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「トンデモ」を人格否定に使わないで

Posted on 2月 8th, 2008 in 未分類 by apj

 ちょっとネットでもリアルでもばたばたしていたらコメントするのに出遅れてしまった。「擬似科学を批判する人は謙虚であれ」を読んで。

 それでも、自分はときどき、疑似科学批判を得意げにおこなう人たちに気持ち悪さを感じる。たとえば、疑似科学を信じている人たちを、「トンデモさん」と呼ぶ人がいる。こりゃ、あかんやろ。「トンデモさん」というとき、疑似科学批判者は、批判対象の全人格を否定してしまっている。つまり、「科学のモノサシ」に則ってあくまで事実認識をたしなめるだけではなく、彼の生き様そのものを批判してしまっている。そこには、「知的で優秀な俺様が無知なおまえを啓蒙してやるぜ」という態度が見え透いている。

 擬似科学批判の問題として扱うようりも、むしろ、単に「トンデモさん」の使い方を間違えているということを言わなければならない。
 「トンデモ」は鑑賞し愛でる対象であって批判する対象ではない。だから、批判しなきゃいけないときに「トンデモ」と表現してはいけない。
 擬似科学やニセ科学の全てが「トンデモ」ではない。擬似科学やニセ科学の一部が「トンデモ」になることはある。逆に「トンデモ」の対象は別に科学とは限らないし、そもそも学問と関連するという制限すらない。フィクションであるマンガや小説でも、表現内容があまりにぶっ飛んでいて、作者の意図を越えて別の意味で楽しめればトンデモ本と呼ぶ。「トンデモ」と呼ぶ時には、(間違っているけど)人間の想像力・空想力・妄想力は無限だなぁ、とか、「その発想は無かった」という、むしろある種の人間の奥深さのようなものを見ているように思う。
 具体的に言うと、活水器のニセ科学説明は普通はニセ科学であってトンデモではない。ところが最近、セールストークにSDI計画が登場するものが見つかり、これはニセ科学批判の対象ではなくトンデモだろうと判断することになった。

 ことさらに人格を否定するような擬似科学批判のあり方はまずいだろうという主張には同意する。ただ、「トンデモ」を擬似科学批判の文脈で使う人が居るのであれば、「トンデモ」の使用法を間違えるなということを指摘しておきたい。

【追記】
 素直に読めばわかるように、このエントリーの内容は、「ニセ科学批判批判」である。つまり「ニセ科学批判」を行うにあたって、「トンデモ」という用語を本来の意味で使ってくださいという内容なので。


ここからは旧ブログのコメントです。


by 酔うぞ at 2008-02-37 19:25:37
Re:「トンデモ」を人格否定に使わないで

じゃあ今後は「とんでも」と呼んで区別することにしよう。


by ぼそっ at 2008-02-24 20:36:24
Re:「トンデモ」を人格否定に使わないで

最近、というわけでもないのですが、“術語”というものを理解しない人が増えた気がします。あるいは、カッコを付けているのをparseできないというか。


by ぴぐもん at 2008-02-40 22:40:40
Re:「トンデモ」を人格否定に使わないで

トンデモの対象が「人」ではなくて、「説」「理論」といった「もの」であるのが本来の使い方ではないかと・・・。


by ROCKY 江藤 at 2008-02-03 23:04:03
Re:「トンデモ」を人格否定に使わないで

罪を憎んで人を憎まず。
トンデモを笑って人を笑わず。


by (ぱ) at 2008-02-44 23:09:44
Re:「トンデモ」を人格否定に使わないで

元記事の人が批判しているのは、「トンデモ」部分ではなくて、それに「さん」をつけて使う人がいる、ということでは?


by Niimi at 2008-02-12 03:03:12
Re:「トンデモ」を人格否定に使わないで

そういや「と学会」の「と」はひらがなだな、と「と学会」のページではトンデモはどう定義してるんだろう? と以下を見る……
http://www.togakkai.com/

「と学会」とはなんぞや? ってことすら書いてねぇ……
(てか会員以外には見せねぇってことなのか???)


by gallery at 2008-02-18 04:11:18
Re:「トンデモ」を人格否定に使わないで

モノサシは測るための道具ですが、たまに叩くのに用いる人がいます。ぺちぺちぺち。

あと、個人的には、もっと広く定義してました>「トンデモ」
「トンデモ ⊃ ニセ科学、疑似科学」 みたく、笑いにくいのも含め、あらゆる変な言説に適用されるものかと。
笑いにくい話題だけど、怒るより余裕を持った見方ができるので笑っておこう、みたいな姿勢的な側面も含めて。

ちょっと修正する必要がありますかね。もちろんこちらが。


by とりばち at 2008-02-28 04:33:28
Re:「トンデモ」を人格否定に使わないで

言葉の意味は広まると同時に変化していく。
それにと学会の言葉の定義に世間が従わなければ
ならないという理由も無い。
それを知らなければいけない理由も無い。
それこそ内輪のルールの押し付けに感じる。

それ以前にニセ科学批判してる人は
ニセ科学批判批判から逃げてるのでは?
自分達の問題を認めたくない気持ちが先行してる
気がします。

それから私個人の感想でいえば
以前からトンデモも笑うというと学会のやってること
自体好きではない。害にもなると思っています。
そもそもと学会自体ただの趣味の
集まりみたいなものでしょう?


by apj at 2008-02-35 06:55:35
Re:「トンデモ」を人格否定に使わないで

>ニセ科学批判批判から逃げてるのでは?

 ニセ科学批判批判がまともだった試しがないため、逃げる必要がそもそもありませんでした。というか、ニセ科学批判批判が最初からあまりにも無意味な言説でしか無かったために、そもそも逃げようがないんですよ。
 たとえば、ニセ科学批判批判者は、居もしないパターンの「ニセ科学批判者」をこしらえ上げて、そいつに対する批判ばかりしていて、具体例を出さないために、批判にすらならず議論すら成立しなかったということです。

 今回のトンデモ云々も、使われている具体例無しの批判です。つまり、逃げる云々以前の問題として、誰のことを言っているのか意味不明なんですよ。本来なら放置するべきものです。

 なお、ニセ科学批判批判の構造については、黒猫亭さんがかなりまとまった考察をしておられます。
http://kuronekotei.way-nifty.com/nichijou/2008/01/post_74b5.html

>それにと学会の言葉の定義に世間が従わなければならないという理由も無い。
>それを知らなければいけない理由も無い。それこそ内輪のルールの押し付けに感じる。

 本来の意味はこれです、という情報を広めて、正しく使ってくださいという呼びかけをするのは自由でしょう。世間が従うかどうかは別問題ですが、呼びかけるなとは言えないはずです。ですから、今後も私は地道に呼びかけます。
 というか、単に呼びかけるだけで「押しつけ」と主張したり、「知らなければいけない理由もない」と、敢えて情報提供しているものをわざわざ拒否することの方が理解不能です。


by apj at 2008-02-51 06:57:51
Re:「トンデモ」を人格否定に使わないで

追加です。

>以前からトンデモも笑うというと学会のやってること
>自体好きではない。害にもなると思っています。

 具体的に、どういう害になると思っているのですか?


by TAKESAN at 2008-02-41 08:52:41
Re:「トンデモ」を人格否定に使わないで

今晩は。

とりばちさんは、ご自身が、「ほとんど意味の無いニセ科学批判批判」を行っている事には、お気づきなのでしょうか。

>apjさん

私自身は、トンデモという語は知っていたが、と学会が元々どういう意味で用いていたかを知ったのは随分後だった、というクチです。
それだけ、「とんでも」というコトバは馴染みがよくて、元々の意味が拡大されて流布されてしまった、というのは、ありそうですね。普通は、細かい意味を気にしないで広まるものでしょうし。
なんだか、「ニセ科学」概念が、オカルトなんかに敷衍されてしまうのと、同じような感じにも見えます。


by apj at 2008-02-32 09:01:32
Re:「トンデモ」を人格否定に使わないで

TAKESANさん、

 たった今気付いて追記したのですけど、私の今回のこのエントリーは、意味のある「ニセ科学批判批判」のつもりです。「ニセ科学批判」をする人に対して「トンデモという用語を正しく使ってください」と主張する内容ですので。

 事情をよく知らない世間一般の人が「トンデモ」の意味を拡大して細かい意味など気にせずに使うのは仕方がないでしょう。でも、「ニセ科学批判」を行うような、ニセ科学についても(用いる)言葉についても「特に感度が高い人」が、「トンデモ」の使い方を間違えちゃいかんだろう、という話なのでね。

 でもって、意味のある「ニセ科学批判批判」を試みた途端に、意味のない「ニセ科学批判批判」をぶつけられるわけです。むしろ、ニセ科学批判批判の議論をすることの困難さを示しているように思います。


by apj at 2008-02-20 09:05:20
Re:「トンデモ」を人格否定に使わないで

ROCKY 江藤

>トンデモを笑って人を笑わず。

 人に対する愛は必要ですよね。愛の無い笑いは嘲笑ですから。

 と学会年鑑だったかに出ていた、昆虫の名前の由来(だったか)を説明するためだけに、池に飛び込む実演をしている学者さんなんかを見てしまうと、限りなく人に近い部分で笑うことになりますが。それでも嘲笑ではないです。