復刊.comから注文した本
年末に、復刊.comを見て注文した「LOST and FOUND 三原順秘蔵作品集」が届いた。三原順(1952-1995)の最も有名な作品は「はみだしっ子」で、今でも文庫本が出ていて人気がある。この人の作品は、少女漫画にしてはネームが妙に哲学的で難しいという特徴がある。最初に読んだのは高校の時で、同級生に借りたのだった。その後、「X-Day」や「ビリーの森。ジョディの樹」といった作品を発表し、漫画の形態をとった文学という方向に舵を切ったように見えたが、「ビリーの森。ジョディの樹」の連載中に亡くなった。最後の刊が、まだペンを入れていない下書きやネームをまとめたものを後半に付けた形で出たのを見た時は、もうこれで続きを読むことができなくなった、と思うと非常に残念だった。
「はみだしっ子」の連載が終わった頃に、「はみだしっ子語録」という、三原順へのインタビューも含む関連本が出版された。その中で、はみだしっ子の原型となったのは高校の授業中(!)に完成させた小説である、という記述があった。「LOST and FOUND」には、その高校時代の小説の現存するものが全て掲載されている。また、未完成の原稿やプロット、ネーム、アシスタントへの作画の指示といった文書まで出ている。漫画家の作業場の様子がわかって面白い。高校時代の小説の方は、正直言って読みやすいものではない。これは、多分、三原氏の頭の中にあったのがもともと映像だったからではないかと思う。しかし、一人の作家の考え方や作風の変化を追うという意味では興味深い。それでもやっぱり、もうこんな形でしか三原氏の作品に触れることができなくなってしまったことが悲しい。
ここからは旧ブログのコメントです。
by まいまい at 2006-01-00 06:47:00
Re:復刊.comから注文した本
作品集ご購入になったのですね。うらやましいです。
復刊ドットコムでの再販告知は三原順氏の「はみ出しっ子」を連載で読んでいた私にはとても懐かしいトピックでした。
職場で諍いのあった時など、いまでもグレアムのひくオルガンの音が聞こえてくるような気がすることがあります。
「はみ出しっ子」連載の頃は、ひとが思春期以降に誰でも経験するであろう真剣な悩みを「暗イ」とかいって馬鹿にしはじめた時期でしたでしょうか?
グレアムたち三人と、周囲の人物の抱える悩みを共感できている、と思えた学生時代を送れたことを私は幸せに思っています。
惜しい作家さんでしたね。
by No.4560 at 2006-01-15 07:58:15
Re:復刊.comから注文した本
僕のことはご存知かな?一応はじめましてです。いつも読ませていただいてます。
「LOST and FOUND 三原順秘蔵作品集」は僕にはちょっと高かったので、友人に買わせました(^^;
その友人が新潟で僕は広島なので未だに読ませてもらってないんですけどね。
僕は前世紀末、人に薦められて読み始めたのですが、中学高校時代に読みたかったですね。ただ、当時の僕にこの面白さを理解できたかどうかといえば、かなり疑問ですけど。
by apj at 2006-01-33 22:45:33
Re:復刊.comから注文した本
歳をとったってことなのか、それとも結局趣味が変わってない三つ子の魂百まで状態でちっとも進歩がないということなのか。最近、昔読んで買えなかった漫画本をちょくちょく買い集めています。
「はみだしっ子語録」の方で、せりふだけでどのキャラかわかるような作品作り目指しているといった記述があって、私にとっての目標にしてました(当時は文芸部やら新聞部やらに掛け持ち所属)。語録の方は何年か前にネットで探しまくってプレミア価格で古本屋から通販で購入しました。
花とゆめコミックスの「はみだしっ子」は、高校の時の仲の良かった友人に貸して、そのままになりました。進学で離れてしまい、そのうち引っ越しなどで連絡がつかなくなりました。その後、文庫が出たときにもう一度全部買いそろえて通して読みました。彼女なら大事にしてくれるだろうからまあいいか……。ともかく、読む年代によって受け取り方がずいぶん違ってくる作品だと思いますね。
確かに、「LOST and FOUND 三原順秘蔵作品集」は高いですが、「毒は皿まで喰う主義」ですので思い切って手を出しました。本って、買い損なって後から集めようとするほうが、手間もコストも段違いにかかるもので。
気軽に買える値段ではないので、無理におすすめはしませんが、復刊.comからの注文、まだ間に合うと思います>まいまいさん。
で、読んで真っ先に思ったことは……私も中学や高校授業中に小説書いてたクチですが(それ以外の時はちょっとすすんだ数学や物理に走るとか六法見てるとか、結局内職してるんじゃねーかよ>自分)、あの時代にノート十数冊書ききる気力があれば、今頃はきっと別の商売をしていたに違いない(爆)ということですた……orz。何事も中途半端はいけませんねぇ(違)。