洗えば済む放射能に対して差別なんて馬鹿げている
福島から避難してきた子供が避難先で放射能を理由に差別されたとか、福島からの転入者に放射能のチェックをさせようとしたつくば市が話題になっているので(追記:これは誤解と誤報によるものらしいことが判明 http://togetter.com/li/126247)、超簡単な解説を。
結論その1;放射能は洗って落とせば終わりです
福島の原発から出る放射能が問題になっています。物質としては、ヨウ素、セシウム、ストロンチウムが主です。放射能というと、何か特別な恐いもののようなイメージを持つ人が居るかもしれませんが、その実体は身の回りにある元素に過ぎません。
放射線を出す元素とそうでない元素化学的性質、つまり物質としての性質は同じです。
元素の性質は、元素の周期表から大体予想できます。周期表の縦にならんでいるものは、似たような性質を持つことがわかっています。
周期表を見ると、ヨウ素の列にならんでいるものには塩素やフッ素があります。セシウムの列には、ナトリウム、カリウムがあります。ストロンチウムの列には、マグネシウムやカルシウムがあります。
ナトリウムと塩素の化合物で一番身近なものは塩化ナトリウムです。これ以外にも、ナトリウムは、炭酸塩を作ったり水酸化物を作ったりします。カルシウムも塩を作ったり水酸化物を作ったりします。
セシウムやストロンチウムも、これと似たような化合物を作って土に混じり、水に混じるときはイオンとなって溶けていることが予想されます。
放射能に汚染された場所に行くと、土埃と一緒に放射性のストロンチウムやカリウムが衣類にくっついったり、靴底にくっついたりします。放射性のストロンチウムやカリウムを含んだ水で濡れても、服や靴が汚されます。手に触れると手が汚れますし、風が強くて埃をあびると、顔や頭にもくっつきます。
これらを取り除くには、手を洗う、シャワーを浴びる、靴や衣類は洗濯する、といったことだけで充分です。つまり、日常生活で、泥や埃の汚れを落とすというのと全く同じなのです。流し去ってしまえば、放射能の影響は残りません。
汚染された地域から出て来た時には、放射能を測って、汚れていることがわかったら、速やかに良く洗えば良いのです。それ以上の対応は必要ありません。
結論その2;放射線を出す物質は体内に入れないようにしましょう(体の中は洗えませんから)
長い間放射能に汚染された場所に居続けると、放射線を出す物質を吸い込んだり、意図せず口の中に入れてしまったりする確率が増えます。
野菜が育つ時に、放射線を出すセシウムやストロンチウムを吸収してしまうこともあり、知らずに食べると、放射線を出す元素を体の中に入れてしまうことになります。
体の中に入った元素を、洗い流すことはできません。ですから、最初から体の中に入れないような注意が必要です。つまり、マスクをして吸い込まないようにする、ものを食べる時は放射線を出す物質が無い環境で調理して食べる、放射線を出す物質を含んでいるものは食べないようにする、汚れたものは別に分けてさっさと洗ってきれいにする、といった注意です。
結論その3:人間は危険ではありません
不幸にして、放射線を出す物質を吸い込んだり、食べたり飲んだりしてしまうことがあります。放射線を出す元素は、体の中に一定期間止まり、放射線を出し続けますから、その人は体の内側から被曝することになります。これを内部被曝といいます。
しかし、この時に、その人の体の外に出てくる放射線はわずかですから、そのような事故にあった人の側に別の人が居ても、被曝の危険はありません。内部被曝した人は、別の人にとっては何の危険もありません。
福島から避難してきた人を、放射能を理由に避ける理由はありません。
註)放射線を出す物質が膨大な量ある場合は、そこに近づくことすら危険です(原子炉建屋の中など)。また、濃度の高い放射性物質に触れたものは、くっついている量も多いですから、放射線を出す廃棄物としてわけて処理します。これは、原発で作業をしている人達にとって問題になることです。
放射線を出す物質がすくなくても、長い間ふれているとやっぱり被曝の量が増えます。
一般の方々の対応としては、長い間そこに居ない、飲まない食べない良く洗う、で充分です。
(追記)
差別に過剰反応するあまり、測って安心したいというニーズや、本当に測って対処するべきときに抵抗を感じるようになったりしないか逆に心配しています。必要な測定まで、マスコミの差別探しの餌食になりはしないかと。
差別、というのは、本人の努力や行動でどうにもならないことを理由に権利を侵害すること、です。これは理由の如何を問わずやっちゃいけない。
必要なら測定して結果によっては洗いましょう、というのは、差別でも何でもないです。また。客観的には必要性が低くても、安心を求めて測定を行うというのも、情報が不足している状況下では必ずしも悪いことではないと思います。
- » Continue reading or コメント (0)