やおい小説論
「やおい小説論 女性のためのエロス的表現」永久保洋子著、専修大学出版局を入手した。これは、永久保氏の学位論文で、やおい小説……といっても商業ベースにのっている、いわゆるボーイズラブ小説を調査し、分析したものである。調査をおこなったのは1996年で、今よりは出版点数が少ないとはいえ、381冊の小説を読み込んでいるあたり、文系の人の研究というのもなかなかすさまじいものがあると思った。基礎データとして上がっているのは、タイトル、書写名、出版名、小説が何人称で攻受いずれの視点で書かれているか、攻・受それぞれの名前、年代、職業、年齢差、体格差、性役割が固定かどうか、時代、ジャンル、ハッピーエンドかどうか、という表が出ていた。登場人物の描写をもとに、ジェンダーを考えていく部分は、言葉に対するセンスを試されているようで面白い。身長差の法則として、ほとんどの場合攻>受だということがデータで示されるあたりは、まあそうだろうなと漠然と思ってはいても、あらためて認識することになった。
何でこんな本を買ったかだが……某アニメのファンを長く細々とやっていたのだが、他のみんながどう鑑賞しているか知りたいと思い、同人誌に手を出してみたら、女性向けの方は男性キャラ同志で恋愛&性行為におよぶヤオイばっかり、男性向けは登場する女性キャラが妙にグラマーな身体に変換されたエロばっかり、結局作品自体にこだわったものは探すのが難しいという事態になって、一体何が起きているのか気になったからである。まあ、やおいとは何かということはそれなりにこの本を読んでわかったのだが、なぜやおいが快適かを理解するには、まだまだ道のりが遠い……というか私自身が腐女子の心を持ってないということなのか。それでも、まだアニメキャラのやおいならわかるが、無生物系のヤオイ、つまり日本列島と台風とか、郵便ポストと葉書といった組み合わせがあるという話をネットで見かけて、どうもよくわからんが奥の深い知らない世界が拡がっているのだなあと思った次第。人間の思考能力に限界は無いということなのか……(大汗)。