途退学(中退)率」や「在学者数」などが含まれる。受験生らの指標にしたい考えで、さらに項目を精査し、年度内の大学設置基準の改正を目指す。
リストで示されたのは、教育の質を向上させるため、大学が積極的に公表すべき情報で、「教育」「学生」「組織」「経済的枠組み」「学習環境」の5分野。
例えば、「学生」の分野で示された「中退率」は、入学後の進級の厳しさを示す一方、不本意入学の多さなどにもつながるデータで、経営に直結するため大学が出したがらないのが実情だ。
このほか、収容定員との差し引きで定員割れの実態が分かる「在学者数」、推薦入試やAO入試での入学者数が分かる「入試方法別の入学者数」など、リストには大学側が公表に消極的だった情報が含まれた。
教育情報の公表は大学設置基準などで規定されているが、具体的な公表項目は各大学の判断に委ねられているのが実態。大学運営の基礎となる学則を公表している大学は41%(文科省調べ)に過ぎず、「説明責任を果たしていない」との批判もあった。
(2009年11月6日08時05分 読売新聞)
これをやるなら、卒業した大学生がどれだけの知識を身に付けたかチェックする統一卒業資格試験のようなものを課さない限り、社会の側が困る。中退率で大学を競わせれば、どこの大学だって進級を甘くする方向に進むに違いない。そうなると、卒業生の学力の保証はまず不可能になる。
ところが、文科省は出口での絶対評価を小中高とまったくしてこず、一種の粉飾決算を続けさせているのだから、大学でそれができることは期待できない。統一卒業資格試験のようなものを課せば一定数の不合格者は出るわけで、文科省が学校制度をいじっても効果が無かったことだってあからさまにばれることにもなるから、やりたがらないんじゃないかな。
結局、高校までの出口評価に相当するのが、ある程度偏差値で分布を見ながら判断できる、「学力試験を課す大学入試」しかないということになりそうである。
中退の原因は、経済的事情や学生本人が心を病んで、というものが普通にある。経済的事情の方は支援で何とかなるとしても、心を病んでいる場合には、無理に学業を継続させずに中退して一区切りつけた方が良い場合だってある。中退させるなというのが必ずしも良いとは限らない。中退率で大学を競わせて、大学が中退に対して目一杯引き留める行動に出るようになったら、別の被害が発生するだろう。
あるいは「中退しなさそうな学生を選別する入試」(できるかどうかは疑問だが)に工夫を凝らすようになるかも知れないが、それはそれで本末転倒なことになりそう。
結局、文科省が、コースだけ用意すればそれで良いと思っていることが問題なんだろう。
- » Continue reading or コメント (0)