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杜撰な削除要求が来たので対応しました

Posted on 9月 13th, 2019 in 事件 by apj

※追記や修正をしているので、二回目に来られた方も、ざっとみていただけると嬉しいです。

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こんな削除要求が来ました。

 長くなったので要約すると、Webメディアの運営等をしている株式会社NOMALの取締役の近藤氏が、過去の記事の監修や変更のあり方について批判した記事(メンヘラ.jpによる、但しその内容は事実に反すると主張)のURLをツイートしたもの(記事本体は削除済みで、ツイート中に書かれたURLを見に行っても何も出ない)を削除させるために、代表者名も示さず、気軽に他人に向かって、法的措置を検討するだの損害賠償を請求するだのと言ってる割には、削除要求の文書の内容が相手かまわず同じ(コピペで送ってるとしか)、で、下手するとそういう訴訟の予告って正当な権利の主張であっても脅迫になる可能性があるのに(ド素人の個人ならともかく)会社の取締役がようやるわ、という案件です。ツイート中に会社名も会社がやってるサイトなどの情報も無く、リンク先が削除されてツイート単独では会社と全く結びつかなくなってから10ヶ月後のことでした。他人に訴訟をちらつかせる場合はちゃんと法律家を通した方が安全ですよ。

運営者御中

突然のご連絡、誠に恐れ入ります。
株式会社NOMAL取締役Reme運営責任者の近藤雄太郎と申します。

以下、Twitterの@apjというアカウントのプロフィール欄に本ページへのリンクがあったためご連絡いたします。
@apjというアカウントとご関係がない場合、恐れ入りますが本メールを削除ください。

以下用件となります

Twitterの@apjというアカウントにて投稿されているURLの至急削除をお願いいたします。
https://twitter.com/apj/status/983684325743837184

【侵害された権利】 名誉毀損
【希望する対応】 削除・謝罪文掲載

本件に関しましては、以下のお知らせにもございますとおり、メンヘラjp側とは弁護士を介して合意書を締結しており、
当社に対して事実に反する情報が掲載されたとして、メンヘラ.jp側にてすでに謝罪広告が掲載され、記事や当該投稿は全て削除されております。
https://reme-nomal.com/wp-content/uploads/press/180820press.pdf
https://twitter.com/wakari_te/status/1028883884996407296
https://web.archive.org/web/20180815231818/https://menhera.jp//

また、本件に係るはてはブックマーク・アメーバブログ・NewsPicks・Twilog等に転載された同様の記事に関しまして、
はてな社・サイバーエージェント社・ユーザベース社・Twilogでは既に削除対応されており、
貴殿におかれましても同様の対応を速やかに行っていただけますよう、よろしくお願いいたします。
https://b.hatena.ne.jp/entry/menhera.jp/5858
https://b.hatena.ne.jp/entry/menhera.jp/5806
https://ameblo.jp/inemuri-neko-1219/entry-12367352123.html
https://newspicks.com/news/2947444

当該投稿の掲載が続く場合、本件担当の弁護士と協議の上、
運営者の情報開示請求および損害賠償請求などの法的措置を検討します。

当方としましては、法的措置を取らず、速やかな解決を希望します。
直ちに当該記事の削除・謝罪文掲載をお願いいたしたく存じます。

9月15日までにご返信・ご対応いただけない場合、法的措置を含めて検討させていただきます。
以上、どうぞよろしくお願いいたします。


CML admin

http://www.cml-office.org であなたが管理するサイトについてフィードバックが送られています

送信者名   : 近藤雄太郎
メールアドレス: yutaro.kondo@nomal.jp

 今回はとりあえずツイートを消しますが、こういう削除要求をしてくる相手は個人的にはいろんな意味で要注意と思うのでメモしておきます。今回、消した理由と、なぜこの削除要求が要注意なのかは以下で説明します。

 上記リンク中の合意書によると、事実に反する、とされているのが「専門家の監修を受けた後でリライトしていた」ということとなっています。私のツイートにもその内容が入っていたので、事実に反する、ということになるのでしょう。しかしこのことは、合意書を読まないとわからないようになっています。他人に向かって名誉毀損を主張して法的措置をちらつかせていながら、名誉毀損にあたる部分を全く特定せず、表現のどの部分かは自分でリンク先の文書を読んで調べろ、という、随分と手抜きで雑で横柄な削除要求です。法的文書としては紛れもなく欠陥品です。とはいえ、リライト云々の部分が事実摘示だと言われたら多少面倒かもしれません。私の書いた残りの部分は、専門家も気をつけなければいけないという内容で、こちらは意見論評であり、特定の誰かの社会的評価とも結びついていませんから、名誉毀損とされることはないだろうと考えます。

【追記2】のための参考画像

 (なぜ10ヶ月も経ってから?ということについて)議論を追加することにしたので、参考までに、削除直前のツイートのスクリーンショットを示しておきます。リンク先URLは削除済みですし、リライトは無かったということもこのブログ記事からは読み取れるので、出しておいても誤解されるおそれは無いと考えます。

Tweet983684325743837184

(【追記2】用の資料画像終わり)

とはいえ、これだけのメールを送ってきたわけで、もし私が削除しなかった場合、一体どういう争いをするつもりなのかが疑問なので、少し検討しておきたいと思います。

リンク先が削除済みなので、今となっては何の話だったかわからないのですが、当時は、まず、welqという医療系サイトがあって、内容が不確かであったため批判が起きて騒動になったというのが先にありました。その後、別のサイト(=近藤氏の会社が運営していたサイト)でも似たようなことがあって、その批判をメンヘラ.jpが書いたところ、近藤氏と揉めたということのようです。このときは、批判の内容が、監修の後で記事を書き直していたというもので、それを信じて、記事中のツイートボタンか何かをクリックしてコメントをつぶやいた私のところに削除要求が来たという展開です。

まず、事実摘示による名誉毀損の免責要件は、
1.「事実の公共性」つまり表現が「公共の利害に関する事実」であること
2.「目的の公共性」表現の目的が「もっぱら公益を図る目的」であること
3-1 「真実性」摘示事実が真実であると証明されること
 または
3-2「真実相当性」摘示事実が真実であると信ずるについて相当の理由があること
です。真実性と真実相当性の判断基準時ですが、真実性については事実審の口頭弁論終結時に判断されます。真実相当性については、名誉毀損の行為時にどうであったかで判断されます。

 専門家の監修が必要な内容の記事で、しかもそれが公開され広く読まれる状況であれば、記事の内容の精度は多くの人に影響します。従って、内容の信頼度について記述したり議論したりすることは、「公共の利害に関する事実」と主張しても通りそうです。同時に、話題を取り上げて注意喚起をすることは、公益目的といえる(その行為を通して特定の誰かを中傷するといった目的でない限りは)ので、1,2は問題無くクリアでしょう。

 3−1を争うのは難しそうです。メンヘラ.jpの運営者が、間違いを認めたらしい内容で合意してしまっている上、「甲は、本件に関する事項のみならず、今後、その媒体を問わず、「Reme」、乙、及び杉山 崇臨床心理士に関し、第三者に対する情報の提供を含むその他一切の情報発信を今後行わない。」とあるので、事実自体を争うだけの証拠を、私のような第三者が入手できる見込みはほとんど無さそうだからです。

 すると問題は3−2です。私は、メンヘラ.jpの記事を信じてツイートしたわけですが、この記事というかメディアの信頼度がどうであったかということが問題になりそうです。普段、きちんと取材をして裏付けのある記事が載ることで知られている新聞や雑誌であれば、「記事を信じました」と主張した場合、相当の理由ありと認められるでしょう。ところが、ウェブメディアの信頼性はピンキリです。従って、「メンヘラ.jp」はそもそも信頼できないので、監修後にリライトをしていたという記述を信じたことに相当の理由があるとはいえない、という主張も成り立ちそうです。事実摘示の名誉毀損で争うとしたら、この部分になるのではないかと考えます。

 つまり、今回ツイートを削除したのは、3の立証が面倒になると考えたからです。もし、事実摘示がなく、「専門家も気をつけなければいけないということか。(URL)」のような内容で書いていたら、確実に争う方を選んでいました。見に行った先のURLの中身が既に削除されていて、ツイート単独では何の話かわからない場合に削除する理由がないからです。【追記2】のために、削除前のスクショを画像で示しました。ツイートの中には、株式会社NOMALもサービスの名称もありません。真実相当性が微妙な内容だが特定の誰かとの結びつきが切れて(ネットから結びつける情報も削除されて)10ヶ月が経過していて、削除要求を出している会社が自ら公開を続けている合意書によってのみ推察が可能(名誉毀損を主張する側が名誉毀損の成立に手を貸す形になっている)という場合に、どういう争いになるかは、知りたいところでもあります。ついでに、内容が削除済みのURLを入れた、元のタイトルは含まない観測用のツイートも行いましたから、どうやって削除要求の対象を見つけているのか手がかりが得られるかもしれません。

 この削除要求が要注意だというのは、出し方に問題があると考えているからです。

 上記の3の立証ができなさそうなので、監修後リライトしたという指摘がが誤解に基づくものだと言われればその通りかもしれません。しかし、私のツイートの後半部分は、「専門家も気をつけなければ」というものです。株式会社NOMALを名指ししたわけでもなく、ことさら株式会社NOMALを中傷するものではないし、中傷の意図が読み取れるものですらなく、監修を引き受ける場合に専門家は気をつけようという趣旨のものです。私のツイートに事実でないことが含まれていることが問題なら、合意書の該当箇所を示し、リライトを行っていないので事実に反するから、ということだけ述べれば十分じゃないかと思うんですよ。

 ところが、株式会社NOMALの近藤氏が送ってきた削除要求は上記の通りです。他人に向かって交渉の最初に、他所も消させたという「戦果」を誇った挙げ句に、名誉毀損だ損害賠償だと、それっぽい用語を並べ立てる内容で、場合によっては脅迫になりかねないシロモノです。

 「本件に関しましては、以下のお知らせにもございますとおり、メンヘラjp側とは弁護士を介して合意書を締結しており、当社に対して事実に反する情報が掲載されたとして、メンヘラ.jp側にてすでに謝罪広告が掲載され、記事や当該投稿は全て削除されております。」などと書かれても、そんな他人の間の合意なんか私は知らんがな、と言うしかありません。民事で合意した内容というのは、第三者には効果を及ぼさないのが原則でしょう。弁護士を介したとありますが、弁護士はそういった説明は全くしなかったのでしょうか。また、この常識を知っていれば、メンヘラ.jpとの合意文書を会社として晒しておく、ということの意味がわからなくなります。

 この削除要求は、随分と杜撰な削除要求です。おそらく、メンヘラ.jpの元の記事に関連した言説には、記事本文を引用したもの、私のようにコメントをつけてツイートしたもの、特にコメントせずにツイートしたもの(記事タイトルぐらいしか入っていない)があるはずです。これらは内容も性質も異なるのに、テンプレで削除要求を送りつけるというのは、いかがなものかと思います。なお、テンプレと判断したのは、記事そのものを転載していない私のツイートに対して、転載したものが削除済み、などと、あてはまらないことが書いてあるからです。削除を求めたい内容をきちんと確認していれば、削除要求がこんな内容にはならないはずです。ですから、コピペして、削除させたい内容を確認せず機械的に送りつけていると判断しても、そう間違いではなかろうと考えます。

 ついでに言うなら、機械的に、他人に対して法的措置を言い出すのはどういう人物か、という問題も含んでいると考えます。内容が事実と違うということだけ普通に説明すれば良い場面で、弁護士がどうの、賠償がどうの、と言い出すというのは、やはり違和感があります。普段からそういう行動パターンなんじゃなかろうかと疑いたくもなるわけです。

 名誉毀損で争うつもりなら、どの文言が名誉毀損なのか(まさかリンク先が削除済みのURLが、というつもりはないでしょう)特定し、事実摘示で争うつもりなのか意見論評で争うつもりなのかぐらい書いて貰わないと、こちらとしても検討のしようが無いわけです。つまり、私に上記のような検討をさせている時点で、他人に向かって名誉毀損で法的措置をちらつかせるのは杜撰だといえると思うんですよ。真面目に訴訟することを考えずに書いたのではないか、と思うしかなくなるんですね。本来なら、どの部分が名誉毀損か特定せよ、と木で鼻をくくった返事をするところなんですが、今回は「サービス」でコメントを書いてみました。

 なお、「専門家による監修前の記事を誤って一時的に公開してしまっていた」ことを近藤氏側も合意書の中で認めており、そうであるならば、リライトと誤認される状況を自ら作り出したことも確かなわけで、誤認の原因を作ったくせに、専ら専門家への注意目的で書いた私に謝罪まで要求するというのは、一体どういうつもりなのか疑問です。近藤氏のやり方はバランスを欠いていると思います。ですから、削除はしても謝罪はしません。

 もう1つ気になることは、合意書の中身です。私のツイートで元記事の内容を示すものは、リライトがあったということか、という一言だけです。記事タイトルも入っていましたが、タイトル中に株式会社 NOMALの名前も近藤氏の名前も登場せず、リンク先URLの内容は既に削除済みです。つまりツイート単独では、もはや株式会社NOMALに結びつく内容ではなかったのです。ところが、株式会社NOMALが公開している合意書とむすびつけると、私のツイートは株式会社 NOMALと結びつけることが(丁寧に探せば)できるかもしれません。黙って内容だけ消して、当事者の間でだけ今後○○に言及しないことを決めるだけで良かったのに、わざとに合意書にリライト云々を残すことで、削除の範囲を拡大したように見えます。せっかく削除させたのに自分から広め続けて一体どうするんでしょうか。

 また、近藤氏は弁護士がどうの、損害賠償がどうの、と言っているけれど、実はメンヘラ.jpとの間ですら法的紛争は全くしていないのではないかという印象を持ちました。この状況でもし法的に争ったとすると、記事のアップをミスしただけなのに監修後にリライトを繰り返したという事実無根を書いたのはけしからん、と主張する側が原告つまり甲(近藤氏の会社)、訴えられる側のメンヘラ.jpが乙、ということになります。仮に、裁判所でいろいろやった後、和解案として、合意書や謝罪文が作られたとした場合、その甲乙が逆になることってあるんでしょうか。絶対無いとは言わないけど、普通は争った時の甲乙のままで作るものじゃないのでしょうか。このへん、実務がどうなっているか知りたいところです。弁護士が間に入っていたら、こんな甲乙逆の書類は出来上がらないんじゃないかとも思うので、「弁護士を介して」とあることがにわかに信じられません。私は普段の甲乙のつもりでで合意書を読み始めたら、甲が「相手方」のメンヘラ.jpで、乙が「当社(近藤氏の会社)」となっていたので、ちょっとびっくりしました。削除要求の方は、いかにもすぐに訴えてやるっぽい雰囲気を醸し出しているのに、先に争ったはずの相手との間で甲乙が逆ってどういうことよ、と。裁判所の事実認定の結果合意書に至ったのではなく、私に対してしたように、法的措置をちらつかせた結果、メンヘラ.jpが折れただけじゃないのかと疑いたくもなります。訴訟をちらつかせて言う事をきかせることは、脅迫あるいは強要とされる場合があります。ということで、もし法的措置をとっていたのなら、裁判所と事件番号を知りたいところです。訴訟資料閲覧しに行きますので。そうすれば事実関係がある程度ははっきりすると思います。

 もし、同様の削除要求を受け取った方がいらっしゃいましたら、情報をいただけるとありがたいです。削除要求されたものがどういうものであったか、たとえば、本文転載あり・記事タイトルとURLのみ・URLのみ・一部引用したオリジナルの記事、といった区別を知りたいところです。

 もし、この記事にまで削除要求を出されるのであれば、一度、きちんと弁護士に相談してからにすることをお勧めします。他人に向かって訴えるぞと圧力をかける内容をコピペで送りつけるような人には、まともな法的交渉は無理でしょうから。なお、削除要求を出したこと自体やその内容を批判や議論の対象にするな、とは主張できないと思いますよ。引用した削除要求も、弁護士のチェックを受けてから出していたら、おそらくこんな内容にはならなかったでしょう。

 業務内容がウェブ系の情報関連企業やコンサルを掲げているのに、ウチのウェブフォームからの連絡で発信者情報の開示請求、って言い出した時点で申し訳無いけど吹きましたが。

【追記】

 他にも同様の削除要求を受け取った方(@monyotanoさん)がいらっしゃいました。最初、Facebookで見たような気がしたのですが、twitterの方でした。これで、コピペで削除要求をばらまいているという裏付けが一つ増えました。

 さらに削除要求をされた人がいました。 https://twitter.com/samepacola/status/1172206392607821824

 あともう一人確認できました。

 それで改めて気づいたのですが、この削除要求の不審な点は他にもあります。@monyotanoさんのところに連絡があったのが、12日の午後9時頃のツイッターDMだそうです。私のところに削除要求のメールが来たのは、2019年9月13日の0:12です。メールのタイムスタンプがこうなっていました。要求自体は、ploneで作ったサイトのトップのお問い合わせから送られていて、このお問い合わせフォームはウェブフォームで入力するとメールが飛ぶようになっています。入力からメールが来るまでの時間遅れは殆ど無いと思います。フォーム入力を受けて同じサーバー内でメールを送るだけですので。つまり、私と、@monyotanoさんのところには、あまり時間をおかずに削除要求が出されたことになります。

 ここで、設定された期限を見ましょう。「9月15日までにご返信・ご対応いただけない場合、法的措置を含めて検討させていただきます。」とあります。ところが、13日は金曜日なので営業日だとしても14日は土曜日、15日は日曜日です。ついでに16日は敬老の日で祝日です。業種によっては土日営業のところも増えていますが、社会通念として、会社間の連絡などは営業日つまり月〜金に行うものでしょう。プロ責法でも対応には七日の猶予があります。その半分以下の3日という日数を指定し、しかもうち2日は世間的には休日です。これでは、削除させたいのか、わざとに休日を当てて対応できないようにしておくことで、対応が無かったことを口実にどうしても訴訟したいのか、さっぱりわかりません。

 まあ、たとえば、現在進行形でものすごい誹謗中傷がどんどん行われていて気になって夜も眠れませんおかしくなりそうです、といった状況なら、短い期間で対応を、となっても理解できます。ところが、株式会社NOMALとメンヘラ.jpとの合意が成立したのが、合意書の日付によると2018年11月5日なんですね。一応削除を求められる状態になり、かつ、私のツイートが株式会社NOMALと結びつかなくなってから、10ヶ月も放置しておいて、今頃になって1営業日2休日以内に対応せよ、と訴訟をちらつかせてまで急がせるのは一体どうしてなのでしょう。これ、裁判所で、そもそも提訴自体が目的でわざとにやっていたのでは、と指摘したら、裁判官はどう判断するでしょうかね。

 IT系企業の勤務時間が不規則になるのはよくあることだとしても、日が変わる頃に連絡してきて、休日を含めて相手に対応を求める、って、普段一体どんな営業をしている会社なのでしょうか。私、これまでにいろんな中小企業ともお付き合いさせていただいておりますが、こういう日程で相手に対応を要求してくる会社とは、これまでに出会ったことがありません。

 ちょっと気になったので、会社を検索してたら、ここが引っかかりました(https://nomal.jp/company/)。以下の引用は見やすくするため、改行位置などを変えてあります。

社名 株式会社NOMAL NOMAL. Inc
本社 〒164-0002
東京都中野区上高田1-2-39 Nハウス2F
設立日 2015年7月10日
資本金 5,000,000円
代表取締役 松本 祥太郎
取締役 近藤 雄太郎 平山 美聡
従業員 12名(正社員・アルバイト含む)
電話番号 03-6455-3107
FAX 03-6701-7106
E-mail info@nomal.jp
許認可 プライバシーマーク(登録番号 第10862682(01)号)
有料職業紹介事業(厚生労働大臣許可番号 13-ユ-309553)
関連会社 株式会社つくろう堺市民球団

 本店所在地の記載もあります。ところで、会社って、代表者の名前で訴え、訴えられることができるんですけど、会社概要によると、近藤氏はただの取締役です。代表者でもない取締役が、他人に対して、提訴を予告するような連絡を寄越すって一体どういうことなのでしょうか。近藤氏の名前では、株式会社NOMALは私を訴えることが制度上できません。

 また、メンヘラ.jpとの合意書にも、代表者の名前が出ていませんし、会社の本店所在地すら書いてありません。普通は、こういう合意書を交すなら、確定日付以外に、会社の本店所在地、代表者名といった登記情報を書いて、代表者印でも押したものを作って双方当事者で署名して1部ずつ保管、といった形で取り交わすものだと思ってました。弁護士を介して文書を交わしたのに、こんな出来になるものなのですか。こういう文書を見てしまうと、コンプライアンス的にこんなので良いのかとか、まあいろいろと引っかかります。そしてこの会社は、脅迫になりかねない「訴訟の予告」を、平気で他人に送りつけてくる会社であることがはっきりしました。そうなると、メンヘラ.jpと合意書に至るまでにも多分同じことをしたのだろう、と考えるのはうがち過ぎでしょうかね。

 同じページに事業内容も書いてありました。

事業内容
■企業向け
社員のメンタルケアサービス「Reme」の運営
採用コンサルティング
有料職業紹介事業(厚生労働大臣許可番号13-ユ-309553)
オフィスレイアウトコンサルティング
採用アウトソーシング
人事コンサルティング
SEOコンサルティング
Webサイトの企画・制作・運営・コンサルティング
Webマーケティングソリューションの開発・提供
会社案内・採用パンフレットなどの紙媒体の企画・制作
■個人向け
オンラインメンタルヘルスサービス「Reme」の運営
アート通販事業「Wasabi」の運営
就活支援メディア「PJS」の運営
■大学・教育機関向け
キャリアデザイン講義講師

 私が受け取ったメールを見た限りでは、コンサルティング事業をしている会社の交渉手段が、訴訟するぞという圧力をコピペで手軽にばらまく、いうことのようです。既に同様の訴訟をちらつかせたメールを他に3名の方が受け取っています。もっと他にも居るかもしれません。この会社に仕事を頼まれる方は、私が引用したメールでの取締役の書きっぷりを確認の上、何かトラブルがあった場合にどういう種類の交渉をする会社か、よく理解してから発注された方が、無用の面倒事を避けられるのではないでしょうか。

【追記2(2019/09/15)】

 削除を求められる状況になってから10ヶ月も放置しておいて、なぜ今頃、と引っかかっていたのですが、まさか、橋下vs.岩上のこの件にヒントを得たんじゃないですよね。

「リツイートは賛同行為」橋下氏への名誉毀損、ジャーナリストに賠償命令 大阪地裁判決
毎日新聞2019年9月12日 15時20分(最終更新 9月12日 20時30分)
ツイッターで他人の投稿を引用する「リツイート」で名誉を傷つけられたとして、橋下徹・元大阪府知事がジャーナリストの岩上安身氏に慰謝料など110万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は12日、33万円の支払いを命じた。末永雅之裁判長はリツイートについて「投稿に賛同する表現行為」として、名誉毀損(きそん)に当たると判断した。

 これを元に他人に訴訟をちらつかせる行動がどれほど軽率かつ不勉強を意味するものであるか、説明しておきます。

 まず、大阪地裁なので一審判決で、報道により判決が9月の12日です。私や他の人達が近藤氏から削除要求を受け取ったのと同じ日です。日本の裁判は三審制ですので、控訴審があり、一審判決が覆る場合があります。控訴期間は、第一審判決正本が送達された日の翌日から起算して2週間です。敗訴した岩上氏が控訴しなければ2週間後に判決が確定します。岩上氏が、控訴すれば、控訴審が終わって判決書を受け取った日の翌日から起算して2週間が上告の期間となります。期間内に何もしなければ控訴審の判決が確定します。さらに上告すれば、最高裁まで上がり、最高裁の結論が出て、初めて裁判所の判断が確定することになります。

 RTだけでも名誉毀損になるという報道がされたのは、まあそういう判決が出たことは事実なのでかまわないのですが、重要なことは、この判決が9月の12日や13日ではまだ確定していないということなのです。したがって、この判決を根拠に、9月の12日や13日に何かのアクションを起こす、というのは、控訴のことを忘れているので拙速の極み、ということになります。ですから、もし、株式会社NOMALの取締役の近藤氏が、この件に関する報道を見て、「削除要求訴訟予告付きコピペ文書」を送ってきたのだとすると、コンサル会社の取締役ともあろう人が、常識的な裁判制度の理解すら全く欠いていることを意味するわけです。これは、会社の社会的信用にとってかなりまずいでしょうね。

 判決というのは裁判所が何を事実と認定したかによって変わってきます。当事者に渡される、判決を書いた文書の中に、双方の主張と裁判所の認定した事実が書かれていますので、読めばわかります。橋下vs.岩上事件は、ざっと検索した限りでは、判決の文書全文を見つけられませんでした。したがって、この判決のもとになった認定事実は今のところ不明です。不明なのではっきりしたことは言えないのですが、常識的に考えるならば、RTを目にした人の数のみで決まるとも思えず、前後のツイートとの関連や、当該ツイートが専ら誰かの評価を貶めたり侮辱したりする目的でなされていたかとか、普段から執拗に攻撃していたか、といったことも考慮されるはずなのですね。そのへんの事情をきちんと読んでからでないと、確定した後であってもその判決を根拠に何かをする、というのは無理があるわけです。ですから、もし、橋下vs.岩上の報道しか見ないで「削除要求訴訟予告付きコピペ文書」を送ってきたのだとすると、コンサル会社の取締役が、判決をどう扱うかを知らない、あるいは内容を説明してくれる人に相談もできない、ということになって、やはり会社の社会的信用に関わりそうです。

 以上の理由から、コンサルを主な業務とする株式会社NOMALの取締役の近藤氏が、橋下vs.岩上事件の未確定の判決の報道を根拠に、上で引用したようなメールを出されたのではないことを私としても願っているところです。

 このあたりのことは、このブログ記事について裁判所で争うことになったら、尋問等で直接ご本人にお訊きする機会もあるかと思います。会社の名前も取締役の名前も入っておらず、リンク先が消された後では「専門家の監修後に書き直されることが過去にどこかであったので専門家は注意しましょう」ということしか意味しなくなって10ヶ月経ったツイートについて、株式会社NOMALの取締役が訴訟まで予告して削除要求してきたわけです。そのツイート(【追記2】参考画像参照)に比べると、このブログ記事は、削除要求の文面が原因で、株式会社NOMALの社会的信用について直接疑念を表明する結果になってしまっていますので、確実に提訴していただけるものと期待いたします。裁判所での尋問であれば、宣誓もしますので、なぜ10ヶ月後にいきなりこんな削除要求を送ってきたかについても、きっと正直にお答えいただけることでしょう。

 なお、発信者情報開示請求は不要です。とりあえず代理人弁護士が決まったら、削除要求を送ったのと同じウェブフォームから、事務所の名前、所在地、電話番号、担当弁護士をお知らせ下さい。こちらから連絡させていただきます。訴訟をちらつかせる削除要求をコピペで安易にバラ撒くような方とは、法的交渉は不可能ですので直接の交渉はしません。ブログ記事をどうするかについては、訴訟の前に、弁護士と話し合いを持ちたいと考えています。

【追記3】

 9月16日に、次のようなメールを受け取りました。

本件、早速の削除対応をいただきまして、誠にありがとうございます。

相手方との双方の弁護士を介して作成された合意書にございますとおり、相手方には当該記事・ツイートは削除いただいており、貴殿におかれましても速やかな削除対応をいただいたこと、感謝申し上げます。

当方といたしましては、一時的に未完成の記事が誤って公開されてしまっていた事実を重く受け止めており、深い反省の上に再発防止を徹底し、引続きサイト運営を行ってまいります。

今後とも何かお気付きの点などございましたら、引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。


CML admin

http://www.cml-office.org であなたが管理するサイトについてフィードバックが送られています

送信者名   : 近藤雄太郎

メールアドレス: yutaro.kondo@nomal.jp

 「未完成の記事が誤って公開されていた事実を重く受け止め」たまではわかるのですが、そのことによって起きた、監修後にリライトしたという疑念を消すために、既に会社とも記事とも結びつかなくなっていたツイートを消させるための手段が訴訟をちらつかせての脅しだった、という話のようです。文面から察するに、送った削除要求が脅迫と受け取られる可能性を全く考えていない様子ですね。未完成の記事を誤って公開したことは重く受け止めるけど、会社と結びつかないツイートを削除させるに当たって訴訟をちらつかせて脅すことはちっとも重く見ていない会社、ということのようです。「お気づきの点」など、最初のメールを受け取った時から山ほどありましたので、このブログにしっかり書いておくことにします。もちろん、お返事には、この記事のURLを記載しました。ウェブで商売する企業なのに、この2日間、私がこの記事を書き、記事を書いたというツイートをいくつもしたことにも全く気づいていなかったご様子でした。脅したという自覚が無かったのでしょうねえ。

私が送った返事は次のような内容です。1カ所変換ミスしてますが……。

近藤様

あなたが私に出したメールは、訴訟をちらつかせるものであり、
正当な権利の主張であっても、脅迫にあたル可能性があります。

未完成の記事を公開したことが監修後のリライトと誤認された
ことは問題かもしれませんが、今回のあなたの行動は新たな
脅迫を発生させたようなものと受け止めております。

また、法的なことを他人に要求するのに、1件1件内容を確認せず
コピペで済ませるという杜撰なやり方は、会社の取締役が行う
ようなものではないと考えます。

そのような会社を野放しにしておくことも問題と思いましたので
そのことを私のブログに書いて、しっかり批判してあります。

http://www.cml-office.org/archive/2019/09/13/case/3908

まずはこちらをお読みになり、ご自身のなさったことが
どのように問題か把握された上で、弁護士に相談されることを
お勧めします。

同様の脅しがどれだけの範囲に及んでいるか、既に情報も募集
し、既に何人かの方から連絡をいただいております。

なお、コピペで訴訟をちらつかせるような方とは直接の交渉は
できかねます。

なお、この批判については、当面削除の予定はございません。
軽率な削除要求と脅しを行った結果は、ご本人で引き受けて
戴きたく存じます。

ちょっと他のことをして戻って来たら、以下のような、お詫びのお返事が届いていました。

Twitter @apj アカウント運営者さま

この度はご返信をいただきまして誠にありがとうございます。
株式会社NOMALの近藤雄太郎でございます。

掲題の件、ご返信および貴殿のブログサイトにてご指摘いただいておりました、
削除請求の内容につきまして、不適切な点がありましたことを本件担当の弁護士とも確認させていただきました。
まずは心よりお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした。

ツイートに含まれておりました引用記事に関しましては、お伝えしておりましたとおり、
事実と異なる内容が含まれており、相手方との弁護士との協議の上で、削除・謝罪広告の掲載をいただいておりました。

その上で、当方への誹謗中傷にかかる他のツイートについても削除請求をおこなっておりましたが、
今回、上記とは直接関連のないと思われる貴殿の投稿に対しましても、同様の削除請求をお送りいたしておりました。

ひとえに当方の不注意、不徳の致すところでございます。
多大なご迷惑とご心労をおかけいたしましたことを重ねてお詫び申し上げます。

この度は誠に申し訳ございませんでした。


株式会社NOMAL
取締役 近藤雄太

 不適切さについては理解していただけたようで何よりです。ただ、そもそも始まりが、記事を誤って公開してしまったという不注意によるもので、そのために誤解が生じたことで書かれた事実と異なる内容を削除させるのに、削除対象の内容を確認せずに送るという不注意を重ねたのは、いかがなものかとは思います。

科学っぽいデタラメが理解できなくても、嘘つきから物買わない方がいいよね、ということになりかねない

Posted on 9月 13th, 2019 in 事件,疑似科学・ニセ科学,科学,裁判 by apj

 サイト全体が見えなくされてたRikaTanだが、現在、無事に復活している。もちろん、『「謎水装置」NMRパイプテクターに翻弄される人々』へのリンクもトップページに復活。本文pdfもRikaTanサイトにある。まあ、プロバイダからのメールを左巻さんが見落としてた(ゴミ箱に入っていたということなので、スパムフィルターが悪さをしたのだろう、多分)というチョンボがあったので、一時的に公開停止になったのは仕方がない面もあったが、きちんと編集部見解を説明することで、完全復活を遂げた。喜ばしい限りである。技術士会にも是非見習っていただきたいところ。

 日本システム企画株式会社は、RikaTanの記事を仮処分で消させたことを宣伝していたが、数日でさくっと完全復活してしまったことを、今後どう説明していくつもりなのか、ぜひ伺いたいところである。

 まあ、最大限善意に解釈するとして、RikaTanのサイトが一時的に消えたことを、仮処分の効果だと思いこんでいたのは本当かもしれないので、削除させたことを宣伝したこと自体を嘘だというつもりはない。

 問題は今後である。完全復活しているということは、仮処分を突っ込んでみたが「RikaTanの記事は意見論評」等の理由で仮処分が通らなかったということなのだろう(最初、仮処分まで至っていなかったのではないかと疑っていたが、RikaTanサイトの方に「プロバイダ宛に投稿記事削除仮処分命令申立があった」とあるので、申し立てたことは本当のようだ)。ということは、今後、NMRパイプテクターを販売する時の宣伝で、RikaTanの記事を法的措置で消させました、などと述べるとそれは明白な嘘ということになる……そう、この後実際に左巻さんを訴えて削除まで持ち込まない限りは。

 でもって、もし、このまま訴状が来なかった場合、本気で訴訟する気も無いのに仮処分をプロバイダに突っ込んだりして、ハッタリの削除要求ばかり出している企業、という評価が、徐々に確定していくことになると思うのだが、どうだろう。

 NMRパイプテクターの原理が科学としていかにおかしいかは、説明してもなかなか分かってもらえない場合がある。エネルギー保存則を破っているし、高校の教科書レベルの物理をねじ曲げているのは明らかなのだけど、画期的な装置だと堂々と開き直られたり、NMRや水和電子といった、正確に理解している人が少ない、科学でも使っている用語を使っているからだ。劇的な効果があったというパンフレットや、導入実績を示されると、よく分からないが有りそうに思えてきたりもするのだろう。また、説明があまりにも科学としてはおかしいため、多少科学の知識のある人の方が、説明を理解しようとしたがさっぱりわからない、ということになったりする。

 しかし、日本システム企画株式会社の社長や幹部クラスの人が、法的措置をとる、訴える、告訴する、と営業をかけた先で吹聴し、そのまま何もしなかったとしたらどうか。人前で軽々しく法的措置をとると言い、しかもそれが口先だけのでまかせだという人を、普通は、信用するわけにはいかないだろう。堂々と客先で嘘を言って平気でいるということを意味するからだ。

 現状でターゲットになっているのは、私、小波さん、謎水氏、左巻さん、あたりかな。やまもといちろう氏も入りそうではある。半年経ってもこのうちの誰一人、訴状も受け取っていなければ、警察や検察から事情も訊かれていないということになれば、今度は、科学以外の部分で、日本システム企画株式会社の社長や幹部が皆嘘つきだということが確定することになる。既に、小波さんを告訴したと言いふらしているのだが、小波さんの方には今になっても何の事情聴取も無い、という実績がある。

 この記事の日付に注意してほしい。日本システム企画株式会社が批判記事を出した相手に仮処分を積極的に行い始めたのは、2019年の6月〜8月にかけてである。もし、売り込みを受けて、ネットに批判があるという話になって、対処を法的にやるという発言が出たら、事件番号とどこの裁判所でやっているかを訊いてみてほしい。今から向こう2ヶ月ぐらいなら、まだ訴状を準備しているという言い訳も成り立つだろうが、半年経っても明確な答が返ってこなかったら、会社の人達は嘘をついていると判断しても良いし、批判に対処するというのもハッタリだと考えて良いだろう。

 今から半年ほど経てば、批判に対して内容でも反論せず、訴訟や告訴でどうにかするというのさえも口先だけの出まかせだという相手と、安心して物買う契約を進めていいんですか?ということが問題になるかもしれない(訴状が来なかった場合は)。そして、この問題であれば、科学っぽい説明が理解できなかったとしても、大抵の人は理解できるのではないだろうか。