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教育的配慮が暴走すると規範をぶちこわしにする

Posted on 3月 1st, 2009 in 倉庫 by apj

【追記と注意】
 この件についての考察を進めた結果、このエントリーを書いた時とは異なった理解に至ったので、こちらを見て欲しい。

 卒業証書問題をchem@uさんのところが取り上げたので引用。私の問題意識とほとんど重なっていると思う。

「ムラ社会型の教育機関への縛り」とはこの場合、「未期限までに全額納入がない場合は、卒業証書をお渡しできません」という法治社会型の契約に基づく対応を取ろうとしても、筋の通らない苦情や抗議が起きて、教育機関が追い込まれるということ。
メディアがニュースに取り上げ、「教育者像」との違いについて謝罪させられ、教育委員会あたりが、「未納を理由に卒業証書の授与を拒むことはできない」と横槍を入れざるを得なくなる。

場当たり的な対応によって周知される「授業料払わなくても卒業できる」という事実、これが将来どんなことをもたらすか、そんな想像力もでないのでしょうか。

(中略)

教育的配慮 法治社会では不要(個別の教員が配慮する事はあっても、配慮するよう他者が教育者に求めるのは筋違い)
説得力 「サービス業」は無限大のサービスを提供するわけではない。
教育と金 そもそも政治の問題、現場に負担を押し付けるな。

 この対応がまずいのは、場当たり的な対応で契約を無視してもかまわないということを公然と社会に知らしめてしまった、という点。これがどれだけ反社会的な対応か、当事者も認識していないらしいので、問題としてはより深刻だと考える。

 法治社会の原則の1つとして「契約は守らねばならない」というのがある。これは、より一般的な「約束したことは守りましょう」という倫理的規範の一部分である。原則だから、当然「例外」もあるけど、例外とは、例えば契約の前提となった条件が途中で著しく変わってしまって当事者にとって想定していなかった極端な不公平が生じた、とか、そもそも契約の内容自体が最初から公序良俗に違反していた、というような場合であって、「教育的配慮」などというものは、契約には基本的に何の関係もない。

 期限までに授業料の納付が無ければ卒業証書を渡せません、というのは、契約を守ることが前提の社会では至極当然の対応であるし、社会規範にも一致している。

【追記と訂正】
 理由無く授業料が納付されなかった場合に校長がとれる手段として許されているのは、「登校の停止」あるいは「除籍」とのこと。中途半端に「卒業式には来てもよいが卒業証書を渡さない」はむしろダメで、「卒業式の当日に登校を停止」であればOKのはず。お役所の指導としては、「卒業諸処を渡さないのは(規則にないから)不適切だが、代わりに登校を停止するといった、明文に書かれた措置をきちんととれ」が正しいのだろう。
 いずれにしても、授業料を払わない人に何もせずそのまま卒業証書を渡す、というのが制度を壊す方に働くことは確かではないかと。

「教育的配慮」「児童を護る」といった、契約と関係のないものを持ち出して、横やりを入れることで、規範を無視してサービスを要求し、それを当然と思っていることがおかしいのである。場当たり的にルールを破ってもかまわないということを、ルールを守ることを教えるべき教育現場で示すのは、してはいけないことである。これでは、いくら「ルールは守りましょう」と唱えたって、説得力が皆無である。

 「教育的配慮があれば規範は無視でよい」「学生は護られるべきだから契約を破っても護られて当然」といった倫理観を持った学生を育ててしまうことの方が、致命的にまずいと思う。社会にそういう価値観が蔓延することの方を、私は憂慮する。それに、何だか将来のモンスタークレーマー予備軍を養成しているようにも見える。


ここからは旧ブログのコメントです。


by zorori at 2009-03-42 02:17:42
Re:教育的配慮が暴走すると規範をぶちこわしにする

単純に考えても、授業料を貰って教育サービスを提供するシステムが崩壊しますよね。「教育的配慮」をしようにもできなくなってしまうわけで。

これはNHK受信料問題に似ているような気がします。


by 多分役立たず(HNです) at 2009-03-12 04:37:12
信用第一

海外で日本人の評判がよいのは、約束を守る為だと聞きます。

「教育的配慮」などと言う人たちは、皆が、同じ価値観、高いモラルを持っているという幻想の中で暮らしているのではないでしょうか?

欧米では、様々な価値観の民族が居ますし、モラルのない人が多いという前提でシステムが出来ているように思います。複雑な社会を維持するためには、「契約」という縛りが必要なのだと思います。

日本の場合、士農工商、どの身分においても非常にモラルが高かったのかもしれません。

そうした社会だったので、契約には余りうるさくする必要がなかったように思えます。

皆のモラルが高い、という前提が成り立たない以上、やはり、筋を曲げるような行為は問題が多いといえるでしょうね。

#何を言いたいのか分からなくなってきましたので、これにて失礼します。


by DH98 at 2009-03-27 05:15:27
Re:教育的配慮が暴走すると規範をぶちこわしにする

給食費を払わない人のことがニュースになりました。
出産費用を払わない人のことがニュースになりました。
あと、
窃盗を万引きと言い換えて平気です。
もう既に規範を守らないで平気な人がけっこいるみたいです。


by 憂鬱亭 at 2009-03-28 10:07:28
授業料でサービスを提供する?

 収入と支出がほとんどかみ合っていない状態なんですが。
そのことはご承知の上での論議なんでしょうか?

 医療や教育などは、「支払わない者には与えない」という類ではないサービスだと私は考えてます。

 給食費や授業料を卒業や在学の質に取られるような要求をされ、短期日内に支払おうとして、高利で金を借りてしまう保護者もいます。表面上は「納入した」ことになりますが、問題は解決してませんよね?

 具体的な保護者と児童・生徒を念頭に置いてはもらえないでしょうか?
 割合とか数とかではなく、具体的に生きて生活している人を考えてもらえないでしょうか?

 勿論、悪質な人がいないとは、私も言いません。
 だけど、冷静に考えるゆとりさえない、追い詰められながら生活している人がいることも考えてください。
本当に人間は「貧すれば鈍する」存在なんです。


by apj at 2009-03-51 10:44:51
Re:教育的配慮が暴走すると規範をぶちこわしにする

憂鬱亭さん、

> 収入と支出がほとんどかみ合っていない状態なんですが。
>そのことはご承知の上での論議なんでしょうか?

 この場合、議論に関係ないと思います。
 入学時の契約は、授業料などに補助が出ているという前提で取り交わされるものではないですか。

> 医療や教育などは、「支払わない者には与えない」という類ではないサービスだと私は考えてます。

 そんな考えが蔓延したら、医療も教育も崩壊するだけです。

 現に、既に医療では、産婦人科において、出産費用の踏み倒しによる損失が発生しています。

> 給食費や授業料を卒業や在学の質に取られるような要求をされ、短期日内に支払おうとして、高利で金を借りてしまう保護者もいます。表面上は「納入した」ことになりますが、問題は解決してませんよね?

 その問題の解決を現場に押しつけることの説明になっていません。 それは、奨学金を増やすとか、経済的な調査をした上で授業料免除の対象にするといった形で解決すべき問題です。

> だけど、冷静に考えるゆとりさえない、追い詰められながら生活している人がいることも考えてください。

 そのことについて、現場に対して恣意的な行動で対処せよということは、システムの崩壊という、より良くない結果を招くという話です。
 要求する相手を間違っているんですよ。


by apj at 2009-03-40 10:59:40
Re:教育的配慮が暴走すると規範をぶちこわしにする

zororiさん、多分役立たず(HNです)さん、DH98さん、

 お互いがお互いを無条件に信用できない場合は、契約で縛るしかありませんよね。

 教育の現場は既にそうなっているのに、教育を特別視したい人達が横やりを入れる結果、無茶なしわ寄せが現場に行ったり、長期的に見てまずい対応が正当化されたりしているのではないでしょうか。
 だいぶ前に「Noと言える日本」とかいう本が売れましたが、これからは「Noと言える教育現場」でないとまずいでしょうね。法治主義的対応を求められるようになった以上は、そこから逸脱した要求には「No」と言うようにしないと、制度の崩壊を招くだけですから。


by zorori at 2009-03-51 16:07:51
Re:教育的配慮が暴走すると規範をぶちこわしにする

憂鬱亭さん、
> 医療や教育などは、「支払わない者には与えない」という類ではないサービスだと私は考えてます。

それは、現実の話ではなくて、憂鬱亭さんがそうあるべきだという考えることではないでしょうか。あるべき論としてそういう意見があるのは理解しますが、それは話が別だと思います。

公共サービスと市場サービスは完全に分けられるものではなく、医療も保険制度と自己負担から成り立っていますし、義務教育は公共サービスの面が強いと思います。でも高校教育以上は相当の部分が市場サービスだと思います。金がなくて高校進学を諦めるというのは日本の社会では仕方ないことでしょう。

そういう社会は嫌だというなら、全額税金負担にすべきかと思います。


by 酔うぞ at 2009-03-37 23:31:37
平均としてみるのか、特異な問題としてみるのか

というのが重要だと思うようになりました。

公立高校の中低位校では、結構な数の生徒が学費免除の対象であったりします。
これはいわゆる未納ではないのですから、当然問題にはならないでしょう。

そうなると「故意に学費納入をしないのは、そんなに数が無いだろう」と考えてしまいますが、違うのかもしれません。

一年以上前かと思いますが「給食費をは払わないから給食を出さない」などと大騒動になったことがありました。

東京では小学校の給食は区教育委員会の管轄ですから、給食費の不払いについても区単位で情報が整理されます。
それである区は「他の区と比較すると不払いがこんなに・・・」と説明していたのですが、地元の声として伝わってきたのは「特定の2小学校の親が、意図的に払っていない」というものでした。

そんなことがあるモノか?問題になるほどの金額になったのか?とさらに注意していると「給食費を払わないでも卒業できた。だからあんたも」と伝言ゲームというか地域のノウハウになっていた、というのです。

さすがにこんな話が、区全体に広まることなくて特定の学校で行われていた、というのです。

こんな事だから「給食を出さない」とかいうヒステリー的な「対応策」を言い出したのでしょう。
そういう意味では「問題を直接解決するためには、地域問題に手を突っ込むことになから、それを避けるために「なんだこれは?」というような「対応策」を政治家が言い出すのかな?という気がします。


by zorori at 2009-03-52 05:36:52
Re:教育的配慮が暴走すると規範をぶちこわしにする

憂鬱亭さん
>具体的な保護者と児童・生徒を念頭に置いてはもらえないでしょうか?
> 割合とか数とかではなく、具体的に生きて生活している人を考えてもらえないでしょうか?

教育の現場にいて、配慮してあげるべき個別の事情を知る機会があるなら、未納という事態になる前に、支援することをお考えになると思います。そういう支援を受けることはプライドが許さないから教育は諦めると言うのなら仕方ありません。でも、プライドは捨てたくないし教育も受けたいというのは虫が良すぎると思います。授業料減免も授業料未納もつまるところ税金の支出という点では同じです。合法的施しは受動的で格好悪くて嫌だけど、違法な未納は能動的で格好良いと勘違いしているだけじゃないでしょうか。

子供の幸せより、世間体のプライドが大事なんでしょうか。

医療保険でも、公共の福祉でも財産の再分配という助け合いの制度です。つまり集団的支援制度です。生活保護を受けるのはプライドが許さないと考える人は、このような仕組みは拒否して完全な市場サービスを望んでいるということになるんじゃないでしょうか。高校教育の経済的サポートというのが授業料減免なのでしょう。


by 憂鬱亭 at 2009-03-10 07:00:10
どうも少数派のようですが

 私が生徒・保護者から受け取って事務に渡しているのは、
確かに生徒・保護者・保証人連名の書類ですが、
押印欄は保護者と保証人だけにあったと記憶しています。
 また、授業料の請求をする文書は保護者宛で、生徒宛ではありません。
 以上のことから、保護者が契約している形と理解しているのですが、間違っているでしょうか?

>zororiさん

>それは、現実の話ではなくて、憂鬱亭さんがそうあるべきだという考えることではないでしょうか。

 私の考えを「そうあるべきだという考え」と表現するなら、あなた方の意見も「そうあるべきだという考え」の一つではないでしょうか?今回の意見の食い違いは、政治を支える思想の食い違いに基づくものだと、私には思われます。「貧者には契約に基づかずとも支援を与えるべきだ」という私の考え方と、「貧者といえども、契約に基づかない支援を与えるべきではない」というほかの人の考え方との違い、です。

>子供の幸せより、世間体のプライドが大事なんでしょうか。

 「世間体」ではなく、「生きていく(死なない)ためのプライド」がある、と私は考えてます。他人には、ばかばかしく見える場合もあるのですが、そこは譲れない、と当人が思い込んでいる部分です。

 この種の「プライド」には「論理的正当性」がない場合も多いのですが、当人にとっての「生きる張り合い」であることも多いのです。「そんなの理屈に合わないよ」という方が、ここには多いのでしょうが、「人の生きがい」って、そんなに論理的な場合が多いんでしょうか?

 「貧困」とか「格差」とかの議論には余り共感できない方が多数のようですので、私はこれで撤退します。

 お邪魔しました。


by 一言 at 2009-03-46 08:47:46
Re:教育的配慮が暴走すると規範をぶちこわしにする

>憂鬱亭さん

高校の授業料の契約者のことはよく知らないので、残り2点についてのみコメントです。

そのように異なった「考え」=価値観があるからこそ、契約とか法が必要だというのがapjさんを含め多くの方の指摘している点でしょう。

憂鬱亭さんの野言われる通り、当人が思い込んでいるだけですから、それは「生きる張り合い」なんてきれいな言葉で表現するべきものじゃないでしょう。


by bonta at 2009-03-34 08:49:34
Re:教育的配慮が暴走すると規範をぶちこわしにする

悩ましい問題だと思います。
憂鬱亭さんの「貧者には契約に基づかずとも支援を与えるべきだ」とのご意見に全く賛成です。
ただその手段として考えられる種々の方策の中で、「授業料を払って無くても卒業証書を授与する」というのは弊害が大きいと私は思います。

 身内に教員の人間がおり、このニュースに関して散々愚痴をこぼしていました。
経済的な理由で納付が滞りがちな生徒(保護者)は彼の学校でも毎年学年で十数人いるそうですが、そのほとんどは本当に苦労を重ね節約もして授業料を捻出し、(時々月遅れになったりしながらも)授業料を納めきって卒業していきます。
ところが毎年ひとりぐらい、授業料は半分以上の月で払わないのに、授業参観日にはブランドスーツに身を固めて高級外車でやってくる親がいるそうです。
その教員の談(口が悪くてすみません):「俺にもっと力があったらあの踏み倒し屋には絶対卒業証書やらんぞ。あいつにやるってことは、他の本当に苦労して全額払った十数人の努力を足蹴にすることになるんや。」


by wamo at 2009-03-12 19:37:12
医療との対比

> そんな考えが蔓延したら、医療も教育も崩壊するだけです。
>
> 現に、既に医療では、産婦人科において、出産費用の踏み倒しによる損失が発生しています。

日本の医師には応召義務があり、お金が無いことを理由に診察を断ってはならないと法律で定められているはずです。すなわち、日本の医療と対比するなら、むしろ授業料を払わないことを理由に卒業証書を与えないことのほうがおかしい(同様のことを医師がやったら法律違反)、ということになると思います。つまり、教育委員会は教師・学校に医師・病院並みの基準を適用しただけ、と解釈することも可能かと思います。

もちろん、そうして生まれる矛盾は多くが現場に押しつけられる可能性が極めて高いわけで、少なくとも最低限の対策(たとえば卒業後の授業料の取り立ては教育委員会が手配するとか)とセットで通知しないのは怠慢だと私は思います。

もしかすると、専門家は金がない人には無償で業務を提供すべきだという「規範」が日本社会には存在するのかもしれない、と、ふと思ったり。(医師の場合は「赤ひげ」とか。)


by 一言 at 2009-03-16 10:22:16
Re:教育的配慮が暴走すると規範をぶちこわしにする

医師の応召義務と医療費不払いについて論じているブログエントリを見つけましたので、URLをはっておきます。
ttp://air.ap.teacup.com/awatenai/319.html
ここでもムラ社会から法治社会への変化が急務ですね。


by オキナタケ at 2009-03-12 22:52:12
憂鬱亭さんに熱い一票!

債権の回収というのは本当に難しいものです。一方、支払いが滞るという原因も一様ではありません。授業料で言えば、親の責任を子供が一身にかぶることになるという構図もあります。
種々の原因があるのを知ってか知らずか、原則を無遠慮に適用すると大きな歪みが真に弱いところにかかっていくのが世の中というものであります。
憂鬱亭さんの真っ当なご意見が多くの人の理解を得がたいのは困ったことですが、これが世の現状でもあります。そこから出発して、より良い方向を探して行こうではありませんか、憂鬱亭さん。


by apj at 2009-03-09 23:55:09
Re:教育的配慮が暴走すると規範をぶちこわしにする

オキナタケさん、

>憂鬱亭さんの真っ当なご意見

 それを真っ当だと考える人が居る間は、教師側の弱いところにしわ寄せが行き続けると思います。あるいは、踏み倒し屋を支援する結果になったり……。

 一定のチェックのもとで経済的に補助をするという形をとる方が、現場で恣意的に判断するよりもましな結果になると考えます。

一言さん、

>憂鬱亭さんの野言われる通り、当人が思い込んでいるだけですから、それは「生きる張り合い」なんてきれいな言葉で表現するべきものじゃないでしょう。

 私も同感です。
「経済的に困っている人を支援する制度を用意する」はできても、それを強制することまではできません。拒否する自由は確かにありますし、拒否したことによる不利益を考慮した上で拒否するなら、それ以上現場で何かするというのは間違っていると思います。
 そういう親は、「自分のプライドの為なら子供の学歴は犠牲にしてよい」という価値観の持ち主だということですよね。


by さてつ at 2009-03-57 00:03:57
Re:教育的配慮が暴走すると規範をぶちこわしにする

規範≠法令ですよね。
債権の回収は,自力救済はできませんから,訴訟等によらない場合は話し合いで解決を図ることになります。
一方で,学校側と生徒(&おそらく保護者・保証人)の間の契約の詳細はわかりませんが,
「島根県立高等学校等条例」では「高等学校に在学する者は授業料を・・納付しなければならない。」。「島根県立高等学校規程」では,「校長は、正当の理由なくして授業料を納付しない者に対しては、登校を停止し、若しくは除籍することができる。」となっていますので,
校長は登校停止か除籍はという処分は可能です。もちろん,その際には,教育的配慮のもと,極力話し合いでの解決が当事者には求められるのでしょうが。

法令等の遵守という「規範」を守るということでは,卒業証書を渡さないことこそ,規範をぶちこわす行為に思います。


by apj at 2009-03-48 01:07:48
Re:教育的配慮が暴走すると規範をぶちこわしにする

さてつさん、

>「校長は、正当の理由なくして授業料を納付しない者に対しては、登校を停止し、若しくは除籍することができる。」

 つまりこちらを実行すればよいということですね。それなら納得です。
 督促しても支払わず、理由も説明されないような場合は、「卒業証書を渡さない」ではなく「登校を停止」させるということですね。

>法令等の遵守という「規範」を守るということでは,卒業証書を渡さないことこそ,規範をぶちこわす行為に思います。

 確かに、書いてあることはきちんと実行しないといけないし、書いてないことはやっちゃいけませんね。


by zorori at 2009-03-22 03:46:22
Re:教育的配慮が暴走すると規範をぶちこわしにする

私も、憂鬱亭さんに共感する面はあるんです。

> この種の「プライド」には「論理的正当性」がない場合も多いのですが、当人にとっての「生きる張り合い」であることも多いのです。「そんなの理屈に合わないよ」という方が、ここには多いのでしょうが、「人の生きがい」って、そんなに論理的な場合が多いんでしょうか?

「施しは受けない。」というプライドは尊重しますが、尊重すれば貧困や格差を認めるということになると思います。「貧者には契約に基づかずとも支援を与えるべきだ」という考え方はプライドを傷つけるお節介じゃないでしょうか。契約手続きをせずに支援を拒否する自由も無いのですから。個人の自立を重視し、国は出来るだけ介入しない政策と、公共の福祉を重視し大きい政府とする政策は両立しないわけで、論理的でない感情を尊重するにしても、現実にはその感情を満足させてあげることは不可能です。

「プライド」のようなものは合理的ではないわけですが、自己に不利益になることをするというような感じかと思います。手続きすれば、経済的に助かるのにあえてせずに、不利益を受け入れるというプライドはありうる思います。しかし、施しを受けるという情けない姿を見られるのは嫌で、なおかつ卒業証書を得られないという不利益も蒙りたくないし、もちろん金も払いたくないというような虫の良い考え方はプライドとは言えないと思います。もしそんなことが可能なら最も利益が得られるわけで経済的にも心理的にも「合理的」というか「功利的」ではないでしょうか。


by さてつ at 2009-03-06 06:07:06
Re:教育的配慮が暴走すると規範をぶちこわしにする

> 確かに、書いてあることはきちんと実行しないといけないし、書いてないことはやっちゃいけませんね。
規程には「校長は・・・」登校停止や除籍が「できる」と書いてありますので,校長の裁量の範囲です。ですから,理由を聞いたり,話し合いのために,登校停止や除籍の措置をとらないことも,当然,校長の裁量の中です。

まあ,校長は,保護者等から事情を聞きつつ,話し合いの中で,口頭でそういう処分が可能なことを伝えたら,もう少し何とかなっていたのではないかとは思いますけれども(実際,保護者の行為を原因として,生徒本人への処分を行うことが,果たして校長先生に心情的にも可能なんだろうか,,,)。

ちなみに,授業料免除については,校長の裁量の範囲外で,教育委員会マターとなります。


by chem@u at 2009-03-01 06:55:01
Re:教育的配慮が暴走すると規範をぶちこわしにする

元記事に引用いただいたものですが、実は私もまだ葛藤があります。

今でも、現実の教育の現場では憂鬱亭さんと同じく(教育機関は高校ではなく大学ですが)ウェットな日本的な学生-教員の関係を築いています。
大半の学生は教員をリスペクトし、教員もそれに応える、現在はそれがなりたっています。
そういった関係が子供の頃から身に染み付いているから、自分としても居心地がいいし、そこにドライな法治主義が入ってくると多分一時的にはやりにくくなる。

ただし、漠然と教員をやっていた助手時代から、講義の成績評価をしたり担任指導をしたり、と肩書きが変って学生への対応に責任が増えてきて、世間でのアカハラやらモンスターやらのニュースを聞いていると、そして医療崩壊の実情などを知ると、実は教員はかなり危うい状況に置かれている、そう判断せざるをえなくなっています。

医療は国民が医師の良心におんぶにだっこ甘えすぎて酷使して、ここ数年で相当程度まで崩壊するのかもしれません。
実際に昨年末から年度末にかけて各地の地域基幹病院での医師不足が切れ目無くニュースになっています。
おそらく、今後もこういったニュースが増え続けるでしょう。

教育はどうなるのか。
「古きよき時代」を続けることがこの先不可能になるのか、もしなると考えるなら、どういった未来像を描けばいいのか、そういったことを考えています。


by apj at 2009-03-27 06:55:27
Re:教育的配慮が暴走すると規範をぶちこわしにする

さてつさん、

 ご意見を反映し、エントリーの方にも追記させていただきました。

>ですから,理由を聞いたり,話し合いのために,登校停止や除籍の措置をとらないことも,当然,校長の裁量の中です。

 穏当な方法で対応できる間、つまり信頼関係が壊れていない間は、裁量で対処でいいでしょうね。
 ただ、踏み倒し屋が出てきているようなときにまで校長が「穏当な方法」などと言っていた場合は、「職務怠慢」で校長を追求するのが筋でしょう。

>実際,保護者の行為を原因として,生徒本人への処分を行うことが,果たして校長先生に心情的にも可能なんだろうか

 このへんの心情が邪魔をすると不公平な結果になったり、制度崩壊のきっかけになったりするので、そういう心情を減らすような世論を作りたいという意味でも、こういうエントリーを書いているんです。微力ながら……。


by chem@u at 2009-03-32 07:15:32
Re:教育的配慮が暴走すると規範をぶちこわしにする

さてつさん
勝手な想像ですが、授業料未納に対して、高校も法的対処に舵を完全に切り替えることができていない、除籍などという引き返せない対応ではなく、卒業証書一時預かりというような形で子どもに逃げ道を与えるような対応を取ってしまった、結果として法的対処としても中途半端でムラ社会的道徳としても問題あり、という事態になったと。
それでも、ウェットな関係では授業料未納がどうにもならない状況になっているのであれば、100点満点で評価するなら、よりベターな方法は色々あるだろうけど、60点以上をつけてもいいのではないかと。
一方の教委の対応はと言えば、どう考えても及第点とは考えられません。