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再び温泉の話

Posted on 9月 12th, 2007 in 倉庫 by apj

 あらきけいすけさんのこのエントリについて。

現在の「ニセ科学」の対象は、これに加えて「人を傷つける要素を持つもの」という要素も含めて考えておかねばならないと思います。この要素が判断に加わっていることは、apjさんのブログにおける「温泉はニセ科学か」に対する「ニセ科学には入らないだろう」という結論からわかります。

 ということなんだけど、どうも私が考えていたのとは違うようなので説明を追加しておく。私のニセ科学の定義は「科学を装うが科学ではない」で、これに変更はない。「人を傷つける要素を持つかどうか」が温泉がニセ科学かどうかを判定するときに必要になるとは、私は考えていない。通常人の判断力を基準にした場合、「一般的な温泉の効能書きが科学を装っていない」という理由で、温泉はニセ科学には入らない、と結論できると考えている。
 薬事法の説明でよくある例に、八百屋のおじさんが「今日は良い大根が入ったよ。酵素がたっぷり含まれていて消化を助けるよ」と言って大根を売ったとしても、薬事法には引っ掛からない、というものがある。普通の人の判断を基準にした場合、大根を医薬品と誤認することはまず無いからである。これが、売っているものがそれっぽいガラス瓶に入った粉やら粒やらで、「酵素がたっぷり含まれていて消化を助けるよ」などと表示したら、薬事法に引っ掛かることになる。見た目からいって、医薬品と誤認しやすいというのがその理由である。
 温泉と人との関わりを考えた場合、それなりに昔から効能書きはついていたし、効能書きを見て入浴したり湯を飲んだりということもしてきたが、科学的手続きで立証されてそうなった、という認識で利用している人は少ないと思われる。もっともこれも程度問題だが、典型的な例として「昔から親しまれてきた云々、リウマチ、肩凝り、冷え性、胃腸病などに効く」などとありがちな効能書きがあったとして、科学を装ったものという判断になるかというと、まあ今のところは常識的に考えてならないだろう。昔からありがちな宣伝だし、効能の出方だってまあそれなりというか、医薬品とは明らかに違う精度のものだという共通認識があるのではないか。
 これが、ことさらに「波動を測定すると××で、マイナスイオンを測ると××で、だから効く」などと、科学的に精度の高い検証をやって効果を確認したという誤解を誘発するような宣伝が並んでいたとしたら、「温泉一般がニセとは言わんがその表示はニセ科学だろーっ」とツッコミを入れるしかなくなる。
【追記】もし、ほとんどの温泉が誤解を誘発する宣伝を並べ立てるようになったとしたら、「温泉の効能書きはニセ科学」ということになるだろう。

 つまり、温泉がニセ科学かどうかを考えた場合、一般には「ニセ科学じゃない」となるのは、これまでの人と温泉の関わりから「科学と誤認される」おそれがなく、効能書きが書いてあってもそれが「科学を装う」に該当しないからであって、「人を傷つける要素をもつもの」かどうかという基準は必要ないというのが私の考えである。


ここからは旧ブログのコメントです。


by あらきけいすけ at 2007-09-54 13:55:54
Re:再び温泉の話

こんにちは

僕はapjさんの「温泉」のエントリを見て、#整理の仕方に#ちょっと違和感を覚えています。

というのも、「この温泉はリウマチに効く」という表示は、実際に「臨床試験」が無い限り、ウソなので一応「ニセ科学」ではないか。でも目くじらを立てて糾弾するような対象ではないし、その点で「ニセ科学ではない」という結論には合意できます。

ぼくは「温泉」議論を読んだとき次のようにまとめなおせるのではないかと考えました。つまり
・あるモノ(温泉、大根)に2個以上の効用(そのうち一つがニセ科学)があって
・ニセ知識でない方の効用が主たる効用で
・ニセ知識の方の効用について、その効果が無くても問題視しないという売買時の供給者と消費者の暗黙の合意が成り立っている(だから「損害を与えられれた」と言い出すことはない)
という条件が成り立っているから「ニセ科学批判」の対象には含めないということではないかと。

温泉の場合は、温泉の効用として、病気の「治療(リウマチへの薬効を求める)」と、休暇を取りリラックスするといった「療養」の側面があり、供給者と消費者の間で「リラックスにカネを払う、薬効の有無には目くじら立てない」という暗黙の合意が伝統的に成り立っていると考えられます。

大根の場合は、「酵素たっぷりの健康補助食品的効用」と「今夜のおかずにして飢え死にしないという効用」の二つがあります。八百屋のおっちゃんの売り言葉の段階では「おかずとして買う」という売買契約が成立しますが、粉末にしてラベルを貼ると「薬効」が主たる効用という表示になるし、「おかず」としての効用がほとんど失われるので問題が発生するでしょう。

だからひねくれたモデルケースとしては暗黙の合意を知らない場合、たとえば「たまたま日本に観光に来た外国人が、温泉の効能書きを見て、リウマチに苦しむ故郷の母を呼び寄せた」という場合に「訴えてやる」と言い出すケースが想定できます。

その一方で「イソフラボン他の健康によいン種類の成分が含まれた製品」として大豆粉末が高級そうな壜に詰められて売られていたときに、「あべかわもちが食いたくなったので」買ったというケースでは温泉の考察と同じような議論が適用されるでしょう。
(傍から見ると「おまえなあ、1000円のD○Cのサプリメントじゃなくて、スーパーで100円の黄な粉買えよ」とツッコミをかけたくなるでしょうが、それは「自由主義の原則」の一つの「愚行権」ということで。)

つまり
・供給者側と消費者側で情報が同等であり、
・それを承知した上で購入するという(社会的、個人的)合意があれば
「人を傷つける」要素はほとんどないと言えますが、供給者側と消費者側で情報が非対称であり、消費者側に虚偽の合意を形成する場合に問題が発生すると言えます。

これがボクの考える「温泉」をその他のニセ科学批判の対象とを区別する境界線であり、これを(誤解のリスクはありますが)中学生でもわかる言葉にしたものが「人を傷つける要素を持つ」という表現です。(「温泉」考察のエントリに書かれた思考、論理のプロセスは、ぼくにはそう読めました。)

そしてこの回答をまとめて自分でもようやく気が付いたのですが、「人を傷つける要素」と書いたときに、そこにはインプリシットに「科学的知識の受容者側(消費者側)の知識量」の問題が必ず考察に含まれています。


by apj at 2007-09-44 18:59:44
Re:再び温泉の話

あらきけいすけさん、(ここでは)はじめまして。
 コメントをいただいて、なぜ「人を傷つける要素」が出てきたのかはわかりました。
 しかし、やっぱりそれは「余分なもの」に見えます。「科学を装おう」のところで判断できるものに対して、別の基準を立てようとしているように見えます。

>・あるモノ(温泉、大根)に2個以上の効用(そのうち一つがニセ科学)があって
 ここで「そのうち一つがニセ科学」と言ってしまうと、暗黙のうちにニセ科学かどうかの判定が済んでしまっていることになりますよね。それは早すぎるのではないですか。

 暗黙の合意を知らない場合にトラブルが発生するという部分については同意します。

>・供給者側と消費者側で情報が同等であり、
>・それを承知した上で購入するという(社会的、個人的)合意があれば
 
までは、前提としてかまわないのですが、その次の展開が、

>「人を傷つける」要素はほとんどないと言えますが、
ではなく「科学と誤認することはほとんど無い」と言わないといけないだろうというのが私の立てている基準です。

 そもそも、「科学を装うが科学でない」という定義の方に、インプリシットに受容者側の知識量の問題が含まれているんですよ。
 最初にニセ科学の定義を説明するときに、星占いや姓名判断はオカルトだけどニセ科学じゃない、なんて言ってます。これは、通常人の常識に照らして星占いや姓名判断が科学と誤認されることが無いと考えられるからです。
 これが、「水からの伝言」になると、物理学者の基準では「科学を装う」までもいかないので、「それはオカルト」の一言で終わりですが、一般の方の常識を基準にすると「顕微鏡観察をして写真を撮ったりと実験っぽいことをして、『波動』の話を持ち出したりしているから、科学を装っている」となるわけです。


by newKamer at 2007-09-33 19:03:33
Re:再び温泉の話

 私は温泉の効能書きはニセ科学と呼んでよい派です。ここら辺、きくちさんとかTAKESANとかpoohさんとかも言及して欲しいところ。

 私には、「温泉の効能が常識的に考えて科学の裏づけがあると思う人はあまりいない」という言説は、水伝を科学的に確かめられたものだと考える人は、常識的に考えてあまりいないというのと同等だと思います(ベクトルはちと違いますが)。
#ちなみに私は水伝の実験自体を良く知らないけど水伝を信じている人は相当数居ると考えています。

 ただ、「別に問題にするほどのことではない」という意見があれば、「そうだろうな」とも思います。


by apj at 2007-09-57 19:29:57
Re:再び温泉の話

と、コメントをつけてみて、
「科学であるかどうか」については科学哲学の蓄積があるが「科学を装っているかどうか」の方は、実はかなり曖昧だと気付いた。まあ、今のところは「あからさまに科学の振りをしているだけ」のものしか取り上げていないが、研究のプロにそれっぽい手順と手間をかけて科学っぽいことをされちゃった場合には「科学を装っている」のか「単に研究上の詰めが甘い」のかの区別が難しくなりそうではある。


by apj at 2007-09-34 19:36:34
Re:再び温泉の話

newKamerさん、
 同じことを私も考えたんですけどね。この場合は、字面だけ見ると同等に見えてしまう、という問題ではないかと。

多分、世の中にはいろんなものがあるんだけど、
○科学を装っていなくて(科学に見えなくて)、科学ではない
 →いわゆるオカルトなど
○科学を装っていなくて(科学に見えなくて)、でも実は科学
 →魔法と区別がつかないというアレかな?w
○科学を装っていて(科学に見えていて)、科学ではない
 →ニセ科学
○科学を装っていて(科学に見えていて)、科学
 →科学

 温泉について、「科学を装っている」と判定した理由を知りたいです。字面の問題ではなくて、実態としてですが。


by ちがやまる at 2007-09-57 20:00:57
Re:再び温泉の話

前にサボテンで活性炭を作ったらまだ暖かいうちは赤外線を放出するだろう、といういたずらのようなコメントを投稿した者です。(自己紹介になっていませんね。すみません。)

すべてのお話の前提として、たとえば「温泉の効能に『リューマチ(慢性関節リューマチ)』と書いてあったりするとそれは嘘に近いいい加減だ、という判断があるように感じられるのですが、そうなのですか?
たとえば下の論文はpub medなどからたどって只で読めると思いますが、こういうのは「科学」には入らないということなのでしょうか。
Van Tubergen et al. (2002) Cost effectiveness of combined spa-exercise therapy in ankylosing spondylitis: a randomized controlled trial.
Arthritis Rheum. 47(5):459-67.


by newKamer at 2007-09-11 20:25:11
Re:再び温泉の話

 普通、温泉は泉質明示しています。表現方法は、化学物質・性質を羅列する方法です(例えば草津温泉なら「酸性・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉」)。もちろん、これは事実の提示ですから、なんの問題もありません。が、科学に疎ければ、それは「科学的」な印象を与えるのに十分です。

 そして、それに続けて効能の表示があります(同じく草津なら「神経痛・筋肉痛・関節痛・皮ふ病・五十肩・うちみ・くじき・病後回復期・疲労回復・健康増進・慢性婦人病・糖尿病・高血圧症・動脈硬化症など」)。これは、根拠が明確でないので端的に言えばニセの説明ですよね。効能は泉質と対応するものなので、科学的根拠があるように捉えられても当然だと思います。

 なにも特殊な話ではなく、この、温泉においてはごく普通の書き方が、「効能効果がある」と思わせることと、それには「科学的な根拠があるという雰囲気」を与えることになっていると思います。政府公認なのも、そういった雰囲気に拍車をかけそうです(そもそもそんなことを知っている人の方が少ないでしょうけど)。

 ↑実態と言えるか不安です。

 体験談なので一般化できませんが、サプリメントを皮膚から摂取するようなイメージで温泉に行く人もいるようです。

—蛇足—
 もちろん、このような表示は前のエントリのコメントにあったように「環境庁自然保護局長発(昭和57年5月25日)環自施第227号」に拠っているので、問題はないのでしょう。しかし、私はその「環境庁庁自然保護局長発(昭和57年5月25日)環自施第227号」が何を思ってそんな効能効果が確かにあるという誤解を生むような表示を認めているのか理解できませんけど。

 最終的には、水伝よりもマイナスイオンに近い構図かもしれませんね。


by あらきけいすけ at 2007-09-13 20:52:13
Re:再び温泉の話

apjさま、みなさま、コメントありがとうございます。僕のコメントは「温泉」エントリがでたあとから、じわじわと暖めていたものでした。(整理し終わったのは今朝ですが。)apjさんの論点は「持ち帰って検討」します。(僕自身はブログにありがちな「即答」は苦手だし、あまり好きではありません。)

ちがやまるさま、論文のご教示ありがとうございます。こういう応答がもらえるってうれしいですね。


by pooh at 2007-09-14 21:06:14
Re:再び温泉の話

名前が挙がったので見解を書こうかと思いましたが、特に必要なさそうなのでやめにしておきます(ならコメントするな、って[:横目:])。


by nomad at 2007-09-29 21:08:29
Re:再び温泉の話

「この温泉には10μm程度の遠赤外線が測定されており、内部から温める効果が確認されている」

ですよ!!!11!!!!1!!


by apj at 2007-09-56 21:10:56
Re:再び温泉の話

ちがやまるさん、文献の紹介ありがとうございます。
文献そのものについてはまた後で、ということで、とりあえず文献がきちんと科学をやっているという前提で書きます。

私の温泉に対する現状認識:「科学を装っていなくて(科学に見えなくて)、科学ではない」
ちがやまるさんの文献を読んでなるほどこれは科学である、と判断した場合には、
私の変化した現状認識:「科学を装っていなくて(科学に見えなくて)、でも実は科学(の部分があった)」
となります。なので、ニセ科学の分類にはひっかからない気が。

 やっぱり、「科学かどうか」の方は、グレーゾーンの存在やら線引き問題やらを含めて議論があるけど、「科学を装ってる(といえる)かどうか」の方は、社会通念とか常識とか文化が絡むので、よりいっそう曖昧に思えますね。


by Niimi at 2007-09-51 21:14:51
Re:再び温泉の話

「このエアコンからはマイナスイオンが放出されていて、その送風を浴びると気持ちよい。これはレナード効果というものがあって……」ってのは「人を傷つける要素はないけどニセ科学」なんじゃないかと愚考する。


by newKamer at 2007-09-46 22:53:46
Re:再び温泉の話

 ちがやまるさんのは「リューマチ」のようですが、私が引用したように、実際は「神経痛・筋肉痛・関節痛・皮ふ病・五十肩・うちみ・くじき・病後回復期・疲労回復・健康増進・慢性婦人病・糖尿病・高血圧症・動脈硬化症など」のような表示になっているわけで、中にもいくつか効果のあるものはあるでしょうが、糖尿病とかありえんだろうと思います。

 言いたいのは、(ある意味まぐれ)当たりがあってもしょうがないわけで、効能のニセ科学性に関しては「環境庁自然保護局長発(昭和57年5月25日)環自施第227号」がどのようにして決められたかが本質でしょう。結果ではなく、結論を導く方法の問題(説明は必要ないですよね?)だということです。
#再び蛇足で言えば「昭和57年 << 2002年」です。


by zorori at 2007-09-01 02:30:01
Re:再び温泉の話

お邪魔します。人を傷つけるというのは、使い方の問題であって、ニセ科学の「理論?」や主張そのものの性質ではないですね。包丁は使い方では人を傷つけるけど、料理にも使えます。例えば、と学会はニセ科学をおちょくる対象として扱っているわけで、学会員は傷つくどころか楽しんでいます。

一方、ニセ科学批判は使い方も問題にしているように見えますので、あらきけいすけさんの意見もうなずけます。行為の定義ではなく、単なる理論や主張の定義なら「間違った科学」といえば済みますから。とはいえ、apjさんのおっしゃるように、「科学を装う」という表現には使い方も含意されていますので、あえて言う必要もないのかもしれません。

それから、私は温泉の効能書きが科学を装っているとまでは言えない派かな。同じ効能書きでも歴史的社会的文脈で意味が違うと思うからです。温泉は歴史あるものですから、その効能はたいていの人は実感していて、過大な期待はしないように思います。糖尿病に効果ありといっても、現代医学と同じような効果があると思う人はあまりいなくて、血行が良くなるから少しは効果があるだろうという程度の理解でしょう。むしろ効能書きは禁忌症の方の意味が大きいのじゃないでしょうか。

どっちにしても微妙ですが、グレーゾーンはあるけれども、真っ黒を批判するのがニセ科学批判だとすれば、温泉効能書きはニセ科学ではないということでよろしいのでは。


by ちがやまる at 2007-09-18 03:05:18
Re:再び温泉の話

私は温泉療法の効果が「確実にある」ことを主張しようというのではありません。盲検化してないじゃないか(それならせめて主観に依存しない測定法を使え)とか、評価するなら眉にツバつけるのは必要でしょうし、そうした批判に耐える研究はもしかしたらほとんどないのかもしれません。定義によっては「科学」ではないといわれればそうなのかもしれません。だからといって「ニセ」とまでいうかなあ、と。

newKamerさんがあげておられる疾患・症状は、みんな末梢循環機能(血液や組織間液の流れ、血管リンパ管やそのまわりのサイトカインなどのはたらき)に影響を受ける可能性があるものです。暖かいお湯に入って、ふだん伸ばさないところをのばしたり、ということだけでも影響があるかもしれないと予想する人もいるのではないでしょうか。(次のような
話もあるようです。↓
Masuda et al. (2004) Repeated sauna therapy reduces urinary 8-epi-prostaglandin F(2alpha).
Jpn Heart J. 45(2):297-303. )
温泉利用や成分の提示の許可にあたる都道府県知事は保健所長あたりに意見を徴するでしょうから、その程度の判断はされていることになっているのでしょう。

田崎さんの「ニセ科学」分類(下のリンク参照)には入らない「予想されるメカニスムはあるが効果・効能の検証はされていない」という広大な領域に落ちるもののように思われます。
http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/fakeS/PE06.html


by 傍見頼路 at 2007-09-46 07:10:46
Re:再び温泉の話

温泉法制定前は温泉の効用等の表示はデタラメで、例えば万病に効くとかガンが治るとかいったものであったそうな。これはいかん、何らかの基準と規制を定めなあかんということで法や通達が定まったと、数年前に温泉行政に関わってる人と呑んだ時に聞きました。裏はとってないですけどそんなもんじゃないかと考えます。

温泉法自体は、国に箔をつけてもらって振興をといった思惑もあり一筋縄じゃないのですが、効用に関してこの環自施第227号通達の歴史的意味は、根拠の薄い効能を認めるものではなく、デタラメな状態を、社会通念上認められる範囲に制限するものであったと思われます。

ですので、現在の目では科学的根拠が不十分かもしれませんが
科学っぽいものからニセに踏み出すのではなく、デタラメから科学の方に進んでいる途中の(といっても30年近く停滞しているんですが)状態なんで、ニセ科学といって目くじらたてるほどではなく、「もう少し頑張りましょう」科学くらいじゃないかと思います。


by ちがやまる at 2007-09-34 19:36:34
Re:再び温泉の話

apjさんのこれ↓に賛成です。
「やっぱり、「科学かどうか」の方は、グレーゾーンの存在やら線引き問題やらを含めて議論があるけど、「科学を装ってる(といえる)かどうか」の方は、社会通念とか常識とか文化が絡むので、よりいっそう曖昧に思えますね。 」

「科学かどうか」を判定する作業(ラベルはがし)は、科学者・技術者といった人には社会的分業に応じた義務も出てくるでしょう。狭い意味の専門家だけに任せると判定水準が異なった領域で違ってきたり、利害関係にしばられたりすることもあるでしょうから、別の分野(素人)からの批判が必要な場合もあるでしょう。

後半については、無理に「ニセ科学」かどうか判定する必要はない、ということですね。利害とその大きさに応じて、個人の優先順位、社会的合意にもとづいて対処すればいい、と。

きのう上にちょっと(文字どおり)顔を出されたpoohさんは、この社会と個人との関係を視野に入れておられて、かなりきびしい要求水準をお持ちです(それが人文系の守備範囲であると考えておられるようです。この文はpoohさんをご存じないかたのために追加してます。わたしも存じ上げているわけではありませんが、Amartya Senくらいは付け焼き刃ででもべんきょうしておかないとマズそうだなあ、と感じてます)。


by Noe at 2007-09-14 20:28:14
Re:再び温泉の話

こんにちは

温泉の効能・効果も程度もんですよね。

中には「がんが治る!!」という効能・効果を前面に押し出して客集めをしているところもあります。

この効能は科学的な手続きを経て検証されたとは言いがたいですが、これを「ニセ科学」と切って捨てるのはまずいかもしれません。

本当に効果があるのであれば検証すべきなのかもしれませんが、検証の結果、効果がないとなったら、治療法の無くなった患者さんにとっては一縷の望みを絶つことにもなりかねません。一方、効果があるかもしれない治療法が残っているのに、それらを行うことなく湯治に来てしまい、結果的に命を縮めることになるのも困りものです。

あちらを立てればこちらが立たずで、なかなかうまい解決法は思いつきませんが、ニセ科学の蔓延によって、後者の被害が増えそうな気がしています。


by apj at 2007-09-51 21:03:51
Re:再び温泉の話

>温泉の効能・効果も程度もんですよね。

 程度もんです。だから、従来からある「普通程度の」宣伝なら大丈夫だけど、大々的に変なことを言い始めたら、やっぱり、そりゃまずいよ、と言わないといけない。

 「癌が治る」にしたって、病院で診察を受け、手術なり抗ガン剤なりで叩いた後で静養しましょう、となったあたりで「癌に効くっていう温泉にでも行って来ようか」となるのなら問題はないけど、最初から温泉のみは違うだろうと……。


by ちがやまる at 2007-09-22 23:14:22
Re:再び温泉の話

たびたびすみません。>Noeさん、apjさん。

私の相場感覚からすると、「がんが治る」と言ってしまえば、アウトだと思います。
がんの方が多く集まると言われる秋田県玉川温泉
http://www.tamagawa-onsen.jp/spa/index.html
には、「がん」という文字はひとつもありません(たぶん無いと思います)。


by Noe at 2007-09-34 00:59:34
Re:再び温泉の話

>ちがやまるさん

確かに玉川温泉さんはだいぶ気を付けてホームページを作成されているようですね。これなら勘違いする人は少なそうです。
ただ、玉川温泉についてはこんなホームページもありますね。
(ほかにも大量にありますが)

http://www.1dfk.com/tamagawa/index.htm

玉川温泉さんはこのようなホームページの存在をご存知なのでしょうか?知ってて放置なのか、知らないのか・・・


by ちがやまる at 2007-09-46 02:32:46
Re:再び温泉の話

Noeさんが”?”をつけられたので。
がんについての評判にもとづいて訪れる人の事は旅館では充分知っていると思います。一度だけ人に連れて行ってもらった時の印象をもとに想像すると、ウェブをチェックしたりそれについてクレームを出したりするような人手の余裕はないのではないかという気がします。

それにしてもホルミシスやマイナスイオンの事まで温泉の人が言っているかのようにうまくマージさせた(気持ち悪い)ページですね。医者がふたりも取り込まれてますし。


by newKamer at 2007-09-03 02:44:03
Re:再び温泉の話

> Noeさん
> 確かに玉川温泉さんはだいぶ気を付けてホームページを作成されているようですね。

 うーん。私としては以下のようなページは気をつけているように見えないんですが…。ここでうたっている効果が本当にあるのならいいですが、無いのならニセ科学じゃないでしょうか?
http://www.tamagawa-onsen.jp/spa/recuperation.html


by apj at 2007-09-54 11:14:54
Re:再び温泉の話

個別の効果に対する説明を書きすぎてるようですね。
太字の部分だけにしておいた方が……。
最後の注意書きはもっともなんだけど。


by deR at 2007-09-48 23:42:48
Re:再び温泉の話

実際に表示が問題になった温泉に、北海道の二股温泉があります。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C%E8%82%A1%E3%83%A9%E3%83%82%E3%82%A6%E3%83%A0%E6%B8%A9%E6%B3%89
偶然、ここの宣伝用ポケットティッシュが家にあり(多分、家人が親会社がらみで配られたのを持っていたんだと思う)、なんだかなーと思ってネットで調べたら、公取委から排除命令が出て、具体的な病名は表示しなくなったようです。
http://www.hokutonomado.com/blog/archives/2005/03/post_23.html


by apj at 2007-09-15 10:30:15
Re:再び温泉の話

deRさん、
 うーむ、明らかにあからさまに体験談商法ですねこれは。


by サリエリ at 2007-09-59 16:21:59
Re:再び温泉の話

成分を利用した温泉の宣伝の中には、消費者の優良な誤認を招くニセ科学もごく一部ではあるが散見される…


by Noe at 2007-09-12 17:09:12
Re:再び温泉の話

>newKamerさん

ごめんなさい。
私が「気をつけている」と書いたのは、「がんが治る」という記載についてで、そのほかの記載についてはあまり気にしていませんでした。


by apj at 2007-09-21 09:38:21
Re:再び温泉の話

もしかしたらちゃんと研究されるかもしれなかったのに……。掘り当てる段階でしくじった模様。ままならないですねぇ。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/saitama/news001.htm
ーーーーーーーーーーーーー(引用ここから)
立正大 7000万円フイ 新学科も断念
 温泉療法を学ぶ新学科の設置などを目的に、立正大学(東京都品川区)が熊谷市万吉の熊谷キャンパスで進めていた温泉※開発事業が失敗に終わった。約7000万円を投じて掘削したものの、温泉はほとんどわき出ず、今年5月で工事が打ち切られた。事業には地下水学を専攻する高村弘毅学長ら同大の教授陣が参画していただけに、大学関係者のショックは大きい。県によると、湯量が少ないことを理由に温泉工事が中止されるのは極めて異例だ。

 「大学全入時代」を目前に控え、学生の獲得競争が激化する中、大学の個性化・差別化を図ろうと、立正大は2003年ごろから熊谷キャンパスでの温泉開発事業を検討。事業では〈1〉温泉療法などを学ぶ学部・学科の新設〈2〉温泉施設の地域住民への開放〈3〉隣接する特養老人ホームへの温泉供給――などが計画されていた。

 同大などによると、事業には地下水の専門家である高村学長のほか、「地下水」や「地盤」に関する講座がある地球環境科学部の教授陣も参画。事前の調査で「地下1500メートルまで掘れば、水温43度前後の温泉が毎分100リットル以上湧出(ゆうしゅつ)する」との結論が得られたため、キャンパス内で昨年7月から掘削工事をスタートさせた。

 ところが、専門工事業者が約5か月かけて1500メートルまで掘ったものの、温泉はほとんどわき出なかった。「動力ポンプによるくみ上げさえできないほど少量で、温泉成分の分析もできなかった」(関係者)という。

 さらに深く掘り進めることも検討したが、費用の面などから断念。同大は工事を打ち切り、今年5月に掘削完了届を県に提出した。温泉に関する新学部の設置など当初計画もすべて中止した。

 同大は「温泉が出なかったことは非常に残念だが、掘削跡は埋め戻さずに学術的に活用したい」と話し、独立行政法人・産業技術総合研究所(茨城県つくば市)と連携して、活断層の分析や深層地下水の水位測定などに生かす予定だ。

 温泉を掘削するには、都道府県知事の許可が必要になる。申請を受けた知事は、有識者で作る環境審議会温泉部会に諮問して許可、不許可を決める。許可された場合の有効期間は2年間。

 県薬務課によると、02~06年度の5年間で県に提出された掘削申請は、立正大学を含めて59件。県の担当者は「温泉掘削には多大な費用がかかるため、事前に十分な探査が行われる。掘削したのに温泉が出なかったという例は記憶にない」と話している。

※「温泉」 温泉法の規定では、〈1〉温泉源の水温が25度以上〈2〉ラドンなど19物質のうち一つ以上が一定量含まれる――のどちらかを満たすことが要件。掘削費用の低廉化などにより全国的に温泉掘削が増加する一方、湯量や温度の低下、成分の希薄化に悩む温泉地も増えている。

(2007年9月20日 読売新聞)


by オキナタケ at 2007-09-57 06:55:57
Re:再び温泉の話

立正大学さん、まさかダウジングで(ry